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第357話 納得できない者達

 根を無理矢理引き千切ろうとするが、切っても直ぐに新しい根が出てくる。無理矢理身体を押し込もうとすると、服が破れてしまいそうになった。


「神様!」

「太郎!」


 目を覚ますと、マナが二人いた。

 なんで。

 でもはっきり違いが分かる。

 それは服装が違うからだ。


「マナ、そこ通してあげて。」


 凄く不満そうな表情と、満面の笑みで根っこを引き千切りながら入ってくる、二人の姿は、何が起きたのか理解するのに時間が必要なのは理解した。


「なんか外が騒がしい気がするんだけど。」

「うるさいのがいっぱい来てるから、直ぐ排除するね!」


 は?

 排除?!


「フィフス、それはやめて。」


 名前を呼ぶと、マナがムスッとしている。


「あんた名前なんか有ったのね。」

「神様がつけてくれた大事な名前だからねー。」エッヘン

「は~?」ムカムカ


 マナの機嫌がすこぶる悪い。


「せつめーしてもらいましょうねっ!」

「あ、ハイ。」






 太郎とフィフスとマナの話し合いは小一時間続き、その間ずっと外で待たされている者達としては、何が起きているのか知りたかったのだが、いつの間にか強力な結界が張られていて、聞き耳も立てられずにいた。

 いつも通り、どちらかがポキッと折れないと話が終わらないので、今回はマナが折れる事となった。

 先ほどまで体調が悪くて寝ていた太郎は、今が何日なのか、あれからどのくらい経過したのか知って驚いている。


「で、どうするの?」

「神様はココに住むのよ。」


 住みたくはないけど、この子連れ出して大丈夫なのか・・・?

 言えば付いてきそうだけど、そういう問題じゃないんだよなあ。


「太郎にその気は無いみたいね。」

「なんで解るのよ。」

「私と太郎はね、心も体もぴったり通じ合っているからよ。」


 なんかすっごい睨まれている。

 いや、ちょっと待って。


「みんなが納得すると思う?」


 太郎の質問を理解したのはマナである。


「無理ね。そもそも世界を崩壊させる諸悪の根源と言っても過言ではない存在よ。」

「どういう意味?」

「あんたは自分が世界を崩壊させている事に気が付いていないの?」

「何の話よ・・・。」


 負の魔素が世界に悪影響を及ぼすコトは知っているはずだ。


「私はココに溜まり過ぎた魔素を少しずつ放出してるの。」

「でしょうね。で、どうやって出してるの?」

「えー・・・知らない。」

「なんでよ。」

「負の魔素が勝手に集まってくるのよ、私がどうにか出来るワケないでしょ。」

「そもそも、さ。」

「なぁに?」

「どしたの?」

「フィフスが人型になったからこうして会話出来るし、触る事も出来るけど、魔素のままだった時に意志なんてあったの?」

「有るというか、無いというか・・・。」

「溜まり過ぎた魔素が暴走しないようにはしているんだよね?」

「うん。」


 フィフスは太郎になら素直に応じる。


「魔素も操作できるって事だよね?」

「もちろん出来るわ。ここにある魔素は私の身体と同じだもの。ただ、さっき神様がやったみたいにするとすごく減るわ。」

「減ると困る?」

「凄くスッキリするからもっとやってほしい!」


 いちいちマナっぽいな。

 マナが俺を睨んでいるが、嫉妬とは違う。

 観察しているようだ。


「マナ。」

「ん。」

「俺の魔素って中庸なんだっけか。今もそう?」

「あー、なるほどね。」


 マナは理解が早くて助かる。

 要するに、正の魔素の影響も、負の魔素の影響も、俺はどちらも受ける。

 それは、魔素の悪影響を消す事だって出来る筈だ。


「・・・説明しないと怒られそう。」

「それは太郎が気にする事、無いんじゃないかな。」

「なんか、勝手に話し進めないでくれる?」

「・・・神様が決めるんなら問題ないんじゃないの?」

「えー、あ、うん。」


 マナの中では連れ出す事が決定したようだ。

 もう一つも確認しておくか。


「ウンダンヌとシルバは問題ないか?」

(ないでーーす!)

