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サシ劇台本! 名無し君番外編 ライ×クロム (※シーン4セピア有り診察室バージョン) (女子一人追加OK)

作者: 七菜かずは

名無し君の不始末●クロスオーバー作品7・番外編・acoustic・雷夢

(名無し君本編とは全く違う異次元の物語。本編とは、設定や世界観にずれがあります)

作:七菜かずは


【名無し君の不始末・彼らの愛の理由~episode7「僕の愛の理由。王の恋」~】

水星の王。ライルートばーじょん。


■登場人物


★カルク・ライデイン・オメガ 【ライ】 ♂

・医療大国水星、ウンディーネの王様。30歳。おっとりしていて物凄く優しいお兄さん。常識人。シンプルなメガネをかけている。

水星の第一王子だったが、最近王が亡くなった(行方不明になった)為、王位継承をしたばかり。家族想い。

クロム姫に秘かに恋心を抱いているが、それは兄弟の一部にしかバレていない。

国の将来の為、金塊の国・金星の金獅子きんじし姫と婚約している。金獅子のことは好きでも嫌いでもないが、「キレイな人だな」とは思っている。ろくに話したことも無い。

兄弟や国のことを誰よりもよく考えているお兄さん。いつもにこにこ。たまに兄弟に向けて出る毒舌が、本当は腹黒なんじゃないかと思わせる。

左目の下に薄い黒子が四つ並んでいる。

本当は誰よりも、クロム姫のことを愛しているが。自分の為、国の為に、そのことは一生内密にする覚悟を持っている。


★クロム・ロワーツ 【クロム】 ♀

・メインヒロイン。29歳。姫カット黒髪長髪の女性。母性のある心優しき元姫。ケテラス星中央大陸、アイゼル城966番目の王女であった。

黒凪くろなぎ ゆめは、地球名。クロム・ロワーツは、母星であるケテラス星での、本名。

過酷な過去があり、今や姫としての生活は消滅している。が、現在は一般人として幸せに平凡な生活を地球で送っている。

歌と絵が得意。地球地底のメイドカフェで、社員として働いている。

今住んでいる地球から水星まではテレポータで簡単に移動してこれるので、友人である水星の王族たちや医師たちによく会いに来ている。

インドランス(※機械と人間の死体を融合させて蘇らせた人工人間のこと。成長するアンドロイド)の心療内科医になるのが夢。今も勉強中。

水星に通うことで、水星の先進医療を日々見学し、学んでいる。


★せぴあ ♀ (※出番は一瞬の為、クロム役が兼ねられる)

ライ専属のナース。精密なインドランス(※アンドロイドのようなもの)。淡々と喋る。紫の髪のツインテール。白い可愛らしいナース服を着ている。






●シーン1


クロム「お先に失礼しまーすっ」


★夕方。仕事から上がったクロム。私服に着替え、バーから出る。バーの玄関前から続く長い階段を下りていく彼女の背後から、若干変装をしているライが声を掛ける。


ライ「ひーめーさんっ」


クロム「っ? っ!? らっライ!? っあっ!」(驚き。階段を踏み外しそうになる)


ライ「や。っと。会いに来ちゃった」(彼女の手をそっとふわりと引き、助ける)


クロム「っ!! ちょっちょっとっ! 何!? お一人ですか!?」


★水星の王となったばかりのライが、単独で、護衛も付けずに自分に会いに来たことに物凄く驚くクロム。


ライ「え? うん」


クロム「どうして一人で地球に……っ!?」


ライ「たまたま今日半日暇になっちゃってね。姫さんと一緒にご飯でも食べたいなーと思って」


クロム「れっ連絡ください! 私が迎えに行ったのに!」


ライ「あはは。なんでー」

クロム「なんでって……! もうっ! ちょっとは国の王様である自覚を……! っ! こ、ここは人目がありますからっ! 一先ず私の家に行きましょうっ!」


ライ「え……。姫さんの家に行っていいの?」


クロム「っはい! ここじゃ目立つので! お願いしますっ!」


★階段を下りてすぐの商店街は、かなりの人が行き交う。


ライ「うんっ♪」


クロム「急いで急いでっ!」(ライの手を引いて)


ライ「あっ。姫さん、待って」(急にシリアスになる)


