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番外 心配される男達

今回の番外編の最後になります。


最後に少し追加しました...07/29

 今日も魔物退治に向かう為、部隊に参加する。

 ところが・・・部隊長が不在で、城から少し離れた宿舎前の広場に集められている。他の兵士達も普段と違う感じで何か雑談をしているようだった。


「カールも呼ばれてるのか。」


 俺を気軽に呼ぶ男は生粋の軍人で、軍人の家庭に生まれた所為で冒険者に成れなかった哀れな男だ。剣術も魔法技術も申し分ないのに、軍の規律と家庭の約束に縛られるとはな。ちなみに俺はコイツの名前を知らないし、興味も無い。


「アンタは昇進したんじゃなかったのか?」


 前回と前々回の魔物退治で一緒に戦った男は、俺と似たような派遣組の一人だ。俺とは違って特別優遇されている。


「今回は魔物退治じゃないぞ。」

「どういう事だ?」

「国境付近で大規模な戦争が起こるらしい。」

「・・・本気で言ってるのか?」


 頷きは小さいが力が籠る。


「そんな重要な情報はどこから手に入れたんだ?」

「たった今、ついさっきだ。」


 そう言って向きを変える。カールも合わせてその方向に向くと、良く知る事になった有名な人が何人もの部下を引き連れて歩いていた。流石に顔の筋肉が引き攣る。


「ダンダイル様が指揮をするのか?」

「そうだ。何しろ勇者まで現れていて、ザイールの町へ急いで行くらしい。」

「そう言えば以前にギルドの依頼で勇者を見た事は有るが、あんな化け物相手にしたくないぞ。」

「ダンダイル様が専門で対処するらしい。」


 過去にも対勇者で人が集められた事が有った。その時に参加したが勇者に直接攻撃した奴は一人もいない。いや、一人居た。だが俺は直接見ていないし、ただの噂だ。だが、勇者だからといって必ず強いわけじゃない事も知っているが・・・暴れている勇者はどれもとんでもない強さのモノばかりだ。

 あのダンダイルは強力な風魔法を駆使して吹き飛ばすという対処法で何度も危機を乗り越えているが、そいつは直接殴って吹っ飛ばしたという。

 今でも信じられない話だ。


「ちょっと待て、戦争(いくさ)と言うからには相手がいるだろう。勇者がガーデンブルクの味方をしているって事か?」

「だろうね。・・・ついでに言うとダンダイル様は魔王の部下として正式に軍に復帰している。もっと活躍してあのお方の傍で働きたいものだ。」


 俺には興味の無い話ではあるが、確かに魅力的なポジションだ。軍人として上を目指すのなら活躍しやすい事だろう。魔王の歴代で最強と云われるほどの人物だ。それが現魔王の下で働くというのだから、何が有ったのか気になるところだが・・・詮索すると碌な事が無い。冒険者じゃないんだ。ヤメておこう。


「ルカ君。」


 考え事をしている俺の横から声がする。だが俺の名前ではない。


「・・・か、閣下。正式に復帰された事、おめでとうございます。」


 こいつルカって言うのか。しかし下手な言葉使いだな。


「ん?」


 振り返るとそこに居た。こっちくんな。


「カールも一緒か。二人の活躍は聞いているぞ。」

「あ、ありがとうごザいマス。」


 声が変だぞ、ルカ君。


「ほら、カールも・・・って、閣下はカールをご存じで?」

「私が直接面談したからな。」


 おい、羨ましそうに俺を見るな。


「二人にピッタリな任務先を用意したのは私ではないが、承認したのは私だ。ルカ君は特に父親に頼まれたしな。」

「父上にも感謝しています。」

「ふむ。チャチーノ家は代々軍人で、私も助かっている。このくらいの事なら周りも納得するだろう。」


 俺は納得してないけどな。


「おい、カール。閣下の前だぞ?」

「・・・閣下の方から来たんだぞ。」


 元・魔王で現・閣下が笑い声をあげる。


「軍に来たのだから多少は規律を守ってもらわないと困る。君が望んだことだぞ。」

「確かにその通りですが、上官が無能では困ります。」


 この場に居る上官と言えばダンダイルなのだが、カールの言う上官は現地で所属した部隊長の事である。


「君が所属した部隊から苦情が来ている。強いのは認めるが命令を無視されて困る。とな。」

「回りくどい事や命を無駄にするような命令なら無視しますよ。」

「確かに報告書を見ると君が正しかった。だが、ここはそういう場所ではない。武勲からいえば昇進させてやりたいが、今はまだ無理だ。今回の任務を過不足なく、大人しく過ごしてくれれば二人の昇進は約束しよう。」