(ありません)

「頭の中に直接話しかけるなよ・・・。」

「じゃあ、片付けてから相談するか。」

「そうね。」


 太郎とマナがテントの片付けを始めると、ぼーっと見ているフィフスの後ろからにょきっと現れた。


「にょきー!」

「ちょ、どこから入ってきてるの!」


 後ろから股の下を通って、出てきたのはマリナだ。


「ちょうど良いわ、あんたも手伝いなさい。」

「はーい!」


 慣れた手つきでテキパキと片付け、説明することも無くドライバーを使ってネジも外す。マナよりも上手い。根っこも片付けていて、30分ほどで綺麗に片付いた。

 そこにはまるで何も無かったかのように。


「不思議な事をするのね。」

「不思議だけど不思議じゃないよー。」

「で、なんでこいつはこんなに私に馴れ馴れしいの?」

「ママのにおいがするー?」


 首を傾けて不思議そうにフィフスを見ている。


「そんなに似てる?」

「うーーーーーーん。」


 凄く悩んでいる。

 確かに似ているかもしれない。

 でも、それが。


「これ、私と同じ?」

「フィフスね。」

「フィフスって私と同じだけど、ママと同じ感じもして、カレーの良い匂いがする。」

「は?」


 確かに匂いがする。

 良い香りだ。

 カレーパーティでもやっているのかと思うくらいの匂いだ。


「なんか凄い人数がいるね。」

「言っとくけど、みんな太郎が心配できたんだからね。」

「あー、そうだったね。」


 エカテリーナは大丈夫かな?


「誰の心配をしているのか分るけど、あのドラゴンに色々問い詰められると思うから覚悟しておくことね。」

「それで済むんなら安いもんさ。」


 太郎が袋を背負い、マリナを抱き上げると、頭の上で場所の取り合いをしている二人を乗せながら彼らの方に向かって歩いて行く。向こうからら太郎に向かって集まって来るのではなく、太郎が来るのを待っている。

 カレーを食べてはいるが、彼らの目は太郎に集まっていた。




「ただいま。」


 スーが飛び込んで来る前に、ポチが頭をお腹辺りに押し付けてきて、スーに悔しがられている。その太郎の頭の上では、先ほどスーをボコボコにした存在が居るのだが、恐怖は微塵にも感じない。


「メイリーン。あれが我らの存在を超える唯一の者だ。良く見ておけ。」

「警戒を?」

「間違えるな。あの男は温厚ではないぞ。優しくは有るが、芯は通す。」

「ドラゴン相手でも?」


 見つめる先では子供達が太郎に集まる。

 ナナハルが色々と諦めたような笑顔を向けていて太郎を困らせていたが、ドラゴンが歩み寄ると空気が変わる。


「納得はしないぞ。」

「理解しているつもりです。」

「あんたたち、かみさm」


 ぺちっ☆


「神様?」


 隣かと思ったら、太郎に足を叩かれたので驚いている。

 マナが溜息を吐いた。

 子供達もスーとポチも、しっかりと太郎の前から離れていた。


「連れて行くのだな?」

「そのつもりです。」

「つもりというのはどういう意味だ。」

「残念な事にこの子は魔素の塊です。その所為で供給源が無ければいずれ消えるでしょうね。」

「以前の私と同じよ。」


 世界樹の苗を取り込む前のマナは、太郎がそばにいないと身体が崩れて消えてしまう。それは、マナが魔素の塊で出来ていて、本体から遠く離れると供給源が無くなってしまうからだ。本体の世界樹に近づけば元に戻るし、実は同じ姿を何体も出す事も出来る。


「定期的にココへ来るという事か。」

「そうなりますね。本体も無く、精霊と同じような状態で、実は精霊でもないというとても不安定な状態ですけど、俺が傍に居れば安定すると思うんです。」

「邪悪な感じは微塵にも感じられん。不思議な男という言葉ダケで済ませて良い問題ではないな。」

「ですがその前に・・・。」

「なんだ。」

「久しぶりにまともなカレーを食べてもいいですかね?」


 ガッパードの後ろのドラゴンが怒りそうなところを、ファングールが止めた。

 スーが嬉しそうに残ったカレーを温めなおすために走って行く。


「こういう男だ。」

「理解できないです。」


 メイリーンと太郎は初対面で、太郎は何の事か分からなかったが、無視はせずにあいさつを交わし、子供達を引き連れてスーのところへ向かって行く。

 周りは天使達に囲まれていて、オリビアとミカエルも居るのに気が付いて驚いた。


「何も出来なかったが心配でな。」

「オリビアさんにもそんなに心配してくれてたんですね。」

「戻ったらもっと泣く奴も居るから覚悟して置く事だ。」

「エカテリーナですね。」

「ちょっとー、私もいるんだけどー。」


 拗ねているミカエルと同意見のもりそば。


「気にしたらマケって事よね。」

「同意しにくい事を軽い口調で言うのやめてくれないかな。」

「私じゃないけど。」


 マナかと思ったらフィフスが言ったようだ。

 声がそっくりだから混乱する。


「太郎さん、たっぷり食べてくださいねー。」


 なんで舌なめずりしてるの。

 スーが怖いんだけど。

 そこにはどう見ても一人では食べきれない、山盛りのカレーライスが有った。







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