2.5-4:火山の精霊に感謝された件について
教授コメント
『溶岩だけでもその規模の被害となると、火山灰や火山弾などによる被害はさらに甚大なものになっていましたね。マナと自然災害の関係性は議論の余地がありそうです』
身体が動くようになってから、僕はエルに連れられて火山へとやってきた。
「うわあ、すごい光景だね」
流れた溶岩が湿原で固まった後なんだろうけど、ぼこぼことまるで泡立てた洗剤のような形状の岩石があちらこちらに広がっていた。
ちょっと気持ち悪いかも。
「地下水が豊富な場所でよかった。そうでなければ、ここで塞き止められはしなかっただろう」
「だね」
「彼も君に感謝している。だから、連れてきたんだ」
「彼?」
彼って誰だろう?
僕に感謝してくれたのは、精々アルヴェルさんくらいのものだったと思うんだけど。
そう首を傾げながら山を登っていくと、頂上の火口付近に辿り着く。
あ、もしかして、彼って火山の精霊のことかな?
「その通りだ」
「あ、やっぱりそうなんだ」
「君は、彼にあっておくべきだと思っていてね。出発前の忙しい時に時間を取らせてしまってすまない」
「いやいや。僕も会えるなら会いたかったし、謝られるようなことじゃないよ」
「そう言ってくれると、嬉しいな」
エルはそうして微笑む。
うん、美人さんの笑顔は眩しいね。
『確かにエルは美人だよな』
だよね。
大人っぽいし、落ち着いている雰囲気も相まってその端整な顔立ちが凄く映えるんだよね。
『分かる、分かるぜ』
「そう褒められると照れてしまうな」
……うん、僕は誰と会話していたんだ?
なんだか心の声を読まれた上に頭の中に直接語りかけられたみたいだったけど、これってエルの時と同じような感じだよね。
「もしかして、君が火山の精霊?」
『お、ご明察』
そう言うと共に火口の方から風が巻き起こり、何かが飛び上がってきた。
ズシンと、砂ぼこりを巻き上げながら着地したのは巨大な体躯をした蛇であった。
あ、これ、映画で見たことあるよ。
確か、魔法使いの学園モノの第一作目に出てきた、バジリスクっていう怪蛇だね。
真っ赤な瞳が僕を捉え、細い舌でチロチロと出し入れし、まるで品定めをするように見つめてくる。
ぼ、僕はおいしくないですよ?
臭み強いと思うし、筋肉は……ないから筋張ってはないけど、と、とにかく。
「食べないでくださーい」
僕は頭を抱えてしゃがみ込んでみる。
けれど、バジリスクは別に僕に迫ってきたりはしなかった。
『はっはっは。別に取って食べたりしねえよ』
「そうなの?」
『もちろんだ。エルも言ってただろ? 俺は、今回お前に感謝してるんだって』
「あ、そう言えばそうだね」
僕は立ち上がってバジリスクの方に向き直る。
「その外見ではセカイが怖がるのも当然だ」
『セカイって言うのか。なるほど、確かに言われてみればそうだな』
エルに指摘されバジリスクは首を縦に揺らす。
そうして、身体が光に包まれ始めると、人の形へと収束していった。
「おし。これでどうだ」
「おお、想像してた通りの兄貴って感じの見た目なんだね」
「はっはっは、兄貴か。そう呼ばれるのも悪い気はしないな」
そう言って、豪快に笑う。
「俺の名前はギボル。このピュイ=ド=ムーア火山の精霊だ」
「精霊ってことは、エルと同じような存在なの?」
「おう。ま、兄弟みたいなもんだな」
「私が姉なんだ」
「へー」
だとしたら、ギボルの目も宝石なのかな?
そう思って、覗き込むとそこに嵌まっていたのは真っ赤に煌めくルビーであった。
なるほど、火山の精霊らしい宝石だね。
「どうだ。熱い男にピッタリな瞳だろ?」
「そうだね。イメージにぴったり合ってると思うよ」
「へへっ。ありがとよ」
なんだかエルとは違ってギボルは人間臭いというか、なんだか親しみやすいね。
「そうだったのか。私は親しみにくかったのか」
「え、あっ!」
聞こえてるんだった!
「セカイとは心を通わせていると思っていたのだが」
「文字通りな」
「そう思っていたのは私だけだったのか」
「いや、違うって。あの、そう! ギボルは同性だから!」
「ああ、それはあるだろ。やっぱ、どんだけ親しくてもエルみたいな美人はちっとばかり意識しちまうもんさ」
「それだっ!」
良いこと言った、ギボル!
ナイスフォロー!