 ルカは大喜びで感謝し、カールは一礼だけした。

 しかし妙に念をおされたものだ。まぁ、それならそれで大人しくするのも軍人の務めか。

 ダンダイルが立ち去った後、ルカにこっぴどく叱られたのだが、一緒の部隊に居る時は一緒に命令を無視した筈なのだが?

 やはり軍人主義の家庭(エリート)は違うな。





 国境は既に勇者が暴れた後だった。あちこちに陥没した家や地面がある。再び攻め込まれる前にダンダイルは現地の兵士達と引き連れてきた兵士を統合し、再配置した。

 そして、二人は最前線にはいなかった。なぜなら、所属した部隊は周辺の警備をするようにと命令を受けたからだ。

 ダンダイルが特別に二人を自分の部隊に入れることも出来たが、忙しくてそれどころではなかった。勇者に何度も攻め込まれ、その後方にはガーデンブルクの兵士達が控えている。

 たった一人の勇者にこれほど苦労するのは市街戦の所為もある。ダンダイルほどの魔法力であれば一気に吹き飛ばせるが、それでは町にも被害が出てしまう。どうにかして町から引き離し、少しでも遮蔽物の少ない平原で勇者だけを狙ってピンポイントで魔法をぶつけようと考えていた。だが、その方法を採るには攻め込まれ過ぎていた。

 そこでダンダイルは自分自身が最前線に出て、自分を囮として引き付けるという危険極まりない行動に出たのだった。

 結果としては成功したが、ダンダイルもそれなりの傷を受けてしまった。だが、カールとルカはそんな事を全く知ることも出来ず、戦況がどうなっているかも謎のまま、周辺を警戒巡回するという、意味不明な命令に従っていたのだった。





 魔王軍が勝利したという良く有る話で戦争は一時的に中断された。

 それよりも謎の男が周辺を水びだしにしたという・・・真実にしては誇大過ぎではないかと思う話が軍の内部で広まっていた。

 噂の出処がダンダイルの指揮する兵士達から出ているのだから、真実である可能性は高いが、そんな優秀な魔法使いがこの国に居たなんて話は知らない。ルカも同意見の様で、街の周囲に広がる森林をウロウロしながら、何故か魔物も殆ど出ず、退屈な周辺警備は毎日続けられた。

 そんな或る日の事。


「辞令書が出ている?」

「俺とカールの辞令書がこの臨時司令部に届けられたらしいんだが、教えてくれた奴の話によると、その場で紙をクシャクシャにしてゴミ箱に捨てたそうだ。」

「なんでそんな事を・・・。」

「まぁ、俺もそうだがカールはかなり嫌われているからなあ。」

「そんな事をするから余計に部下から信用されなくなるんだろうが・・・ソコまでして地位を守りたいかね?」

「まぁ・・・そういう人もがいるのは否定しないが、俺の親が知ったら大激怒だろうね。」

「そう言えばお前の親って何してるんだ?」


 軍人なのは知っているので、この場合はどんな任務を主にしているのかという事になる。


「内部調査だよ。」

「ああ、不正が無い様に監視してるやつか。」

「一応、前線でも戦った経験は有るんだけど、昔ほど戦争はしなくなったらしいのと、兵士の戦闘レベルが下がり過ぎて困っているのを憂慮して、ナンタラカンタラ言ってたけど。」

