1.5-2:垂れ下がった髪で胸を隠すのは反則だと思う件について
教授コメント
『確かに』
アルメルは僕の本棚にあった漫画に夢中になっていた。
「文字は読めないわよ。でも、絵を追っていけば何となく分かるじゃない?」
さすが摩訶不思議なアドベンチャーだ。
世界どころか異世界までその面白さが通用するなんてね。
晩御飯はパスタだったんだけど、アルメルはそれを急ぐように食べて再び漫画を読み始めるもんだから、なんだか子供みたいで微笑ましいと思ったよ。
そんなアルメルの横で僕はエディルを開く。
あ、エディルっていうのは僕のノートパソコンね。
大学に入ってからの僕の相棒である。
たまにIキーが効かなくなるのは僕の愛を受け取らないっていうツンデレちゃんなのだ。
「あ、もうこんな時間だ」
画面と睨めっこしていたら時計の針が10時を回っていた。
そろそろ寝る支度をしなくちゃね。
「どこいくの?」
「お風呂沸かしてくるよ」
「あ、もうそんな時間なのね」
「アルメル、夢中だったもんね」
「だって、こんなに面白いものエルフの町の書庫にはなかったもの」
アルメルは興奮気味に言う。
漫画は世界に誇る日本の文化だからね。
アルメルがそうなるのも当然だよね。
「沸いたら教えるから、アルメルはまだ読んでていいよ」
「ありがとう、セカイ」
そうして再びアルメルは手元の漫画に視線を戻す。
さて、お風呂を沸かすか。
ここでもスキルが必要になる。
ただ風呂を沸かすだけと侮っていると痛い目を見る。
なぜならこのアパート、お湯の温度調節ができないのだ!
出てくるのは2択だ。
水かお湯か。
しかも、お湯は60℃固定なのだから、この二つを絶妙な加減で捻らないとちょうどいい湯加減にはならないのだ!
「はぁっ!」
気合を入れて微調整を行う。
むむむ、ここだっ!
「うん、いい湯加減だね」
完璧な風呂沸かしだった。
さて、アルメルを呼ぼうかな。
「アルメル、お風呂沸いたよー」
「はーい」
ええと、アルメルようにバスタオル出さないとね。
あ、身体を洗うタオルとかも必要だし、着替えは……下着だけはそのまま使ってもらうしかないね。
さすがの僕も女性モノの下着を常備しているような変態じゃないからね。
そんな風にしていると足音が近づいてくる。
どうやらアルメルが来たみたいだ。
ああ、そうだ。石鹸とかシャンプーとかの説明をしないとね。
「アルメル、ここに身体を洗うせっ……!」
「? どうしたのよ」
僕は反射的に手で視界を覆い隠す。
「なんで、服を脱いでるんですかっ!」
「え、だって、お風呂じゃないの?」
「お風呂だけど、脱衣所で脱ぐでしょ!」
ていうか、昨日はちゃんと脱衣所で脱いでたじゃん!
「……そっか」
「そっか、じゃないよ!」
「漫画に夢中で失念してたわ」
「だろうね。だって、まだ右手に持ってるし」
さすがのドラゴンも耐水性じゃないからお風呂には持ち込めないよ。
「と、とりあえず、このタオルで隠して!」
「……そんなに見たくないの?」
……はい?
「私の身体ってそんなに魅力がないの?」
いや、なぜそこでそんな残念そうな声を出すんですかアルメルさん?
手で目を覆っているからアルメルの表情は読み取れない。
けど、なんだか寂しそうな雰囲気がする。
「ち、違うよ。別に魅力がないとかじゃなくて、アルメルだって裸を見られたら恥ずかしいでしょ⁉」
「そんなことないわ」
「ないの⁉」
「セカイになら、見られてもいい」
「良いの⁉」
いや、『良いの⁉』じゃないよ。
僕ってやつはなんて正直なんだろう。
「ふふっ。なんてね、冗談よ」
「な、なんだ冗談か」
ほっとしたような、残念なような?
「ほら、隠したわよ。だから、目を開けても大丈夫よ」
「はあ。もう、からかわないでよね、アルメル」
「なんてね」
「え?」
けれど、手をどけるとやっぱりそこには一糸纏わぬ姿のアルメルが立っていた。
透き通るような玉肌はシミ一つない雪のような白さで、照明を受けて艶やかに光る。
均整の取れた体つきからスラリと伸びる細い手足。
まるで絵画に描かれた少女のような美しさに僕は思わず見惚れてしまう。
……あ、下着は付けてるのね。
「ど、どうかしら」
「うん、綺麗だよ」
「ほ、ほんと?」
「本当だよ」
アルメルは嬉しそうな表情を浮かべている。
はっ!
動揺すら忘れて見とれてしまった!
「と、とりあえず、早く隠して!」
「分かったわ」
アルメルは言われた通りにタオルで身体を隠す。
ええ、なんで今度はそんなに素直なの?
「ええと、身体を洗うのはこのタオルを使ってね」
「ありがとう」
「あと、そこの石鹸ってやつを擦ったら泡が出るからそれをタオルに付けて使うといいよ」
「へえ、これが石鹸なのね」
「あ、やっぱりそっちにもあるんだ」
「ええ。でも、あれ高いのよね」
なるほど。
向こうでは石鹸はこうかなものなんだね。
「あと、髪を洗うのはあそこのボトルに入ってるやつね。上の部分を押すと出てくるから泡立てて使ってね。それじゃ!」
「ちょっと待って、セカイ」
「ん?」
呼び止められてアルメルの方を向くと、何やら企んでいそうな笑みを浮かべていた。
んんん?
何か嫌な予感がするぞ?
「私、お客様よね?」
「まあ、そうだね」
「なら、やらなきゃいけないことがあるんじゃない?」
「……ないよ」
「あるわよ」
ええと、つまり僕がお客様だった時にアルメルにしてもらったことを僕にもやって欲しいってことだよね。
「ま、また今度ね!」
「あ、セカイ!」
僕はそうして脱衣所から逃げ出した。
裸の女の子の背中を流すなんて、僕には強すぎる刺激だからね!
しょうがないよね!
この作品は全年齢(以下略




