『信頼』
更新遅れてすみません!
少々立て込んでまして……短いですがご容赦ください。
更新は絶対に続けます。
「ぐっ、」
また掠めた部位から血が吹き出た。
もうこれで何発目だろう。避けても消滅させても蹴り飛ばしても、次々に傷がついていく。
それでも負けられない。こんなところで死んでたまるか。
一緒にここを出るんだ。
「がっ!?」
背後からの雷撃で、肉が焦げる匂いがした。
熱いのか痛いのかすらもわからない。頭が朦朧としていた。ただひたすらに、命を狙う運命を弾き飛ばす。
「ガアアアアアアアアア!」
「っ、『光球』!」
命中した『光球』によって羽を絶たれた蝙蝠型の魔物は、地に落ちた。
そこに放たれる槍。うまく避けた楓とは裏腹に、射線上にいた魔物は槍に貫かれ絶命した。
「カエデさん、私も戦います! 最低限の護身術なら心得ています!」
「いや大丈夫、ルナはおとなしく見てて!」
声を上げたルナを安心させ、再び敵に向き直る。
残り二匹。
魔術に特化した蛇型、そしてケルベロスが殺意を滾らせている。
まだまだここからだ。
襲いかかる槍と、魔法陣からの攻撃。
一向に終わる気配がなく、いまも楓の精神力を削り取っていた。
「はぁっ……はぁ……」
ーー楓は心身ともに満身創痍だった。
それでも終わらない。魔力がガリガリ削れて、精神が擦り切れて、視界が歪んで、足がもつれて、それでも続いていく。
別に敵が強すぎるわけではない。ただひたすら続く攻撃に、じわじわと蝕まれる。
ルナを守らなきゃいけない。気を抜いたら死ぬ。極限の緊張が、何分続いているのだろうか。
生き抜いてやるんだ。ルナを守らなきゃ。僕がしっかりしないと。僕はヒーローなんだ。守らないと、僕が頑張らないと――
「カエデさんッ!」
「――」
ルナの悲痛そうな声が、背後から響いた。驚いた拍子に足がふらつき、脇腹を槍が掠めた。
「もう、やめてください!」
再び辛そうなルナの声が脳に響いた。
意味が解らなくて困惑する。なんで。僕が守らなくてどうするんだ。僕が救わないと、助けないと。
「――私を守らなくていいです! 自分のことに集中してください!」
「そんなことをしたらルナが……!」
死んでしまう、その言葉はぐっと飲みこんだ。
いったい何を言っているのだ、ルナは。僕が守らないと、また失ってしまうじゃないか。
「――私を少しは信用してください!」
「……は?」
本当に何を言っているんだ。僕はルナを信用しているし、大切に思っている。失いたくない。だから必死になって守っているのに。
「私だって、自分の身を守るくらいならできます!」
「危ないだろ! もし君に何かあったら……!」
「――そこが信用していないんです!」
傷ついてほしくない。守らないと。もう燈みたいに失うのは嫌なんだ。
信用していないわけじゃない。ただ危険な目に遭わせたくないんだ。
そんな言葉が脳裏をよぎったが、どうにも薄っぺらい気がして口には出せなかった。
「……私だって、自分の身くらい守れます。心配してくれるのは嬉しいです。でも少しくらい信頼してください。」
「ぅ、あ……で、でも」
「どちらにしても、このままじゃ二人とも死にます。私にも戦わせてください!」
揺らいだ。それが視界なのか心なのかは分からない。
もし彼女が死んだら。考えただけで寒気がする。それでも戦わせていいのか。信頼すべきなのだろうか。
「カエデさんッ!」
懇願するようにルナが叫ぶ。
「――そんな悲しい英雄を私は見たくありません!」
悩んだ。悩んで悩んで悩んで痛む頭を動かして悩んで悩んで――
「――分かった。ルナ、僕に協力してくれ」
「……はい!」
腰に下げていた短刀を抜いたルナは、僕の背から飛び出し駆け出した。
槍を避けて魔術を避ける。最低限の動きで魔物の動きを逸らす。ケルベロスの時のような弱さはそこにはなかった。美しい武の構えでルナは空間を舞っていた。
――この選択が正しかったのかは、僕には分からない。
また失うかもしれない。死ぬほど後悔するかもしれない。でも彼女には笑っていて欲しい。
戦おう。あの時とは違う。
一緒に戦って――――生き残るんだ。




