表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/69

2-3:二人と一頭と一機の旅がここから始まる件について

教授コメント

『ぜひともサボテンを研究所に回してください。魔素を含んだ植物の変成は興味深い研究対象になりそうですね』


「で、見つかったと」

「そういうことね」


 森の向こうから矢が飛んできて足元に突き刺さる。

 うん、やっぱり熟練の斥候を出し抜くのは僕らには無理だったね。


「警告だ、ここは神聖なエルフの森。これ以上踏み荒らし、汚すというのなら命はな……お前ら、異世界人とアルメルか?」

「ん、この声は」


 向こうから歩いてくるエルフの斥候。

 その端正な顔立ちはまさにイケメン。


「あ、僕に任されたファビオじゃないか」

「ここで殺すか」

「あ、待って待って。ごめんごめん」


 僕は手を挙げて降参のポーズをとる。

 ファビオは呆れた顔をしながらも構えを解いてくれた。


「なんで戻ってきた」

「ええと、それは……」

「忘れ物をしたのよ」

「なに?」


 アルメルの言葉にファビオは眉をひそめた。

 まあ、何言ってんだって思うよね。


「大事な物、取りに来たの」

「そんなことのために戻ってきたのか」

「いやあ、そんなことが僕には大切に聞こえたからさ」


 そう言うとファビオは心底呆れたようにため息をつく。


「たく、お前らはつくづく無茶をするな。分かった、付いてこい」

「え?」

「お前、巡回ルート知らないだろ? 俺以外に見つかったら、それこそ命はないぞ」

「で、でも、そうしたらファビオが……」

「気遣いは要らねえよ」


 そうして踵を返し、彼は歩き出す。


「選べなかった男の格好付けだ。何も言わずに、笑ってくれよ」

「え、なにイケメンムーブしようとしてるのさ。それはずるいよ」

「はっ、うるせえよ」


 性悪イケメンの性格が悪くなくなったらただのイケメンになっちゃうじゃないか!

 ファビオに連れられて森を歩く。


 そうして無事にアルメルの家までたどり着く。


「ちょっと待ってて」

「僕も行こうか?」

「いいわよ。一人で平気よ」

 

 アルメルはそう断って一人で家の中に入っていく。

 あらら、断られちゃったよ。


 それにしても……。


「残ってるんだね」

「何がだ?」

「家だよ。荒らされてるものだとばかり思ってたよ」

「まあ、クイーンがどう思ってるかは知らないが、この木もエルフの森の一部には変わりない。流石に、切り倒したりはできないさ」


 なるほどね。

 その辺りは、やっぱり森を大事にするエルフの総意が優先されるのか。


 しばらくするとアルメルが嬉しそうな笑顔を浮かべながら家から出てくる。

 よかった、ちゃんと見つかったみたいだね。


「見て見て、セカイ」

「どうしたの?」

「ほら、これ!」


 そうしてアルメルが見せてくれたのは僕のあげた小さな鉢植えのサボテンだった。


「花が咲いてたの!」

「わあ、ほんとだ」


 2日しか経ってないのに花が咲くなんて、エルフの森の影響かな?


「それで、大事な物は取ってこれた?」

「? ええ。ここにあるじゃない」

「え? ここにって……」


 あ、このサボテン?


「これが大事な物だったの?」

「これがって、セカイがくれたものじゃない!」

「そ、そうだけど、でも、これならまた……」


 ……いや、その言葉は酷いな。

 うん、止めておこう。


「あ、さっきのなし。前言撤回で」

「僕が上げたものを大事に思ってくれてありがとう、アルメル」

「っ! さ、最初からそう言えば、いいのに」

「ごめんごめん。僕、そんなに気の利く男じゃないからさ」


 隣からため息が聞こえて振り向くと、ファビオが呆れ顔で僕らを見ていた。


「どうしたのさ」

「いや、なに。こんな惚気のために格好付けたのかと思うとむなしくてな」

「なっ、の、惚気じゃないわよ!」


 アルメルが食ってかかるけど、ファビオは慣れたようにあしらう。


「惚気じゃなかったらなんだっていうんだ、アルメル」

「くっ、ううう。昔からあんたはそうやって私をからかう!」


 そう言えば同期だもんね。

 付き合いは長かったんだろう。


「はっ。からかわれる方に問題があるんだよ」

「それは一理ある」

「セカイ⁉」


 アルメルが可愛すぎるのが悪い。

 いや、悪くないけどね。

 むしろ、良いんだけどね。


「おっと、お迎えが来たぞ」

「え、お迎え?」


 この森でお迎えって、弓矢を構えた人たちしか思いつかないんだけど……。

 そう思って振り返ると、そこにはユニコーンが立っていた。


「あ、そういえばいたね」

『忘れてたのか。少しかなしいな』

「あ、嘘々。頼りにしてたよ、移動手段として」

『そうか。なら、期待に応えよう』


 そう言ってユニコーンは僕らの前でしゃがんでくれる。

 ええ、ユニコーンさん優しすぎない?


『伊達に長く生きていない』


 器が大きいんですね、分かります。


「ふっ、幻獣を移動手段扱いとは、呆れを通り越して称賛に値するな」

「いやあ、それほどでもないよ」

「ふん、セカイは凄いのよ」


 アルメルは何故か誇らしげだ。

 僕らが背中に乗ると、ユニコーンはスッと立ち上がる。


「達者でやれよ、アルメル」

「あんたもね」


 交わされた言葉はそれだけ。

 けれど、そこには100年という歳月の重みがある。

 なんだかちょっと嫉妬しちゃうね。


「行くよ」


 そう呟くと、ユニコーンは走り始める。

 ふと気になって後ろを振り向くと、アルメルと目が合った。


「あれ?」

「? 何よ」


 てっきりアルメルも後ろを見てると思ってたから目が合うとは思わなかったよ。


「ファビオの方、気にならないの?」

「全く」

「全く?」


 案外あっさりしてるんだね。


『女の子は薄情なものだと検索結果が出ています』

「そっかー」

「ち、違うわよ!」


 エディルの言葉にアルメルが反論する。


「もう前に決別は済ませてるもの。ここで引きずる方が女々しいじゃない」

「確かに」


 ん、というか今アルメル、エディルの言葉に反応してたよね?


「え、もしかしてエディル、オプティマイズ内蔵されてるの?」

『肯定。全世界、全異世界の言語に対応しています』


 オーバーテクノロジーじゃない?

 森を抜け、ユニコーンは街道の土を踏みしめる。


『どちらに向かうんだい?』

「フェルランは向こうだね」

『分かった』


 ゆったりとした足取り。


 頼もしい仲間も増えて、僕の旅はようやく始まったのだった。


エディルメモ

『アルメルはエルフの弓と矢を回収。威力は物理攻撃力に0.8倍の補正が掛かった値です。また、Forest Admission Lvに応じて補正に0.1×Lvの値が加算されます』


今日の更新はここまでです。

明日の更新でダークエルフの少女が登場します!

また、よろしくお願いしますね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