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1-13:エルフの寝顔が可愛すぎる件について

教授コメント

『魔石の採集は他の調査員が行い、現在分析中です。それと、粘膜接触は避ける様に気を付けてください』


 お風呂を出るとアルメルが用意してくれていたのだろう寝間着のようなものが丁寧に畳まれて置かれていた。

 アルメルの私服なのかな?

 そう思って広げてみたら意外と大きかった。

 サイズ的にアルメルのものではないね、残念。


「お父さんのかな?」


 そう言えば、アルメルの家族はどこにいるんだろう。

 一人でここに住んでいるみたいだけど……。


 脱衣所で着替えてから部屋に戻る。

 するとそこにはクッションに顔をうずめてバタバタと足を暴れさるアルメルの姿があった。


「ええと、アルメル?」


「わわっ! セ、セカイ⁉ も、もう出たの?」


「まあ、のぼせちゃうからね」


「そ、そうよね」


 クッションから顔を上げたアルメルは僕と目を合わせてくれない。

 あっちこっちに視線が泳いでて、なんだか面白いね。


「あ、そ、そうだ。喉乾いたでしょ? 飲み物持ってくるわね!」


「あ、うん。ありがとう」


 パタパタと慌ててアルメルはキッチンの方へと姿を消していく。


 うーん、当然のように避けられてるね。

 どうしようかな、このまま気まずいのは嫌だしなあ。

 何とかするべきなんだけど、うーん。


 そんな風に首をひねっていると戻ってきたアルメルが不思議そうに声を掛けてきた。


「ど、どうしたのよ」


「ん、ああ、いや、アルメルが気まずそうにしてるから、どうにかできないかなって考えてたんだ」


「あ、気を遣わせちゃったのね。はい、お茶」


「ありがとう、アルメル」


 アルメルからコップを手渡される。

 うん、エルフ茶はおいしいなあ。


「うん、別に私は大丈夫よ。ちょっとびっくりしちゃっただけだから」


「ちょっと?」


「……かなり。だって、初めて見たんだから、し、仕方ないでしょ?」


 思い出したのか、アルメルはまた顔を赤くした。


「そ、それより、湯加減はどうだったかしら? 熱くなかった?」


「あ、うん。丁度良かったよ。あれは、どうやって沸かしてるの?」


「えっと、魔法石っていうのがあって、そこに魔力を込めると、水が出たり、火が出たりするのよ。このランプも魔石を光らせてるのよ」


「へえ、そんなものがあるんだ」


 見かけの文化レベルで水汲みとかが必要なのかと思ったよ。

 でも、ここでは科学の代わりに発展した魔法がちゃんと生活水準を上げていたんだね。


「もしかして、異世界には魔石がないの?」


「魔石というか、魔法とか魔力とかもないからね」


「そうなのね。でも、それでどうやって生活するのかしら?」


「まあ、代わりに電気っていう力が色々働いてるんだ」


「電気? 雷を使うの?」


「うーん、まあ、似たような感じかな」


 電気を知らない人にわかるように説明できるほど、僕は科学に精通してないからね。

 してたら文系じゃないからね!


