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第375話 一族の呪い

 迎賓館には大人数が集まっていて、何故か天使も居る。

とんでもない人数というほどでもないが、この人数が同時に食べるのだから、とんでもない量を作っている・・・寸胴鍋がドーンと並んでいる。

今夜はカレーだ。

それも、今回は初めての味だ。

カレーにもご飯、パン、ナン、イモ多めが良いという人もいて、選べるようになっている。ここでは地位も階級も関係ない。

ガッパードも皿を受け取って列に並んでいるのだ。

メイリーンに座って待っているように言われていたが、自分で受け取りたいらしい。

新鮮野菜のサラダに選べるドレッシングも好評で、カラー達が喜んでついばんでいる・・・。

お前らあっちな。

 席に着くと、いつもと違う香りに気が付く。

 なにも気にしない者達も居るが、食べ始めると違う感覚に驚きを隠せない。


「なんだこれ・・・甘いぞ?」

「ああ、あんなに辛かったのに。」

「おれは・・・辛い方が良いかな・・・。」


 ドラゴン達の専用テーブルでも、食べ始めたメイリーンが驚いている。

 そして、凄い笑顔だ。


「ぱーちゃん、この味好きだぁ。」モグモグ


 語尾が上がって嬉しさが伝わる。

 特に天使達には好評で、ペロリと食べてお代わりを求めていた。


「俺は辛い方が良いな。」

「辛いのはあっちに有るよ。」

「そうか。」


 で、なんでピュールが俺のところのテーブルで食べてるんだ。

 子供達が受け入れてるからイイケドさ。

 その子供にもこの甘さは好評のようだ。


「なにを混ぜたのじゃ?」

「リンゴと蜂蜜。」


 ナナハルがビックリして食べるのが止まった。


「この人数の蜂蜜じゃと・・・?!」

「余ってるんだ。それにいろんな人の意見も聞いてみたかったから。」


 ついでにリンゴの正体も説明し、トレントの木の実である事を伝えると、ビックリした。

 トヒラが感動して涙を流しながら食べていて、スーは別の理由で涙を流しながら食べている。エルフも兵士も、階級も立場も関係なく、みんなが同じモノを食べてる。


「太郎君はやる事がデカすぎる。」

「そうね。」

「カレーってだけでも美味しいのに・・・。」

「こんな美味しいモノ初めて食べました。」


 4人は鉱山グループと一緒のテーブルで食べていて、このテーブルでは辛いのを好む人が多いようだ。


「カエルと鳥と牛と蛇と・・・肉も種類が豊富ですね。」

「何人分用意したのか知らんが、あのカレーがこれだけ甘くなるって・・・。」

「甘口、中辛、辛口・・・。」


 マチルダとグレッグは、当然のようにトヒラ達のところと同じテーブルで食べていて、トヒラも拒否しない。むしろ同じテーブルでないと困るのだ。

 ダンダイルはどうにかトヒラが食べ終える前にテーブルにつき、甘いカレーを食べている。そして、その材料を知って驚愕しているのだ。

 もちろん、この村に関わっているからキラービーの蜂蜜について知らない者はいない。今でもたまに狙われたりするので、ケルベロスやエルフ達と共同で警備をしている。

 そしてもう一つこの村の秘匿とされている存在も、今日は堂々と家族に交じって食べている。

 いや、家族だから問題ない。


「毎日マンドラゴラで飽きないか?」

「飽きないわ。」

「なんていうか、おつまみみたいな感覚?」


 ククルとルルクはだいぶ大人に成っている。

 特に何がとは言わないが、ぷるるんしていて、口調にも大人っぽさが感じられ、ワルジャウ語もすらすらと喋っている。

 

「向こうでもカレーを作るか?」

「うん。」


 やっぱりまだ子供っぽい。

 見た目は大人なんだけどな。


「最近はカラーもたくさん来るから向こうでも楽しいよ。」

「ワイバーン飼っても良い?」

「いいよ。」

「やーった♪」

「やった♪」

「やったったー♪」


 なんでマリナが反応したんだ。

 いつの間にか二人とも仲良くしているマリナ。

 フィフスもそうだが、この二人の辞書に人見知りという文字は無いんだろうか。

 太郎がカレーの二杯目を求めて立ち上がった時、手が空いて少し暇になったエルフが何か相談している。

 みんなが食べていても給仕に徹しているエカテリーナが、エルフ達に押されて俺のところに連れてこられた。


「いつも働いているからこういう時ぐらい休むように言ってください。」 

「えっ、で、でも・・・。」


 何処からか子供が椅子を持ってきて、いつの間にかできた太郎の横の空間に置く。恥ずかしそうに座ったエカテリーナだったが、エルフ達が太郎に丁寧に頭を下げると、そそくさと給仕に戻って行った。

