第八話 『決闘』
町外れにある大きな平野に五十名もの人が集まっていた。
どいつもこいつも俺を倒して名を上げたいという冒険者達だ。
「はぁ……腕試しの依頼まで受けるとか俺ってお人好しなのでは?」
「アルフはうちをパーティーに入れるくらいだからお人好しだと思うけどー?」
「そうですね、わたしも他のパーティーには全部断られてましたし、アルフさんはお人好しです」
なに、厳選してパーティーメンバーを選んだつもりだったのに二人とも事故物件だったのか!?
まあ人柄重視で選んだから俺としては全く問題ない二人だけれども。
「まずは俺からでいいっすかー?」
若そうな男の剣士が言った。
「おっと、勘違いしないで欲しい。俺はお前たち全員をまとめて相手にするんだ。一斉にかかってきてくれ」
一人一人相手してたんじゃ何時間かかるかわかったもんじゃない。
まとめて出来る仕事はまとめてやるのが俺の流儀。
「ふざけんじゃねぇ!」
「私達なめられてるの?」
「いくら滅茶苦茶強い賢者だからって傲慢だぞ!」
「ちくしょう、ぶっ殺してやる」
酷い言われようである。
とげが立たないように少し方針を変えよう。
「よし、わかった。エリザ、ミカ、ちょっといいか?」
二人に指示をして、腕試しの挑戦者たちの周りを取り囲むように木の棒で地面に円を書かせた。
「……何なんだ一体?」
挑戦者たちはざわついている。
「こほんっ。君たちとの一対一の戦いを受けてやろうと思う。ただし……」
「うおぉぉぉ!」と挑戦者たちは沸き立つ。君たち話を最後まで聞け。
「ただしあまりにも弱い人は怪我をさせる恐れもあるしお断りだ。なので選別をさせてもらう」
挑戦者たちは黙って俺の話を聞いている。
「今書いた円の中に一分間残ることが出来ればその人は実力者とみなし、挑戦を受けよう。残れなかった人は諦めて帰ってもらう。これでいいな?」
今度は納得してもらえたようだ。物は言いようである。
「よし、それじゃあいくぞ」
最上級の風の魔法を使うと怪我人を出してしまう恐れが高い。
なのでここは中程度の風の魔法を使おうと思う。
「吹き荒れる風よ、我が力となれ」
小烈風という魔法の詠唱を行った。
本で学んだだけの技だが、暴風を小範囲に起こせるらしい。
――ゴオオォォォォォ
地鳴りのような轟音と共に竜巻が沸き起こる。
「うわああ、何だこれ」
「殺されるううぅぅぅぅ!」
「助けてくれえぇぇぇ」
あ、これは威力が強すぎたかもしれない。
知力が高すぎると中程度の風魔法もここまでの威力になってしまうのか……。
小烈風を受けた挑戦者五十名全てがはるか遠くに飛び去ってしまった。
「あはは~、豪快だねー」
ミカは笑い転げているけど笑い事じゃない。
流石に死人は出ていないと思うが、戦闘不能に陥ってる人がいてもおかしくない。
「エリザ、吹っ飛ばした人の治療に向かうぞ」
「えっ、あ、はい! そうですね! 行きましょう」
怪我を防ぐための選別で怪我をさせるという馬鹿なことをやってしまったおかげで、その日一日は治療だけで終わってしまった。
しかし、これによってアルフの恐ろしさが知れ渡り、町でアルフに挑戦しようなどというものは今後でなくなったのであった。