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第277話 戦いの前の非日常

 失敗した時の事を考えるというのは、味方を信用していないという意味にもとられてしまう。そんな重要な事を太郎はポロっと言ってしまった。しかし、太郎にしてみれば成功したとしても被害が大きければ失敗と変わらない。可能なら少人数で行きたいが、村の被害が大き過ぎて、すでに太郎だけの問題でなくなっていた。

 リファエルとミカエルは天使達を率いて、エルフ達は熟考の末にオリビアが代表になり、兵士達もダンダイルとトヒラ以外は居残りが決定している。

スー、ポチ、マナ、そしてナナハルの4人は太郎達と同行し、グレッグとマギ、フレアリスとジェームスも太郎組に入る。魔女の二人もやる気満々だ。

 ツクモには子供達の面倒を見てもらうだけではなく、残った他の者達の面倒も見てもらう。エカテリーナは行けない事を悔しがる事は無く、準備期間中も家事と保存食づくりにせっせと働き、子供達もその他の居残り組もそれに倣った。

 グリフォンやうどんも居残り組だが、この二人はいつも通りだ。ベヒモスはもうただの猫のように生活している。

 うどんとマナの所に太郎達が集まると、すでにフーリンがいてマナと話をしているようだ。こちらに気が付いたので、軽く挨拶してからさっそく問題の話をする。


「フーリンさんはどうします?」

「行きたいけど私が行くと大事になってしまう可能性があるのよ。」

「すでに大事じゃない。それに関わったでしょ?」


 フーリンはたった一度の戦闘でゴリテアに撃墜されている。


「マナ様、それは確かにそうなんですけど、ドラゴンの端くれとはいえ、あんまり関わってしまうと後々面倒な事に巻き込まれます。」

「はー、ドラゴンって面倒ねぇ。」

「済みません。」


 ハーフドラゴンに頭を下げさせるなんてマナくらいだろう。


「そういや、あの二人はどしたん?」

「あの二人ですか?」

「あー、エロ天使とガキ聖女ならあっちでカレー食べてるわよ。」

「え、いつの間に・・・。」


 リファエルと聖女は深夜にコッソリ帰ってきていて、誘導は終わったらしい。

 って、バカ女に続いてエロ天使とガキ聖女が追加されたようだ。マナの言葉遣いは注意しようにも、太郎の言葉でしょ!って言われて反論できないんだよな・・・。


「あれ、聖女って元の姿に戻ったんじゃないの?」

「んにゃ、魔力不足でガキ化してるわよ。」


 何故か機嫌の悪そうなマナである。

 因みに聖女とマナの見た目はどっこいどっこいで、エカテリーナと並ぶと妹に見える。ただし態度は人100倍だ。


「そんな事より準備するんでしょ!」

「ああ、そうだった。今回は大量に必要だから遠慮なしにやっていいよ。」

「種は?」

「米や麦は精製とか食べるのに手間が有るから、やっぱ根菜類かなあ・・・。」

「木の実とかで良いんじゃないですかー?」モグモグ

「あー・・・ドライフルーツでもいいか!」

「ドライフルーツ?」

「果物の水分を抜くだけでよかったかな・・・あとは砂糖・・・は作るの面倒だな。」

「硬くなりませんかー?」モグモグ

「さっきからスーが食べてるのも保存食なんだけど。」

「んー?」モグモグ


 カレーだけじゃ足りなかったのはわかるけど、みんなが見てる前でも食べ続けるのってどうなのかなあ・・・。それに、その食べ方は好みが分かれるから他の人におすすめ出来ないし。


