私は、それでも生きたのです。
強く陽の照らす空が、見えた。
倒れた私の肌を刺す光は痛く、私自身はもう、腕すら動かす事が出来ない程に渇いて、飢えていた。
私は体が不自由だった。
助け合わなければ暮らせない厳しい環境の中にあるシェルターで、私は明らかに厄介ものだった。
だが私達は仲間であり、家族だ。
シェルターの中で家畜を飼うことは困難であり、でも姉妹達のように、食事を得るために狩りに出る事すら出来ない私は。
精一杯、出来ることをやった。
皆の取ってきた獲物を捌き、同じシェルターに生まれた幼い弟達や妹達に食事として与える役目を、姉や他の姉妹達が休んでいる間も不自由な体で必死にこなした。
でも、限界が来た。
時折、陽が酷く周囲を熱する時があったが、それがいつ果てるともなく続いた。
それまで住んでいたシェルターに留まっていては健康を損なう。
そう判断した母が、姉妹達を率いて涼しい地域への避難を決めた。
私は、死を覚悟する。
その避難にすら、私の体ではついてはいけないからだ。
姉妹達は旅立った。
その間私は、弟達に水を与え、食事を与え、少しでも熱にやられないようにと涼しく部屋を保つ……しかしそれでも、熱を遮る事が困難なこのシェルターでは限界がある。
食事は狩り手がいなければ底をつく。水もシェルターの外から得るものであり、私は自力で得られない。
その内に、姉妹達の一部が避難場所を見つけたと帰還した。
しかしシェルターから出たことのない臆病な弟達は怖がって、姉らについて行こうとしない。
姉妹は弟達を説得した。私も説得した。
―――生きるのです、弟達。貴方達は、私達の大切な存在なのです。
―――だから、どうか。
そうして、命の危機を前に、ようやく。
姉妹に従って旅立った弟達を、独り見送りながら。
私は、シェルターの縁から、落下した。
私の体は熱を持ち過ぎて、もう思うようには動けない。
見上げた先には空の他に、シェルターと、遥かに遠い避難場所が見えた。
日陰の、涼しげな場所にいる、弟や母、姉妹達の姿。
―――良かった。
最後の瞬間に私が感じたのは、安堵。
生まれる前に寄生虫に体を食べられ、羽が潰れた私はその場所には届かないけれど。
こんな私でも、弟たちを助ける事が出来たのだ。
私はアシナガ―――飛ぶ事すら叶わない、働き蜂。