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プロローグ

こんにちは。神月歌零です。

つたない文章だと思いますが、よろしくお願いします。

深い闇の中。

とある場所で何かが蠢いた。

それは。

とても醜い邪気の塊のようだった。


「コロス……。コ・ワス……。」


そこに、誰かの足音が響いた。


「これであいつは……。あいつが悪いだっ!ハハハハハッ!」


闇の中のバケモノはニヤリと歪んんだ笑みを浮かべ、嗤った。





♦ ♦ ♦





「あ~暇だぁ。」


そんなことを僕は、七星楓は教室の机に突っ伏して呟いた。


「唐突にどうしたの?楓」


後ろの席から話しかけてきたのは幼馴染の一人、冬城音葉だ。

髪を後ろで結び、ポニーテールの彼女は、所謂(いわゆる)『美少女』というやつだ。さらにその明るい性格も、男子受けがよく告白が後を絶たない――らしい。

ちなみに、音葉とは小さいころから家族ぐるみの付き合いをしている。

……付き合ってたりはしてないよ?


「いやー。やることないな~と思ってね。」


あくびをしながら楓が言う。


「えっ…。さっきもらった大量の宿題。しかも今授業中……。」


何か呟きが聞こえたが華麗にスルーだ。

こういうのは気にしたら負けなんだ!


「そんなに暇なら、外とかで遊べばいいのに。」

「そんなのエネルギーの無駄だよ。ひとりじゃ遊べないし。そんな暇があったら本を読むよ。」

「うわー。ボッチだ~」

「そうですけど何か!?」


 僕はこの学校でいじめられている。

 理由は、さっきからこちらをチラチラと見ている隣のこの人だ。名は、神崎夏実(かんざきなつみ)。学校一可愛いと噂のある女子生徒だ。黒髪で、優しく、成績優秀。モテるのもうなずける。多分、音葉以上。告白して玉砕した奴は数知れず。

 そんな人気者の彼女に、何故か何かと付きまとわれ、「嫉妬」という理由でいじめられているのだ。ちなみに本人は気が付いていない。


 くそっ。上目遣いでこっち見て!可愛いじゃないか!

 ……あ、音葉の後ろに般若さんが。ごめんなさい許してください。ちょっやめっ。シャーペンをこちらに突き出すな。それ痛いから!


ざしゅっ!


何故だ。解せぬ。

そんな馬鹿な話をしていると授業が終わった。


「はあ…。終わっちゃった。」


授業が終わるといじめが始まる。

ちなみに、音葉がいじめられないのは、音葉も相当な美少女だからだ。

はは、顔がいいと虐めにくいんだろうね。はぁ……。

つまり、情けないことだが僕は二人に守られているのだ。結構、逆効果だけれども。


「おい、楓。話聞いてんのか。女っぽい名前してて呼ぶたびに笑うわ~。」


いじめっ子の黒須仁が胸倉を掴んできた。

親はまあまあ金持ちで、成績もそこそこ。この通り、性格がアレだが。

下卑た笑いを浮かべている。

気持ち悪ッ!

ってか名前のことは関係ないだろ。気にしてるんだし!


「ごめん、ちょっと考え事してて聞いてなかった。」


すると、黒須は急に不機嫌な顔になった。

表情からは「お前ごときがなんで」という感情が読み取れる。

好きで、こんな状況になってるわけじゃ、ないんだけどな……。


「ちっ。お前今日さー、あそこの神社行ってお札取って来いよ。」


うん?

そんなことか。

だが、黒須は何かありそうな顔でニヤニヤしている。

……何を企んでいる?


