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「お父さん、カッコ良かったよ。ホントだよ」
真由は頬をかきながら、恥ずかしそうに顔を逸らした。
バレバレだ。そんな訳がない。自分自身、そして真由だって本当はそう思っていない。
「真由。無理して嘘なんてつかなくていいんだよ」
真由は顔を伏せた。
運動会の保護者競争でゴール手前で激しく転んだ父親の姿が、カッコイイわけなどない。恥さらしだ。
でも。
ぽん、と私は真由の頭の上に掌を乗せる。娘の髪はまるで天使の羽のように、触れただけで幸せが身体に流れ込んでくるような幸福な感触だ。
「ありがとな、真由」
真由の嘘は、決して人を傷つけない。