 大きな混乱も無く、ただの夕食会という事でもなく、食べ終えた者達は元職場や配置に戻っていく。遅れてやってきたマリアはファリスに用があるらしく、そのテーブルに座って話をする。

 座っていれば何も言わずとも食事が運ばれるのがささやかな特権だろう。

 暫くはにこやかに話をしていたのだが・・・。


「テレポートゲートを造ってしまうなんて、やっぱり神様ですよね。」

「ふぇっ?!」


 珍しくマリアが変な声を出して驚いている。


「そんなもの作った覚えは無いんだけどー?」

「え、だって、出入口が二ヶ所あるんですよね?」

「そうだけどー・・・あっ!!」


 声がデカすぎてドラゴン達からも注目を浴びている。

 メイリーンがカレー皿を持ったままマリア達のところのテーブルに移動する。

 真似しちゃダメだぞー。


「無視できない言葉が聞こえたんだけどー、ばーちゃんにも教えてー?」

「えーっと・・・。」


 要するに、魔法袋を繋げ、出入口が二つあるという事は、その方法を利用する事によってどこにでも出入り口を作れるという事だ。デュラハーン達の住む国は魔法袋の中に在るが、出入口は一ヶ所に固定されていて、定着している。

 そこにマリアの持つ魔法袋の空間を内部で繋げた事によって、出入口が二つになった。特に考えもせずに繋げたから、距離的にそれほど楽になったワケではないが、鉱山内部と、太郎の屋敷とが地上を通過する事なく移動可能なのだ。

 ならば、このまま魔法袋をいくつも繋げ、出入口を設置すれば、あちこちに自由に行ける。

 しかも、安全性が高い。


「とんでもない事をしちゃったねぇ。」


 マリアが珍しく汗だらだらで動けなくなっている。

 世界のバランスを崩壊しそうなアイテムをいくつも開発しているマリアだが、転移魔法だけは開発できなかった。なのに、魔法陣や呪文ではなく、魔法道具として成功させてしまった。

