1-17:美少女に刺されるなら本望じゃない?って思った件について
教授コメント
『君の性癖を暴露されても困ります。ちなみに私は大きい方が好みです。君とは相反しますね』
僕の言葉にクイーンが眉をひそめる。
お、もしかして、図星なのかな?
凛と澄ましていたクイーンの顔が崩れたことで僕は確信した。
「森は認めているのに、貴女がアルメルのお父さんの罪を、アルメルにまで背負わせようとしているから……だから、認められないんじゃないんですかねえ!」
アルメルは何も悪くないのに、この仕打ちをし続けるクイーンに僕は声を荒げた。
「何を言うかと思えば、そんなこと……」
クイーンは嫌悪を隠すことなく、鋭い視線を僕に浴びせる。
「だからどうだというのですか。あの男はこのエルフの森に多大な汚れを招き入れた。へし折られた小枝の数、切り付けられた木々の数、踏みにじられた根の数、それらすべての罪が、あの男の命一つで清算されるはずがないであろう!」
クイーンが声を荒げる。
周りでは一部のエルフが驚いた顔をし、一部のエルフは同意するように頷いていた。
その頃を知ってるエルフと知らないエルフで反応に差があるんだろうね。
「だからと言って、アルメルは関係ないじゃないか!」
「関係ない? はっ、笑わせる。どこまで知っているかは知らんが、そこの娘がさらわれたせいであの男が人間たちを招き入れたのだろうに」
蔑むような目で見下してくる。
くっ、こんな状況じゃなかったら悦んでいたのに、惜しいな。
「さらわれたせいで、だって? さらわれた者に罪があるわけないじゃないか。被害者って言葉の意味、貴女は理解してるんですか?」
でも、今の僕は怒ってるんだ。
「お得意の生命力も、頭までは成長させれなかったみたいですね!」
「なっ!」
お、絶句してる。
ふふ、なんか一矢報いた気分だ。
「貴様っ!」
「うわっ!」
流石に怒ったのか、さっきの男が僕を床に組み伏せる。
いたた、あご打ったじゃないか、もっと優しく扱ってくれないと困るよ。
でも、これではっきりしたね。
アルメルは森に認められている。
それだけは、アルメルのためにちゃんと明確にしたかったんだ。
「ふっ。無礼もここまで来ると清々しいですね」
「それは、お褒めに預かり光栄ですね」
「黙っていろっ!」
ああん、そんなに強くしないで!
男に組み伏せられて、悦ぶ趣味はないんだよ!
「それで、言いたいことはそれだけですか?」
再びすまし顔で僕を見下すクイーン。
ああ、その余裕ぶった表情が気に食わないね。
「そうですね。強いて言うなら……」
このどうしようもない状況で、僕は一つだけ言いたいことがあった。
どうにも腹が立つんだ。
あのクイーンの自分がカーストの頂点であると言わんばかりの驕り切った瞳がさ!
何年生きてるのかは知らないけど、僕はその綺麗な顔に泥を塗ってやりたい衝動にかられたのだ。
「僕は、小さい方が好きなんですよ」
「はあ?」
クイーンは首を傾げた。
「だから、無駄に年ばかり食って肥え太った貴女は、僕の目には醜く見えるんですよねえ」
「っ!」
「これが、クイーンだなんて、お笑い種さ!」
ご自慢の生命力を否定されて、クイーンは怒りを露わにする。
おー、ご乱心だあ。
ざまあないね。
「この者を処刑しなさい!」
「「はっ!」」
弓を構えたエルフが二人ほど前に出てくる。
なるほど、確実に殺すために二本射るんだね。
うわあ、これは詰んだ。
まさか異世界で死ぬことになるなんてね。
異世界で死んでも黄泉の国には行けるのかな?
待っててね、おばあちゃん。
せめて、痛みを感じないまま死にたいね。
「ま、待ってください!」
そんな風に死を覚悟していたら、アルメルが声を上げながら僕の前に躍り出てきた。
「セカイは、私が案内を任された客人です! だから、ええと……その、とにかく処刑なんてさせません!」
「アルメル……」
震える声でアルメルが訴える。
僕なんかのために身を挺して庇ってくれるなんて、やっぱりこんな良い子が森に認められないはずないよね。
「ふむ」
そんなアルメルを見て、クイーンは思案顔になる。
「それもそうですね」
そして、クイーンはアルメルの訴えにどこか邪悪な笑みを浮かべ、頷いてみせた。
え、嫌な予感しかしない。
「貴方たち、下がりなさい」
「はっ。しかし……」
「下がりなさい」
「「はっ!」」
クイーン強く言うと、二人のエルフは下がる。
どういうつもりなんだろう。
もしかし、アルメルの真摯な訴えに心打たれて僕を許してくれるなんてことに?
いや、それは絶対ないね。
あのいやらしい笑い方は絶対悪いことを考えてる時の顔だもん。
「クイーン様……」
「確かにこの者に関しては貴女に一任していましたね」
そうしてクイーンは自らの腰に差していた短剣を抜き取り、アルメルの足元に放り投げた。
カラカラと乾いた音が裁定の間に響き渡る。
「ですので、貴女が殺しなさい」
「えっ」
「うわぁ」
戸惑うアルメル。
それは、クイーンが提示する、最も悪趣味なアルメルへの歩み寄りであった。
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