表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君がくれた命  作者: 陸斗
1/3

現在、過去、今

一応設定は中学生です。ちなみに名前の読み方⇒龍神 陣→りゅうかみ じん。 紅刃→くれは。苗字はまだ考えてません(汗。 滝上 竜一→たきがみ りゅういち。ってな感じです。



「なんかさぁ〜、あいつって全然喋んねぇ〜よな」


「だよなぁ〜。何か暗いってかさぁ〜」


学校の教室の片隅で頬杖をついて空を眺めながら、そんな会話が耳に入る。

でも、気にせず聞き流す。いつもの事。


転校してきてから二週間。誰とも会話する事なく、する気も無い。

他人と関わる事をやめた俺には、勿論、友達と呼べる奴は居ない。


「今日は雲が綺麗だね」


でも、そんな俺に唯一、話し掛けてくる人物が居る。


「龍神は空が好きなんか?」


ソイツは、いつからか毎日の様に話し掛けてくる。

返事なんか返って来ないのを分かってるくせに。


俺は、居心地が悪くなって何も言わないまま教室を出る。






立入禁止の立て札を無視して、屋上へ上がる。

ここのドアの鍵はいつも開いてる。誰も見ないのか?


「ま、その方が都合良いけど・・・」


屋上に出ると、心地いい風が頬を撫でる。

最近、少し肌寒くなってきたけど、それはそれで気持ちいい。


空を見上げる。


教室で見る空と何等変わり無い。


「ココ、立入禁止だぞ?」


突然聞こえた声に驚き、声のした方へ振り返る。


そこに居たのは、さっき話掛けてきてた奴。


「何だ・・・お前か・・・」


「先生かと思った?」


ぼそりと呟いたのに、聞こえていたみたいで、俺は溜息を吐く。


「・・別に・・・」


あからさまに機嫌を悪くして言ってみる。

けど、奴は動じずに返してくる。


「何か初めて会話が成立したな」


ちらっと奴を見ると、何故か笑ってる。

再び溜息を吐くと、周りに誰も居ないのを確認してから口を開く。


「何で俺に話し掛けてくるんだ?」


「さぁ?何でだろな?」


折角俺から話を振ったのに、まともに返す気が無いのか?


「強いて言えば、放っとけないってかさぁ〜・・龍神って何か悲しい目してるからなぁ・・・」


「・・・・」


悲しい目・・か・・・。


「何でクラスの奴と喋んないんだ?」


あんな思いをするのは、もう嫌だ。


「・・・・」


なら、大切な物を作らなければいい。


「なぁ?何でだよ?」


だから、他人と関わりを持たないようにした。


「・・別にいいだろ。お前には関係ない事だし」


出来るだけ嫌われたり、相手にされなくなるようにした。


「ははッ・・冷てぇ〜なぁ〜」


そうすれば、大事なものを作らずに済む。


「俺は他人と馴れ合うのは嫌なんだよ」


だから、お前も俺に構うな。


「ふぅ〜ん・・・前の学校で何かあったんか?イジメとか」


何でお前は俺に近付こうとする?


