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第22話 成果

 すこぶる機嫌の良いスーは、どこに行くのにも俺の腕にしがみつく。冗談のつもりで肩に腕をのせたらすごい顔を赤くした。


「迫るのは平気ですけど迫られるとちょっと恥ずかしいですね。」


 もうやめておこう。俺が暴発しそうだ。いい匂いもするし・・・いかんいかん。

 冒険者ギルドに到着すると、カジノに比べればだいぶ人が少なくて落ち着く。スーがカウンターで何やら話をすると紙を何枚か受け取っている。近くのテーブルに着き、その紙を広げた。


「結構ありますねー。これなんか太郎さんに良いんじゃないですか?」


 受け取った紙を見る。


"オーク討伐 10匹程度 報酬25金 期限14日"

"裏山の近くにある洞窟に棲みついたオークが周辺を荒らし始めたので倒してほしい。"


「これ難易度低いの?」

「普通だと思いますよ。私なら一日で終わりますかねー。」


 他にも何枚か有るがこの一枚が凄い。


「勇者討伐・・・なにこれ。」

「最近この王都周辺というか、国境の方で小競り合いが続いているみたいです。結構有名なハンターも参加したらしいですけど、成功率は悪いようですね。」

「前報酬5金ってすごくない?」

「集団で行うので逃げたら返金しなければならないですし、逃亡はカードの記録にも傷が付きます。」

「そうだ、本人証明で偽造されないようにする為に来たんだ。」

「そうでしたね、じゃあこっちで。」


 カウンターに行くと以前の記録を見る不思議な道具が有る。なんか電話ボックスみたいだ。カードを差し込むと画面に表示される。あの時の記録のまま変化は・・・ああダリスの町に入ったことが記録されている。


「記録が読み取れるのは冒険者ギルドの他は、特定の国営施設だけで、ここに自分だけの情報を入れれば良いんです。簡単に言えばパスワードですかね。」

「これでいいかな。」

「パーティ名は入れないんですね。」

「別に必要ないかなって。てか、なんでスーまではいるの?」

「ここにG級ってあるじゃないですか、これグリーンカード所有って意味なんですよ。信頼度が少し上がるだけじゃなく、偽造しにくくなります。私のカードが無いと記録できませんから。」


 いくつかの操作を教わりながら、最終確認を終える。出身地を追加できたのは有り難いかもしれない。フーリンさんの家が俺の住居として扱われているけど、問題はないそうだ。そういう事が有ったら使っていいと、すでに許可を得ていたというのは、スーが今教えてくれた。・・・そうか、忘れてたのか。



    ■---


    鈴木太郎 普人     20歳  代表 アンサンブル

    マナ   普人     15歳  -- アンサンブル

    スー   猫獣人   183歳  G級 ギンギール

    ポチ   ケルベロス   不明  従獣 アンサンブル


    Pass *****


    ■ 記録 ■

    ダリスの町を通過



 ギンギールってどこなのかは分からないが、特に興味も湧かなかった。行くこともないだろうし。しかし、なんかLv1のパーティにLv50くらいのキャラが混ざっている感じがする。


「頑張ってイエローにはしておきたいところです。」

「依頼の難易度は関係ないよね?」

「そうですね。記録の方には残りますけど、不当に記録を伸ばそうとすることもあって、あんまり簡単すぎるのは信用されないんです。」

「どういう事?」

「依頼自体は誰にでも出せるので、二人で組んでお互いで相手の依頼をこなせばいいんです。簡単に増えますよ。まあ、スグばれますけど。」


 冒険者カードのシステムは穴が多いようで実際は不正されることは少ないという事が良く分かった。そしてカードの素材だ。これが高価らしい。国営で大量に作るのでなければこんなに安い値段では手に入らないとのこと。更新されたカードをまじまじと見つめる。名刺よりも少し大きい程度のカードにも今後の活躍を期待したいものだ。

 更新に必要なお金はスーが払ってくれた。所持金0の男は何も出来ないのだ。彼女のカードの中には約2億円近い金額が入っているのだから、ギルドで確認したときに表示されるメダルの数を見てスーがにやにやしている。俺はむしろ怖いのだが。



 用事も終わり、またカジノに戻ってきた。換金してくるらしいのだが、2億円の金塊をどうやって運ぶのか。20金貨にしたらとんでもない量になるぞ。


「それでしたら問題はありませんよ。専用の袋が有りますので。」


 専用の袋とは俺が神さまから貰った袋にそっくりだった。ただし、この袋は誰でも使えるし、スーの顔より小さい。お金だけを入れる専用ではなく、袋の口に入るモノなら無制限に入るのは、同じだった。


「この袋凄く高いんですよ。冒険者時代でも手に入れるのが夢だったんですけど、今日は遂に叶いました。」


 200金塊が10個分・・・一流の冒険者でもほとんどの人が持っていないが、一応流通している。カジノの目玉商品らしい。他にも伝説一歩手前ぐらいの武器も有るみたいだけど、デカくて重くてスーには扱えないとの事だった。さっきから注目されまくりなんだけど、これはどうにもならない。


「もう帰りたいな。」

「そうですねー。」


 カジノを出るときもべたべたしてくる。なんかマナに申し訳ない気持ちになってくる。浮気なんかしないぞ。俺はマナ一筋だ・・・なんか意志が弱い自分がいるなあ。そりゃあ、最初は腹が立ったこともあったけど、美少女であることは間違いないし、なにしろおっp・・・おっと誰か来たようだ。


