2-2:エルフの森に忘れ物を取りに行く件について
教授コメント
『火山が活火山であるかは異世界の地形への干渉に重要な情報を与えます。活火山であれば、地下構造まで干渉していることになるので新たな調査が必要になりそうです』
トンネルを抜け、異世界特区に足を踏み入れる。
うん、やっぱりこの世界の空は広いね。
今日は雲が二つ、三つくらいしかいない晴天だ。
「昨日話した通り、とりあえずは大きい町に行って亜人の情報を集めたいんだけど」
「私は森から出たことないし、役に立たないものね」
「まあ、その点は仕方ないよ。僕も知らないし、おあいこおあいこ」
「ふふっ、そうね」
レポートを書こうにも亜人に出会わないんじゃ意味ないからね。
そういうわけで、目的地はこの街道をまっすぐ行った先にあるらしいフェルランという地方都市だ。
「フェルランってどんな町?」
「ええと、噂では農業が盛んな町だって聞いたわ」
「へえ。じゃあ、食べ物がおいしそうだね」
「あ、あと、近くに火山があることでも有名ね」
「火山かあ。噴火とかしないかな」
「ここ数十年はしてないわね」
あ、実体験として知ってるんだね。
忘れがちだけど、アルメルは112歳なんだよね。
接してて全くそんな気はしないけど。
「その前に、少し家によっていいかしら」
「えっ! エルフの森に戻るの?」
いくらなんでもそれはまずいような気がするんだけど。
だって、僕ら一度殺されそうになってるんだよ?
次捕まったらさすがに逃げる機会はないだろうし。
「ほ、ほら、私の装備とか家に置きっぱなしじゃない? だから、一度寄って、旅の支度をしてた方が良いと思うのよ」
「いやー、それをするくらいなら新しく買い直した方が無難だと思うんだけど」
「うっ」
お金は未来さんに貰った分が結構あるしね。
アルメルもそれが最善だと分かっているのか、言葉を探すように視線を泳がせる。
「えーと、ほ、ほら、無駄使いはダメじゃない? これからどれだけ必要かも分からないし、節約できるところは節約しないと」
「この袋に入ってるのは金貨50枚なんだけど……」
「あー」
金貨1枚で銀貨10枚、銀貨1枚で銅貨10枚になるらしい。
銅貨1枚の価値は日本円だと200円くらいらしいから、金貨50枚は約100万だね。
え、そう考えたら凄い大金だね。
豪遊できそうだ。
「……うー」
悩まし気な声だね。
どうしてそんなに家に寄りたいんだろう?
何かどうしても持っていきたいものがあるんだろうか……。
「正直に言ってよ、アルメル。何か大事なものがあるんでしょ?」
「……そうよ」
アルメルは申し訳なさそうに言った。
「別に旅に必要な物じゃないの。でも、私にとってはすごく大事な物だし、もう帰らない場所に置いていくなんて、それって捨てたのと変わらないじゃない? それは、相手にも失礼だから」
そう言ってチラチラと僕の方を上目遣いで窺ってくる。
うん、その目で見られると僕に拒否権はないんだよね。
「うん、分かった。それなら行こうよ」
アルメルは驚いた様子で僕を見つめてくる。
そんなに驚くことかな?
基本的にアルメルの頼みを断ったことないと思うんだけど。
あ、お風呂場とかであったね。
あれは自衛も兼ねてるから仕方ないね。
「いいの?」
「もちろん。だって、アルメルを連れ出したのは僕だもん。アルメルの心残りがそこにあるなら、それも連れ出さなきゃ無責任じゃない?」
あ、今僕カッコいいこと言った。
絶対言ったよね?
「セカイ……」
ほら、アルメルも嬉しそうな顔をしてるし。
「ありがとう」
「いえいえ」
ステータスにイケメンポイントがあったら絶対上がってるよ。
あ、そう言えばイケメンはレベルアップ制じゃなかった。
装備品とかアイテムじゃないと上がらないんだった……。
「じゃあ、行こうか」
「ええ。見つからないように、気を付けていくわよ」
そうしてアルメルは森に足を踏み入れようとする。
「あ、そうだ、アルメル待って」
「え?」
振り返ったアルメルの手を取って握る。
「せ、セカイ?」
「こうしないと射殺されちゃうからね」
その冷たさに安心する。
この繋がりのために命がけでエルフに喧嘩を売ったんだよね。
我ながら無茶なことをしたもんだね。
二人並んで歩き始める。
ゆっくり足元を確かめながら歩幅を合わせると出会った時のことを思い出しちゃうね。
「でも見つかったら関係なく射殺されちゃうわよ?」
「あ、確かに」
それでも手を離さず、僕らは森を進んでいくのだった。
エディルメモ
『顔面値の修正には、化粧品の消費、および装飾品の装備が必要です』