「・・・別に・・・」


早くどっかに行ってくれ・・・。


「じゃぁ何でだよ?」


いい加減しつこく聞いてくるコイツに腹が立つ。


「五月蝿ぇ〜んだよ!俺は一人が良いんだ!放っとけよ!」


突然俺が怒鳴ったモンだから、奴がビビッてるのが目に見える。


「・・・休み時間終るから戻るな・・・」


そう言って奴は屋上を後にした。


一人になった屋上。奴が居なくなって、静寂が訪れる。


「紅刃・・・俺って駄目だよなぁ〜・・・」


何か寂しくなって、ついぼやいてしまう。


渋々重い腰を上げて、教室へ戻る。


怠い授業が始まる。




「ただいま・・・」


誰も居ない家に帰ると、誰に言うでも無く呟く。


靴を脱いで階段を上がって、俺の部屋に入る。

制服のブレザーを脱いで、ベッドに倒れ込む。


枕元に置いてある写真立てを取って、そこに飾られてる写真を見る。


中学に上がる直前、出来たての制服に初めて袖を通して撮った、幼馴染みとの写真。

肩を組んで、満面の笑みで写る俺と紅刃。


あんな事さえ無かったら、今でもこの笑顔で居られたのかな・・・。


そっと目を瞑って大の字になる。









「おい!陣!早く行くぞッ!」


春休み、いつもの様に紅刃が部屋に押しかけてくる。


「おうッ!」


「今日は陣のボールな」


「了解」


そのまま走って階段を下りる。家が隣同士なので、休みの日はいつもこんな感じだった。


玄関に置いてあるサッカーボールを手に取ると、紅刃が玄関から飛び出る。


「陣!さっさと行くぞ!」


「おうッ!」


二人で近所の公園まで走って、広場でサッカーを始める。


楽しいひと時だった。


日が暮れる頃、俺たちは遊び疲れて歩いて帰っていた。

たわいもない会話が弾んで、笑いあってた。


「ぉわッ!」


疲れていたせいか、俺はアスファルトの段差に躓いてバランスを崩す。

何とか転ばずに体勢を立て直すも、ボールが手から離れ、転がっていった。


「ダサッ!」


紅刃が俺を指差して笑う。


「うるせッ!」


俺は恥ずかしくて、そう吐き捨てるとボールを追い掛ける。


こういう時って、目標物に集中してばっかで周りが見えなくなる。


例えば正面から車が向かって来てても。


「バカッ!」


その一言が耳に入った瞬間、目の前に車があり、ドンッという衝撃と共に身体が吹っ飛んだ。




気が付くと、暗い暗い闇の中。


微かに声がする。


紅刃・・・?


《ったく、気を付けろよな。俺が助けてやったから良いものの・・・》


え?・・・どういう事?なぁ、何処にいるんだよ紅刃?真っ暗で何も見えないよ!


《・・・悪ぃ・・陣とはもう遊べなくなっちまったんだ・・・》


ッ!?何言って・・・紅刃!


《・・悪ぃ・・・でも、陣の中に俺は居るから・・・見守ってるから・・・俺の助けた命、無駄にすんなよ!》


嫌だッ!いきなり何なんだよッ!俺らいつまでも一緒だろ!親友だろ!約束したじゃねぇ~か!


《・・悪ぃ・・・》


何なんだよ!訳わかんねぇ〜よ!