クロム「へ?」


ライ「おでこ出して。……ちょっと熱ある? 顔赤いよ。風邪じゃない?」


クロム「あ……。今朝からちょっとだけ、微熱っぽくて……っ」


ライ「おぶろうか?」


クロム「えっ!? なっ何言ってるんですか平気ですっ! もおっ! 行きますよっ!」


ライ「姫さん、僕一応内科医なんだけど~……」


クロム「はやくっ!」


ライ「大声出したら熱上がっちゃうよ? 後で僕が注射打ってあげるね」


クロム「いっ今あるんですか!?」


ライ「あるよ? 服の下に色々と……ね」


★ライの服の下には、細い試験管が幾つも並んでおり。その中にはカラフルな液体が何種類も入っている。


クロム「ひぃっ!」


ライ「♪」


★クロムの不安を余所に。クロムに手を引かれている幸福ににやにやが止まらないライ。






●シーン2


★クロムのマンション。九階のクロムの部屋。ライは、一番奥にあるクロムのベッドに、子供のようにダイブする。


ライ「わあ~。枕、姫さんの匂いがするな~幸せ~すんすん」


クロム「ちょっとっ! 何してるんですかっ恥ずかしいっ」


★クロムは手を洗って。お茶の準備をする。


ライ「姫さんっ。こちら! かもんかもん。ふふふふ」


クロム「私のベッドで当たり前のように添い寝を誘わないでくださいっ!」


ライ「へへへ」


クロム「ライ、今日は随分へにゃへにゃしているような……?」


ライ「うん。独身最後の日だからね」


クロム「えっ……あっ……そ、そうだったんですね! そっか……。おめでとうございますっ!」


★ベッドでゴロゴロするライに向かって、深々と頭を下げるクロム。


ライ「姫さんは……嬉しいんだね」


クロム「えっ……。あ、当たり前じゃないですか! 金獅子と、幸せになってくださいね!」


★ライ、少しだけ寂しそうな顔を一瞬する。が、すぐに笑顔になって。ベッドに座り、うさぎのクッションを抱き締めて。


ライ「金星の姫か……。ねえ、あの子って、どんな子?」


クロム「えっ?」


ライ「一度か二度しか会ったことないから。よくわからなくてさ……。話もあまりしたことないし」


クロム「えっ……。ライ、先週の休みって……」


ライ「姫さんと瑠璃くんとトビとで、ウンディーネバブル水族館に行ったね!」★自信満々に!


クロム「先々週の休みは……」


ライ「キジュリュクとナギとヴィーとで、温泉に行ったよ!」


クロム「その前の週は……」


ライ「ケテラスに行って豪華客船クルーズ! 最高級フルコースを、シトータとクインスとで楽しく満喫したよ!」


クロム「あああああああのっ貴方が自分の弟や妹たちとすっごく仲がいいのはわかりました! でもっ! 金獅子も確か、日曜が休みだったはずですけど……? 会いに行かないんですか……?」