「そうか。そういうものか」
「そうそう」
僕はもう髪が乱れるのも気にせず、頭をシェイクし頷きまくる。
その心からの肯定をエルは理解してくれたのか、陰っていた表情を基に戻してくれた。
「それならよかった」
エルはそう言って微笑む。
うん、やっぱりこうして笑ってくれるのが一番だよね。
「ああ、それで本題に戻すけどよ」
「あ、うん。なんだっけ、お礼だっけ?」
「そうそう。ドラゴンのこともあれだが、噴火の被害を最小にできたのはセカイのおかげなんだよ」
「へ? なんで?」
むしろ噴火を後押ししたと思うんだけど。
「噴火っつーのは、いわばマナの暴走なんだよ。地中に溜まったマナが爆発的に地上に流れようとして起こるわけなんだが、どういうわけか今回は溜まってたマナの規模がでかすぎてな。俺一人じゃ抑えきれなかったんだよ」
「いつもと違う?」
「そう。んで、限界ギリギリに来てたんだが、セカイがマナの一部を無理やり噴火させただろ? そのおかげで俺が抑えることができる適量にマナが減ったってわけだ」
「あ、なるほど。それで僕が噴火を最小限にしたって言ってたんだ」
「そう言うことだ。もしセカイが減らしてなかったら、今頃エルフの森辺りまでは全部呑まれてたぜ」
「え、あそこまで⁉」
結構距離があると思うけど、溶岩でそこまで呑まれるって、やっぱり異世界の噴火は規模とか性質が違うみたいだね。
「だから、感謝してるんだ。ありがとよ、セカイ」
「い、いや、偶然だし。結局、噴火自体を止めたのは僕じゃないし」
「それでも感謝してんだよ。ほら、手を出せよ」
ギボルはそのごつごつとした大きな右手を僕の方へ差し出し、握手を求めてきた。
僕が意図して手助けをしたわけじゃないんだけどね。
でも、結果として町に被害はなかったし、こうして感謝もされてるんだから、なんだか嬉しいね。
僕はギボルに応じて握手をする。
すると、そこから伝わった熱が胸の奥にジワリと広がったような感覚を覚えた。
え、なにこれ?
「真実に一歩近づいたってことだよ」
「え?」
『Stateに変化あり。Awakenレベルアップ。デバフが一部解除されます』
「あ、ギボルも解除できたの?」
「俺も、っていうか、俺が、だな」
え、どういうこと?
だって、エルも解除してくれたよ?
「私が解除できる部分は解除した」
「んで、俺ができるところはやった」
「ええと、つまり、二人はもうこれ以上解除できないってこと?」
「そういうことになる」
「これ以上は他の精霊に頼みなってことだな」
ま、ますます分からない。
どうして僕があんな力を想っているのかも、どうして弱体化をされているのかも。
そして、どうしてそれを解除できるのが、この異世界の精霊たちなのかということも。
「いずれわかるさ」
「エル……」
「その時が来れば、君は君を思い出し、君はセカイを想う」
「セカイを……想う?」
何を言っているんだろう。
どういう意図で言っているんだろう。
分からない。
分からないから、怖い。
「それまでは、何も気にする必要はないんだ」
エルがそう言って微笑んだ。
それが、僕に言いようのない安心感を与えてくれて、あれ、どうしてこんなに鼓動が早まっているんだっけ?
「さあ、帰ろう」
「あ、うん」
エルに手を引かれ、僕は山を下り始める。
振り返ると、ギボルが手を振って見送ってくれていた。
それに手を振り返してみたりして、僕は何かを忘れていく。
まあ、忘れるくらいならたいして重要じゃないんだろう。
そうして、僕は町に戻る。
いよいよ、明日は出発の日だ。
今日は早く寝て、英気を養おう。
『Insensitive LvEXの発動を確認しました』
ステータス更新:
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sample:愛沢瀬海 Lv:99
age:22 sex:male
hight:178cm weight:64kg
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HP:25000/25000(4000/4000) MP:20000/20000(2000/2000)
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STR:2500(500) DEF:2500(500) DEX:1000(400)
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INT:3000(600) RES:2500(500) LUCK:1000
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Skill:Optimize LvEX Insensitive LvEX Sing of Disaster LvEX
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State:HP weaken Lv5(Lv4) MP weaken Lv5(Lv4) STR weaken Lv5(Lv4) DEF weaken Lv5(Lv4) DEX weaken Lv5(Lv4) INT weaken Lv5(Lv4) RES weaken Lv5 awaken Lv1(Lv2)
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エディルメモ
『マスターは送信時に文章を読み返さないタイプです』
読んでくださりありがとうございます。
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今日から更新を再開していこうと思います。
閑話はこれで終わりで次回から第三節を更新していきます。
明日は朝と夜の二回更新を予定しているので、よかったらブクマしてくれると嬉しいです!