《・・・・》





目を開けると白い天井があった。

そして、母さんと父さんの泣き崩れた顔も。


「・・・刃・・・」


紅刃の事を聞こうとして喋ったつもりが、声が掠れてしまう。


でも、口の動きで分かったのか、母さんが俺を抱きしめて声を上げて泣き出す。


「母さ・・・苦し・・・」


「ごめんね・・・ごめんね・・・」


何だか訳がわからず、母さんを抱き返す。

昔、俺が泣いてた時に母さんがしてくれたように、背中を優しく撫でてあげる。


「陣・・・紅刃くんは、違う部屋に居て・・・今は会えないんだ・・・」


父さんが俺に目線を合わせずに言ってくる。


「本当・・に・・・?」


直感で分かる。


「陣が元気になったらお見舞い行こう」


嘘だ。


「紅刃が言ってた・・・俺が助けたっ・・て・・・もう一緒に遊べないって・・・!」


夢だと思いたいのに、言葉にしたら勝手に涙が溢れて、零れてく。


「そっか・・・」


父さんは、覚悟を決めたかのように俺と目線を合わせて話し出した。


「目撃した人が言ってたんだが・・・紅刃くんは車に轢かれそうになったお前を突き飛ばして・・車に跳ねられたらしい・・・打ち所が悪くてな・・・そのまま・・・」


父さんの口が止まった。


その先は聞きたくない。


「・・亡くなったそうだ・・・」



退院して家に帰っても、どこからも紅刃の声は聞こえない。

前は、何かしら騒いでる声が隣の家から聞こえてきてたのに。


改めて現実を突き付けられた俺は、誰とも会話が出来ず、部屋に篭って、ほとんど食事も喉を通らない日が続いた。




「陣・・明日紅刃くんの葬儀があるそうよ・・・」


ドア越しに聞こえる母さんの声。



紅刃は死んでなんかいない。

何処かで生きてる。

いつかひょっこり現れて脅かそうって寸法なんだ。



「陣・・・明日で紅刃くんとは二度と会えなくなるんだ・・・」


今度は父さんの声だ。


「嫌でも連れて行くからな・・・。お礼・・言えよ・・・」


父さんの声が最後に震えた。

俺は、部屋の中で一人、声を上げて泣いた。



神様が居るなら、何て残酷なんだろう・・・。



次の日、精一杯抵抗する俺に礼服を着せ、葬儀場へと無理矢理連れて行かれる。


そこで、最悪な現実を見せ付けられる。


柩の中、沢山の花に囲まれて、眠る紅刃が居る。


その寝顔は満足そうで・・・。


身体を揺すれば目を覚まし、また何時もの笑顔を向けてくれそうで・・・。


そっと抱きしめて、何度も謝った。涙で顔をぐちゃぐちゃにして。


そして最後に、








「ありがとう。」









目が覚めると涙が零れていた。


いつの間にか眠ってた・・・。



まだはっきりと覚えてる、あの寝顔。


生まれて初めて見た死に顔。


とても良い顔だった。


もう二度と目を覚まさないなんて嘘のような・・・。



けど、次に見たのは骨だけになった紅刃。



心にぽっかりと大きな穴が空いた。


こんなに悲しいなら、友達なんていらない。


いつからかそう思う様になっていた。


そして、外に出れば紅刃との思い出の場所が余りにも多すぎて、部屋から出れなくなった。



学校にすら行かない俺を見兼ねてか、引っ越す事になった。


何も知らない土地へと。








「なぁ龍神。今日お前んちに遊び行っていいか?」


昼休み、屋上で一人空を眺めていると、またコイツが来た。


「友達でもねぇ〜から断る」


だから、何でお前は・・・。


「俺は友達って思ってんだけど?」


「・・・はあ?」


声が少し裏返った。

俺は、微塵も思ってないんだが・・・。


「だって俺とは喋るじゃん?だから」


呆れて溜息を吐く。

その時、風が優しく頬を撫でる。

何か、紅刃に友達になってやれよって言われた気がした。


「・・ってか・・・名前知らねぇ〜し・・・」


紅刃に言われればしょうがないが、最後の抵抗をしてみる。


「クラスメイトの名前くらい覚えとけよぉ。滝上 竜一だ」


あっさりと名乗ってくる。

何か凄い喜んでるし。

ってか、関わりを持ちたくなかったから、名前なんてどうでもいいと思って名簿は見ないで捨てちゃった・・・。


「竜一な・・・覚えられたら覚えとく」


あれ?俺、何か変な事言ったか?竜一がきょとんとしてる。


「・・・何だよ?」


不安になって聞いてみる。


「いや、何か家族以外から名前で呼ばれんの初めてだからさ」


なんだ、そんな事か。


「ふぅ〜ん。変なの」


普通、仲良くなったら苗字じゃなくて名前で呼び合ったりしないのか?


「変じゃねぇ〜だろ!んじゃぁ龍神の事、陣って名前で呼ぶからな!」


何ムキになってんだ?

ってか、久々に親以外から名前言われたな・・・。


「別にいいぞ?慣れてるし」


何か俺も強がってねぇか?

何か懐かしいかも・・・。


「んじゃぁ学校終わったら着いてくからな」


「・・好きにしろ・・・。」


俺の返事を聞くと、何か楽しそうな笑顔を俺に向けて教室に戻っていった。


人の中に強引に割り込んで来て、居座るんだけど・・・嫌じゃない感じ・・・。


「何かアイツ・・・紅刃に似てね?」


誰にともなく呟くと、再び風が優しく頬を撫でて行く。

まるで紅刃が、そうかもなって言ってる様に。





放課後、竜一がいきなり俺の肩に腕を回してくる。


「早く行こうぜぇ〜」


やはり満面の笑みを俺に向けてくる。


「馴れ馴れしいんだよ!」


軽く腕を振り払う。何か周りの視線が集中してきてるんですが…


「早く行くぞ」


居心地が悪くなって、竜一にそう言うと、さっさと教室を出る。


「あッ!おいッ!待てって!」


竜一も慌てて着いて来る。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