「今回ほどの規模は珍しいからな。」

「そーだね。」

「臨時とはいえ司令官なんだからそれなりの階級だろう。そんなに俺達って目立ってたのか?」


 元々はダンダイルが対勇者様に設置した臨時の司令部は、何度か訪れる事は有っても今回ほど長期間滞在するのは珍しい。

 対処すれば直ぐに城に帰ってしまうのだ。


「少なくともカールに対してはかなり報告があったらしいよ。」

「・・・隊長が筋肉バカばっかりなのと、どうも出世欲が強い奴らばかりでなあ。」

「そうなった理由も理解しているらしくて、あまり問題にしない様にしているって話なら聞いた事が有る。」

「どうしてそうなったんだ?」

「簡潔に言うと軍人が無能で冒険者が有能だからって事になる。」

「軍人主義のお前が言うと重みがあるな。」

「元冒険者に認めて貰ったという事で手を打っとくよ。」

「そうだな。ちょっと言い過ぎた。」

「まあ、謝られるほどでもないから良いけど、実際問題として兵士の質が下がってるのは困るからね。」

「戦争とは精神と肉体を鍛える為に人類に必要な糧である。」

「なんだい、それ。」

「古の時代の偉そうな軍人の言葉らしいが・・・そういう奴に限って生にしがみ付いて生き残るんだよな。」


 苦いコーヒーを口に含んだような表情でルカが笑っている。他人に命令する立場の者は、少なからずそういう場面がある。多くを助ける為に少数を犠牲にするのは当然の算数であって、100人が生き残る為に1人が死ねばいいのなら、そういう命令を平気で発するだろう。


「・・・こんなところで立ち話も意味は無いし、執務室に行くか?」

「そうだね。」


 二人は自主的に巡回警備を中断し、司令部の執務室へ向かった。





 証拠となったはずの辞令書は既に焼却処分されていたが、いつまで経っても来ない二人に痺れを切らしたダンダイルが、自分の信頼できる部下を直接向かわせたことで解決した。臨時司令官は当然の事ながら降格処分がその場で言い渡され、臨時司令官代理なる者が新たに任命された。


「毎回色々な問題を作っているな。」

「俺が作っている訳ではありません。」


 執務室に呼ばれたカールとルカは、挨拶するよりも先に一言会話を交わし、ダンダイルと相見(あいまみ)えた。ルカの方は妙な緊張感が有るが、カールは食堂で同僚と会話する時とたいして変わらない態度だ。


「原因が有るとは思わんのかね?」

「結果に問題は無いと思いますが。」

「実力主義に生きた者が言うと重みが違うな。」

「ありがとうございます。」

「・・・褒めてはおらん。だが、軍人も実力主義だ。結果が重要視されるのは仕方が無いが、今のような大規模な戦争の減った時代では活躍する場面も少なくてな、他人の昇進を邪魔するような輩が増えているのも事実なのだ。」

「閣下も気苦労が多いようで。」

「ルカ君の父親にも協力してもらっていて、罰則も厳しくしているのだがあまり効果が無くてな。何しろ軍人に成りたがる者も減っているから・・・、いや、今はそういう話をする時じゃなかったな。」


 ダンダイルがいつまでも立っている二人を椅子に座らせると、デスクの引き出しから書類を出す。


「新しい任務ですか?」

「ルカ君とは別になるが構わないかね?」


 なんで俺を見るんだ。


「気にしていません。」


 そんなに分かり易くガッカリするな。


「ルカ君の方は暫く父親の所で執務の勉強だ。実戦は十分だろう。」

「承知いたしました。」


 十分・・・なのか?


