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第94話 それぞれの秘密

「他の国に自慢できる数少ない男を失うのは惜しい。だから、聞かなかった事にするから、この国から出て行くという事はしないでくれ。」


 心は「頼む」と叫んでいた。それが国王の本心だった。

 ジェームスは国王より立場が上ではないし、革命とかクーデターとか興味もない。ハンハルトの危機を救ったわけでもないし、国王を直接助けた事も無い。だが、フレアリスが事件を起こして投獄された以降のギルドを支えていたのは間違いなくジェームスだった。もちろんたった一人だけではないが彼の活躍が特に目立っていたのだ。

 仕官の話は幾度となく届けられたが断り続けた。国王に直接呼ばれてからも断っていた。奴隷制度について言及したのも今回が初めてで、気は優しくて力持ちと言う絵に描いたような良い人からそんな言葉(セリフ)が出るとは思ってもいなかった事が国王には衝撃(ショック)だった。

 だが、どんなに良い人でも、一介の冒険者である。国王の(こうべ)が力なく垂れかけているのを見ると忍びない。


「この国を棄てる気は毛頭ありません、だから安心してください。これからもいつも通りに活動は続けますが・・・。」


 国王が座り直すのを待つ。誰もいない周囲を気にしながら声量が一回り小さくなる。


「ですが、あまり私に政治の話を持ち込むのはご遠慮頂きたいです。」

「あー、いや、うむ。話しやすいのでツイな。」


 国王は相談する相手が少ないというのも有り、頻繁に会っている訳では無いが、ジェームスには色々と話をしている。口調が軽くなってしまう原因はそこにあり、本来はそのような相手ではない事は承知しているが、時代の流れが変えてしまっているのだ。

 国王に成った時から国王の味方は少なく、表立って敵対の姿勢を見せる者が少ないのはこの国が弱いと思われているからで、平和な時期は貿易で積み上げた財力で安定を作っていたが、今はどう見でも推進力の無い船と同じだ。それも沈みかけなのだからどうしようもない。

 港の復活で昔を取り戻せると信じ切った国王に今回の事件は辛過ぎた。


「もっと将軍達を信じてあげてください。」

「う、うむ。」


 このような時、弟として育った精神風土でついつい負けてしまう。国王になる予定だった兄の背を見ていた時は羨ましかったが、自分が国王になって喜んでいたのは数ヶ月ぐらいで、知れば知るほど面倒な仕事だと理解した。王様になればもっと楽に遊べると思っていたなんて、今となっては恥ずかしい事実である。


お前(ジェームス)のお節介癖は治っておらんな。」

「そ、それは言わないで下さい。」


 二人だけの秘密があり、若い頃に立場を知らず遊んでいたという事だ。幼馴染と言う程若くは無いが、遊んでも平気な弟という軽い立場と、貴族らしからぬ言動だった頃に二人は出会っている。酒場、盛り場、小さな冒険と、いつしか会う事が無くなった数年後に、ギルドの活躍を耳にした国王が召喚して再会した当時のジェームスと国王は驚いたが、二人だけの秘密は今も守られていて、この事を知る者は他に存在しない。

 今となっては遠い昔のような気もして、友誼は有っても立場は大事にするジェームスを心から信頼していた当時を懐かしく思う。

 ちなみにジェームスの方が年上だ。


「いろいろと、済まなかった。」


 ギルドの功績だけで国王に直接声を掛けて貰えるほどに上り詰めれば十分だ。それ以上はいらない。そう思うジェームスの目の前で国王は丁寧に頭を下げた。誰も見ていないから出来るのだ。そして、視線を戻した時に今更にして気が付いた事が有る。


「・・・髪の毛はどうしたのだ?」


 短くなり過ぎた頭髪を掻きながら答える。


「ドラゴンの火球が直撃して燃えたんだ。」

「直撃してもその程度で済むとは・・・。」

「身体も服も燃えて真っ黒焦げになったんだが、俺に高級ポーションを飲ませてくれた稀有な奴がいて・・・。」


 ジェームスは借り物の服を着ていて、いつもの帯剣もない。高級ポーションは通常での冒険者に必要かと言われればそうでもない。何しろ値段が高すぎるだけでなく、作れる者も限られているからだ。


「ドラゴンの火球を喰らって生き残っていられる方が凄いのではないか?」


 ジェームスは貴重な体験をした事に間違いはないが、もう一度体験したいとは思わず、小さく身震いをした。


「そのポーションで建物も治らんものかな。」


 国王としては事件の内容(ドラゴン)について詳しく聞くよりも、今後の復興の方が重要となった。半壊した城は国庫でどうにかするとして、貴族達を支援せねばならず、とにかく資金(かね)が無い。これではまたキンダースに借金してしまう。もう少しジェームスと話をしたかったが、外で待たせている将軍達に不信感を持たれてしまう為、時間的にも限界だろう。

 大きく深呼吸した国王が改めて座り直して姿勢を整えると、何も言わずともジェームスが後ろに下がり扉を開ける。

 外ではまだ疑っている将軍達がジェームスを睨み、場の空気の所為で機嫌の悪いフレアリスの肩を軽く叩くと、終わった事を知ったが納得はしていない。


「いいの?」

「あぁ。」

「俺達は良くないんだがな。」

「国王様に直接訊けばいいだろう。俺には荷が重すぎる事件なんでな。」

「お前が何を知っているか知らないが、仕官を何度も断っている癖に態度が悪いと思わんのか?」

「いいのか?俺が将軍になるとお前らが下になるのかもしれんのだぞ。」


 分かり易い舌打ちをするが、ジェームスの実力は知っている。鬼人族(フレアリス)のような圧倒的なパワーは無いが、剣術は一流で魔法もある程度使える。冒険者としての知識も豊富で、戦闘経験は将軍の誰よりもはるかに多い。