「気付きました?」

「カジノ出た時から気付いてたよ。めんどくさいなぁ。」


 辺りはまだ暗くない。子供ならおやつを母親にねだる頃だ。こんな時間に人通りが多い場所で襲ってはこないだろう。


「家まで付いてこられても困りますねー。」

「こういう事ってよくあるの?」

「よくある事です。」


 カジノで大勝ちした次の日に死体で発見される。そうでなければ換金して持ち帰った日に狙われる。冒険者カードで本人確認できなければ取り出せないから、現ナマを出したところを狙わないと意味が無いのだ。スーはそのお金を大量に持っている。俺、武器も防具もないんだけど。それにしても治安が悪すぎないか。


「何言ってるんですか、その為に訓練したじゃないですかー。」


 そうか、あの剣と盾を強化した魔法は、その為だったのか。


「今回の件は偶然ですけど、何かあったときに何も持ってないって事が有っても少しは戦えないと困りますしねー。」


 素手で戦う訓練はしていないから、やはり武器は欲しい。武器を持っているイメージを創り出せば、手には黄土色の棒のようなものが浮かび上がる。


「大丈夫出来る。」

「じゃー、おびき寄せますか。」


 二人で裏路地に走り出す。スーが先頭で俺が後ろ。スーの足は速いが何とかついて行ける。これも訓練の成果か。いくつかの狭い通路を抜けると、何も整備されていない広場が見えた。


「予想以上についてきますね、失敗だったかなー。」


 後ろを見ると凄い数の男・・・数人、女もいる。いったい何人いるんだ・・・屋根の上にもいる。ちょっと待ってこの人数を相手にするのか?!

 総勢100名くらい。


「半分は見物ですよ。ちょっと脅せばすぐに逃げるでしょ。」


 スーが走るのを止めて、ゆっくりと歩く。


「この広場は武道大会の開催が近くなると訓練とか決闘とかに使われる広場なんです。だから、普段は御覧の通り誰もいないんですよー。」


 スーが舌なめずりしている。すごく悪い顔をしているんだが・・・。


「まあ、見た感じ雑魚ばっかりですねー。ちょっと脅してやりますかー。」


 大人数を前にしてもスーは怯えない。俺も何故か怖くないぞ。なんというか迫力が無い。だが、少し離れた屋根の上で3人の男がこちらの様子を見ている。何やら指示を出しているようだ。あれが本命かな?


「久しぶりにスーちゃんの力を見せてあげまショー!」


 スーの足元から地鳴りが聞こえる。一つ、また一つと、拳半分ぐらいの丸い石のようなものが浮かんでくる。近いとやばそうなので少し離れると、スーの姿が隠れるくらい沢山出てきた。


「とんでけ~!」


 発声と同時に大量の石が飛んでゆく、イシツブテなんてもんじゃない。小石のスコールだ。だが相手もただ指を咥えて見ているわけじゃない。魔法障壁(マジックシールド)で守る者、盾を構える者。剣で叩き落とす者、全力で逃げる者・・・スーの言った通り約半数は逃げだした。

 地面はえぐられた様に小さい穴がいくつも出来た。怪我をして動けない者達もいるようだが、誰も助けない。近接戦闘の方が得意なように見えたんだけど、スーの魔法が凄すぎる。もちろん俺も助けようとは思わない。あの日の夜の事は忘れていないからだ。ただ、直接俺の手で殺すことが可能だろうか・・・。僅かに身体が震える。


「太郎さんを巻き込んだのは私の責任ですし、何とかしますよ。」


 そう言われると何となく情けないと思う自分がいる。確かに俺よりはるかに強いがスーは見た目が女の子だ。女の子に守られるというのもなんか違う。

 やられた群れは、やられっぱなしではない。たった二人を相手に本気になって攻めてきた。魔法が飛んでくる。スーの魔法ほどではないが、沢山の火球が俺とスーに向かってくる。慌てず、深呼吸して魔法の壁を作った。二人を包み込むように作った大きな水魔法の壁は、全ての火球を受け止める。剣に自信のあるだろう男達が接近してきた。大きくジャンプして水壁を切り裂く。続く男が俺に剣を向けたところで、水の壁を前方に向かって流す。水壁が飛んでくるなんて予想も出来ず、接近したので避けることも出来ず、男達は水に押し流されて元の位置に戻っていった。辺りは水溜りが出来たが、マナの効力が切れれば消える。これなら殺さずに済みそうだ。

 安心して油断した。そこに矢が飛んできて、俺の顔の目の前で止まった。スーが手で掴んだのだ。一瞬の出来事を一瞬で理解すると、血の気が下がる。


「あいつ・・・ちょっと油断できない大物が来ちゃいましたね。」


 スーが睨んだ先は、さっき俺が気にした、屋根の上にいる男だった。










何でも入る魔法の袋欲しい。


普通の巾着袋ぐらいの大きさなので、それほど大したものは入りません。

頑張れば剣が・・・袋口に鍔が引っかからなければ入るかな・・・?


容量無制限ってチートっぽい響きですが、食べ物入れたら中で腐りますし、手を入れて掴んだ時に手が引っかかって出なかったら取り出せません。上手に使わないと、入れたまま取り出せなくなりす。

袋の中は入ったら入った分だけ中が膨らみます。

水をそのまま入れたら他の物もびちゃびちゃになります。

ちゃんと容器に入れてから入れてください。


水(液体)だけ入れたらすごいことに成りますね。

危ない\(^o^)/

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― 新着の感想 ―
[一言] 中に川の水を山ほど入れたら、津波ができる?(゜_゜ )
[一言] 口が巾着袋サイズでも容量無制限なら… 筆記用具とかアメチャンとかイヤホンとかスマホとかバッテリーとか溜まりに溜まったカードとか(略)色々入りそうだなぁ…欲しい。 (頭のなかに思い浮かべたも…
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