ちなみにあそこというのは、この街の森の中にある神社だ。

なんかよくわからない神様が祭られていて、人は少ないが歴史はある。

昔はよく遊んだな…。


「行ってこないとこの写真破り捨てるぞ~。」


そういって、黒須は僕の筆箱からある写真を取った。

それは、今は亡きもう一人の幼馴染の写真だった。

心がズキン、と痛む。

記憶がフラッシュバックする。


「ちょっと、やめなさいよ。」


音葉が黒須を制止する。


「うっ、いいな!分かったな。頑張れ~」


気まずくなったのか、そう言って黒須は立ち去っていった。


「大丈夫?楓。」


心配そうな顔をした音葉がこちらをのぞき込む。

深呼吸をして、暴れ出した心臓を抑える。


「う、うん。ありがとう、かばってくれて。」

「いいよ、別に。それより、神社私もついていくよ。楓一人だと心配だし。」

「音葉様、感謝いたします。」

「え、きっもい……」

「ひどっ!」


そんなことを話しているうちに放課は終わった。




♦ ♦ ♦


そして放課後。

僕たち二人は神社に来ていた。


「ここに来るのも久しぶりだな……。」


大体5年ぶりだ。昔はここでよく遊んでいた。()()()があるまでは。

思い出すのは真っ赤な鮮血と……。


「七星君!?どうしたの?」


見ると神崎さんがいた。


「何でここに…?」


驚愕で僕は目を見開く。まさか神崎さんが来るとは思わなかった。


「神社行くって話してたでしょ。教室で。それより、顔真っ青だけど大丈夫?」

「あ、ああ…。」


嫌なことを思い出してしまった。心に根付く、黒いシミ。それでもこれを忘れるわけにはいかない。


「あ、音葉も来た」

「おーい、楓~、遅れてごめ……って、あれ、神崎さんもいるの?まあいいや、三人で行こう!」


走ってきた音葉と合流し、僕たちは歩き出した。

目指すはお札。なんとなくここの地図は頭に入っているし、迷わないで行けそうだ。


「そういえば、お札ってどこにあるの?」


神崎さんがきいてくる。


「本堂だよ。確か。」

「へえ~詳しいんだねっ!」


そういって神崎さんがほほ笑む。

か、可愛い…。

ごめんなさい。音葉、顔が怖いよ。般若さんしまって…。

男だから、仕方ないと思うんだけどな……。










「よし、本堂に着いた。あれ?お札、落ちてる……。」


昨日は風が強く吹いていた。その影響で落ちたのだろうか。台風が来ようと、落ちたところを見たことないんだけどな……。


「これ拾っていけばよくない?」

「……それもそうだな。よし、帰ろう!」


速くこんなところから立ち去りたかった。なんだか違和感を残していたが、不穏な雰囲気を皆感じていたのだろう。

……でも、もっと急いでいればよかったんだ。僕は、後々後悔することとなる。


「あれ…?祠が開いてる?」

「本当だ……。」


おかしいな。いつも閉まっているはずなのに。


「あ、これのお札じゃない?」

「なるほど~」


僕たちが祠をのぞき込んでいると、突如悪寒が走った。

振り向くとそこに――黒い人型の何かがいた。


「え……?」


何かは神崎さんのほうに手を伸ばしていた。

神崎さんは反応できていない。


「っ危ない!」


僕は咄嗟に神崎さんを抱きかかえ、横に飛んだ。

急に、スピードを上げた手がこちらに迫る。

辛うじて直撃は避けたが、掠った足から血が噴き出す。


「ぐあっ!」

「……え?」


やっと我に返った神崎さん。

ああ、痛い……。日頃、運動をさぼっていたことが悔やまれる……。


「大丈夫!? 楓!?」


そう言う音葉の顔は蒼白だ。

足は痛いが、我慢できないほどじゃない。


「大丈夫…。それより早く逃げ…よう。」


音葉と神崎さんに肩を貸してもらって走る。

黒いバケモノの動きは遅く、徐々に距離が開いていった。

そして、神社の出口が見えてきた。


「よしっ。これで逃げ切れ…」


その言葉は途中で遮られた。


「きゃっ!」


右肩を支えていた音葉が悲鳴を上げて消える。。


「くそっ! 何で落とし穴があるんだよ!?」


誰が掘ったのだろうか。

何故か設置されていた落とし穴に音葉は落ちてしまったのだ。

そこまで深い穴ではないが足止めとなるには十分だった。

やっとのことで穴からはい出した時には、すぐそこにバケモノが迫っていた。


「くそっ! 神崎さんと音葉は先に走って!」

「じゃあ、楓はどうするの!?」

「どうにかする! あ、このお札使えるかも…。」

「ちょっ、七星君後ろ!」


後ろを見るとすぐそこにバケモノがいた。


「物は試しだ! おりゃっ!」


僕はさっき拾ったお札を投げつけた。ふわりと風に舞い、バケモノの額に張り付く。


「グアアアアアアアア!」


アニメなどのように消えてくれたりはしなかったが、確実に効いたようだった。


「よしっ逃げるぞ!」


そういって前を見ると、いつの間にか立っていた黒いバケモノが音葉と神崎さんの首を掴んでいた。

苦しそうな顔をしている二人。

影の顔はよく見えないが醜悪に染まっている。


「二体目…。」


考えるより先に体が動いていた。

僕は、二人を掴んでいるバケモノに殴りかかった。

バケモノの体は霧散し二人が地に落ちる。


「ぐっ…。」


二人は苦しそうな顔をしながらも動いているところを見ると、生きているようだった。

ほっと胸をなでおろす。

だが、殴った右手と掠った左足が禍々しく黒くなっており、激痛が全身を走る。

痛い。痛くてたまらない。


だが、油断する間もなくもう一体が襲い掛かってくる。

二人を連れて逃げるのは無理だと判断した僕は、とりあえずバケモノを二人から離すことにした。


「おい。こっちだバケモノ!」


知能が低いのか、すぐにこちらに襲い掛かってきた。


そうして、楓とバケモノは走り去っていった。




♦ ♦ ♦ 




「ぐっ!」


あれから十分ほどたっていた。


「こいつなんか動くが早くなってないか…?」


また二人が襲われては困るため、ここでどうにかして倒す必要があり逃げるに逃げられないのだった。

しかも、時間がたつにつれどんどんスピードが上がっていく。


「小説の中の主人公みたいに倒せたらいいんだけどな…。」


そんなことをぼやいていると、突如攻撃がやんだ。


「え?」


その代わりにバケモノの目が妖しく赤く輝き、激しい頭痛に襲われる。


「ぐあああッ!?」


あまりの痛さに悲鳴を上げる。痛みで脳が飽和する。

バケモノの体は黒い霧に覆われていった。

最後に見えた、バケモノは嗤っているように見えた。


「なっ……。」


しばらくすると霧が晴れた。

そこに佇んでいたのは――死んだはずの幼馴染、夢咲燈だった。


「ヒサシブリ?カエデ。」


否、その姿をしたバケモノだった。

その姿でバケモノはにやにやと嗤う。

楓の中でブチッ、と何かが切れる音がした。


「その姿を‥声を‥使うなあっ!」


瞬間、楓の体に純白の光が纏われた。

世界が真っ白に染まった。

光が収まったときそこには誰もいなかった。


その日、七星楓は死んだ。









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