 魔法袋内の空間を他の魔法袋と繋げる技術は難しくなかったらしいが、意外と簡単に出来たとも言えず、技術的に言えば画期的でもなかった。

 ちゃんと苦労して接続したのである。


「ツイに出来ちゃったねぇ。」

「あわあわあわゎわゎわわ。」


 それにしても慌てすぎだろ。

 その様子を見てもう一人のドラゴンもやってきた。

 ちゃんと皿は置いてきた。


「お主、デュラハーンか?」

「はい、そうですけど・・・。」

「呪いによって滅亡したと思っておったが。」

「そう言われればそうだったねぇ。」

「歴史は詳しくないので説明が上手く出来ないのですけど、マリア様に助けられたのです。」

「ほう。」


 マリアが泡を吹きだしたぞ。

 マチルダも怖くて近づけない。


「呪いは・・・解けておらんな。」

「我々一族は受け入れていますので問題は無いのです。誤解は解けませんが。」


 少し悲しそうな表情を見たガッパードが俺とフィフスを手招きする。

 そして俺が移動すると、当然のように家族総出になった。

 こちらに視線が集まっているスキに、うどんとマリナがマリアを回収してマチルダのところに移動させた。


「お姉さま、大丈夫ですか?」

「大丈夫に見える?」

「おっぱい触ります?」

「そうさせてもらうわ。」


 マリアはうどんの胸に頭を突っ込んで癒しを求めていた。





 ファリスがきょとんとしている。

 ガッパードの説明によると、古代の戦争で負け、呪いを受けてしまったという。首を斬り落としても死なずに生きる魔物にされ、戦争で廃墟となった町に追放された。

 その後、生まれてくる子供も、ポニスにも呪いは広がり、近寄ると呪いによって呪殺されるという噂が信じられた。

 もちろん、そんな事実はどこにも存在しないが、尾ひれに背びれが付いて、虚像は大きく成長したのである。


「でも、俺にはポニスの頭が見えるんですよね。」

「心眼か?」

「いや、それは分からないんですけど、撫でるとすごい喜ぶんですよ。」

「触れるのならポニスの呪いは直ぐに解けるな。」


 もりそばが太郎の背中から現れる。


「死に匹敵する悪意の呪いなのに、解けるの?!」


 聖女の記憶でも、その力を使っても、解けなかった呪いである。

 だから、今でもそのまま残っているのだから、その呪いの深さは計り知れない。


「わしでは無理だ。だが、そこに受けても平気な奴がおる。」


 フィフスがガッパードの背中から現れた。


「あー、なるほどねー。確かにこれは負の魔素が根付いているわね。」

「なんか似たようなことがあったな。」


 戻ってきたうどんがフィフスともりそばを軽く掴んで自分の足元に置く。


「勇者の時よりも悪意が凄そうです。」

「そーだ、それ。」


 勇者としての能力が発揮されるのを嫌がって治療した時に似ている。

 ただ、この場合は・・・一族に呪いが・・・?


「祝福も呪いも根源の魔素は同じだからな。」

「お父様、この呪いを解いたらこの子達はどうなるのですか?」

「デュラハーン一族はその昔、戦闘に長けていたが・・・今はその面影も無いな。」

「戦争は起こさないと一族の決まりです。一応、戦闘訓練はしていますが、敵というものが存在しないのですぐにやめてしまうんですよ。」

「それは良い事ではないか。」


 ばーちゃんが同意している。


「それで、どうやって解くんです?」


 珍しくうどんが質問した。

 興味津々のようだ。


「フィフスが魔素を吸い出すだけだ。」

「ふーん。」


 フィフスがいきなりファリスにキスをした。

 ビックリして顔が真っ赤になっているが、そのうちに力が抜けていく。

 なんか子供に見せてはいけない光景だが、注目度が凄い。

 メイリーンなんて手で顔を隠しているようで指の間からガッツリ見ている。


「ふぅっ。こんなもんかな。」


 椅子に座って呆然としているファリスの頭をもりそばが撫でる。


「取れないわ?!」

「試すなよ・・・。」

「ひょっとして外にいるポニスにも変化が?!」


 子供達が椅子を蹴ってどこかに居るポニスを捜しまわる。

 ・・・おーい、ここに居るぞ。

 ニョキッと現れたのは普通の馬になったポニスだ。

 今、ファリスの脇の下から現れたよーな?


「荷台が邪魔じゃないのか。」

「てか、なんでこいつ、ずっと荷台を曳いてるの?」

「なんでですかね?」


 すると、荷台が消えて頭が現れた。

 みんなにも見えるようで、子供達がかわるがわる頭を撫でまわしているが、嫌がる様子も見せない。


「くすぐったいです。」


 ・・・マナさんはポニスの股で何やってるのかな。


「なんにも付いてないわ。」

「あのー、そういう事はココじゃないところでお願いします。」

「駄目じゃないんだ?」

「えっ・・・あ、ハイ。駄目・・・です・・・。」


 顔が真っ赤になっている。

 いつの間にかうどんに抱きしめられているのだが、なんでポニスを抱きしめているの。・・・効果あるのか。


「呪いは解けたの?」

「解けたわ。」

「この調子で一人ずつやらないとダメ?」

「口から吸い出すのが一番効果的だったのよ。」


 更に赤くなって俯いた。

 まあ、同性だからノーカン!

 って思っているのは俺だけのようだ。

 そもそも性別が・・・いや、なんでもない。


「・・・他に方法ないの?」

「時間は掛かるけど、身体から全体的に吸収すれば出来ないことは無いわね。」

「どのくらい掛かる?」

「何人いるの?」


 そういや何人住んでるのか知らないな。


「最近、出産ラッシュで凄い増えまして。」

「良い事じゃないか。」


 ばーちゃんはデュラハーンの子供を見たそうな表情だ。

 マリアが疲れた表情で立ち上がった。


「案内するんで、行きますか?」







マリア「・・・転移魔法の考え方がマルっと変わったわ

トヒラ「詳しく

マリア「・・・はぁ~・・・

トヒラ「悪用・・・しないでくださいね

マリア「基礎が解れば天使達でも作れちゃうのが問題だわ

トヒラ「・・・他に作れる人って・・・・

マリア「ここの住人ならいつか誰でも作れるようになっても不思議じゃないわね

トヒラ「封印してください

マリア「無理よ

ダンダイル「頭痛が痛い・・・

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― 新着の感想 ―
マリアさん、やっちゃいましだね!w これで転移魔法も作れたりして!(期待w)
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