プロローグ
初投稿です。
俺こと風峰理苑は、身長160cm、体重50kg、県内でちょっと上ぐらいの進学校に通い、成績は中盤をうろちょろしている、帰宅部に所属し趣味はゲームとラノベやアニメ観賞という高校2年生だ。今は活気溢れる昼休み、ガヤガヤうるさい教室の机で俺は突っ伏していた。そのとき、嫌な足音がこちらに向かってくるのを感じた。
いきなり髪を引っ張られ強制的に引き起こされる。
「おいおい、また寝てんのか?昨日の夜、徹夜でエロゲでもしてたんじゃねえの?」
「うわ、きもっ。こいつ変態だからあり得るぞ」
「あはは……、そんなことしないよ」
痛みに我慢しながら苦笑いで答える。まあ、徹夜でってのはあながち間違いではない、ずっとゲームしてたからな。18禁ではないぞ。まあ、そんなわけで授業中は基本居眠り。ちょっとした問題児って感じだ。
そんな俺の返答を聞かずに何が面白いのか大笑いしているグループ。
話していた内の一人は里中大輔。その他バカ笑いしているのが大山孝二、竹下友紀だ。クラスの連中はこっちを見て舌打ちや暴言、クスクスとわらっている奴もいる。もう、いつものことで慣れてしまった。これが今の俺の現状、クラスで虐めにあっているのだ。
話しかけてきたのが俺の虐められる原因になった矢神勇斗。クラスカーストのトップでサッカー部所属、運動神経抜群、顔もカッコよく、高身長で女子人気も高い。こいつは中学からの付き合いで高校に入学してから俺のオタク趣味を暴露、さらに、中学の頃なぜか女子の体操服が俺の鞄に入っていた事件も暴露。おかげで高校でも虐められることとなった。中学の頃ほどひどくはないが。
そして俺には、もうひとつ憂鬱な事がある。
「風峰君、次の授業、移動教室だよ。一緒に行かない?」
俺を取り巻く4人、矢神以外を退けニコニコしながら話しかけてきている彼女だ。名前は星宮陽香。
彼女が話しかけてきた瞬間、男子の嫉妬と怒りの視線が俺に集まる。
もう視線だけで射殺されてしまいそうなほど。
それもそのはず、彼女は学校の女神。容姿端麗で成績優秀、責任感が強く、みんなに頼られ、おまけに先生からの信頼も厚い、ショートボブの髪型が特徴のこのクラスの副委員長だ。そんな俺とは一生関わることがないであろう陽キャのお手本みたいな人物が何故か俺に話しかけてくる。
今日珍しく小宮が寝たふりをしている俺に絡んできたのは、彼女と俺が一緒に登校してきたからだろう。たまたま通学路で会ってそのまま学校へ、毎日時間ギリギリ登校の俺には逃げ場などなく、もういいかと諦めつつ教室内に入ったときの視線の集まりようは凄かった。新手の拷問だな、あれは。
それと、今回のような時、星宮への返事は基本的に「ああ」とか「ええと」とか曖昧なものでいい。矢神が勝手に星宮と話し出すからな、俺としてはありがたい限りだ。俺はただそこに居るだけでいい。
そんな中迫ってくる影が2つ。
「勇斗、またそんなことやってたのか。理苑も、ちゃんと態度を改めろ、君にも原因があるんだからな。陽香が優しいから助かってるんだぞ」
話しかけてきたのはこのクラスの委員長。身長は180cmを超え、成績はいつもトップ、運動をやらせればすぐにマスターし、超絶イケメン、正義感に溢れ、ちょっと臭い台詞も笑顔で発し、ファンクラブまであるという、完璧な男。東堂誠也。このいじめに関して、というか殆どの物事に関して中立で誰とでも分け隔てなく接する。彼のおかげで俺へのいじめがエスカレートしないと言っても過言ではない。まあ、もうちょっと早く止めにきて欲しいけど、欲はいうまい。
「ごめん、どうしても眠くなっちゃうんだよ」
「あっ誠也、ていうか、私はそんな気持ちで話しかけてるんじゃない!」
こういう風になって東堂と星宮が言い合いになるのがテンプレだ。星宮の言動によって視線が一層集まるが、東堂と星宮という学校一の美男美女のおかげですぐにそちらに視線がいく。
「あなたも毎日大変ね」
「そう思うなら、星宮に俺と関わるなと言っといてくれ」
「それは無理ね。あの子意外と気が強いのよ」
「はあ、さいですか」
彼女は早乙女立夏。長い黒髪とちょっとのつり目が特徴的なカッコいい女子だ。彼女は東堂と星宮と幼なじみらしい。マジで東堂の主人公適性が高すぎる。そして、彼女は俺が気楽に話せる唯一の人物だ。この場面限定だが。それ以外で話そうものなら、またも嫉妬と怒りの視線で心をすり減らしてしまう。
会話も程ほどに美男美女が視線を集めているうちに自然に移動してしまおうと席を立ちドアに向かう。だが、後ろからパタパタと足音がする、嫌な予感しかしない。
「何で勝手に行っちゃうの?一緒に行こうよ」
「ええと」
「陽香は世話好きだな、まったく。理苑もあんまり陽香に迷惑かけるんじゃないぞ」
「あっはは……。」
迷惑かかってんのはこっちだと叫んでやりたいが、ここはグッとおさえなければ。はあ、俺ほんとに視線だけで殺されてしまうんじゃないかと思ってきた。
とりあえずトイレにいくから先に行っててと言ってトイレに逃げた。
トイレに行くまではどうだったかって?視線じゃなくて刃物が飛んできたかっていうぐらい痛かった、主に心が。
そんなこんなで授業も終わり、ホームルーム中。先生のありがたい話を聞いて、さあ帰ろうと鞄をとった時
「ねえ、一緒に帰らない?」
君はことごとく俺の平穏をぶち壊しに来るなぁ、おい。回りを見てくれ、般若が一杯だぞ。だがしかし、そんな般若達はある男子生徒の発言で注目を変えた。
「お、おい、なんだこれ。」
皆こっちを向いて気がついてなかったのだろう。それを発見したとたん教室はざわめきだした。
教室の真ん中、そこに金色に輝く球が浮遊している。それは心臓のように脈動し段々と大きくなっていく。何だか、生理的な恐怖を感じる。しかし、美しくもあり、教室はそれに見とれて呆然となる者と叫んで教室から出ようとする者に別れた。だが、そこは残っていた奈津美先生と東堂が声をあげ皆を落ち着かせる。
「皆、落ち着いて!ゆっくりとドアの方まで来て!絶対にあれに触れないように!」
「俺たちは後ろから行こう」
そう言って先生と東堂が扉を開けようとするが全くもって動かない。そんな中、段々と球は大きくなっていき、生徒の悲鳴ごと、教室全体を飲み込んだ。中は眩しすぎて目が開けることができなかった。不思議と音も聞こえず少しの浮遊感があるだけだった。浮遊感がなくなり光が収まった時、目を開ければ、そこは教室ではなく俺の見知らぬ場所だった。