 将軍達は国王を待たせるようなことは出来ないのですぐに戻ると、嫌がらせの様に音を立てて扉が閉じられた。フレアリスは文句の一つも言おうと思っていたが、ジェームスにまた肩を叩かれた。今回の件でフレアリスはジェームスのイメージを大きく変えていて、素直に受け取った。


「これからどうするの?」

「復興は俺の仕事じゃないしな・・・太郎君達の所へ戻ろうか。」


 肯いたフレアリスと共にジェームスは戻ろうとしたが、途中でギルド職員に事情の説明を求められ連れていかれてしまった。ドラゴンの脅威が消え去った事を皆に伝えなければならないし、遺体や怪我人の運搬も手伝ってほしいと頼まれれば断れない。

 結局フレアリスが一人で太郎達の所に戻って来た時は、太郎も自力で歩けるぐらいに回復していた。





 食事を終え、太郎達が詠唱魔法について話をしている。食後には太郎の魔法で出した水を飲んでいて、ピュールが驚いていた。


「お前・・・この魔法は何だ?」

「神気魔法よ。」


 答えたのはマナで、太郎はまだ水を注いでいた。


「神気魔法ぐらい俺でも知ってるぞ。どうやって覚えたのか教えr」


 フーリンさん、もうやめてあげて。見てるこっちが痛い。

 ピュールを黙らせてから会話を戻す。


「詠唱魔法について詳しい事は調べても何も出てこなかったけど、その名残として魔道具が有るのは解ってるわ。いろいろと使われているけど仕組みが変わらないの。ギルドでも使ってるけど、見てもさっぱりで。」

「そんな研究もしてたんだ?」

「魔法に関わる事なら基本的に何でも。」

「私も研究対象だったもんね。」

「今だって詳しく研究したいです。詠唱魔法は私も使えませんし、太郎君の言っている言葉も理解できません。存在は知っていましたが魔女も知っているのなら使えるって事なのかしら?」

「使えないらしい。」

「使えないのに教える事が出来るの?」

「知っているだけという事だろ。」

「あの程度の魔法なら詠唱魔法に頼らなくても使えるって事じゃないの?」

「でも無制限に使えるのならだれでも欲しがるんじゃないんですかー?」

「そう・・・それよね。だから便利過ぎて危険というのも納得できるわ。」

「独自の魔法言語か・・・。」

「太郎君の言語加護(のうりょく)は優秀過ぎるわね。」

「再現は出来ているようだけど・・・効果が無いって事は・・・。」

「封印されているというより別の事情がありそうね。」


 詠唱魔法の恐ろしい所はその呪文を唱えれば全く同じ効果の魔法を誰でも使えるという点だ。言葉を使ってイメージ力を補うのとは違う。


「詳しい事は直接マリアに訊いた方が早そうねぇ。」


 それが出来れば苦労はしないのだが、だからと言って会いに行こうとも思わない。興味は有っても自ら危険に飛び込む必要もないし、存在が限られているのならそのままの方がいい。


「新しい魔道具がなかなか作られないのも、その元となるものを理解している人が少ないからでしょうね。」

「太郎の居た世界じゃたった数百年で色々変わったのにね。」

「・・・何の話だ?」


 ピュールが興味を示したのでフーリンに殴られた。もう見たくないです。


「勇者に詠唱魔法にハーフドラゴンに世界樹、ここは秘密の宝庫だな。」


 マギがビクッとしたが、ピュールはまだ気が付いていない。


「神気魔法は危険だ。お前はそれをわかってr」


 今度は殴られる前に自ら言うのを止めた。強い視線を感じた事で身体ごと反応した結果だった。今度は別の話をする。


「それにしても、良く平然と話せるな?」

「・・・へ?」

「お前だよ。」


 死にかけた人とは思えない態度なのは間違いない。何しろ加害者が目の前にいるのだから、恨みを込めた一言が有っても変ではないのだ。


「太郎は・・・ね、ちょっと私の影響受け過ぎちゃったかも。」

「影響?」


 マナがトコトコと歩き、太郎に寄ろうとしたのだが、ピュールの後ろに立った時にとても懐かしい感覚が有った。


「あれ・・・あんたも結構な・・・、そうよね。そうじゃなきゃここに居られるはずないもんねぇ。」


 マナが妙に納得した表情でピュールの頭を撫でる。少し嫌がると思ったが何も言わずに受け入れていて、少し頬が赤くなっている。


「マナ様?」


 フーリンの問いかけを無視してマナはピュールを覆うように後ろから抱きしめる。それは、母親に似た感覚を思い出させていて、愛情の薄かったピュールにはすごい効果が有るようだ・・・俺にも効果が有るぞ。

 この時のマナは、聖母と云われても不思議の無い程の優しさを感じさせ、全てを包み、全てを許してしまいそうな、強い波動を感じた。こんなにはっきりと感じたのは初めてかもしれない。



 抱きしめられたピュールは涙と鼻水を垂らして泣いていた。








子供の容姿で大人の魅力・・・うーん・・・羨ましい。

俺も抱きしめられたい\(^o^)/


あれ・・・なんか違うな・・・えーっと。

うん。


後書きって何を書くところだっけ?(

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