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第307話 魔素溜まり

 昔から旅をするのが好きだったフレアリスは各地を転々とし、たまたま到着した国に資金不足で滞在していた。魔物退治に興味が無かったのでアルバイトをしていて、酒場に美人の鬼人族がいると噂になった。その酒場は連日盛況で、フレアリスの効果はもちろんだが、国王軍の兵士も立ち寄る店だったので、その噂は国王の耳にも入った。

 その時のフレアリスは特に犯罪者ではなかった。完全に罪が無いかと言われると、鬼人族だから仕方がないという理由で見逃されていたので、累計22軒の家屋の破壊を理由に逮捕された。もちろん逮捕された理由はそれではなく、国王のハーレムに入る事を断ったのが理由だった。その逮捕までに100人以上が死亡し、3000人以上が重傷を負っているのだが、最後はフレアリスの両親を買収して罠に嵌め、魔導士100人による呪詛によって力を奪い、常に脱力する輪を首と両手両足に着けられ、思考力の低下する魔法を身体に刻まれ、淫欲が増加する印も刻まれ、常時発情状態であった。

 鬼人族は頑丈な身体という事で危ない薬も打たれ、怨む事も許されないくらい、毎日を性欲の捌け口に使われていた。10年ほど玩具にされた挙句、飽きたからと言って牢屋に捨てられ、そこで更に5年を過ごす。

 発見できたのは、投獄された者達が刑期を終えて出て来た事で噂になったのだ。国内で噂になっただけでなく、犯罪者達の間でも有名になった頃、その噂を聞き付けた鬼人族が現れ、国そのものを滅亡させた。

 因みに両親は裏切り者として鬼人族の手で処刑されている。




 オトロエルが来て、何故か剣術の相手をさせられ、風呂に入らされ、フレアリスと同じ布団に入れられ、忙しい一夜は終わった。

 本当は楽しみたかったのだが、ココまで用意されると逆にやりにくい。フレアリスとしても疲れている俺を見てキスで許してくれた。

 タスカル。


 そして朝。


「なんで客人が増えてるんだ?」

「あ、どうもはじめまして。」

「これがアンタのおとーさんなの?」

「そうね。」

「こっちはおねーさん?」

「おかーさんなんだけど。」

「可愛いわねぇ・・・。」


 マナが興味津々なのは分かるが、こっちはもっと問題がある。


「タロー、助けてくれ・・・。」

「いや、無理。」


 ポチはフレアリスとその母親に抱きしめられて動けなくなっていた。出かけると分かっていたので前日に綺麗にした事が、そのふんわりな毛並みに夢中にさせたのだろう。


「そちらの女性は・・・?」


 昨日散々相手させられたオトロエルがいない。

 理由は知っている。


「リファエルです。」


 今までしまっていた純白の翼をバサッと出した。とんでもない威圧が放たれたが、流石の鬼人族である。誰も気絶しない。


「あ、あの・・・ミカエル様ではないので?」


 ガンバ、頑張れ。

 俺は気配を消す・・・。


「あの子は今回必要無いから置いてきたの。」

「え、ミカエル様って天使が一番偉いのでは?」

「もっと偉い人ですよー。」


 暇だからと駄々をこねてついてきたスーが説明する。


「とりあえず用事を済ませたいんだけど、魔素溜まりってどこですか?」


 太郎が質問すると、我に返る。


「ああ、それならあの山の向こうだ。たいした魔物は出てこないが、少し強力な奴が出てきて畑に被害が出たからどうにかしたいんだが。」

「壊しちゃってもいいですか?」

「壊せるんなら構わないが・・・お前さん誰だい?」

「名乗るのを忘れていました、すみません。鈴木太郎です。」


 何かを感じ取ったのだろう。

 両目が大きく開く。


「お前この男と結婚しr・・・」(ドカ☆バキ☆グシャ☆


 ちょっと三発目が酷いぞ。


「私のモノなんだから上げるワケナイデショ!」

「太郎さんは私の大切な人です!」

「夫の目の前で浮気させないでよ!」


 そりゃそーだ。

 痛くは無さそうだが、三発目は明らかに首の骨が曲がりそうだ。

 それでも平然としている・・・フレアリスの父親だもんな、そうだよな。


「私も叩きましょうか?」

「可哀想だからヤメテ。」


 あのリファエルを止めらるのは太郎君しかいないよな。

 なんで連れて来たんだ?


