1-15:朝日よりエルフの少女の方が眩しい件について
教授コメント
『異世界において、この地域が召喚された理由があるのでしょうか。海の見えなかった内陸の地域、何か作為的なものがあるように思えます。調査時に留意してみてください』
「セカイ、起きて」
「う、うーん」
「起きてってば」
「後5分……」
「5分も寝てたら見れなくなっちゃうわよ!」
「見れない?」
「もう。見せたいものがあるっていったじゃない」
ああ、そういえばそうだったね。
僕は眠い目を擦って起き上がる。
「おはよう、アルメル」
「おはよう。やっぱり寝坊したじゃない」
「まだ間に合うんでしょ?」
「まあね」
じゃあ、寝坊じゃないよね。
なんて思ったけど、アルメルはすでに着替え終わってるし、申し訳ないから言えないね。
「はい、これセカイの着替え」
「ありがとう」
綺麗にたたまれた僕の服を受け取る。
ふわりと花のような匂いが服から香ってくる。
僕の体臭ってこんなにフローラルだったっけ?
「あれ、綺麗になってる?」
「洗っておいたわよ」
「え、そうなの? ありがとう、アルメル!」
「べ、別にそんなに感謝されるようなことじゃないわ」
「料理もできるし、アルメルはいいお嫁さんになりそうだね」
「そ、そうかしら」
アルメルが照れたように顔を赤く染める。
「じゃあ、着替えようかな」
「ちょ、ちょっと! 私が出て行ってからにしなさいよ!」
僕が半裸になると、アルメルは慌てて部屋から出て行く。
もう、今さら半裸で恥ずかしがらなくてもいいのにね。
まあ、さっさと着替えよう。
そうして着替え終えた僕は部屋を出る。
「ようやく来たのね」
「うん。待たせてごめんね」
「別にいいのよ。それより、早く行きましょう」
「わわっ」
アルメルに手を掴まれて、僕は外へと出る。
陽も昇っていない空はまだ暗い。
こんな時間に、アルメルは何を見せたいんだろう。
「こっちよ」
「あ、うん」
アルメルが駆け出すので、僕も引かれるがままに走り出す。
そうして辿り着いたのはエルフの町であった。
アルメルは一度躊躇うように立ち止まった後、再び歩き始めた。
「入っちゃダメなんじゃ?」
「大丈夫よ。住む木がないだけで、入ることは禁じられてないもの」
そうは言うけど、やっぱりアルメルも入るのには覚悟がいるんだろう。
握ったアルメルの手が少し震えていた。
安心させるように強めに握ると、アルメルは驚いたように僕の顔を見る。
そして、どこか安心した様子で笑みを浮かべた。
「ふふ、ありがとう、セカイ」
「何がかな? 僕は何もしてないよ?」
「でも、感謝してるの」
そう言ってアルメルは調子よく進み始めた。
町の中央、そこにある一際大きな樹に掛けられた梯子をアルメルは登り始める。
「セカイ、登れる?」
「えーと、登れると思うけど、僕が先に行くべきじゃないかな?」
「? どうしてよ」
「だって、下着が見えちゃうよ?」
「えっ?」
アルメルは片手でスカートを抑える。
「……見たの?」
「まあ、この暗さだから見えないんだけどさ」
「見えてないなら、いいじゃない。もう……」
アルメルは呆れたようにため息をつき、再び梯子を昇りだす。
僕もそれを追うように昇っていった。
その木はとても高くて、どこまで行くんだろうかと心配になるほどだった。
いや、高いなあ。
今下を見たら絶対足が竦むよ。
「付いたわよ、セカイ」
アルメルがひときわ大きな枝から顔を覗かせる。
同じ枝に腰掛けると、アルメルは次第に明らんでくる南の空を指さした。
「あのね。この世界が世界たちの異世界に召喚されてから、南に海が見えるようになったの」
「前は見えなかったの?」
「ええ。大陸の真ん中にあったから、海なんて話にしか聞いたことなかったの」
「へえ」
「あ、くるわ! 見てみて」
そうしてアルメルが見せたかった景色。
それは水面を朝焼けに染めながら現れる日の出だった。
「綺麗だね」
「でしょ」
アルメルが見せてくれた景色はやっぱり刹那的だった。
エルフの永劫を良しとする価値観とは異なった光景。
けれど、アルメルはそれに心を震わせる。
朝焼けを一心に見つめるアルメルの赤く染まる横顔を盗み見る。
なんだかその様になる顔に僕は思わず見とれてしまった。
「そろそろ降りましょうか」
「え、あ、そうだね」
「どうしたのよ?」
「いやいや、何でもないよ」
そうして僕が立ち上がろうとするとアルメルの手が僕を引き止める。
「こ、今度は私が先に降りるから」
「あ、うん」
周囲も明るくなってきたし、今度はほんとに見えちゃうかもしれないしね。
そうして僕らは木を降りる。
「そこまでです、侵入者よ」
「ええ?」
僕らが降りるとエルフの斥候たちが僕らを取り囲む。
その後ろにいるのはクイーンかな?
なんだか偉そうな女性が腕を組みながら待ち構えていた。
弓まで構えてすごく物騒なんだけど、僕たち何かしたかな?
「あの、どうかしたんですか?」
「言葉通りです、この神聖なエルフの森に足を踏み入れた劣等種よ」
鋭い目で睨まれる。
わお、背筋がぞくぞくする視線だね。
ていうか、え、言葉通り?
侵入者って、どういうことさ。
「捕えなさい」
「あ、え?」
二人の斥候が両側から僕の腕を掴む。
「待ってください! どういうことですか!」
連れていかれそうになる僕を見てアルメルが抗議してくれる。
「話は裁定の間で聞きます。下がりなさい、アルメル」
「っ!」
凛としたクイーンの声に、アルメルは体を強張らせる。
んー、これはだいぶんまずい状況なのかな?
いや、図らずもクイーンと接触できたのはよかったかも?
そうして僕は、引かれるままにその裁定の間と呼ばれた場所へと連れていかれるのだった。
読んでくださりありがとうございます。
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今日も三話ほど更新できれば、いいなーと思っています。




