プロローグ
プロローグ
灼熱の大地。そしてバカンス。
青い空と強い日差し。
美少女達がキャッキャウフフと水を掛け合い、水着による露出した肌が濡れあい踊り舞う。
『や、やったわね!…許さないんだから!……ほらっ!』
『きゃ!や、やめてよぅ』
『私も!私も参加するぅ~』
『ちょ、ちょっと皆さん!このような幼稚脳な遊びは控えていただいて……きゃぁ!』
俺の脳内脳裏に次々によぎるそれは。
二次であり。
立体でもなければ。現実でも無く。
それでも魅力的で。儚くて。
だから……だからこそ。
「作るぞおおおおッー!百合百合ライトノベルぅぅぅぅッッッ!」
夕陽が差し、それこそ静寂な図書館で。
その凄まじい啖呵は校内中に響いたとか響かなかったとか。
「うるさいッ!」
しかしその一枝纏わない決意表明も荒々しくかき消され。
「あんたの百合好きなとこ、本当にキモいんだけど……」
「なっ!…百合の良さを知らない貴様にキモいと言う資格は無いッ」
「別に知りたくもないし分かりたくもない」
言わせておけばこの女、本当酷ぇ。
久貝高校一年生であり我が部員。立川依里、それがコイツ。
その整った目鼻立ちに艶のあるロングな黒髪、きめ細やかな白い肌、お分かりぃ?つまるところコイツは美少女だ。しかし残念。
外見ならともかくコイツは内面が腐っている。
例えるなら会話。俺が何かコイツの事を褒めたとする。帰ってくる反応は「あんたに褒められても全くうれしくない」っというオチになる。
あと一つ例えるなら、二重人格。
周りには明るく優しく丁寧に三拍子揃った優しく美人な女の子。
告白する男子も多くその度、「今は恋はかんがえていないので……」なんてたぶらかされる。
しかしだ。俺に対してはとにかく冷めていて、俺が告白しようものなら「はぁ……死ねば」なんてbatendingを迎えるだろう。
とにかくだ、俺が何をしたか知らないがとにかく俺に対して酷い。完膚なまでに。
とにかく本当に残念なやつ。
依里はノートPCに目を向け、てを止めた作業を再開した。
あ、そういえば。ここは校内特別棟二階にある12畳くらいの部室。
奥行きのある机にその分の椅子。ズラッと並んだ本棚には小説からライトノベルまで沢山並べられておりさらにはノートPCから原稿用紙まである。
なぜ、なぜ部室にそのような物が配置されているのか。
それはこの部活が『小説製作部』という名目で動いている部活だから。
学校側もしっかりと認めており、教育委員会曰く、「将来の道を常にサポートするのがこの学校の主旨」らしく。
しかし部員は4名と少ない。
そして部長はこの俺、夏律人がつとめている。
この部の活動内容は主に小説、又はライトノベル作成し、webに投稿また小説大賞に応募したりなど。あとは小説やライトノベルを読んだりする。
かなり唐突だが聞いてくれ。俺には夢がある。
百合百合作品で電◯大賞をとりこの世界に、百合百合文化を広める!
そのために俺は…超大作百合作品を。
「作りたいんだぁぁッッッ!」
「うるさい!」
依然として反応は変わることなく。
そして第三者視点が口を開く。
「依里さん!夏君は貫いているのです。そしてまた私も聖騎士として!えぇ!貫いていきます!」
彼女の手元にあるのはライトノベル『女聖騎士のダンジョンブレイク・ライフ』なんてタイトルだ。
動くたびサラサラと音を立てるショートな銀髪と紅色の大きな瞳。とてもいい容姿を持っているはずなのに……。
「はぁぁああ!世界が私を呼んでいるぅぅッッッ!」
また一人残念な女の子、佐倉夜衣。
お分かりの通り中二病なのだが夜衣の書くライトノベルは不覚にも面白い。
小説投稿サイトではトップレベルの人気を誇る『女騎士のレンアイブレイク・ライフ』の作者。
書籍化からアニメ化までされているシリーズ『女騎士のダンジョンブレイク・ライフ』の二次作品だが、二次作品のレベルを超えているだの本編よりも面白いかもだの囁かれている。
いや残念なやつだけど。
残念の集まりの様な部活にも一人だけは例外がいる。
楠小ノ羽。
茶髪で三つ編みで無口で目立たない。依里や夜衣と比べると外見は劣ってしまうが、残念なところはない。
いや良いところもないが。
いつも背景のモブキャラ化していて「お、おまっ!いたの!?」というリアクションをとってしまう。
あ、一応今部室内にはいない。多分。
そう、この小説製作部は残念なのだ。
テンプレみたいな『ツンデレ美少女』とか『お姉さんキャラ』とか『ヤンデレっ子』とか、百合百合ラノベのモデルになるような子はいない。
それでもなぁ。
こいつらしかモデルはいなそうだし。
あれこれ考えていると完全下校チャイムが鳴ったので帰ることにした。
虚しいなオイ!