「じゃあ、直ぐにでも暗黒球にしちゃってよ。」

「分かったわ。」


 そう言うと太郎の首根っこを掴んでいきなり飛んで行った。

 ポチもスーも世界樹も放置して。


「あーあ、行っちゃった。」

「追いかけますかー?」

「んー・・・。」


 世界樹が周囲を見渡している。


「この辺りまで私の波動が届いている所為?」

「私には分かりませんよー。」


 俺と同じく気配を消したい者が、元凶が居なくなったので現れた。


「原因はソレだと思っている。」

「ふーん。」


 オトロエルの発言を受け流すと、ふわふわと浮き上がり、街の全体を舐めまわすように見ている。


「ココにも置いていいよね?」

「そーですねー、後で太郎さんと相談しましょう。」


 スーとマナが勝手に話を進めている。


「ところでココで一番偉い人って誰ですかー?」


 スーの質問は鬼人族の笑いを誘ったようだある。

 そりゃそうだ、ココは国ではなくただの集落で、一人一人がとてつもなく強いが、地位で争うのは禁止されているのだ。

 説明すると納得したようだ。


「なら、どうやって世界樹を植えたらいいんですかねー?」

「世界樹を植えるって何の事だ?」

「私の苗木が在るから各地で植える予定なのよ。ここなら安心して育ちそう。」

「おいおい、ドラゴンに攻撃される原因を置かれると困るぞ。」

「そうね。」

「大丈夫よ、私より怨まれる心配はないわ。」

「まるで自分が世界樹みたいに言うじゃないか。」

「はい、こちらが世界樹のマナ様です。」


 エッヘンとするマナ。

 子供が出来たとしてもこんなふうに育ってほしくは無いな・・・。


「そうなのか?」

「信じられないかもしれないが、確かに世界樹なんだ。強さで言うとドラゴンに負けないくらいじゃないかな。」


 強さで説明するのは鬼人族が受け入れやすいからだ。


「太郎のおかげてフーリンぐらいなら負けないわ。」

「フーリン様ってかなり強いはずだけど?」


 フレアリスが尊敬するドラゴンで、それを理由に旅をしていた事はココの住人なら知っている事らしい。


「ただいまー。」


 太郎君が戻って来た。


「久しぶりだから疲れたわ・・・・衰えたものね。」

「それで俺を連れてったって言うんだから。」


 リファエルは翼を出したまま太郎君の背中にしがみ付いている。そのまま着地すると地面にぺたんと座ってしまった。


「疲れて飛べなくなるかもしれないならみんなで行けばよかったのに。」

「なんでそんな恥ずかしい事を皆に晒さなければならないのよ?」


 図々しい発言だが誰も怒らない。


「あんたねー・・・。」


 いや、呆れているようだ。

 あの天使の頭をベシベシと叩いている少女が居た。

 威厳も何もないな。

 ダンダイル様だって逆らわないもんな。


「まあ、そのくらいにしてあげて。」


 周りはポカーンと見ている。

 その隙を見てポチが逃げ出した。

 あの二人から逃げるとは流石だな。


「用事が済んだんなら帰ろう。」

「その前に、エルフ居たよね?」


 太郎が周囲を見回したがナターシャはいなかった。


「彼女なら部屋にいるけど?」

「村に連れて行ってくれると助かるんだが。」

「うん、ちょっと話してくる。」


 太郎とナターシャはすぐに打ち解けたらしく、信じられないほど元気になっていた。一緒に居た子供の特徴を教えた事が理由らしい。いくら仲間がいる所に行けても子供が居なければ意味が無いのだから、居ると分かれば安心するだろう。


「皆さんお世話になりました。」


 ナターシャはジェームスとフレアリスとマギに丁寧に感謝すると、直ぐに村に行くことになったのだが。


「ジェームスさん達はどうします?」

「私は行かないわ。」


 修行する予定のフレアリスである。


「俺も残る。マギもココで訓練すれば12まわりぐらい強くなれるだろうし。」

「みんな強そうですもんね。」


 ガンバが力強く笑う。


「そりゃ鬼人族相手に戦えたらドラゴン相手でも足止めくらいは出来るぞ。」

「ホントですか?!」


 マギの声にも力が入る。

 たしかに子供だったとはいえあのドラゴンを投げ飛ばしたからな。

 俺も修行しようかな?


「フィルの牛絞りも手伝うんなら飯も出すぞ。どうせ金もないだろ?」

「いくらくらいかかるんです?」

「ココじゃ金の価値なんて無いに等しいが町に行って買いたい物もあるんでな。」

「あ~・・・お金より物が良いです?」

「太郎君、別にそんなことしてくれなくても。」

「なんでジェームスが遠慮してるんだ?」

「太郎君は俺達の滞在費を出そうとしてるんですよ。」

「そうなのか?お前は金持ちなのか?」


 見た目ではそう見えない太郎である。


「太郎さんならハンハルトの国家予算くらいだせますよー。」

「ハンハルトを何だと思ってるんだ・・・。」

「バカ国王の治めてる国じゃない。」


 世界樹には遠慮というものが無い。


「太郎は私たち天使全員の食事を出しても平気な男だし。」

「・・・とんでもない男だな、やっぱり結婚しr・・・」(キョロキョロ


 今度は誰も殴らなかったので、少し詰まらなそうだ。


「いや、それよりその村を見てみたいな。」

「お父さんも冒険心を思い出した?」

「アンタ一番強いんだろ?」

「一番かどうかは知らないけど。」

「太郎さんはやる気さえ出せばハンハルトくらい滅びますよー。」


 だからなんでハンハルトを・・・。


「コルドーって知ってる?あの国を滅ぼしたのが太郎なのよ。」

「俺がやったみたいに言わないで欲しいんだけど。」

「事実じゃないの。」

「そうね。」

「私を助けてくれたのも太郎だしね。」

「そうだな。」


 ガンバは話を聞くほどに身体を震わせている。

 アレは高揚感だな。


「よし、俺と戦え!」

「遠慮します。」


 だろうな。


「強いのなら力を出すのも必要な事だぞ?」

「今は必要じゃないです。」


 そうね。


「太郎さんが戦っているところは見たいですけど。」

「マギも良いこと言いますねー。」


 俺も見たい。


「・・・帰ろっか。」

「そうしよう。」


 ポチが同意すると、太郎達は忽然と消えた。


「な、何をしたんだ・・・?」

「瞬間移動でな、太郎君は何人も同時に移動できるんだ。」

「・・・神様か?」

「違うわ。」

「神はもっとまじめな人だと信じたい。」

「お前らどういう冒険してたんだ?」


 マギもフレアリスもジェームスも、苦笑いしただけだった。






※追記


マナと太郎が離れているけどそんなに離れていないので平気です

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