「どうした。なにか訊きたい事が有りそうな顔をしているな。」

「・・・彼は強いと思いますが、冒険者の中で言うとイエローカードレベルです。」

「イエロー?」

「冒険者カードです。」

「最近の冒険者は強い者が増えたというのは知っているが・・・。」

「兵士が弱すぎると思いますよ。」

「お、おい、カール。」


 ダンダイルは真面目な表情で腕を組み、腰かけた椅子を座り直す。


「そんなに弱いと思うか?」


 二人の視線が痛くて熱い。


「はっきり言うと弱いです。」

「そうか・・・。」

「ではそうだな、暫く私の直属となってもらい、兵士の強さを調査して報告してもらおうか。」

「え?」


 なんで羨ましそうに見るんだ。


「兵士の強さを・・・?」

「そうだ。お前の強さは重々承知しているつもりだが、この国の兵士のレベルで考えた場合だ。ハンハルトやガーデンブルクの正規軍はかなり強いという情報もある。」

「他国の方は・・・兵士よりも将軍級の質が悪いと聞きましたが。」

「良く知っているな。」

「閣下に比べたら若いですが、舐めるように冒険しましたから。」

「各国に深い知り合いでもいるのかね?」

「強さに合わせて知り合いが増えてるだけです。」

「なるほどな。」


 ダンダイルは暫く無言になり、ルカとカールは顔を見合わせた。


「すまんな、最近忙しくて少し疲れているのだ。後で辞令を発行しておくがルカ君は自宅に帰ってもかまわんぞ。」


 自宅が城の近くに在る奴は楽で良いな。

 まぁ、俺は城に住んでいるようなもんだが・・・。


「カールは今までの功績と、昇進を先延ばしの分が有るから私の権限で曹長迄格上げしておく。」

「いきなりそんなに?」

「私の人事権限ではここが最大なのだ。これ以上昇進するには推薦状を正式に出さねばならん。とは言っても君に付ける部下は二人だ。ただの手伝い程度だと思ってくれていい。」

「最大まで上げていただく理由が・・・。」

「ここから先は機密事項になるんでな。カールにはいずれ教える事になるだろう。」


 だから羨ましそうな目で見るなって。


「では今回は解散だ。二人は良いコンビだったか?」

「・・・どうしてこんな事を訊くのですか?」

「次に会う事はもはや偶然でしかないだろうからな。任務が重なる事はないだろう。」


 そう言って解散となった。

 ルカは今後の昇進も任務も、実は予定通りであり、いずれは軍務官として軍内政を担当する事になるのだが、カールの方はダンダイルの予想が良い方向に外れた為、気に成るあの一般人を担当させようと考えたのはこの時が初めてだった。





 その後のカールは順調に仕事を熟し、戦闘は無かったが予定通りの作業日数の半分を過ぎた頃、報告にやって来た。

 報告書を確認したダンダイルは予想よりもさらに低い評価を受けている兵士達にため息をついていた。軍用装備品は並の冒険者レベル、大砲投石等の兵器関係は手入れが行き届いていて十分、魔装具はかなりの低評価、そして一番の問題である最前線の兵士達はと言うと・・・。


「全体行動としての統率力は良いですが、個人となると戦闘の経験が少な過ぎるのも有って野犬程度でも襲われたら逃げますよ。」

「これは酷いな。最前線でこの程度なのは困るぞ。」

「団体である事と、敵が人間であれば駆け引きで何とかなりますが。前回の戦争も勝ったのでしょう?」

「勝ったと言えば勝ったが・・・アレは最後が・・・。」

「やはり、何か理由が?」

「噂通り・・・とだけ今は言っておこう。」

「噂の魔法使いがいるのですね。」


 噂で言う水魔法の使い手だ。


「嗅覚が良いのは良い事だが、今その鼻は軍内部に向けて貰えるかね?」

「・・・承知しました。で、俺の次の任務はどういったものになるので?」

「君の強さを見込んで兵士達を鍛えてもらいたい。」

「鍛えるというと俺が教官に?」

「そうだ。」

「新兵が入隊する予定だが、他にも鍛えてもらいたい兵士達がいてな。」

「何か別の事情がありそうですね。」

「私が個人的に使える兵士達も少し鍛えてもらいたいのだ。カールにも直属の部下を率いてもらう。」

「隊長に成れと。」

「今は部下としてではなく生徒として鍛えてもらう事になる。」

「規模はどの程度になりますか?」

「1000人の中から選別してもらう。使えない者は切ってくれて構わない。」

「精鋭を作るおつもりですか・・・。」

「ハンハルトは今のところ心配はないがガーデンブルクに対抗するには必要なのだ。魔法部隊も欲しい所だが、優秀な人材と言うのは個人的な活躍を好むんでな。」

「剣技で良ければ半人前には育てますよ。」

「うむ。頼んだぞ。」


 カールは選別するという事をせず、全員を集めて鍛え直すことにした。それを知った時のダンダイルは驚いたが黙認し、結果を楽しみに待つ事にした。





「まだ一ヶ月でこれだけの成長を?」


 今回の報告はダンダイルの直接の部下で、カールではなくもっと古くから補佐をしていた男だ。個人的に頼むときによく使っていて、普段はフリーにしておくという変わった役職でもあり、太郎達を監視させた時の兵士と同じだ。

