1-19:窮地を脱するためにユニコーンと叫んだ件について
教授コメント
『ユニコーンは気を許した相手以外にはとても狂暴に振る舞うと記されています。その伝説は異世界でも同じなのでしょう。ちなみに私は1st世代です』
いやー、いい感じで決意を固めたというのに、現実は非情である。
「取り囲まれてるね」
「そうね」
一旦アルメルの家に逃げ込んだはいいけど、もちろんあっちもそれを見ているわけで、そうなると逃げ道を塞ぐために包囲するのは当たり前の話だよね。
「実は地下通路に繋がる隠し扉があったりは?」
「しないわよ」
「ですよねー」
さてどうしよう。
迂闊に出ればハリネズミにされちゃうだろうし、慎重に出てもハリネズミにされちゃうだろうし、籠城してても事態は好転しないだろうし……。
「誰かに助けを呼べればいいんだけど……」
「味方なんて、エルフの森にはいないわよ?」
「僕もスマホが使えれば調査団の人に助けてーって伝えれるんだけど」
こんな時、都合よくエルフの森に居て、電波とかなくても僕の心を読んで助けを聞いてくれるような心優しい存在がいればなあ。
……あ。
「いたわ」
「いるの?」
多分、心を読んでたよね。
うん、読んでたはず。
じゃないと、あんなタイミングよくどこか行ったりしないもん。
よし、強く念じるか。
CQ! CQ! ヘルプミー!
「あっつい!」
「ど、どうしたの、セカイ?」
な、なんか急に喉が熱くなったんだけど、どうゆうこと?
エルフ茶は呑んでないのに……。
「だ、大丈夫だよ、アルメル。それより、もしかしたら助けが来てくれるかも」
「え、そうなので? で、でも、誰が……」
「それは心が綺麗な者にしか気を許さない心優しい幻獣」
「うわあっ!」
家の外で慌てたエルフたちの声が聞こえてくる。
そっと扉を開けて外を見ると、そこには僕の予想通りの結果が広がっていた。
「来てくれたんだね、ユニコーン!」
純白の毛並みを棚引かせて、ユニコーンは僕らの前に悠然と現れる。
他のエルフは、ユニコーンの登場に驚いてどこかに逃げてしまったようだ。
「嘘……こんなことって……」
「いやあ、ユニコーンは僕の心が読めてたみたいだからさ、心の中で強く助けを求めたら来てくれるかなって思ったんだけど、大成功だね」
「すごいわ、セカイ!」
「うわっと」
アルメルが勢いあまって僕に抱きついてくる。
ア、アルメルさん⁉
少し大胆すぎるのではないでしょうか⁉
「すごい、すごい!」
「そ、そんなに凄いのかな?」
興奮気味なアルメルに僕はタジタジだよ。
「ユニコーンを使役できるなんて、もう伝説でしか語られないくらいに凄いことなのよ⁉」
「そんなに?」
いや、でも、読んだら来てくれただけだしなあ。
「僕が凄いというよりユニコーンが優しいだけじゃないかな?」
「ユニコーンが力を貸すほど認められているのが凄いのよ!」
そうしてアルメルは僕に抱きついたままピョンピョン跳ねる。
そんな風にするもんだから、なんというか慎ましいながらも確かに主張する膨らみがね、僕に押し付けられてね……。
「アルメルさん、そろそろ……」
「? どうしたのよ、いきなり『さん』付けなんて」
「いや、あの、胸が当たってまして……」
「へ?」
そうしてアルメルは我に返ったように自分の状況を整理する。
そして、僕の赤面の意味を理解してくれたようで、アルメルもまた顔を赤くした。
「ご、ごめんね!」
「い、いや、謝るようなことではないと思うんだけどね」
寧ろ僕がありがとうって言うべきなんだよね。
「で、でも……セカイは、ち、小さい方が好きなのよね?」
「……」
え、え?
女の子に性癖を尋ねられただって?
それはなんていう羞恥プレイですか?
ああ、僕が撒いた種か。僕があんな公衆の面前で性癖を暴露しちゃったのが悪かったのか。
はいはい、分かりました。
これはセルフプレイですね。
よし、誰か僕を殺してくれ。
「ぐほっ!」
「セ、セカイ⁉」
そんな僕の心の声を聞き届けたんだろうね。
ユニコーンが僕の背中を角で突いて来た。
「ユ、ユニコーンさん……」
え、なに?
早く乗れって?
なんだか馬特有のブルブルって感じの鳴き声で僕らを急かしているみたい。
「分かったよ。よいしょっと」
「え、セ、セカイ⁉」
「乗せてくれるみたいだよ。アルメル、手を貸そうか?」
「え、ええ」
僕の手を握り、アルメルは後ろに座った。
なんだか驚いてたみたいだけど、多分ユニコーンが乗せてくれるのがまた伝説級に凄いってことなんだろうね。
「よし、行こう、ユニコーン! 目指すは森の外だ!」
僕の声に応じる様にユニコーンは鳴き声をエルフの森に響かせ、駆け出す。
「うわっ!」
「きゃっ!」
めっちゃ早い!
「アルメル、振り落とされないように、しっかり掴まっててね!」
「わ、分かったわ!」
そうしてアルメルは僕の背中にぴったりと抱きつく。
う、自分で言った手前なんだけど、僕、背中が性感帯なんだよね。
だから、こう、柔らかい感触が当たり続けていると、なんと言いますか、下品な話ですが、少し……抜刀して――。
「うわわっ!」
ユニコーンが突然止まるので、伝家の宝刀はびっくりして鞘に収まってしまう。
「どうしたのかしら?」
アルメルは立ち止まったユニコーンを不思議がって背中から前を覗き込んだ。
僕も前を見る。
するとそこには……。
「降りて来い、異世界人!」
「お前は……」
町の前で僕らに絡んできた、イケメンエルフが立っていたのだった。
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私は00のファーストシーズンが大好きです。




