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第二十五話 『姉弟子』

「うぎゅー」


 ミカはキャロルの剣技の前に抵抗すらできずに倒れてしまう。


「ふふっ、アル君と一緒にいる割にはあなた弱いのね」


 キャロルは満足そうに剣を鞘に納める。


「決まってしまった―! 見事キャロルの優勝だー! 叡智の杖を手に入れたのは隣町からやってきた刺客、キャロルです!」


 キャロルはニコっとお辞儀をしながら司会から叡智の杖を受け取ると、会場の四方に向かってお辞儀をする。


 俺はリングで倒れているミカの元に駆け寄り声をかけた。


「ミカ、大丈夫か?」


「なんとかー。あいつ滅茶苦茶強かったよー」


「キャロは俺の姉弟子だからな。年は一緒だけど」


「それなら戦う前に教えてよー! ぶー!」


 ミカの手を引き体を起こしてやる。


「すまん、時間がなかったんだよ。と、キャロに逃げられる前に話をしにいこう」


「なんでー?」


「叡智の杖を売ってもらえないか交渉するんだよ。あれはジャキ戦の切り札になり得る代物だ」


「ふーん」


 ミカは興味なさそうに返事をする。


「んじゃ、俺は行くから」


 ミカを置いてキャロルの方に行こうとしたら、あちらから寄ってきた。


「アル君、決勝戦は見てたわよね? どう、そこの娼婦と違って私は戦いもできるわよ」


「うにゃー! うちは娼婦じゃないしー!」


「それは失礼したわ。てっきりそのラフな格好でアル君を誘惑しているのかと思ったけど……」


「確かにミカの布面積は小さいけどさ、わざわざそんなことを言いに来たのか?」


 まったくキャロルはいきなり何てことを言い出すんだ。


 でも確かにミカの服装は体のラインがはっきりと見えるし、お色気担当というのもあながち間違いではないのかもしれないとは思い直してはいる。


 胸ないけど。


「アル君、察しが悪いのは昔から変わらないのね……。叡智の杖だって欲しいでしょ?」


「えっ!? くれるのか。そりゃありがたいけど」


「ただであげるわけないでしょ」


「え、じゃあいくら払えばいいんだ? 三万ペニーくらいでいいか?」


 キャロは深いため息をつくと、決意をしたように目をぎんっと見開いて、


「違うわよ! 私を仲間に誘いなさいよ! ほんっとあなたってば察しが悪いわね!」


 予想外のセリフに俺はしばしボー然とする。


「聞けばアル君は魔王討伐パーティーを新たに組みなおしたって話じゃない? その噂を聞きつけてわざわざこの町までやってきたっていうのにあなたってば私の事忘れてるし……」


 キャロルはぶつくさと文句を言い続けている。


「いやいや、気付かなかった事は謝るよ。キャロの雰囲気があまりにも変わっててさ……その、美人になったよな」


 キャロルの顔がボッっと赤くなる。


「な、なによ! 今更お世辞を言ったって無駄なんだからね!」


 お世辞のつもりではなかったんだけどな……。


「とにかく俺たちの仲間になってくれるなら歓迎だよ。キャロなら間違いなく信用できるし、戦力も申し分ない」


「始めからそう言っておけばいいのよ、もう、本当アル君ってば鈍感なんだから……」


 最後の方は殆ど聞こえないくらいの小さな声でキャロルは言った。


「ところで魔王討伐パーティーってアル君とビッチ子猫ちゃんだけなの? 戦力としては全然足りないように見えるんだけど」


「ビッチ子猫ちゃんだとー!? うーっ!!」


 ミカは唸り声をあげて威嚇している。


「あのな、仲間になるんだったら仲良くしてくれよな……。仲間に関してはまだ他にもいるよ。取りあえず今拠点にしてる宿まで案内するよ」


「ええ、よろしく頼むわ」


 拠点までの道のりはミカとキャロルがお互い罵りあって騒がしいことこの上なかった。


 このパーティー大丈夫だろうか……。


 少し不安である。

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