殺意
今回は久しぶりに結構な文字数です。
ちょっと、イライラする場面がありますがどうぞ我慢してお読みください……。
「アァ?」
あ、よりによって怖そうなチンピラにぶつかった。
茶髪で、体にジャラジャラとなにやら武器をつけている。
目つき悪っ!
……終わったな。
「すみませんでした!」
「そんなんで許されると思ってんのか!」
ですよね!
テンプレだもんね!
そんなツッコミを心の中でしながらも、意外と焦っている楓。
「すみません、悪気はなかったんです。」
一応、誠意を込めて謝る。
「は? だったら金出せよ。」
「え?」
うん、意味わからん。
だけど、ここはおとなしく従うしか……。
「がはっ!?」
突然の蹴り。
鳩尾に一撃。
ろくに防御もできず―――いや、いつ蹴られても防御できないけど―――体を二つに折りしゃがみ込む。
「なにが『え?』だぁ?さっさとだせよ。」
出そうと思ってたのに……。
アイテム袋から持っていた3ゲルト位を渡す。
「はぁ? これだけか? いくら雑魚だからってまだ持ってるだろ?」
下卑た笑みを浮かべ、手をこちらに突き出す。
「ほら、早く出せよ!」
僕はしぶしぶ1オーロ1差し出した。
あぁ……残念。
「おぉ~お、1オーロも持ってんじゃねぇか。隠しやがって。」
満足した笑みを浮かべ、背を向けて立ち去って―――行かずに唐突に殴り掛かってきた。
「がっ!?」
頬を全力で殴られ、軽く吹き飛ぶ。
頭がくらくらする。
「なぁ~んてな。いやぁ、悪いな。弱いやつを見ると虐めたくなる性質でよ。ちっとストレス発散に付き合えよ。」
「え? いや、その―――がはっ!?」
答える間もなく殴られ蹴られ。
「ははっ、弱いなァ? ほら、反撃してみろよぉ?」
嗜虐的な笑みを浮かべ煽ってくる。
獲物を見つけた時の目だ。
「ぐっ……」
楓は反撃をしようと剣を抜き、斬りかかる―――ことができなかった。
魔物は殺せても、人間を殺すのとはわけが違う。
手が震えて言うことを聞かない。
「はっ、弱すぎるだろ。ほら、今度はこっちからいくよ~?」
「がっ!? かはっ! ぐっ!?」
殴る蹴る叩き付ける―――
あぁ―――。やっぱり僕は一人だと何にも出来ないな……。
この世界にきて少しは自立できたかと思ったけど、守ってもらわないとまだ何にも出来ないな。
音葉がいなければ、どちらにせよ向こうでもこうなっていただろう。
僕がこんなにも無力だから、弱いから、燈は―――
力が欲しい。
人を守れる力が。
自分を守ることのできる力が。
弱い僕を奮い立たせる力が。
そのために、人を一人自己防衛で殺すことぐらい躊躇しちゃだめだ。
常識?ここはその常識が通じる世界じゃない。
殺すんだ。
油断している今なら殺れる。
殺す。
また、楓の心に黒い感情がボコボコ、と浮かびあがる。
剣を持つ手に力が入る。
瞳に殺意を込める。
さぁ、殺すんだ―――
楓が、いまだ殴り続ける冒険者にとびかかる瞬間、ふと歓声が聞こえた。
ワアアアアアアア!
「ん?」
殴る手を止めるチンピラ。
声が聞こえたのは、隠し部屋があると言っていた方向だ。
「ああ、始まったか。じゃあな、いいストレス発散になったぜ。」
にやにやしながら冒険者は去っていった。
「……。」
楓は剣を握っていた手を離すと、ふぅと深呼吸。
殺意が嘘のように引いていく。
「……あ~、怖かった!」
僕は、もう迷宮を攻略する気力もなくなっていた。
そして傷だらけの体を引きずりながら、何かに引き寄せられるように隠し部屋のほうへと、ノロノロと歩き出した。
また無駄に装飾された扉をくぐる。
技術の無駄遣いだな……。
階段が二つあり、歓声はそのうちの一つから聞こえていた。
「どうしようかな……?」
楓は少し逡巡してから、その階段を上りだした。
「痛っ!?」
ああ、これ骨折れてるな。
結構響くぞ。
でもあきらめない!
やっとのことで階段を登り切った。
やった~!
……何やってんだ、僕。
上った先の景色を見渡す。
「うわぁ……!」
そこは、言うならばローマのコロシアムのようだった。
丸い東京ドーム一個分くらいの部屋の周りに、観客席のようににガラス付きのスペースがある。
攻撃が飛んできても、そこで防がれ、観客席には何のダメージも入らないだろう。
そして、観客席ではたくさんの冒険者が歓声を上げている。
何やらとても楽しそうだ。
どの顔にも楽しみの感情が見える。
そう、まるでスポーツ観戦のように。
勿論、ほかの感情も見え隠れしているが。
とりあえず、席のほうへと向かおう。
ふと、冒険者たちの視線の先に目を向ける。
これが本当にただのスポーツだったのなら、楓だってこの後、冒険者たちと一緒に楽しめただろう。
しかし、ここは迷宮だ。
そして。
ボス部屋だ。
勿論、スポーツをしているわけではない。
先程の親切に教えてくれた方の冒険者の言葉を踏まえると結論は一つ。
『―――その辺で奴隷を買って戦わせようという話になったんだよ。』
『―――獣人族だろうな。あいつらなら犠牲になったって罪にならねぇし、何かを手に入れたら奴隷の持ち主の物だ。ちょうどいいんだよ。』
爆音が響く丸いドームの中へと目を向ける。
「っ‼」
そこには。
血だらけで、それでも生きようと足掻く、ウサギのような耳の生えた少女がいた。
壁際に倒れており、中心には黒い大きなバケモノが。
先程から観戦している冒険者たちに浮かぶもう一つの感情。
それは、『嘲り』だった。
うん、主人公がボコられるのって書いていてイライラしますねっ!
でも、物語の展開的にどうしても必要だったんです……。
でもご安心ください。
次回は、楓君活躍しますから。
もうちょっとで強くなりますから。
もう少しお待ちください!
乞うご期待!
……とか何とか言っときながら、来週の金曜日は作者の現実が忙しく、投稿できません。
再来週までお待ちください……。
その代わり、面白い文章にするんでっ!




