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第235話 眩しい太陽

 マリアの周りに デュラハーンが続々と集まってくる。

実際にやっているのは太郎なのだが、彼等からすれば、マリアが男に何かをやらせている・・・と思う方が自然なのだろう。


「輝きが強い・・・。」


 目を細め、手で目を覆い、それでも光の素となる物体を見ようとしている。


「それにしてもこんな大きい魔石よく存在してたね。」

「それ作るのに100年くらいかかったわ~。」

「ひゃくねん?!」


 思わずひらがなで声が出てしまったけど、それがひらがなかどうかなんて太郎の気分的な事で、誰にも伝わらない。

 それでも驚きはマリアの心を少しは救ったようだ。


「頑張ったのよ~・・・うふふ。」


 デュラハーン達の中でも、唯一太郎達と仲の良いファリスがエカテリーナに言った。


「あの魔石を維持するのに定期的にマナを注ぐんですけど、あんなに輝いた事は無いです。どういうお人なんですか・・・?」

「太郎様ですから!」


 全く答えになっていないが、それを聞いていたスーが笑っていて、ポチが興味なさそうにしている所を見ると、これがいつもの事のように感じてしまうから、すごく困る。

 困ったところで何も変わらないのだが。


「ただの村長じゃありませんよね?」

「ただの村長でも嫌がっていますけどねー。」


 その言葉をファリスは誤解した。


「やっぱり国王様とか、大賢者様とか、そういうお偉い方なんですね。」

「そうだったらよっぽどわかりやすい人なんですけどねー。」

「・・・それってどういう意味ですか?」

「地位とか名誉に興味ないんですよー、太郎さんはねー。」


 今度はエカテリーナが少し困った表情で笑っている。


「王様になってしまったら私達じゃ近付けなくなっちゃいます。」

「もしかしたら、あの本性を現してハーレムを作るかもしれませんよー?」

「そ、そんなに凄いんですか?」

「えぇ、凄いですー。」


 お前達は何の話をしているのかな・・・?

 聞こえているんだが?


「太郎がその気になったら一晩中・・・きゃっ?!」


 マナが吃驚するぐらい輝いたのは、大量の魔力を一気に注ぎ込んだからだ。

 その輝きが消えるまでに1分以上を要したが、発光は僅かに残り、宝石よりも美しく見える。


「これだけ有れば・・・やっぱり太郎ちゃん凄いわ~・・・。」


 溜息を吐きながらも、マナそっくりのトレントの腕を引っ張って、魔石に近づく。


「あなた~、操作できるわよね~?」

「は、はい、お任せください。」


 両手を添える・・・のではなく、そのまま魔石に抱き付くと、魔石に吸い込まれていった。


「大丈夫なん?」

「アレはトレントの本来の姿じゃないから~。」


 魔石の表面に根っこが纏わり付く。もの凄い勢いで包み込み、根で表面が見えなくなる。


「あれ・・・何か・・・匂いが・・・?」

「花の匂いがする。」

「トレントの花が咲いたわね。」

「花が咲いただと・・・?!」


 デュラハーン達が驚いていて、その花の香りに心を奪われるかのように、フラフラとトレントの根が包む魔石に近寄ってくる。ポニス達も付いて行くので、ちょっと邪魔だ。太郎は荷台と首の無い馬を避けつつ、スー達の所に戻ると、ポチが空を見上げた。