「カレーの方もスパイスが足りなくなると困るから増やしとこう。」

「そうですね。」


 ふわっとうどんが太郎にくっ付いた。


「お悩みですね?」

「まーね。」


 食べられれば文句は言わないとダンダイルに言われ、乾燥させただけのドライフルーツを大量に作る事にした。

 ウンダンヌが水分だけ抜くくらい楽勝と言っていたから任せよう。

 家より高く山積みにしたフルーツを目の前に嫌な顔していたけど、それを袋にしまうのも面倒なんだよ。

 こっち見るな。


「しかし、うどんにそんな能力あったんだな?」

「さっき出来るようになりました。」


 と、言うのは、うどんが食べた果物が実になって出てくるようになったのだ。これだけだと何を言っているのか意味が解らないが、実際にそうなのだから困る。もちろん限界はあるそうだが、俺の家よりも山積みのフルーツを両手からポロポロと出しているのを目の当たりにした後なので、無限に出てくるんじゃないかと思えてくる。


「トレントの実も混ざってるね?」

「スイカも出ます。」


 ポロッと出て、ドスンと落ちて、ばっかりと割れた。

 ささっとマナが拾って食べる。


「あま~い!」

「ほう、どれどれ。」


 落ちても平気で食べる人達ばかりで助かる。こっちの世界に来る前だったらあり得ない光景だ。いや、昔だったら拾って食べたか・・・。食べ物を落とすと凄い怒られた記憶がある。

 兵士も天使もエルフも、食べ物の大切さは身に染みているらしい。スープのようなモノでない限り、落としても拾って食べるくらいはする。恥ずかしい事ではないのだから。




 準備にはしっかりと日々を消費し、ゴリテアやコルドーの動向が気になりながらも、一番被害の無い鉱山内部では、沢山の人が出入りしていた。

 特に天使やエルフ達が風呂に入ると、兵士達が覗こうとするので追い出すのが大変だったという。


「あいつらなんとかしろや。」

「少しぐらいは見逃してあげて。」

「俺もそのつもりだったけどよ、仕事の邪魔過ぎる!」


 グルさん苦情で、トヒラがエルフ達から女性だけの部隊を編成して風呂場だけではなく鉱山内部の警備に任命した。

 これは太郎の指示でトヒラが行ったものであり、トヒラが独断で行ったわけではない。頼まれた方は胸を叩いて応じているが、なぜ自分に頼んだのかはよくわかっていない。オリビアも居るし、スーやナナハルでも良かったのではないかと思う。


「太郎君がトヒラに頼んだのはエルフと我々兵士が仲良くする為のモノだと思う。」

「天使の方はどうなんでしょう?」

「アレは太郎君に従っているに過ぎないからな。」

「なる・・・ほど?」


 ダンダイルも自信が有って言ったわけではないが、太郎が忙しくて説明を聞いている暇がなかった。もちろんダンダイルも忙しく、兵士宿舎が拡張されてみんなが寝泊まりできるように建設が進んでいる。

 宿舎は伝統と信頼の豆腐ハウスで、建築に技術が不要なのでポンポンできるのがいい。畑も作っているが、今はうどんのおかげで根菜類もゴロゴロ出てくるのでエカテリーナは常にうどんと一緒にいる。今は料理で一日が終わってしまうのでそれ以外の家事が出来ず、洗濯などは個人でしてもらうことになった。


「それにしても毎日服洗うのめんどくさいよね。」

「でも、太郎様に言われたら仕方ないんじゃない?」

「綺麗な筈なんだけどな。」

「新しく貰った服、綺麗で着心地凄い良いんだけど・・・。」

「・・・なんか着たら脱ぎたくなくなるな。」


 天使達はもう太郎をミカエルと同等かそれ以上に見ていて、ミカエルを無視する事は無いが、ミカエルと太郎と同時に違う事を頼まれたら、太郎を優先する事を決めている者が多数いる。


「なんか大変な事になってるのに、なにも手伝えなくて申し訳ないです。」

「私達も・・・ねぇ・・・?」

「沢山運べるので私達よりは・・・。」

「ポニスが居るので。」


 デュラハーンのファリスは荷物運びならゴルギャン親子よりも沢山運べる。役に立てる事が羨ましい。ファリスにしてみれば普通の事なのでもっと役に立ちたい気持ちで一杯である。ただ、デュラハーンの一族は戦力としては全く役に立たないので、邪魔にならないように自分達の世界に引き籠るしかなく、表に出てくるのもファリスぐらいであった。


