1-18:決意に満ちたエルフの少女の笑顔が眩しい件について
教授コメント
『人が変わりましたか? 君が少しかっこよく誇張されて書かれているように思えます。レポートに嘘は書かないようにしましょう。エビデンスを提出するように』
※後日、アルメルの証言によって解決。
アルメルは足元に転がる短剣を見つめ、固まる。
そりゃそうだよ。
優しいアルメルが、いきなり庇った相手を殺せと言われて『よっしゃ、やったるか』って、成るわけないからね。
そんなアルメルの戸惑いを見て、クイーンは笑みを浮かべていた。
「何をしているのですか、アルメル」
「い、今なんと……」
「貴女が殺しなさい、と言ったのですよ、アルメル」
「そ、そんな……」
趣味が悪いにも程があるね。
「これは命令です、アルメル。そのよそ者を殺しなさい。そうすれば、森も認めてくれるかもしれませんよ」
そう言うと周囲から笑い声が聞こえてくる。
どう考えたってこいつらの方が醜いと思うんだけど。
胸が大きかったり、顔が良かったり、それだけで優れてると思うなよ!
……うん、持たざる者の僻みに聞こえそうだから胸に留めておこう。
「わ、私は……」
アルメルはおそるおそる足元の短剣を拾い上げた。
森に認められる。
それは、アルメルが100年以上を費やして叶わなかった承認。
それが目の前に転がっているのだ。
拾うのは当然のことだよね。
「ふっ、無様だな」
そう言って僕を抑えてた近衛兵は離れていく。
あ、もう自由にしちゃっていいの?
あとは全部アルメルに任せるってことなのかな。
「ごめんね……」
アルメルは謝りながら僕に向き直る。
いやいや、僕は全く非難する気はないよ。
「セカイ……」
潤んだ瞳でこちらを見つめる。
ああ、可愛そうに。
震えてるじゃないか。
「アルメル、君が苦しむ必要はないよ」
「でもっ!」
「大丈夫。アルメルはもうすでに森に認められてるよ」
「えっ」
「だって、こんなに森の良いところ知ってるんだもん。それを見つけられたのは、間違いなくアルメルが森に認められてるからだよ」
精霊が宿る木々は侵入者を迷わせる。
もし、アルメルが認められていないなら、あんなにきれいな場所にアルメルが辿り着けるわけがないんだ。
「生命力? 力が強いだけでしょ? そんな粗暴な認められ方、アルメルには必要ないんだよ。だって、アルメルは心が綺麗なんだから」
まあ、僕には心を見ることなんてできないけどね。
よく考えたらユニコーンが現れた時、アルメルもいたんだからアルメルの心も綺麗だって言う証拠だよね。
「わ、私……私……」
アルメルは短剣を手放す。
床に転がった承認という名の短剣はもうアルメルには必要ないだろうね。
「私には……できません」
「そうでしょうね」
クイーンは面白くなさそうに鼻を鳴らす。
「では、そこの異世界人に問いましょう。なぜ、ここに二人の処刑人がいるのか。その理由が分かりますか?」
「二人の処刑人?」
あ、確かに僕を処刑しようとした時に弓を構えたのは二人いたね。
え、確実に仕留めるためじゃないの?
ダブルタップって言うんだよね?
一撃で仕留めきれないから二回頭部に打ち込むって言う。
「……ああ、そういうことか」
「セカイ?」
僕はアルメルの手を握る。
「逃げるよ、アルメル!」
「えっ? えっ?」
僕はアルメルの手を引いて走り出す。
あいつ、端からアルメルのことを殺す気でいたってことか!
「ふふ、精々逃げなさい。ここはエルフの森。侵入者も、脱走者も、二度とは抜けられないのですから」
不敵な笑みと共にクイーンは僕らを見送る。
まあ、動かないのはクイーンだけで、周りのエルフは追ってきてるんだけどね。
「逃がすかっ!」
後方から空を切る音が聞こえる。
「うわっ!」
姿勢を低くすると、ちょうど頭があった場所を矢が通りすぎる。
ちょっと、ヘッドショットの精度おかしくないですか?
チートか?
チーターなのか⁉
「ど、どうするのよ、セカイ」
「とりあえず、アルメルの家に逃げ込むよ!」
「そ、そうじゃなくて!」
え、違うの?
「に、逃げちゃったらもうセカイを許してもらえないじゃない!」
「僕が?」
「そうよ!」
走りながらアルメルはどこか怒ったような表情をしていた。
「これじゃあ、セカイが悪く思われたままじゃない……」
「うん、どうでもいいね!」
「ど、どうでも⁉」
走りながらでは照準が定まらないのか、追ってはくるものの矢が飛んでくることはなくなったみたいだ。
「もうエルフのことは十分理解したよ。だから、僕はこれ以上、ここに居る必要はないし、あんな奴らにどう思われようと全く気にならないね!」
「で、でも……それじゃあ、もうセカイとは……」
「だから、一緒に逃げようよ」
「えっ」
「一緒にこの森から出てさ、一緒にこの世界を旅してさ……」
頼まれたからじゃない。
僕がアルメルに助けられたように、僕もアルメルを助けたいんだ。
「一緒に、レポート作るの手伝ってよ!」
「それは、よく分からないけど……」
あ、やっぱり?
「でも、うん……行きたい。私、セカイと一緒にこの森を出たい!」
アルメルは飛び切りの笑顔を僕に向ける。
なんだ、この美少女、眩しすぎるよ!
冷たい指先に力が込められる。
僕の手を強く握るアルメルに、僕は確かに応えるようそれを握り返すのだった。
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今日は4回くらい更新しますよー。




