2-23:エンシェントドラゴンは倒したけど噴火した件について
教授コメント
『噴火させたの間違いですよね。修正案件です』
戦闘記録。
交戦、エンシェントドラゴン、メス。
アイスレガシーはエンシェントドラゴンの収束型ブレスを受け止め、接触面にて液化、および気化。
気化熱によってブレスの熱量を奪い、威力減衰に貢献。
氷塊の補充速度は喪失速度よりも劣るが、目標である6分の耐久は計算上達成可能。
Insensitiveを起動し、リミッターが外れた身体は先端から次第に変色、壊死の可能性、大。
融解度40%。
経過時間、3分30秒。
放射熱による体温上昇。
発汗に伴う脱水症状により嗚咽が混じり始める。
氷塊維持に異常。
補充速度の低下。
融解度80%。
経過時間、4分15秒。
計算よりも早くアイスレガシーの限界が訪れようとしている。
再計算、5分27秒。
残り時間、1分12秒。
融解度90%。
経過時間5分20秒。
上昇気流により発生した雲により日差しが陰る。
降雨による熱線、および氷塊のクールダウン。
熱容量の再計算、溶解まで43秒。
魔力回復からの発動までのインターバル、3秒。
◇ ◇ ◇
『5分50秒経過、強制覚醒施行』
「ぐっ!」
頭に電流が走ったような感覚と共に目が覚める。
目の前には、どうやって受け止めているのか不思議なくらい小さくなった氷塊。
そうか、遂に来たのか。
『魔力回復、完了。音域、高。倍音成分、高。属性付与、水。バブルスプレッド、遠隔干渉起動』
ここが、勝負どころだっ!
“Bubble Spread”
次の瞬間、背後の火口で爆発音が鳴り響く。
地鳴り、轟音、次々に聞こえてくるそれは、紛れもなく噴火の前兆であった。
その音にドラゴンは、ブレスを止める。
何がどうなっているのかと、戸惑うように辺りを見回し、最後にこちらを睨みつける。
「魔法ってさ、遠隔でも発動できるんでしょ? ここに立っていても、魔力が干渉できる場所ならどこにだって魔法を発動させることができる。君が教えてくれたんだよ?」
最初に不意を突かれた一撃。
エルが居なかったら直撃していたあの攻撃が、ここに来てヒントを与えてくれていた。
「火山の噴火って、どうやって起こるか知ってる? 僕は詳しい原理までは知らないけど、大学の講義で教授が簡単に説明してくれたよ」
専門と全く関係ない一般教養科目としてとった惑星科学の講義。
その中で、欠伸を噛み殺しながら聞いていた火山の話が何となく印象に残っていた。
「炭酸が噴き出るのと、同じ原理なんだってさ」
そう、バブルスプレッドは火山の内圧を高めるためにマグマの中で発動させたのさ!
ゴゴゴゴゴと噴火の予兆が強くなっていく。
このままでは僕もドラゴンも噴火に巻き込まれてしまうね。
何度か後ろで泡沫が弾ける音が響くとドラゴンは大きく翼を広げ、飛び立とうとする。
どうやらドラゴンも噴火は怖いみたいだね。
そうして、見えたのは鱗のない腹部と、そこに埋め込まれたどす黒い宝石のような物。
今まで飛ばなかったのは、あの宝石を隠すためだったんじゃないかな?
だとしたら、あの宝石を隠す理由は一つしかない。
あれが、ドラゴンを操っていた元凶だ!
「最期の意地だよ。喰らってね!」
『メテオストライク、起動』
“Meteor Strike”
放たれた岩石がドラゴンの腹部に直撃し、宝石が砕け散る。
苦悶の声を轟かせるドラゴン。
その瞳に灯っていた赤黒い炎が次第に萎んでいく。
それと同時に気を失ったのか、ドラゴンは宝石の残骸と共に墜落していく。
その途中、ドラゴンの身体は光を放ちながら萎んでいき、少女の身体へと変化していった。
え、女の子⁉
「あの高さから落ちたらやばくない?」
僕は酷い倦怠感に襲われる手足を、もがく様に動かして走り出す。
「あっ」
足がもつれ、僕はこける。
ごつごつとした岩肌に抱かれ、僕は全身を激痛に襲われる。
い、痛すぎる……。
「ぐえっ」
その上に少女が落ちてきてさらにダメージは加速する。
いや、死体に鞭打ちすぎじゃないですか?
「でも、助けられたかな」
首だけ動かして様子を窺うと、なんだか安らかな寝顔に見えた。
『ドラゴニュートだったようですね』
「だね、これも亜人調査の一環だったのかも……」
火口の方で轟音が響く。
あ、とうとう噴火しちゃったんだね。
まずいなー、体が動かないなー、このままだと溶岩に巻き込まれて死んじゃうなー。
誰か足が速くて、この声が聞こえる、頼りになる人いないかなー。
「呼んだかな」
「もう、熱望してたよ」
「それは嬉しいな」
そこに颯爽と現れたのはエル。
もう微塵も動く気配のない僕の身体を抱きかかえてくれた。
うーん、頼りになるね。
「この子がエンシェントドラゴンかな」
「そうだと思う。宝石を埋め込まれて操られてたみたいだよ」
「やはり、そうか」
エルはそう言うとドラゴニュートの女の子を左手で抱える。
「目は閉じていた方が良い」
「なんで?」
「目玉が落ちるかもしれない」
「こわっ!」
言われた通り目を閉じる。
次の瞬間、僕は突風に包まれる。
いや、風が吹いたんじゃない。
エルが風になったんだろう。
薄目を開けてみると後ろの方で火山が溶岩をまき散らしていた。
激闘を繰り広げた舞台から遠ざかっていく。
僕は満たされた気持ちになって、そのまま意識を失っていった。
エディルメモ
『宝石は回収前に溶岩に呑まれました』
読んでくださりありがとうございました!
今日の更新はこれでおしまいです。
第二節も残る所多分二話くらいです。
お付き合いいただけると嬉しいです。




