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第十話 『魔王軍幹部』

再びアルフパーティーの話に戻ります

「ふぅ……。これで全部片付いたな」


 宿屋の一室で依頼のメモ書きを見ながら一息つく俺。


 なんだかんだ依頼をこなしていたら一週間もかかってしまった。


「お疲れ様です、アルフさん。今日も流石の活躍でしたね。はいっ、どうぞ」


 紅茶の差し入れをしてくれたのはエリザ。


 流石の活躍と俺の事を褒めてくれてはいるけど、彼女は今日も開幕戦闘不能。


 さっき教会で復活したけどほとんど記憶がないはず。


「エリザのHP対策考えないとな……。魔王討伐の時に戦闘不能になったら結構やばいし」


「そうですね! 対策を考えなきゃいけませんね!」


 人事のように言っているけど君の事だぞ、エリザよ……。


 ――ギィ、バタンッ


 部屋の扉が開いて閉まる。ミカが帰ってきたのだ。


「アルフ~! 良い情報手に入ったかもー」


 教会でエリザを復活させている間に、ミカには酒場で魔王軍幹部の情報を集めるように言っておいた。


 魔王軍幹部はこの世界のあらゆるところに存在し、大体町一つに対して一人の幹部が割り当てられている。


 この間倒したデュラハンもそんな魔王軍幹部の一人だったらしい。


 魔王軍幹部が倒されるとどうなるのか?


 答えは簡単。新しい幹部が派遣される。


 幹部を倒すと一時の平和が訪れるけど、それも長くは続かないのだ。


 だけどそれも無駄ではない。


 魔王軍幹部の数を減らすことは魔王軍の戦力を削る事に繋がる。


 いつか来る魔王との決戦の時にはその事が必ず役に立つはずだ。


「ミカ、情報を聞かせてくれ」


「うぃーっす。これ見て、これ」


 ミカが見せてくれたのは瓦版。


 そこには討伐クエスト《ヘルスライム》と書かれていた。


「ヘルスライムだって? 聞いたことない名前だな」


「でしょでしょー? しかも報酬が一番高いから、きっとこいつが新しい魔王軍の幹部だよー」


「確かに幹部っぽいな! 明日このクエストを受けよう!」


「うちが見つけたクエストなんだから―、倒したらうちに報酬半分ちょうだいね!」


 ミカはこういうところはちゃっかりしてる。


 しかしミカがお金を集める理由も知っているので認めてあげよう。


「しかたないな」


「いぇーい! うちアルフのこと好きー」


 ミカが俺の横から首に手を回して抱きついてくる。


 こういうところもちゃっかりしてるな……まったく。


「ミカちゃん! アルフさんを独占するのは許しませんよ!」


 エリザは謎の対抗意識を燃やしているようだ。


 彼女はミカを後ろから引っ張り、俺から引き剥がそうとする。


「エリザっちなにするんだよ~、うちとアルフのラブラブを邪魔するなー」


 ミカは離されまいとして俺の首に更にぎゅっと巻き付く。


「ミカ! 首しまってるから! 首しまってるから!」


 俺は悶えて机をタップする。


「ミカちゃん! アルフさん苦しがってるじゃないですか! 離しなさ~い!」


「やだー! 離さないってのー!」


 糞三銃士のパーティーと組んでいるときに、いじめにより首を絞められ落とされたことがある。その時は最悪の気分だった。


 今も痛みとしては同じものを味わっているはずなのに、その時と全然違う気分なのは何故だろう。


 俺は落ちかける意識の中で思った。


 明日からもこの子達と一緒に頑張ろうって……。

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