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2.5-3:メイド三番勝負の決着がつかなかった件について

教授コメント

『はっきりしない人は嫌われるそうですよ』

「メイドな肉体はメイドな精神から」

「至言みたいに言われても初耳なんですけど」

「それはセカイさんの見識が狭いだけです。メイドの世界では当たり前の格言としてわたくしだけに浸透しています」

「やっぱり広まってはないですね」

「わたくしが、世界だ」

「セカイは僕です」

「では、始めましょう。メイド三番勝負、二番目」


 ぬるっと始まった。


「今回試されるのはメイドの精神です。時に優雅に、時に可憐に、何事にも動じず、主の命令を忠実に従う。それこそが、メイドに求められる精神」

「なんだかそれっぽい文言だね」

「それっぽいではなく本質なのです」


 そう言い放ち、セバスちゃんさんは何やら棒状の焼き菓子を取り出した。


「この焼き菓子を主人とメイドが両端に口を付け、どれだけ短く食べ進められるかを競う、名付けて、ドキドキ接吻ゲーム」

「これポッ○ーゲームだ!」

「おや、異世界にも馴染み深い文化なのですね」

「僕には全く馴染みのない文化でしたけど、確かに同じようなものはありましたよ」


 まあ、ゲームで知った文化なんですけどね。

 やる相手なんて以ての外だよ。


「はい、セカイさん」

「ん? なんで僕にこのお菓子を?」

「もちろん、セカイさんに咥えてもらうためですが、なにか?」

「そっかー」


 主人とメイドがって言ってたもんね。

 アルメルとナディアがメイド役だとしたら、僕が主人役を買って出るのは必然だよね。


 ……え、僕、二人とポ○キーゲームをするの?

