2-9:ユニコーンが痩身の麗人だった件について
教授コメント
『君の周りにはどうして貧乳しか集まらないのでしょうか。それがとても残念です』
「なるほどね」
僕はナディアにとって意味のない存在だと思われてるわけだ。
うーん、それはなんだか寂しいね。
僕がナディアの人生に影響を与えないのは確かかもしれない。
大体、ついさっき会ったばかりの人間に左右されてたら疲れちゃうしね。
でも、だったらせめて一緒にいる間くらいは僕の存在を意識してほしいな。
「そろそろ移動する。フェルランはこっち」
ナディアは家々の残骸から目を逸らしながらさらに奥を指さした。
森を抜けた先にフェルランがあるんだろう。
「ナディア」
「なに」
「手を出して」
「……手?」
「うん」
ナディアは言われるがままに手を前に伸ばす。
僕はその手を取って、しっかりと握りしめた。
「握ってる」
「うん、握ってるね」
「なんで」
「こうすれば、僕のことを意識せざるを得ないでしょ?」
ナディアにとって、僕は道端に転がる石ころ同然なのかもしれない。
でも、だったらせめて一緒にいる間くらいは僕の存在を意識してほしい。
石ころだって躓いたら振り返るでしょ?
そんな思いで僕は彼女の手を掴んだわけです。
決して、可愛い女の子と手を繋ぎたいという欲望に身を任せたわけではないのです。
「意味が分からない」
「それでも繋いではくれるんだね」
振りほどく意味も感じていないのかな。
けれど、ナディアはどこか戸惑うように視線を動かす。
お、意外と意識してはくれてるみたいだ。
肌のせいで分かりにくいけど、頬も心なしか紅潮しているように見えるね。
「さあ、フェルランに行こうか!」
『もう町につくのか』
あ、ユニコーンはそのまま入るわけにはいかないもんね。
宿を取ろうと思うからそこまで隠れて付いて来てくれたらなんとかなるのかな。
『難しいな』
だよね。
じゃあ、どうしようか……。
「うーん」
「何を難しい顔してるのよ、セカイ」
「あ、いや、ユニコーンのことなんだけど」
「そう言えば、このまま入るわけにはいかないわよね」
「だよねー」
大騒ぎになること必至だよ。
『仕方ないな』
「ごめんね、ユニコーン」
外で待っていてもらうしかないかな。
『この姿では不便だ。君と旅路を共にするために少し姿を変えるとしよう』
「へ?」
次の瞬間、ユニコーンの身体が光に包まれる。
うわっ、眩しい!
「え、なに? どうなってるの?」
「僕にもわからないんだけど、なんか姿を変えるって……」
え、姿を変える?
この姿だと不便だから?
ど、どういうことですか、ユニコーンさん⁉
そんな疑問に答える様にして光は収束していく。
「これならどうだろう」
そうして光の中から現れたのは白銀の長髪を棚引かせた痩身の麗人であった。
優し気な眼差しで僕らを見つめる女性。
……女性?
「え、女性だったの⁉」
「そうだが、男だと思われていたのか」
「頭に直接話しかけられてたから声で判断できなかったし……」
話し方も落ち着いてたから何となく、男かと思ってたんだよね。
「これなら、君たちと一緒に町に入れるだろう」
「そうだね」
ん、なんだかアルメルとナディアが静かだけど、どうしたんだろう。
「わ、わわわっ」
「……」
なんだろう。
二人とも驚きのあまり、開いた口が塞がらなくなっているみたいだ。
「こ、これって!」
「伝説にあった、マナの使徒」
「マナの使徒?」
なんだか新しい単語が出てきたんだけど、いったいどういう存在なんだろう。
「マナの使徒っていうのは、エルフの伝説に出てくるマナの大樹に宿る精霊のことなの」
「マナの大樹?」
あ、そう言えば、クイーンがマナの大樹を侵したことを怒ってたような。
あの朝日を見るために昇った樹がそうだったよね。
「マナの大樹から姿を見せた使徒は大地にマナを授けた。その時、森の生命力から生まれたのがエルフ。森の穢れから生まれたのがダークエルフ」
「それが伝説?」
「そう」
「ユニコーンがエルフとダークエルフを生み出したの?」
「生み出したわけではないが、マナを森に与えたのは事実だ」
あ、本当にユニコーンがマナの使徒なんだね。
でも、どうして二人はそれに気づいたんだろう?
「目を見てくれ」
「目?」
ユニコーンに言われるがままに覗き込む。
宝石みたいな目だね。
いや、というよりは宝石その物じゃない?
青色の宝石、これは……サファイアかな?
「そうなんだ。私の目はサファイアになっているんだ」
「綺麗な目だね」
「ありがとう」
目を細めながら微笑むユニコーン。
「これが、私を言い伝えるキーワードになっていたらしい」
「そっかー」
だから二人は見た瞬間に驚いていたんだね。
うーん、まさかこんな美人さんに姿を変えるなんて、ファンタジーって何でもありだね。
「ところで、どっちが本当の姿なの?」
「どちらがという優劣は付けられないな。どちらも私だから。君は自分が自分であることに疑問を抱かないだろう?」
「まあ、そうだね」
「それと同じさ」
はぐらかされてる気もするけど、確かに重要なことじゃないのかもね。
「じゃあ、行こうか」
いつまでもここに留まってたら陽が暮れちゃうからね。
そう思って歩き出す。
「ひうっ」
すると、どこからかそんな驚いたような声が聞こえてきた。
なんだか可愛らしい声だったけど、一体?
「アルメル?」
「私じゃないわよ」
「じゃあ……」
残る候補である二人の方を見る。
すると、そこにはユニコーンに手を握られたナディアがいた。
「今のナディアの声?」
「……驚いただけ」
恥ずかしそうにナディアは頬を赤らめる。
なんだかナディアは触れ合うことには慣れてないみたいだよね。
「私も、君たちみたいに手を繋いでみたかったんだ」
そんなナディアを余所に、ユニコーンは楽しそうに歩き出すのだった。
エディルメモ
『ユニコーン(人型)の背丈は175cmで瀬海より3cm低いです』
今日も二回更新です!
9時に人物紹介ページを作りたいと思っています。




