2-12:ダークエルフの瞳が空虚を見つめる件について
教授コメント
『君は異性と接触するハプニングを起こし過ぎではないでしょうか。いつか警察のお世話にならないか心配です』
その後、気を良くしたアルヴェルさんは夕飯をごちそうしてくれた上に、僕らに部屋を貸してくれたのだった。
けれど、部屋は二つしか空きがなく、その部屋割りにアルメルは不服そうな顔をする。
「なんで、セカイとナディアが同じ部屋なのよ!」
「いやあ、部屋を貸す側としてはあまり男女が同室と言うのはよろしくないかと思いましてね」
「ナディアも女の子でしょ!」
「いえいえ、彼女は奴隷でしょう。それなら何も問題はないというものですよ」
「なんでよ!」
「なんでと言われても、奴隷は人ではありませんから欲情するということもないでしょう」
いや、そんなこと全くなけどね。
でも、異世界の常識では奴隷は労働力でしかないんだろう。
「むー」
「まあ、仕方ないよ、アルメル」
「そうだけど……セカイは寂しくないの?」
「そりゃ、寂しいけど」
特に最近は一緒に寝てたしね。
一線は超えてないけど。
「別に会えなくなるわけじゃないし、一晩だけだよ?」
「そうだぞ。そんなに嫌がられたら、私と一緒が嫌なのかと思ってしまうじゃないか」
「そ、そういうわけじゃ……ないですけど」
ユニコーンに言われてアルメルは慌てるように否定する。
「ならいいじゃないか。私とガールズトークというものをしよう」
「は、はい」
緊張した様子でアルメルはユニコーンと共に部屋に入っていく。
うーん、ユニコーンのガールズトークってちょっと気になるね。
だって、エルフの誕生から生きてた伝説の幻獣だもん。
神話に残るようなやっばい話とかありそうだよね。
「あ、僕らも入ろうか」
「分かった」
僕とナディアは隣の部屋に入る。
そこは客間なのだろう。
広々とした部屋にソファとテーブル、天蓋付きの大きなベッドが一つあって……一つ?
「またこれか!」
「なに?」
「ああ、いや、何でもないよ」
ナディアが不思議そうに首を傾げる。
これは僕がソファで寝るパターンかな。
「あ、ナディア疲れてるでしょ? 先に寝てていいよ」
「セカイは?」
「僕はちょっと報告書を書かないといけないから」
「報告書……亜人の調査」
「そうそう」
僕はソファに腰掛けてテーブルの上にエディルを置く。
『調査初日お疲れ様でした』
「ありがとう、エディル」
「それは?」
『初めまして、ナディア様。私はエディル。マスターのサポートAIです』
「えーあい」
ナディアはよく分からないと言った顔をしていたが、それ以上聞いてくることはなかった。
「私も手伝う」
「え、手伝ってくれるの?」
「私のことを知りたいんでしょ?」
「うん、そうだよ」
そう言うと、ナディアは僕の隣に座る。
「聞いてくれたら、答える」
「ほんと? それは助かるよ」
あ、飲み物も何もなしじゃ寂しいかな。
何か持ってきてたっけ……。
「あ、ココアがあった」
「ここあ?」
「うん、異世界から持って来た飲み物だよ。これでも飲みながら話そうよ」
「分かった」
ナディアは僕からココアの缶を受け取る。
まじまじと眺め、クルクルとひっくり返したりしながらナディアは首を傾げた。
あ、そっか。
いきなり缶を渡されても空け方分からないよね。
「ごめんごめん、これはここを指で引っ掛けて開けるんだ」
「指で……わぷっ」
勢いよく開けてしまったナディアの顔にココアがかかる。
「あら。大丈夫?」
「……罠?」
「いや、違うよ」
けど、ナディアは一向に顔を拭こうとしない。
え、気にならないのかな?
ああ、そっか、拭くものがないんだね。
ハンカチを取り出して顔を拭いてあげるとナディアは恥ずかしそうに目を逸らす。
「……ありがとう」
「いえいえ」
そうしてナディアはココアに口を付ける。
すると、表情を明るくし目を輝かせた。
「甘い」
「ふふっ」
アルメルと同じ反応に僕は思わず笑う。
「……また笑った」
「え、ああ、違うよ。馬鹿にしたわけじゃなくて微笑ましいなって思っただけだよ」
「微笑ましい?」
「反応が可愛かったって意味だよ」
「……そんなことない」
うーん、頑なだなあ。
可愛いことは間違いないんだけどなあ。
「あ、そう言えば、ナディアって歳はいくつなの?」
「24」
「あれ、僕と二つしか違わないんだ」
「私たちはエルフと違って生命力が劣るから」
「劣るかあ」
僕らと同じ寿命なのかな。
「200年くらいしか生きられない」
「十分長かった!」
あれ?
ということは僕らの歳に合わせると12歳?
「なるほど、ということはまだ発展途上なのか」
「どこを見てる?」
「いやー、別にどこもみてないよ?」
え、いや、別におっぱいを見てはいないですよ?
あと、成長しない方が良いなとも思ってないですよ?
……ほんとだよ?
「気になるなら見ればいい」
「えっ⁉」
そう言うが早いか、ナディアは立ち上がるとワンピースの裾をたくし上げていく。
スラリと伸びた脚の曲線美が次第に明らかになっていけば、部屋の明かりに照らされ艶めかしく光る。
肉の少ないナディアの脚は膝小僧が唯一の突起として主張する。
滑らかな太ももに視線が流れていくと、そのまま肌とは対照的な白い下着へと辿り着……。
「す、ストップ!」
僕はナディアの手を抑えようとする。
「わわっ!」
けれど、それは勢い余ってしまい、体勢を崩した僕はそのままナディアを押し倒す形でソファに倒れ込んでしまう。
「わ、わわっ、ご、ごめっ」
慌てて謝ろうとした僕は、僕を見つめるナディアの瞳を見てその言葉を思わず呑み込む。
「……」
それは、何もかもがどうでも良いと言いたげな、空虚な、焦点の定まらない、熱の籠らない冷たい視線だったのだ。
エディルメモ
『私はwebカメラを通じて画像情報を認識することができます』
次回更新は18時です!
またよろしくおねがいしますね!