 やったー。


「さあ、来い」

「セカイさんも肝が据わってきましたね」

「恥ずかしがっていたら人生は謳歌できないからね」


 僕は焼き菓子を咥える。

 あ、バターの風味が効いててすごく美味しいね。


「ポリポリ」

「何を先に食べちゃってるんですか」

「あ、ごめん。美味しかったから、つい」

「わたくしが作ったのですから当然です」

「あ、そうなんですか。セバスちゃんさんは料理が上手なんですね」

「照れますね」

「なんで、そこでいちゃついてるのよ!」

「早く、始めて」


 アルメルとナディアが抗議の声を上げた。

 あ、いや、純粋な感想で別にいちゃついてるつもりはないんだけど……。


「それでは、始めましょう。まずはナディアさん、配置についてください」

「分かった」


 ナディアはベッドの上に膝を付き、僕の上に跨るようにして正面に来た。

 這い上がるように距離を詰められると、なんだか背徳感が凄いね。


「じゃあ、やる」


 そうして、ナディアは躊躇うことなく焼き菓子の先に口を付けた。

 サクサクと食べ進めていくと、ナディアのピンク色した唇が次第に近づいて来る。

 唇が触れ合いそうになった所で僕は堪らず、顔を背けた。


「ああっと、これはセカイさんの方が逃げてしまいましたね」

「ひどい」

「いや、だって、あのままだと本当にキスしちゃってたよ⁉」

「意気地ない主人ですね」

「困ってる」

「別に僕はナディアの主人じゃないからね?」


 あくまでもキスとかはこう、なんだろうな、付き合ったりしてからするものだからね。

 こういうお遊びの中でしちゃうのは誠実じゃないかなって思うわけですよ。


「さて、アルメルさんはナディアさんの記録を塗り替えることができるのでしょうか」

「アルメルには、無理」

「そ、そんなことないわよ!」


 ナディアの挑発に乗せられ、アルメルはナディアを押しのける様に近づいて来た。

 布団を挟んでアルメルの重みが腹部に伝わる。

 その重すぎない圧迫感と、目の前のアルメルの姿がどことなく扇情的で僕は胸が高鳴っていくのを感じた。


「ほ、ほら、咥えなさいよ、セカイ」

「あ、うん」


 そうして、僕とアルメルは一本の焼き菓子を咥える。

 アルメルは頬を赤らめ、僕と目を合わさないように視線をあちこちに動かす。

 恥ずかしそうにするアルメルを見ていると、なんだか僕も恥ずかしくなって、頬が熱を帯びるのを感じた。


 アルメルは恐る恐る焼き菓子を食べ進める。

 一口、二口とゆっくり近づいて来るアルメルの唇。


 けれど、その距離が五センチほどになった時、アルメルと目が合った。


「っ!」


 その瞬間、アルメルは顔を真っ赤に染め上げ、潤んだ瞳を逸らすように顔を背けた。


「う、ううー。こ、これ以上は恥ずかしすぎて無理よ!」

「おおっと、ここでアルメルさん、恥ずかしさのあまり焼き菓子から口を離してしまいました」

「勝った」


 ナディアが勝ち誇った顔をする中、アルメルは赤くなった頬に手を当てて、その火照りを冷まそうとしていた。


「どうでしたか、セカイさん」

「うん、初々しさが感じられて非常に好印象でした」

「なるほど。勝ったのはナディアさんですが、アルメルさんも負けてはいなかったと?」

「むしろ、ナディアには恥じらいを覚えて欲しいと思いました」

「勝ったのに、負けた」

「勝負とは往々にしてそういうものなのです。と、先輩からのありがたいアドバイスです」

「勉強になる」


 どこから取り出したのかナディアはメモ帳に何やら書き込んでいく。

 うん、そこに恥じらいの文字も追加しておいて欲しいね。


「そんなわけで、残すは愛嬌勝負だけになりましたが」

「ようやく最後なんだね」


 しかし、愛嬌か。

 どうやって勝負するんだろうね。

 またお題を出して、点数で勝負するのかな?


「判定は、セカイさんに一存しましょう」

「……え、ここに来て、僕任せ?」

「ええ。愛嬌とは当然、主が可愛いと感じるか否か。お二人がお世話をしようとしているのはセカイさんなのですから、セカイさんが可愛いと感じた方が愛嬌勝負の勝者でしょう」

「そう……なのかな?」


 間違ってはいない気がするけど、そうやって無茶振りされた僕の身にもなって欲しいんだけど……。

 大体、僕が白黒つけられないからセバスちゃんさんが判定してくれるって言う企画じゃなかったっけ?


「それでは、セカイさん、判定をどうぞ」


 セバスちゃんさんがそう言うと、アルメルとナディアの視線が僕に向けられる。


「せ、セカイはもちろん私を選んでくれるわよね?」

「私のことを選ぶって、信じてる」


 期待するような眼差しが二人分、僕に突き刺さる。

 こ、この状況で僕はどっちが可愛いかって言いきらないといけないの?

 アルメルもナディアもどっちも可愛いのに、そこに優劣なんて付けられるはずもない。

 というか、僕が選べる立場に居ること自体おかしいことだよね。


「私よね⁉」

「私」

「モテますね、セカイさん」


 ずいずいと迫ってくる二人とそれを楽しそうに眺めるセバスちゃんさん。

 自惚れてるわけじゃないけど、僕がどっちかを選んだら選ばれなかった方は悲しむよね?

 僕はアルメルにもナディアにもそんな顔してほしくない。


 なら、僕が取る選択肢は一つだ。

 僕は足に意識を集中する。


 動け、動け、動け、動いてよ!

 今、動かなきゃ、今逃げなきゃ、どちらかが悲しむんだ。

 そんなの嫌なんだ。

 だから、動いてよ!


「セカイ?」

「どうかしたの……?」


 その時、僕の膝が反応する。

 布団を押しのけ、僕の状態を起こし、立ち上がることができたのだ!


「やった! 動いた!」

「すごいわ、セカイ。もう回復したのね!」

「よかった」

「ありがとう、二人とも」


 僕は自由になった手足を確かめる様に動かす。

 ようやく自分を取り戻したみたいな感慨があるね。


「おや、そうなると、セカイさんの世話は必要なくなってしまいましたね」

「あ、そう言えばそうだね」


 そうなると勝負を付ける必要はなくなったわけだね。

 よかったよかった。


「それで、セカイ」

「ん、どうしたのアルメル」

「結局、どっちの方がセカイは可愛いと思ってるの?」

「え?」


 まだ、その話しを引きずっちゃう感じですか?


「教えて」

「えーと……」


 再び迫ってくる二人。

 こ、これは、もう……逃げるしかないね!


「か、体動かしてくるよ!」

「あ、セカイ!」

「逃げた」


 そうして僕は駆け出した。


 久しぶりに動かした身体はどこか以前よりも軽くて、なんだか力が溢れて来るようだった。


エディルメモ

『デバフ緩和の兆しを確認しました』


思い付きで書いたことをこうかいしています。(ダブルミーニング)

読んでくださってありがとうございました。


少し、第三節に向けて一週間ほど休載します。

緩和もあと二話ほど予定していますが、少し時間がかかります。

よろしくお願いします。

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