「臭いが薄まったな。これなら良い匂いだ・・・それにあの薄暗かったやつが・・・少し変わってないか?」

「おや、そうみたいですねー?」

「魔力の供給が安定したから~。」


 薄暗かった周囲が、灯りが不要になるほど明るくなる。すると自分達が薄汚れていて、ファリスだけがすごく綺麗に見える。


「なんでお前はそんなに汚れていないのだ?」

「えっ・・・あっ、お風呂に入ったので・・・。」

「お前そんな贅沢な事をしていたのか・・・。」


 横で聞いていたので提案する。


「なら入ります?」

「そんな簡単に言うがな、どれだけの水を必要すると思っているのだ・・・。」

「それ以前に場所がありません・・・。」

「お任せください場所なら作ります・・・。」


 今は姿の無いトレントが、どこから聞こえるのかそう言うと、なにも無い城内の一部の地面が凹んだ。


「土を吸収しましたのでそこに・・・。」

「じゃあ~・・・表面固めておくわねぇ~。」


 マリアが魔法で土の表面を固めると、まるでプールのようになった。

 もちろん壁はない。


「この辺の雑草で良い?」

「ん?ああ、良いんじゃないかな。」


 今度がマナが魔法で草を伸ばし、周囲を草で囲む。背丈以上の高さまで伸びると、確かにこれなら覗かれる心配はなさそうだ。


「このプールみたいなのもう一つ作って貰える?」


 太郎が上を向いてどことなく告げると、それに応じて同じモノがもう一つできた。


「ココって川あるよね?」

「ありますがこの程度なら全部吸収できます。」

「そういやトレントって浄化作用あったよね?」

「さっき沢山水を頂けたので今までとは違う綺麗な水が出せます!」


 マリアが拗ねた。


「こんなモノを作ってどうするのだ・・・?」

「こうするんです。」


 太郎が両手で巨大な水玉を二つ作り、プールに落とした。


「・・・は?」


 デュラハーン達が太郎を見て口をポカーンと開けている。

 袋から大量の布を取り出し、ココに居る一人一人に配るが、流石に一人では面倒なのでファリスに協力してもらう。


「荷台に置いても良いですよ。」

「良いんだ?」

「はい。」


 半分ほど理解が追い付かないが、温かい湯気を肌で感じると、デュラハーンの女性陣が大挙として押し寄せてきた。

 いつの間にかファリスとエカテリーナが協力して列を整理し、草で囲まれた温水プールに案内すると、中からは嬉しそうで楽しそうな声が聞こえてくる。


「お前・・・一体何者だ?」

「普通の人ですよ。」


 お前みたいな普人が居るか・・・と、問いたかったが、既に伝説の普人なのだ。このような男があの門の向こうにはゴロゴロいると思えば、余計な興味は示さない方が良いのかもしれない。


「お湯は熱くないようにちゃんと調整してますんで、安心して入っていいですよ。」

「あ、あぁ・・・すまんな。しかし、この水は消えるんじゃないのか?」

「大丈夫です。」

「そ、そうなのか・・・それってマリア様と同じ魔法か?」

「あんなバカ女よりもっと良いわよ。」


 マリアが不貞腐れているが、否定はしない。


「空は明るいし、水は綺麗だし、最高~!」

「なんかお湯が黒く成ってきたわ!」

「あれ・・・お湯が・・・綺麗になった?!」


 今度は太郎は何もしていない。トレントの浄化機能が発揮された結果だ。


「ちょっと早く出なさいよ、私達が入れないじゃない。」

「このお湯に頭を付けると周りが黒くなるのよ!」

「わたしもやりたーーーい!」


 水は汚れでもすぐに綺麗になる。トレントの太い根がプールに入っていて、吸収、浄化、排出を繰り返していた。


「お、俺達も入るか・・・。」

「おぅ・・・。」


 太郎から布を受け取りながら中に入ると、空から注がれる光に反射して輝く水面と、ふんわりと立ち昇る湯気に、誘われるように入っていく。


「おい、鎧脱いで入れよ・・・。」

「あ、あぁ・・・忘れてた。」

「ポニスはどうする?」

「後でこのお湯に浸した布で拭いてやろう。」

「う、うむ・・・。」


 こうして、デュラハーン達は一部がお湯のプールを体験し、それは瞬く間に広がっていき、お湯が温くなっても新たなデュラハーン達がやって来ては、入っていき満足して出ていく。

 トレントには浄化機能はあるがお湯を出す事ができない。綺麗だが水しか出せない。しかし、その水が輝きを放って美味しいのだ・・・。


「このお湯、美味いな・・・」

「おまえ、自分の浸かっている湯を飲むなよ・・・。」





 いつの間にか蚊帳の外となった太郎達は、ファリスの案内でファリスの家に向かっていた。時折すれ違う他のデュラハーンに好奇の目で見られるが、ファリスの説明を受けると城に向かって行く。

