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2-17:ユニコーンがエンシェントドラゴンと戦えない件について

教授コメント

『規律を守るドラゴンがこの地で暴れている理由が気になりますね』

「っ!」

「なっ!」


 ナディアは短剣で翼を受け止める。

 けれど、1500℃にも及ぶ熱を持つ、翼にその刃が耐えられるはずもなく、数秒後には溶け斬った刃は折れてしまった。


「ナディアっ!」

「う、ううっ」


 弾き飛ばされたナディアを抱き止める。


 き、傷はっ⁉

 翼に打たれたと思われる二の腕を見る。

 そこには水ぶくれのように真っ赤に腫れた肌が見えていた。


 よかった。

 肉まで焼き切られたりはしてないみたいだ。

 多分、僕のアイスレガシーで翼に込められていた熱量の大部分は冷やされていたんだろう。


「エル!」

「任された」


 ドラゴンの追撃が迫る前にエルに抱えられ、僕とナディアは距離を取る。

 そこにアルメルが駆け付ける。


「だ、大丈夫⁉」

「大丈夫じゃないね! アルメル、エル、撤退するよ!」

「わ、分かったわ」


 アルメルは弓を仕舞い、ドラゴンの方を伺う。

 ドラゴンはこちらの出方を窺っているのか、さっきの場所から動こうとはしない。


「け、けど、どうやって?」

「最初、蒸気に視界が遮られてた時は僕らに気づいてなかったわけだから、まずはドラゴンの視界を塞ぐ。その後、エルに乗ってこの場を離れよう」

「分かった。任されよう」


 エルはそう言うと、その姿をユニコーンに変える。

 その背中に乗ると、ドラゴンは僕らが逃げようとしていることを察したのか、大きく口を開き、魔力を溜め込む。


「回避はよろしく、エル」

『了解した』

「いくよ、エディル!」

『了解。音域、中。倍音成分、低。属性付与、水。ミストスプレッド、起動』


 咆哮、そして、閃光が迫る。

 それは、熱線、レーザーと形容するには太すぎる炎の柱だった。


“Mist Spread”


 広範囲に霧を出現させる。

 それを吹き飛ばしながら迫る熱線をエルが飛び上がるように避ければ、次の瞬間、僕らは湿原から森の奥へと移動していたのだった。


◇   ◇   ◇


 森に逃げ込んだ僕らをドラゴンが追ってくることはなかった。

 多分、見失ったのだろう。

 でも、逃げ切れたと楽観視はできない。

 何せ、ドラゴンはダークエルフの集落にまで被害を及ぼしているのだ。

 森の中もアイツの行動範囲であると考えておくべきだよね。


「はあ、はあ……」


 野宿する時のために用意していた寝袋を広げた上に横たわるナディアは苦しそうに息を漏らした。


「こ、これ、エルフの森の軟膏よ。少し染みると思うけど、我慢してね」

「……はあ、はあ、う、ううっ!」

「ナディア……」


 歯を食いしばりナディアは悲鳴を呑み込んでいた。

 うう、胸が締め付けられる。


「セカイ、少しいいかい」

「なに」

「ここでは言いにくいことだ。少し向こうへ行こう」

「……分かったよ」


 僕もエイに聞きたいことがあるからね。


「アルメル、ナディアのことお願いね」

「ええ。任せてよ」


 アルメルが少しぎこちない笑みを浮かべながら胸を張る。

 うん、ありがとう。


 そうして、僕とエルは少し歩き、茂みの向こうへと行く。

 木々が僕らの姿をアルメルたちから隠したところで、エルは口を開いた。


「君の言いたいことは分かる。私がもっと早く動いていれば、ナディアの怪我は防げた」

「……分かってたんだ」

「もちろん」

「でも、できなかったんでしょ?」

「そう。その理由を話したかったんだ」


 僕が聞きたかったのはそこだった。

 どうしてナディアを助けなかったのか。


 その理由がエルにないとは思っていない。

 だから、エルを責める気持ちはないし、それがお門違いだっていうことも分かる。

 だって、原因は僕にあるから。


 でも、それでも後悔がエルに責任を押し付けようとしてしまうから、僕はどうしても聞きたかったのだ。


「先に言ってしまうと、私はエンシェントドラゴンに手を出せないんだ」

「え?」


 手が出せない?

 歯が立たないとかじゃなくて、そもそも戦えないってこと?


「そういうことなんだ。エンシェントドラゴンはこの世界の規律、ダートを守る存在なんだ」

「ダート?」

「そう。それに逆らうという行為はこの地に生まれた生命にしか与えられていない。だから、私は君たちを見守ることしかできないんだ」


 僕は首を傾げる。

 ええと、ダートって言う世界の規律があって、それを守るための存在がエンシェントドラゴンで、それに逆らえるのはこの地に生まれた生命だけで、それでなぜかエルは見守ることしかできないんだね。

 うん……うん?


「よく分からないけど、エルはこの地で生まれたんじゃないの?」

「うん。当然の疑問だ。でも、それに答えるわけにはいかないんだ」

「そうなんだ」

「すまない。だが、君の力になりたいと思っているのは本当だ。それだけは信用してほしいな」


 正直、エルの言葉の何割を理解できてるかは分からない。

 けど、正しく認識しなきゃいけないところは一つだけだ。

 それはエルが僕らの味方であるということ。

 それだけが確認できれば、憂いは何もない。


「うん、分かった」

「分かってくれたのか。それは嬉しいな」

「これまでに助けられてるからね。今更疑ったりしないよ」


 それにもし敵だったら心が読めるんだし、もっとえげつないことできそうだしね。


「ふー、でも、よかった。これで心置きなく、僕は僕を責めることができそうだよ」

「君らしいな」

「そうなのかな?」


 僕らしさって何だろう。

 なんて、そんな自問自答をしてる場合じゃないんだ。


 僕は僕にできる贖罪を考えないといけない。


 それが、守られた者の責務だと思うから。


エディルメモ

『熱傷の際には氷などでは冷やさず、ぬるま湯や常温の水で冷やすことが勧められます』


次回更新は21時です!

よろしくお願いします。

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