 

「凄いですよ、たった一ヶ月でこの成果は。」

「それにしたって厳しい訓練だとしたら耐えられない者も多いだろう。」

「彼流のやり方でしょうかね。強さを細かく順位付けしています。その上でクラス別に分けて指導するという、かなり効率的なやり方だとは思います。」

「解っていても面倒でやらなかった方法だな。」

「クラス分けすると優劣で格差が生まれるのは好みませんからね。」

「軍人は階級で上下が決まるからな。こんな事をしたら階級の意味がなくなる。」

「ある意味、彼の実績だからこその方法とも言えます。」

「あちこち転戦した上に各地の隊長を無視して独自の作戦で味方を助けた・・・か。」

「彼が隊長に成ったら部下にして欲しいと望む者が多くて、それが一因となって頑張る者が多いようです。」

「確かに誰しも優秀な上官を欲するからな。」

「それは閣下の事でも有りますね。」

「上司をおだてるモノではないが・・・魔王様に直接頼まれてしまってはな。」

「私個人的な意見ですが、閣下に特別に使っていただいて嬉しく思います。ですが・・・。」

「カールに立場を奪われると思っているのかね。」

「・・・。」

「カールは隊長になるのだお前は安心していい。と、いうよりカールにこの任務は無理だろう。」

「確かに、隠密と言うのは苦手そうですね。」

「そう言う事だ。そしてまだ頼む事が有る。」

「何なりとご命令ください。」


 



 それから数日後。


「この任務は?」

「この鈴木太郎と言う男を補佐してほしい。」

「独りだけですか?」

「いや、太郎君だけではなく、女二人と、ケルベロス一匹だ。」

「なるほど、その太郎殿は閣下にとっても大切なお人のようですね。」

「まぁ、どちらかと言うとこっちの少女の方だがな。」


 エカテリーナの存在は数に含められておらず、当初は太郎、スー、マナ、ポチのメンバーだった。子供を連れて行くとは思っていなかったのは仕方が無い事ではある。


「少女?」

「はっきり言うがこの少女はあの世界樹の生まれ変わりみたいなものだ。」

「は?!えっ・・・あ、いや、申し訳ありません。」

「気にするな。それにしても、だいぶ軍人に染まったようだな。」

「毎日のように各部署の将軍がやって来て部下を鍛えて欲しいと頼みに来るのです。頭がおかしくなりそうですよ。」

「それなら喜ぶと良い。暫くは城に帰れない。」

「それはそれは・・・楽しくなりそうな任務ですね。」


 城に長く居座った所為で外に出たくて仕方がないカールは、場内に飽き飽きしている。自分の部下として集める予定の者も決めていたし、早くこの任務を終わらせたかったが、どう考えても一年程度で終わるようなものではない。数年かけてじっくりやるような事をやっているのだから、まさかこんなに早く新たな任務が来るとは思っていなかったのだ。望外の幸運とはこのことだろう。


「しかし世界樹とは・・・本物なのですか?」

「偽物だと思うのは自由だが、任務はやってもらう。」

「慎んでお受けさせていただきます。」

「そうか。では一両日中に準備してくれ。」

「そんなに早くですか?」

「可能なら今日中で。」

「もちろん可能です。いつでも出発できるようにしますよ。」

「・・・まさか、今すぐ発てるのか?」

「予想していた訳ではありませんが何時でも出られるようにリストも作成済みです。」

「なるほどな。軍人と言うより旅に出たがる冒険者の様だ。」

「元冒険者ですので。」


 苦みと渋みを十分に含んだ微笑みをみせられたカール・チャライドンは、隊長として任務に就いた。それは太郎達との出会いとなり、これからの常識外れの世界を軍人としても、元冒険者としても、楽しむ事となる。

 その一方で太郎を心配する者が他にもいる。

 この女性は太郎だけでなく、ダンダイルの事も心配しており、新任の隊長に付いては不安でもあったが、自分が出る訳にもいかず、ただ黙って見守っているに留まっている。

 結局は自分で行く事になるのだが、それはまだ先の事だった。






0時1分前に慌てて投稿したので誤字編集しています/(^o^)\


ルビも振ってないので、ちょこちょこ作業しています


すんまそん\(^o^)/

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