「賑やかどころか騒がしいな。」

「仕事になりませんね。」

「まぁ、今は少しでも武器を作らにゃならん。大量生産なんぞ俺の趣味じゃねぇ。」

「トヒラ様の武器を新調するんじゃなかったんです?」

「そんなもんとっくにできたわ。」

「いつの間に・・・。」

「ここじゃ夜も昼もねーからな、静かな時に作った。」

「静かな時って・・・ありました?」

「・・・ねーなぁ。」


 そう言ってグルは出来たばかりの武器を箱に入れて腋に抱える。女性用でスーが持っていたダマスカス製の剣と似ているが、それを参考にして作ったのは言うまでもない。

 地上では常に忙しそうにしている兵士達の中からトヒラを探すのはかなり面倒なので、待合場所を孤児院に指定した。指定したのはトヒラの方で、子供達を少しでも安心させる為に、こちらにも兵士を配置していて、ツクモはやっとだらける事が出来ていた。


「これはツクモ様。」

「なんだ、グルか。」

「トヒラ様は来ていますか?」

「ほれ、あそこで子供達にもみくちゃにされておる。」


 女の子達が集まってトヒラの身体をコチョコチョしている。喜んでいるのか、困っているのか。アレは困っている表情だな。


「おいおめーら、ちっとヤメテやってくれ。」


「「「はーい!」」」


 グルの言葉に素直に従って離れていくと、今度は別の所で別の遊びが始まる。子供達が楽しそうにしているのは良い事だと思う。男の子のグループの方は川遊びだ。子供よりもトヒラに渡すモノが有るので近寄る。


