醜い類人猿<バーサークゴリラ>
入学式の翌日、新入生を集めたガイダンスが行われた。そこでは昨日千春が言っていた超能力のことや、その超能力が学力によって強くも弱くもなること。超能力の内容は本人の潜在的な意識や経験によって形成されるものだということが話された。
「まあこの学校では勉強さえできればあとは何をやってもいいです。もちろん校外での明確な犯罪行為がバレたら停学、退学になることはありますが・・・。基本的に教師陣は生徒の私生活に一切関知しませんので。まあ喧嘩でもカツアゲでも好きにやってくださいな、どうせ勉強しなきゃこの学校じゃ喧嘩もままならないでしょうし」
明らかに教師としては欠陥のあるコメントを残し、ハゲ校長の話は終わった。
「いいですか、受験勉強は高一の春から始まっているんですよ」
早速ガイダンスが終わると授業が始まった。授業内容は普通だったが、明らかに半グレと思わしき不良たちが真面目にノートをとる姿はシュールかつ異常な光景だった。自分の中学にも不良と呼ばれる者たちはたくさんいたが、彼らが真面目に授業に出たことなど一度もなかった。
「今日はここまで、初回だから宿題は出さないけどしっかり復習するように」
授業が終わり、休み時間になった。半グレたちが動きだすかと思ったが、彼らはなんと真面目に授業内容の確認をしている。生徒の服装の酷さと目つきの悪さを除けば、そこは一般的な進学校と何ら変わりはなかった。
放課後、不良に目をつけられないよう速攻で帰宅準備をする。幸いクラスの不良たちは俺に興味はなさそうだった。しかし廊下に出て1階への階段に差し掛かった時だった。
「探したぜ」
振り返ると昨日の3人組が立っていた。後ろにはゴリラのような顔をした醜い男が一人。
「岡村さんこいつですよ、例の一年」
岡村と呼ばれた醜男が前に出てくる。彼は今にも襲いかかってきそうな危険な目をしていた。俺は自分の「能力」なのであろう左腕を構える。
「ハアアアアアアアア」
岡村の顔面がみるみるうちに崩壊していく。ついには全身が崩壊し、岡村は醜いゴリラの化け物に変身した。
「気持ち悪い・・・」
決して悪意などない、率直な感想だった。しかし当然それを聞いた岡村は逆上し、襲いかかってくる。
「うわっ」
俺はとっさにパンチをかわすと、かわしたパンチは壁に命中した。するとなんと殴られた壁の一部がドロドロと溶け始めたのだった。
「どうだ! 岡村さんの醜い類人猿<バーサークゴリラ>の能力にかかれば骨だって溶けちまうぜ」
「おとなしく降参しな。野球部に財布兼パシリとして入部するっていうんなら命だけは助けてやってもいいぜ」
こんな気持ち悪い男のいる部活なんてまっぴらごめんだ。なんとか攻撃をかわしつつ逃げる隙を伺っていたその時だった。
「斬るぞ」
岡村の背中に横一文字の傷が浮かび上がる。背中を抑えようとしながら岡村がもがき苦しんでいると、眼帯の少女は混乱している俺の手を取った。
「逃げるぞ」
俺は眼帯の少女に連れられながら、あっけにとられている岡村たちを尻目に全速力で廊下をかけて行った。