「へえ、すごいのね。雷魔法なんて、攻撃にしか使えないと思ってたわ」


「アルメルも魔法が使えるの?」


「私が? そんな器用じゃないわよ。魔石がなかったら精々下級の火炎魔法しか使えないわ」


「そうなんだ」


 エルフって魔法が得意なイメージがあったんだけど、ここでは違うみたい。


「そろそろ寝ましょう。明日の朝は早いわよ」


「え、早いの?」


「ええ。見せたいものがあるのよ。朝一で行かないと見れないからちゃんと起きてよね!」


「うん、明日こそは寝坊しないようにするね」


「ふふ。そうね」


「ところで、僕はどこで寝たらいいかな?」


「ええ、あっちの部屋にベッドがあるわ」


「あ、そうなんだ」


 アルメルの家は玄関直通のこのリビングとバスルーム、キッチン、それともう一部屋という間取りで僕のアパートよりもいい物件である。

 羨ましい。

 日当りは、どっこいかな。


「それじゃあ、寝ようかな」


「ええ。あ、コップ片付けるわ」


「ありがとう」


 エルフ茶を飲み干し、コップをアルメルに手渡す。

 立ち上がって、隣の部屋に移動する。


 部屋に入るとベッドが一つあった。

 ベッドわきの机には僕が上げたサボテンがちょこんと置かれている。


「あ、いい匂いがする」


 布団に潜り込むとふわりと柔らかい香りが鼻の奥をくすぐる。

 ああ、気持ちよく寝れそうだ。


「おやすみ……」


 目を閉じて微睡に身を任せる。


 そうしていると何やら部屋に入ってくる足音が聞こえた。

 次第に近づいてくる足音はデッドの脇で止まり、そして……。


“もぞもぞ”


「うひゃっ!」


「あ、ご、ごめん、セカイ。当たっちゃった?」


 驚いて目を覚ますと、そこには同じ布団の中に入ってきたアルメルの顔が目の前にあった。


「な、なんで入ってきてるの?」


「え。だって、ベッドは一つしかないから」


 僕の疑問にアルメルはキョトンとした顔で応える。


「いや、それなら僕は床で寝るよ」


「そんなこと、お客様にはさせられないわよ」


「それでも、一緒に寝るっていうのは……」


「い、嫌なの?」


「僕は嫌じゃないけど」


「けど?」


「……アルメルが嫌なんじゃないかなって」


 いや、不安にならないわけないよね?

 いきなり世話を押しつけられた異世界人と一つ屋根の下で一緒に寝るなんて絶対嫌だよね。


 けれど、アルメルはどこかおかしそうに笑った。


「私ね、可愛いって言われたことなかったの」


「え?」


「ほら、私って小さいじゃない?」


「胸が?」


「……それも含めて身体がよ」


「痛い痛い、脇を抓るのは反則だよ!」


 毛細血管が集まってるところなんだから!


「エルフはね、そういう生命力を感じない者を醜いって感じるのよ。それがエルフの普通の感性なの。だから、貶されることはあっても褒められたことなんてなかったの」


「そうなの?」


「そうよ。だから、貴方が私を可愛いって言う度に、『ああ、からかってるんだろうな』って、思ってたの」


 そうだったんだ。

 思い返せば、僕が可愛いって言う度にアルメルは反発していたね。


「セカイの言葉を信じてなかったの。私が可愛いなんてあり得ないって。でも、やっぱり嬉しかったの。嘘でもいい。私のことを褒めて、私のことを認めてくれるなんて、セカイが初めてだったから」


「アルメル……」


 不意に、アルメルの手が僕の背中に回され、その小さな身体を密着させてくる。


「あ、アルメル⁉」


「だからね、こうして触れ合うことも嫌じゃないの」


 上目遣いにこちらを見つめてくるアルメルの頬は羞恥に赤く染まっている。

 あれ、もしかしていい雰囲気なのか?

 そうなのか⁉


 人生は選択の連続だ。

 時には守り、時には攻めることが重要である。

 その節目を見誤れば掴み取れる栄光も掴めないのだ。


 何が言いたいかというと、ここは攻め時であるということだ!


「あ、アルメル!」


「すー、すー」


 可愛らしい寝息が聞こえる。


 ……え?


「アルメルさん? アルメルさーん」


 ゆさゆさと揺すってみるも起きる気配のないアルメル。


 え、生殺し?


 人生は選択の連続である。

 けれど、時には時限性の選択肢もあるということを学ばなければいけないようだ。


「ふう。夜は長そうだ」


「すー、すー」


 離れないアルメルの寝息を聞きながら、僕は目を瞑るのだった。


この作品は全年齢対象作品です。


読んでくださりありがとうございます。

よかったら感想、ブクマ、評価などよろしくお願いします。

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