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偏差値=戦闘力の世界  作者: T
偏差値=戦闘力の世界 第1章 一学期編
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不良だらけの超進学校

初投稿です。

 2104年4月1日。俺、杉田俊は受験勉強の末、都内有数の進学校である全能高校に入学した。


 ・・・しかし

 「オイ、一年坊主。金よこしな」

 「今なら財布渡せば見逃してやるよ」

 「なんとか言えよチビ」


 入学式を終え、帰路につこうとした直前だった。不良ブームの昨今カツアゲなんて珍しくはないとはいえ、偏差値67を誇る進学校となるとさすがにこんな奴らはいないだろうとたかをくくっていた。


 「お金、持ってないんですよね。見逃してくれませんか」

 

 俺はカバンを開けて中身を見せる。今日は入学式なので筆箱とノート以外、本当に何も入っていない。


 「なめてんのかクソガキ」

 「しょうがねえ、今ここで殺してやる」


 不良たちは拳を握りしめると、何もなかった手の中に突然、金属バットが現れる。


 「俺様の能力は痛いぜ」

 

 能力・・・金属バットが急に現れたことだろうか。しかし金属バットぐらいなら持ち歩いている不良は多い。当面の問題は相手が3人いるということだろう。今使える武器は手持ちにはない。つまりここで俺が取るべき行動はただ一つだ。


 「あっ、逃げやがったぞ」

 「追え!逃すな」

 「くそ、思ったより足速いぞ」


 何とか振り切れそうだ。俺の足は平均より少し早い程度だが。一人は鉄パイプを持っているとはいえ、彼らはあまり走るのが得意ではないのだろう。


 「おい、お前の能力なら遠距離でも使えるだろ。使え」

 「そうだぞ、新入生に俺たち野球部の恐ろしさを教え込んでやれ」


 また「能力」という単語を口にした。ハッタリか、ただの厨二病か。しかしさっき何もないところから金属バットが現れた(ように見えた)以上警戒はしておくべきかもしれない。


 「喰らえ!ジャイロボール」


 白い球がこちらに飛んでくる。俺は間一髪その球をかわした。しかしその直後


 「ウッ」


 ボールは直角に曲がり、俺の腹部に命中した。その場にうずくまる。


 「やっと追いついたぜ」

 「覚悟しろ」

 「殺す」


 周りに人はいない。相手は3人。おまけにさっきの球でかなりダメージを負っている、まずい・・・。男のうち一人はまた「何もないところから」金属バットを取り出す。


 「死ね」

 

 金属バットが振り下ろされる。俺はとっさに右手で受け止めてしまった。


 「痛っ」

 

 鉄パイプの一撃を受けた俺の右腕がありえない方向に曲がる。骨折だ。


 「まだまだ行くぜ」


 痛みに浸る間もなく二発目が飛んでくる。俺はとっさに今度は左腕を出してしまった。「折られる」と思った次の瞬間、ありえないことが起こる。


 「な、なんだこりゃ」


 俺の左腕が禍々しい黒い閃光に包まれると、左腕に振り下ろされた金属バットがぽきっとと音を立ててへし折れたのだ。左腕には全く痛みを感じない。


 「一年坊がこんな能力持ってるなんて化け物だ」

 「とにかく逃げるぞ。こいつは間違いなく偏差値70代はあるぜ」

 「一年が統一模試70クラスの知力とかありえねえよ」


 捨て台詞を吐きながら逃げる3人の不良たち。俺の危機は去ったようだ。右腕が骨折している時点で被害は甚大なのだが。

 しかし気になるのは彼らの捨て台詞だ。確かに中学時代の俺は頭が良く、偏差値は70超えが当たり前だった。高校生の兄ちゃんに逆に勉強を教えることすらあったぐらいだ。しかしそんなことは奴らが知る由も無いしこの状況には何にも関係は無い。


「すごいですね、頭良くて」


 小柄な少年に話しかけられる。おそらくさっきのケンカを遠巻きに見ていた野次馬か何かだろう。


 「僕は桜千春って言います。君と同じ全能高校の新入生です」


 同級生だった。今度は真面目そうでホッとした。できればあの不良たちについて何か知っていればありがたいのだが。

 

 「羨ましいなあ、強い能力で。僕なんて合格点ギリギリだったせいかこんな地味な能力で」


 そう言いながら彼は俺の腹部に手をかざす。すると一瞬で痛みが消えた。

 

 「骨折とか大きな怪我は治せないんですよね。でも痛み止めぐらいにはなると思いますよ」


 そう言って千春は右腕にも手をかざした。痛みが引いていく。さっきの不良といいこいつといい、どうやら全能高校は魔法使いの集まりらしい。


 「ありがとう・・ていうかすごいね、魔法使いみたいじゃん。こんな奴らが君ら以外にも全能にはいるのかい」

 「えっ?まさかTCUシステムを知らずにこの学校に入学したのかい」

 「何だよ、 TCUシステムって」


 俺は何が何だかさっぱりだった。


 「全能高校を設立した3人の科学者によって創られた画期的システムです。全能高校合格者全員に超能力を発現する電波を浴びせて超能力者にさせるという。学力に応じて能力の強さが上下されるから、真面目な生徒はもちろん学校をシメたい不良すら家庭学習に勤しむしかないという」

 「ちょっと待て!全員に超能力が発現される電波ってなんだよ」


 そんなものは聞いたことがない。第一普通の人間を超能力者にできるとしたらそれこそノーベル賞ものの大発見だ。


 「とにかく、全能高校は入学した時点で全員が能力を得られるんです。君の左腕だって」

 「なんだよ、これ」


 俺の左腕は禍々しい紫色に変色していた、昨日切ったはずの爪もまるでライオンのように尖っている。


 

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