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2-5:ダークエルフの奴隷少女を購入した件について

教授コメント

『ついにやったかと誤認してしまいました。改題の余地ありです』



 少し薄暗い荷台の中で行商人の男はランタンを灯し、中を照らした。

 そこには剣や鎧といった武具の類から、干し肉や木の実といった食料まで本当に多種多彩に取り揃えられていた。


「うわあ、これはすごいですね」

「でしょうでしょう。どうぞご覧になっていってください」


 あ、本とかもあるんだ。

 何々……あ、文字は読めないのか。

 それは不便だね。


「アルメルは文字って読めるんだっけ?」

「読めるわよ。エルフの書庫で色々読んでたって言わなかったかしら?」


 言ってたような気もするけど、あんまり覚えてないね。


「じゃあ、伝承をまとめた本とかありますか?」

「ええ。もちろんですとも。どこの伝承がご所望ですか?」

「あー、広く分布するやつでいいです」

「でしたら、この本ですね。こちらは教会が支持する創世期の神話がまとめられた一冊になってますよ。この国を巡るのでしたら一読しておく価値はありますよ」


 確かに宗教についても調べておくべきだよね。

 ファンタジーの教会って、異端者には厳しいイメージあるし。


 神話を知らない? ならば死ね!


 なんて感じにならないとも限らないからね。


「じゃあ、それと、あ、あと地図とかありますか?」

「全国版が良いですか? それとも地域ごとで?」

「全国がいいかな」

「え?」


 アルメルが何故か驚いた顔をする。

 何かおかしかったかな?


「こっちに召喚された地域だけでいいんじゃないの?」

「ああ、それもそうなんだけど、やっぱり土地の繋がりが文化には重要だからね。ここになくても、前は交流があったとか、そう言うのが知りたいなって」

「お兄さん、もしかして学者さんですかい?」

「いや、そこまでじゃないですよ」


 ただの学生だしね。

 これから学者になる気はないけど、どうせなら異世界レポートちゃんとまとめたいなって。

 そんな風に見て回っていると、なにやら奥の方でガシャンと音が聞こえた。


「奥に何かいるんですか?」

「ええ。いやあ、気づいてしまうとはさすが学者さんだ」


 学者じゃないって。

 持ち上げられても必要以上は買わないからね?


「そこに居るのは昨日、ようやく捕まえる事ができた珍しい商品です。滅多に出回らないものですし、お買い得ですよ?」

「へえ、それは興味があるね」


 なんだろう。

 生き物なんだろうけど、珍しいということはユニコーンみたいな幻獣かな?


 いや、まさかね。

 そんな簡単に捕まるようなものじゃないと思うし。


「どうぞ、ご覧ください」


 男がランタンで照らしだした檻の中には、服も着せられていない人が横たわっていた。

 え、人っ⁉


「ちょ、ちょっと、これは一体どういうこと⁉」

「ああ、暗くて分かりにくいですかね。こいつはダークエルフの奴隷なんですよ」

「ダークエルフ?」


 目を凝らすと確かに耳が長いように見える。

 でも、アルメルと違ってあまり顕著ではなく、人間よりもちょっと先が尖ってる程度であった。


 ああ、なるほどね、ダークエルフの奴隷ね。


「いや、種族とかじゃなくて!」

「はい?」


 あ、もしかしなくても、この世界の人間って奴隷制に疑問を抱いていないの?

 倫理観が僕らとは異なってるのかな?

 アルメルが僕らと近い感性だから安心してたけど、そう言えばアルメルも異端だったね。


「この子、いくらですか?」

「セカイ⁉」

「ええ。このくらい若いダークエルフですと、その希少価値も考慮して……」


 男は勿体ぶるような顔をしながら僕の顔を見つめる。

 あ、これどこまで吹っ掛けるか考えてる顔だ。

 これは凄い額が提示されそうだね。


「金貨、100枚と言ったところでしょうか」

「吹っ掛けすぎじゃない⁉」


 2000万ってどういうことさ!

 こう言うのは出せるギリギリを交渉していくものじゃないの⁉


「も、もうちょっとどうにかならない?」

「難しいですね。やはり奴隷の中でもエルフ、ダークエルフは人気ですから」

「半額で、半額ならなんとか致命傷で行ける!」

「無理ですよ、半額なんて」


 むー、でも、これを見過ごすのはちょっと、人としてねえ。


 いや、分かってるよ?

 じゃあ、奴隷を全員助けるのかって、それは無理だってことくらい。

 でも、目の前でこんな姿の女の子を見せられて、奴隷なら仕方ないねって引き下がるわけにもいかないよね?


「むー」


 左手を顎に当てて考える。

 すると、捲れた袖から出てきた腕時計がランタンの光を反射してきらりと光った。


「ムムムっ⁉」

「うわっ! い、いきなりどうしたんですか!」

「こ、これはなんですか、お兄さん!」


 いきなり腕を掴まれたかと思うとまじまじと腕時計を見つめながら尋ねてくる。


「ええと、腕時計ですけど」


 それもそんなに高くない、諭吉でおつりがくる程度の安物だよ。


「こ、こんな小さく軽いものが時計なんですか⁉」


 そう言って商人は懐から懐中時計を取り出す。


「す、少し見せてもらってもいいですかい?」

「あ、うん。どうぞ」


 僕は腕時計を外して男に渡す。

 重さを確認したり、耳に当ててみたりして、注意深く観察する。

 その目は真剣そのものでやり手なんだろうなと思った。


「こ、これを譲っていただけませんか?」

「それを?」

「ええ。もちろんお代は払います。き、金貨200枚でどうでしょう!」

「ええ⁉」


 4000人の諭吉がキャッシュバック⁉

 いやいや、それはいくら何でも貰いすぎでしょ!


「で、でも、安物だよ?」

「そんなことは構いませんよ。これを分解し機構を調べ、技術を独占できれば金貨200枚なんてすぐにでも取り返せます! どうでしょう?」

「い、いや、そんなに貰うのは悪いし……あっ」


 僕はちらりと檻の方を見る。

 お金を貰うのは申し訳ないけど、彼女を開放してくれるのなら罪悪感はないかも。


「それなら、さっき言ってた本と地図と、そこに居るダークエルフとなら交換してもいいよ」

「おおっ!」


 男は心底嬉しそうな笑顔を浮かべる。


「ありがとうございます、ではすぐにでも商品をまとめますね」

「うん。あっ、それともう一ついいかな?」

「はい、何でしょう!」


 僕は極力見ないようにしながら檻の中のダークエルフの少女を指さす。


「その子に似合う、服があったら、それもお願い」


 そうして、僕は買い物を終えるのだった。


エディルメモ

『マスターの検索履歴『奴隷 優しく』 同人ゲームがヒットしました』


ダークエルフの少女の登場です!

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