「ハーッ、助かりました。」


 深呼吸して呼吸を整えると、グルの持っている箱に気が付く。


「新しい剣ですか?」

「そーです。」

「次の戦いは命懸けになるって話ですから、可能な限り最高の武器が欲しかったんですよ。」

「まぁ、ダンダイル様に頼まれたら断れんしなあ。」

「私だけでしたら?」

「鄭重に断りますぜ。」


 グルの言葉に今度は力なく溜息を吐く。

 トヒラはまだダンダイルほどの実績も信頼性も無いのだ。


「魔鉄を叩き込んで強度はマシマシにしといたです。」

「簡単に言いますけどそれ凄い技術ですよね?」

「ダマスカス製に比べたら見劣りするが・・・、しますが、それに近い強度は。」

「天使やエルフ達にばかり活躍されても我々の立場が無いですから、助かります。」

「・・・トヒラ様の腕を信用してない訳じゃないが・・・今じゃあっちのスーの方が強い。過信すると武器も泣きますぜ。」

「そのくらいは心得てますよ。」


 箱を開けて中身を確認すると、いつの間にか子供達が集まっていた。グルが居て箱を持っているということは新しい武器だと思うのは当然だろう。


「おめーら、玩具じゃねーぞ。」

「わかってるよー、でもいいなあ・・・。」


 覗き込んでいるのはハルオとハルマで、刃先を見詰めて僅かに身体を震わせた。


「おめー、分かるのかこの魔力?」

「う、うん・・・なんか怖い。怖いけど目が離せない。」

「そういやおめー、確か九尾の・・・。そうか、これが解るんならおめーらにも扱える日が来るだろうな。」

「これを持って、おとーさんと一緒に行きたかったなあ・・・。」


 ハルマはこの武器を手に持って父親と一緒に戦う姿を想像している。


「まだはえーけどな。」

「私は扱って見せますよ。」

「あいつならもっと楽に扱うんだろーけどな。」


 あいつというのが誰の事か分かっている。ダンダイル様ではない。あのリファエルでも聖女でもない。


「上には上が居るのは解ってましたけど、ここまで上だと目標にもなりませんね。」

「ちげーねーや。」


 グルの言う上とは太郎の持つ武器の事であり、トヒラの言う上とはこの武器を楽に扱う太郎の事であり、二人の上にはこれからもずっと目標として脳に刻まれるだろう。


「そういえばこの武器に名前ってあります?」

「勝手に付けてくれてかまわねーですよ。」


 こうしてこの武器は暫く無名の剣として扱われる事になった。

 今は大切に箱に戻し、ハルオとハルマが名残惜しそうに箱を見ていたが、見知った二人の方に視線を奪われて、興味は直ぐに逸れた。


「あれ、二人がココに来るなんて珍しいね?」

「おねーちゃんって呼んでほしいんだけど?」

「あ、うん。おねーちゃんたちは何の用?」

「おとーさんからマンドラゴラを受け取りに来たんだけど、まだ来てない?」

「おめーらの親ならうどんと一緒に居たのを見かけたがな。」

「じゃあ待ってればもうすぐかな?」

「だろーナ。じゃ、俺は戻るぜ。トヒラ様、失礼します。」


 グルとトヒラが別々の方向に戻って行くのを見送っていると、太郎とうどんがファリスと一緒にやってきた。


「パパ~!」


 いきなり二人の娘に抱き付かれても、よろめかずに受け止める。


「待った?」

「ううん、いまきたとこ~。」


 ククルとルルクに抱き付かれると妙に甘い匂いがする。ハルオとハルマが顔を赤くしてモジモジとする。教育に良くないな、これ。

 ファリスもモジモジとしてる。

 用事を済ませようか。


「悪いけど今は魔力を温存して回復したいから魔法は控えてるんだ。ファリスが手伝ってくれるって言うから、ココにマンドラゴラを載せて集落まで案内してあげてくれないかな。」


 ポニスの荷台にはうどんがボトボトとマンドラゴラを出している。大き過ぎず小さすぎないイイ感じのサイズのマンドラゴラをポニスの荷台に載せた籠に山盛りにする。


「こんなもんかな?」

「こんなに載せて動けるんですか?」


 首の無い馬の背中をククルが、首の根元をルルクが撫でているがポニスは嫌がる様子はない。


「任せてください。ポニスもやる気満々です。」


 太郎にだけ嘶く声が僅かに聞こえる。


「・・・ポニスって喋れないよね?」

「はい、喋れません。」


 突然、うどんの髪の毛の中から二つの物体が顔を出した。


「護衛は私達にお任せを!」

『お任せを!』

「護衛って荷物運ぶだけだよ?」

「この村の危険は危ないですから!」

『危ないです!』

「・・・ま、まあいいや。一緒に行ってあげて。」


 カラーがククルの頭に、キラービーがルルクの頭に移動する。

 マナの所為で人の頭の上に乗るのが流行っているのか、それともこれから流行るのか、少し不安になった太郎だ。


「ああ、太郎君ここにいたのか。」


 ふわっと上から落ちてきたのはダンダイルで、肩にマナが乗っていた。二人と二匹に連れられてファリスが移動するのを見送っていると、マナが腕を組んで目を細めて言う。


「兎獣人の分まで忘れないのはやっぱり太郎よね。」

「そうですな。」

「忘れるつもりが無くても忘れる事はあるし、覚えてる限りはやっておきたい。」

「では、我々の方の準備は?」

「あとは聖女と勇者次第かな・・・。」


 カレーを食べて満足した後は太郎の部屋で勝手に寝ていて、起こす勇者は存在しない。太郎かマナ以外に可能そうなのはもう一人居るが、寝ていた方が問題が起きなくて済むと考えていて、完全放置だ。

 勇者達はそれぞれが勝手に活動を始めていて、正義感と人を助けたいという気持ちには変化が無いので、兵士達の仕事を手伝ってくれている。間違って戦闘になる事も無いので、ケロベロスやキラービーを敵だとは思っていないようだ。


