第二十一話 『宿屋にて』
町に戻ってからすぐに作戦会議を行いサイフォス、フィーナ、ライトの三人は死の刻印についての情報収集に別の町まで向かわせた。
残るメンバーはジャキと戦うための準備をする手筈だが、今日は疲労もあるので宿屋に泊まっている。
ちなみに爺ちゃんは「あとは現役のお前たちに任せた」と言って小屋に帰ってしまった。
「エリザ、絶対助けてやるからな」
ベットに横になっているエリザに向かって囁く。
「……アルフさん? ここは宿屋ですか? 何でわたし、寝ているのか……記憶が曖昧で」
「エリザ! 目を覚ましたのか! 苦しいところとかないか!?」
「どうしたんですか急に? 言われてみればちょっと胸の奥がズキズキするような……なんでしょうこれ、恋の病でしょうか?」
「何言ってんだよ、実はな……」
エリザに事の顛末を説明した。
「死の刻印……ですか」
「怖いよな……」
「いや、そんなことはないですよ。だってアルフさんが絶対助けてやるっていってくれました! わたし、その言葉だけで生き残れる気がしちゃいます! むんっ!」
エリザは両手をクイっとまげてガッツポーズを取る。
「ああ、そうだ。必ずジャキには死の刻印を解除させる。その前に別の解除方法が見つかるのが一番ではあるけど、そっちはあまり期待しないほうがいいだろう」
「うちも協力するからエリザっちは百人力だっての! 心配無用ってやつだよー」
ミカは笑顔でピースサインをしている。
「みなさんありがとうございます。わたしもできる限り刻印に抗って見せますね」
「あ、そうだ。エリザの目も覚めたことだし、ステータスの確認にいかないか? 爺ちゃんとの特訓の成果がどれだけか気になるだろ?」
「いいねー」「気になります!」
二人の気持ちのいい返事が聞けたので教会に向かうことにした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
教会に到着するとすぐに二人のステータスを見てもらった。
名前:ミカ
職業:遊び人
Lv:10⇒45
HP:45⇒301
MP:30⇒300
力:19⇒220
素早さ:25⇒280
体力:30⇒500
知力:1⇒10
「凄いじゃないか! バランスもいいし、これなら何処のパーティーでも引っ張りだこの強さだよ!」
「ふっふっふっー。うちの実力はこんなもんよ!」
ミカには伸びしろがあると思ってはいたけど、ここまで成長しているとは思わぬ収穫だ。
爺さんの指導の良さもあったのだろう。
「続いてはエリザさんですね」
名前:エリザ
職業:僧侶
Lv:99⇒99+
HP:1⇒2
MP:999⇒1000
力:1⇒35
素早さ:1⇒20
体力:1⇒300
知力:999⇒1000
「ふむ、1だったステータスが軒並み強化されてる。特に体力に至っては物凄い上昇だな、防御が強くなったのも納得だよ」
俺のお褒めの言葉はエリザには聞こえていないようで、彼女はステータスが書かれた紙を持ちながらプルプル震えている。
「――HPが! HPが2に上がっているじゃないですか! 嗚呼……わたしの才能が失われてしまった! こんな生き恥を晒すくらいなら死んだほうがましです! 死の刻印よ発動してしまえ、えいっえいっ」
エリザは紙をぶちやぶってから、壁に頭をゴンゴンとぶつけている。
「おいエリザ、しっかりしろ。上がってしまったものは仕方ないだろ。てかそのこだわりは本当なんなんだよ」
エリザは死の刻印が刻まれたことを告げられた時よりもよっぽど落ち込んでしまった。
「……今夜はひとりにしてください。世界を涙で濡らしてきます」
泣きながら宿に向かって走って行ってしまった。
エリザは普段はまともだけど時たま理解できない変なこだわりがあるんだよなぁ、困ったもんだ。
「今はほっとくしかなさそうだな。ミカ、次の用事に一緒に付き合ってくれるか?」
「いいよー、ジャキ討伐に関係ある話~?」
「そう、ビンゴだ。今のままじゃ勝つのは難しいからな。こっちについてきてくれ」