 何も事情を知らないモノでもこの世界が変わっているのは明らか過ぎるのだ。

 明るい空と、薄汚れた自分。

 花の良い匂いと、綺麗な姿になった仲間。

 新しくて綺麗な布が沢山有るのは、太郎が置いていった物だが、奪い合う事は無かった。なぜなら山のように置いていったからだ。

 何故、大量に持っているのか不思議に思ったスーが太郎に尋ねると、苦笑まじりに答えたのだ。


「綿花を作ってから毎日箱に詰めて持ってくるから袋に入れてたんだよ・・・。」


 一列に並んで歩かないとすれ違えないくらいの狭い道を進むと、30分ほど歩いてやせ細った木々を抜けた先に小さな村が現れる。


「小さな畑が幾つもあるね。」

「みんなボロッボロの家ねぇ・・・。」

「こんなボロボロだったとは思わなかったです。」

「こっちの方はまだ臭うな。」


 いつの間にかいない者が一人。


「あれ、マリアは?」

「思い出したから行く場所があるって、別の方向に歩いて行きましたよー。」

「まあ、別行動でもココなら迷子になる事は無いか。」


 創造者本人が迷うような事は流石に無いと思いたい。


「あら、ファリス、仕事はどうしたの?」

「今日は休みになりました。」


 ファリスに話しかけた女性は、どう見ても母親なんだろうけど、煤汚れた姿をしていて、頭髪にも土が付いている。


「お父さんはいる?」

「今日は畑の日だから近くにいるんじゃないかしら・・・。そちらの方々は?」

「命の恩人です。」

「命の・・・?何か有ったの?」


 母親は自分娘がこの世界から外に出ていた事を知らなかった。そして説明を聞くと、半分くらい信じられないようだったが、今の状況を考えると、ウソとは思えない。


「言われてみたら・・・ファリスってそんなに綺麗だったのね。」


 この綺麗という言葉の中には、美人という意味と、汚れていないという意味の二つがあり、太郎の目から見てもファリスの母親は美人に見える。


「お風呂って入ってみたいわね。」

「桶が有れば用意しますよ。」

「桶?」

「水を入れる大きな桶ってないですか?」

「そこまで大きいのは・・・あぁ、汲んできた水を入れるのに使っていた樽が有るけど・・・。」


 3人が住んでいるとは思えないほど小さな家の裏に大きな樽が有り、人が入るには十分な大きさだ。


「水を汲みに行かないとならないのだけど・・・。」


 太郎が樽の中を見ると、殆ど入っていない。ひっくり返して僅かな水をこぼすとひどい匂いがしたので、樽を洗う。


「ちょっと何を!」


 いきなり水をこぼされては怒りたくもなる。水は貴重で、汲むのも大変なのだ。


「ハイどうぞ。」

「え?」

「使って良いですよ。」

「は?」

「お母さん、使って。」

「これどうぞ。」


 布を渡されて目を丸くしている。


「ねぇ・・・この水・・・煙が出てるわ。」

「お湯です。」

「透き通って綺麗だわ。」

「私もこれで身体洗ったの。」


 ファリスの時はもっと広い浴室と浴槽だったが、お湯は確かに同じモノだ。


「お、お父さん呼んでくるわね・・・。」





 ファリスの父親と母親が入浴している間、暇なので畑を見る。


「ぼっそぼそに乾いた土だし・・・なんか臭うな。」

「ニンジンを育ててるみたいですねー。」


 スーは葉っぱを見て判断したようだ。

 マナが勝手に一本抜くと、そちらは細長い大根だった。


「家畜はいないのかな?」

「この辺りにはいなさそうね。」


 土に汚れたダイコンをそのまま食べるが、マナの表情が歪む。


「まっずー・・・。」

「何やってんの、いつもみたいに育てたらいいじゃん。」

「そうね。」

「育てる・・・?」


 ファリスが太郎達のやっている事を不思議そうに見ていると、エカテリーナがポチと一緒に近寄ってきた。


「凄いことが起きますよ。」


 ニコニコと笑顔でそういうので、ファリスが太郎達を注視していると・・・。


「お前たち!畑で何やっているんだ!」


 近所に住んでいる人に怒られた。

 それを無視してマナが地面に手を突っ込むと、周囲にある作物が突然大きく成って地面から飛び出した。一つがファリスの頭より大きなニンジン。

 周囲から飛び出たダイコンは父親の太ももよりも太い。


「な、なんじゃこりゃああああ?!?!」






あけましておめでとうございます\(^o^)/


本年もよろしくお願いします m(_"_)m


俺に限った話では無いですが、皆様のアクセスが作者の世界を変えます。

たくさん、来れば来るほど、作者は成長します。


なので、きてくれたひとありがとおおおおおおおおおお!!

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