「リファエルさんかミカエルのどっちが指揮するんだろ?」

「太郎よ、何故私は呼び捨てなのだ?」

「いきなり現れないでくれるかな。」


 ミカエルは何処から現れたのか、3人の後ろに立っていた。ダンダイルも驚いているようだがマナは驚いていない。


「指揮は私がする。母上は太郎と一緒に暴れたいそうだ。」

「聖女の方は?」

「寝ている。」

「それは知っているけど・・・。」

「私には無理だ。母上が起こしたくないと言っている以上何も出来ない。」

「殴り起こす?」


 そこは叩くくらいにしてあげて。


「勇者達が変に暴れないなら良いんだけど。」

「暴れないと思うわ。」


 今度はミカエルの後ろにリファエルが立っている。なんで背後取りたがるのあなた達は・・・。ダンダイルの汗がヤバい。


「身体に悪いから普通に現れてくれない?」

「善処するわ。」


 絶対しないやつだこれ。


「それで、暴れない保証は?」

「お母様にやる気が微塵も感じられないから。」

「やる気の問題なの?」

「そう。」

「やる気が出たら?」

「ゴリテア級に厄介だわ。」


 とても面倒だという事が良く分かる。


「用事が有ってもあそこに行きたくないな。」

「そうね。」

「俺達も行くよな?」

「そうね。」

「役に立てるかな?」

「あなたにしては弱気じゃない?」

「そうでもない、慎重なだけだ。」


 ジェームスはそう言って天を仰いだ。そこには天使が一人飛んでいて、カラーが両翼となって編隊飛行をしている。


「慎重にならざるを得んだろ。」


 同じく見上げて同じモノを確認したフレアリスも理解したようだ。


「ココでは常識は投げ棄てるモノだったわね。」

「そうだな。」


 その二人は太郎に見付けてもらって手招きされる事で会話の輪に入る事が出来た。ダンダイルが仲間を見付けたような表情になっていたが、フレアリスくらい図々しくてもミカエルとその母親が居ると緊張するようだ。

 会話は二言、三言の後に無言になる。ゴリテアに対する攻略法なんか無い。天使達が先遣として先に行きたいと言わなければ、作戦はもっと小規模にする予定だったのだが、現地に一番近い元のナナハルの家で現在のツクモの家は誰も使っていなないので一度そこに集合する事になった。

 そこから夜明け前に偵察を飛ばし、天使達が続き、太郎達の本隊が忍び込む。そこから先はリファエルの案内で他にも封印されている者達を助ける・・・予定だ。


「ゴリテアがもう一度浮く事が無ければ何回かに分けて調査するのもアリなんだけどね。」

「大量の魔石が補充出来ない限り無理でしょ。」

「時間が有れば集められない事もないだろうから、もう時間はないよね?」

「その通りだ。今近づいて警戒を強められると困るので偵察は出来ないが、コルドーからの調査員の報告では何か大量に運んでいる様子はないようだ。ただ、街は大混乱らしいがな。」


 コルドーでは聖女が消えて何日も経過している。まさかここで寝ているなんて知らないだろうから、大騒ぎになっているだろう。相手の国がどうなるかなんて気にしている余裕はないが、無駄な血が更に流れると思うと胃が重い。

 そもそも戦いというのが無駄な血の極致なのだから、早く解決させる事で被害を抑えるのも理由の一つである。その為の準備期間に予定よりも時間がかかってしまったのは太郎の村の被害が大き過ぎたからで、今も完全に回復した訳ではない。村には大量の遺体が処理しきれておらず、瓦礫も殆どがそのままだ。無傷で稼働を続ける鉱山では、天使達への武具の供与の為に昼夜問わず生産が続けられ、それは夜明け前に全ての作業を終了していた。


「先ずはミカボの土地へ向かう。」






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