番外 国と税金と雑談?
73話にて、その後もアーダコーダと、会話は続いている・・・その時の雑談です。
ハンハルトに来てから不思議に思った事が有る。・・・正確に言えばハンハルト公国に来る前からなのだが。
ドーゴル魔王国でも入国の時に冒険者カードを作ったぐらいで、特に入国税とか通行税とか取られなかった。商人達のように大量の商品を持ち込むとなれば別の様だが、一般的にはかなり緩いと思う。冒険者カードに記録して通過したのを確認するくらいだ。
「入国に関してかなり緩い気がするんだけど?」
「冒険者や旅人が自由に活動できるように考えられているらしいですけど、そんな事に深く考えたことはありませんねー。フレアリスさんやマギさんは何か知っていますか?」
「街に住むと税金がかかるって言うのは知っていますけど、私は街の外に住んでいますので。」
「マギも港町に住むようになるんでしょ?」
「・・・税金免除されるって言われました。」
「あ、もしかして報酬のおまけみたいなやつで?いいわねぇ。」
羨ましがるフレアリスを見てマギは申し訳なさそうな表情になると思ったが、深い溜息を吐いただけだった。
「・・・なに?なんかあるの?」
「勇者の近くには他の勇者が現れないって言うのは知ってますよね。」
「あ、ああ・・・そう言う・・・それだったらもっといいモノを貰いなさいよ。」
「私が解決した訳ではないのでなんだか受け取るのが申し訳なくて。でも、私だけではなく両親も免除対象に含んでもらえるみたいなので、受けようかと思っています。」
「でもそれだと、秘密にしていた勇者の事がバレてしまわないの?」
「そーなんです、それでちょっとどうしようか悩んでいます。」
勇者としての価値を知っている者ならこの国から離れてもらいたくはないだろう。それにマギの場合、勇者としてはかなり扱いやすい部類になる。それ程強くないのが理由の一つだろう。
「俺、税金って払った事ないけど、魔王国にも有ったの?」
「貧乏人からは取らないって言う話らしいですけど、借家に住んでいる場合は家主がまとめて払うので結局は取られているのと変わらないですー。」
「あー、家賃に税金分が含まれているみたいな?」
「そうですね。あと、ハンハルトでは知らないですけど、魔王国の場合年に一回決まった日に住人税を支払います。その日に払ってしまえば来年までは払わなくて良いのですけど、移住してきた人達の場合は住み込んだその日に払います。」
「それじゃあ、極端に言うと・・・支払った次の日がその決まった日に該当する場合は・・・?」
「また払います。」
「それって他の国でもそうなの?」
他国・・・知っていそうなのはフレアリスだけだ。少し眠そうな目を擦っているが質問には答えてくれた。
「名目が違うだけで似たような税金は有るわ。ハンハルトの場合は商人の出入りが多いからそれほど高くないけど、私が住んでいた国にそんな税金はなかっわ。」
「税金が無いと国としてやっていけないんじゃないのか?」
「鬼人族が勝手気ままに住んでいるだけの場所だったから・・・こっちの国みたいにこれほどの他種族が共存しているのって珍しい事だし。」
「単一種族で生活してるのが普通なの?」
「そうね。」
「それにしても太郎さん、なんでそんな事を気にしたんですか?」
「・・・俺とスーの持っている魔法袋の中身を全部税金の対象にしたらとんでもない事になるんじゃないかって思ってさ。」
「・・・ベッドに乗せたら重さで壊れるくらいの金貨量になるかもしれませんねー。なにしろ、薬関係がヤバ過ぎます。」
多種多様のポーションをこれでもかってほど持っている。
「ケルベロスもギルドで登録してなかったら税金対象よね?」
「魔王国では入国の時に取られました。」
「やっぱ国によって違うのね。」
マナとポチが半分飽きて生欠伸をしている。マナはそんなに大きく口を開かなくても・・・なんで眠いアピールをするのかな。夜になると元気なのに・・・。
「税金は軍事にも使われてるんだよね?」
「そうだと思いますけど・・・。国民の為にも使われていると思いますよ。」
国営の施設は国費が投入されているのだから間違いないだろう。
「税金が無くて安心できる場所がいいなあ。」
「あー、そう言う事ね。」
「人のいない場所に行けばいいのですけど、そうすると魔物が多いですからねー。」
「人が少なくて安全な場所がベストなんだけど。」
「そんな都合のいい場所あるの?」
フレアリスがそう言って、一時的に会話が止まる。
人が多く集まったり、国が統治していたりするのは、人が安心して暮らせる場所が欲しいからだ。安心できる環境を作るのに資金が必要だ。維持、運営するとなればなおさらのことで、税金が必要なのも頷けるのだが・・・。
「島みたいな隔離された場所の方が良いのかな?」
「少人数ならそれもアリですねー。その代わり自給自足というか、娯楽なども殆どありませんけど。」
スーの言う娯楽はギャンブルだからな。
「わたしは太郎と一緒ならどこでもいいけど。」
そのマナの発言を、そのままの意味で捕らえるのならポチも同意している。ただ、ポチは太郎の役に立ちたいという部分も有るので、余りにも何もないところだとそれはそれで困るという複雑な心境も隠れていた。
「ガーデンブルクとはあんまり関わりたくないし・・・コルドーでも暴れまわったしなあ・・・。」
あの娘は元気にしてるかな?と、思ったが口にはしない。
「このまま魔王国に行くと、ただ一周ぐるっと回っただけになるのよね。」
「一周?」
「そう、一周。」
何の事か考えた・・・そう言えば俺が転移した場所はハンハルトの隅っこの方だったという事実を思い出す。魔王国との境も近く、商人の町が有った場所はその中間ぐらいの場位置だ。ただ、一周まわった時の中心がなんなのかは俺は知らない。
「私がいた場所よ。」
「え?」
「あれ?言った事なかったっけ?」
「・・・マナは結構重要な事でもサラッと言うからなあ・・・。」
「私は知ってるけど・・・そんなに驚くことなの?」
「フレアリスさんが何歳なのかは訊きませんけど、常識みたいに言われても・・・。」
「あの・・・私も知ってますけど。」
「え?」
「有名な話なので普通に知っていると思ってました。」
「そんなに有名なの?」
「世界樹がドラゴンの総攻撃によって燃やされた事件なら、殆どの人が知っているはずです。あえて言わないのはドラゴンに目を付けられるのが恐ろしいからで、積極的に関わろうとする人はいませんねー。」
それもそうか。
「他の大陸にも伝わってるの?」
「海の向こうにあるハンハルトとの交易相手のボルボルトでも伝わっているし、そのほかの国や地域でも知っている人は知ってるんじゃない?ただ・・・。」
「ただ?」
フレアリスがマナを見る。
「一人の男にべったりしている女の子が世界樹だと言われても誰も信じないでしょうね。」
「それには同意しますー。」
500年以上生きている人がそれなりに存在する世界なのだから、人々の記憶というのもが長きに亘って残るというのも当然かもしれない。しかし、種族や人種による寿命の違いがあまりにもかけ離れていると、過去の歴史と言われるような出来事も昨日のように語られてしまう世界だった。
マナとフーリンの会話もそうだったし、フレアリスもかなり古いと思われる事を知っている。だが、500年前が古いということ自体が俺の感覚なのだから、少しややこしくなる。スーだって180年以上生きてることだし・・・。あれ?フレアリスって・・・。
「・・・そう言えばフレアリスって牢屋に居た筈なのに色々と詳しいね?スーの事もそうだけど。」
スーが活躍した頃は牢屋に居た筈だよね。
フレアリスは小さな欠伸をしてから応じた。
「あー、ね。昔の親切過ぎる知り合いがいちいち教えに来るのよ。魔王国の傭兵募集に行ったらしくて、勇者が居て大変だったとか、凄い魔法でみんな流されたとか、貴族の坊ちゃまがケルベロスを手懐けて旅をしていたのが気になったとか。あいつ、なかなか強い傭兵冒険者だからワンゴが捕まった時の事は色々調べたらしいわ。」
ん?!
傭兵・・・冒険者・・・どこかに記憶が・・・うーん。
この話は止めておくか。
フレアリスはまた欠伸をしていて、その欠伸が感染ってしまう。
話題を戻すか。
「ここから元の世界樹が有った場所って近いの?」
「飛べば直ぐじゃないかな。」
飛べば・・・。
「山を越えて・・・森の中にあるから、普通に歩いたら何日も掛かるみたいよ。私は歩いた事ないから知らないけど。」
「周りを国に囲まれているような場所に在ったんだね。」
「当時は小さい国が幾つか有ったぐらいで、魔王国ももっと小さかったから。」
「あー、なるほ・・・ど。って事はそれほど移動してないんだな。」
「私が知らない場所だと困ると思ったんじゃない?」
あの神さまも一応は考えてくれてたって事だな。
「ってことは、俺は世界の半分どころか10分の1も知らないんだな。」
「私も教えてくれる人が基本フーリンだけだったしね。スズキタ一族達だってそんなに世界に詳しいわけではなかったし。」
フレアリスが大きな欠伸をする。この世界では珍しい・・・夜勤なのだから、昼前になると眠いのは仕方がないだろう。そうか、もうそんな時間か。
気が付けば雨音が小さくなり、雨は弱くなり始めている。
「雨も弱くなったし、そろそろ宿に帰ろうか?」
「そうしてくれると助かるわ。」
少し疲れた声を出すフレアリスは、そのままベッドに転がる。
パンツ見えますって。
マギはそのままもう少し残るようで、寝転がって動かないフレアリスの代わりに俺達を見送ってくれた。
番外なので基本的には読まなくても問題ない部分ではあるのだけど・・・別視点とか、追加設定とか、色々補足した話とか、あるんですよねー。
番外は今後もちょいちょい割り込み投稿する場合が有ります。
(´・ω・)`スンマソン