ライ「うん。興味ないから。彼女のこと」


クロム「えっ……。で、でも、明日、籍を入れるんですよね……?」


ライ「……うん」


クロム「結婚相手なのに……知らなくていいんですか?」


ライ「僕は……。好きな人、居るから……」


クロム「えっ……!? だ、誰ですか?」


ライ「……おいで」


クロム「? は、はい」


★クロム、ライの隣に座る。


ライ「ふふっ。……(ウイスパー)な・い・しょ。だよっ!」


クロム「んもうっ! ライったら!」


ライ「あははっ。ねえ、クロム。外に遊びに行こうよ。お腹空いちゃった」


クロム「ライ、もしかして、マリッジブルーですか?」


ライ「お願い。今日だけ、僕に付き合って欲しい」


クロム「……ライ……」


ライ「頼むよ……」


★どんなことでもソツなくこなし精神もぶれることのない彼の様子が、“いつも”とほんの少し違うことに、彼女は気付いていた。


クロム「っ……わかりました」


ライ「ほんとっ!? ふふ。嬉しいな」


クロム「あっ。でも……。実は冷蔵庫に色々と、今日食べなきゃいけない食材がいっぱいあって……」


ライ「えっ?」


クロム「私一人じゃ食べきれないので。ライも一緒に食べてくれませんか?」


ライ「姫さんの手料理!? うわあ~っ。嬉しいなっ! 何があるのっ!? 僕手伝うよっ!」


クロム「あっ。金目鯛丸々一尾を、昨夜からみりんとお味噌で漬けておいたんですっ」


ライ「へ~! ……あ、姫? 熱があるんだからあんまり張り切らないでね?」


クロム「大丈夫ですっ」


ライ「……姫は可愛いなあ~」


クロム「そう言えば今夜、流星群が見えるらしいですよ。後で一緒にテラスでワインでも飲みましょうか」


ライ「うんうんっ! 是非に是非にっ!」


クロム「……あの、」


ライ「うんっ?」


クロム「いいんですか? こんな所に居て……」


ライ「うん。いいの」


クロム「結婚式は……」

ライ「式とかは、まだ。明日は、婚姻届け書くだけだよ」


クロム「金獅子は今、金星に居るんですか?」


ライ「さあ? わからないなぁ」


クロム「もうちょっと興味持ったって……」


ライ「姫はさ。僕とはじめて出会った時のこと、覚えてる?」


クロム「え? えーと……」


ライ「覚えてないか。……覚えてないだろうな」


クロム「九歳の時のこと、ですよね?」


ライ「そう。あまり思い出したくない?」


クロム「……いえ。戦争の時のことは……。もう、二十年も前のことですから」


ライ「君はいっつも大怪我して帰って来たよね」


クロム「あの時、水星からの援助や、救命隊の貴方たちが居なければ。もっと多くの犠牲者が出ていたと思います」


ライ「勇敢過ぎたよね。アイゼルの人たちはさ」


クロム「……勇敢と無謀は似ていますよね……」


ライ「姫っ。ごはんもテラスで食べない?」


クロム「っそうですね。そうしましょう。あっ、じゃあ出来たものから運んで頂けますか? トレー、そこにあります」


ライ「了解」


クロム「ライ、明日は水星で婚姻届けを書くんですか?」

ライ「姫さんっ! お鍋吹いてるよっ!!」


クロム「あっ――っ! ッ! あちちっ!」


★クロム、鍋のふたを素手で掴んでしまう。


ライ「ちょっ。気を付けて」


クロム「あつーっ」


★ライ、手際よく彼女の軽い火傷を流水で冷やしてあげる。


ライ「はい。流水で冷やしててね。こっち僕やるから」


クロム「す、すみません」


ライ「……姫さんは、金獅子姫とはいつ出会ったの?」


クロム「えっと……。幼少期に、金獅子の家族たちが、ケテラスまで旅行に来ることが多くて……。それで。一緒に城下でお買い物したり。釣りをしたり。海で遊んだり、バーベキューをしたことがあるんです。あっ、写真もありますよ! 後で見ますか?」


ライ「ふふっ。うん……」


クロム「彼女は、妹のような存在なんです。とっても可愛くて……」


ライ「そうなんだ」


クロム「はい。引っ込み思案で、緊張しいで、小さくて。……生まれた時もすっごく小さかったみたいで、だから。金獅子のお父様、金星の王が、強く立派な人間になるようにと。その名を付けたそうですよ」


ライ「僕も何か一品作りたいなぁー……」


クロム「ちょ、ライ? 聞いてます?」


ライ「え、ごめん、聞いてなかった」


クロム「ライの好きな人って……」


ライ「はいっ。サラダとお漬物と煮つけっ。運んじゃうねっ。姫、手の痛みが引いたらお味噌汁とごはんよそってくれる?」


クロム「はっはいっ! ……あっあのっ。ライ、好きな人が居るなら。その人と結婚すればいいじゃないですかっ!」


ライ「えぇ……? あははっ」


クロム「っ……?」


ライ「それが出来れば苦労しないんだけどなぁ……」(テラスへ行き、料理を並べる)


クロム「……私は……」


ライ「僕の恋は叶わないんだよ……姫」


★ライ、すぐにキッチンに戻ってくる。


クロム「あっあの、ライ……」


ライ「うんー?」


クロム「金獅子は、ライのこと、昔から凄く憧れてて……」


ライ「そうみたいだね。うちの病院に来ても。必ず会いに来てくれるし。彼女に指名されること、多いし。いっつも真っ赤な顔してるから、日焼けしてるのかと最初の頃は思ってたけど」


クロム「でも、やっぱり……。両想いでないなら。結婚は……」


ライ「姫。医療にはお金がかかるからさ……」


クロム「っそれはわかってます! でも、興味も無い子と結婚しても。ライは幸せになれないじゃないですか!」


ライ「興味持ちたくてさっきから色々聞いてるよ?」


クロム「結婚の前日にそんなこと試すのはおかしいです!」


ライ「じゃあ、姫がケテラスの王族として僕と結婚してくれる?」


クロム「――え……っ?」


ライ「金星が水星うちに援助してくれているお金。ケテラスせいだったら実は楽々払えちゃうんだよね」


クロム「援助……?」


ライ「元々ケテラスは水星に援助金として毎年数千万以上払ってくれてる。でも金星からはその倍以上、今後貰えることになってる。……でもそれは、金獅子姫と僕の結婚が条件なんだ」


クロム「私は……ケテラスには、もう……」


ライ「君のお姉さんは、君に戻って来て欲しいって。何度も言ってたよね?」


クロム「……ライは……」


ライ「ケテラス全域には膨大な量の宝石と精霊石が埋まってて。ケテラスのどこを掘ってもそれが出てくるんでしょ? しかも無限にそれは創り出せる」


クロム「……そう、みたいですね」


ライ「金星が抱えてる金塊よりも。ケテラスの石のほうが、価値はずっと高くて」

クロム「あのっ……! ライが好きなのは……わた……?」

ライ「あっ。姫。飲み物どうする? 食べちゃおうよ。冷めちゃうよ」


クロム「えっ、あっ、は、はい……! えーと、炭酸水と……。あと、昨日空けたばかりの白ワインが、野菜室に……」


ライ「楽しみだなーっ。美味しそうっ!」


クロム(ライ……何を隠してるんだろう……)


ライ「食べよう食べようっ! ……あっ! 姫っ! 今流れ星、一つだけ見えたよっ! ……ここから見る空は……本当に綺麗だね……。いいよね、海底って……」


クロム「19時くらいから、流れるらしいですよ。だからそろそろかな」


ライ「姫と一緒に見たかったんだ」


クロム「……」


★二人、隣同士に座って。白ワインが入ったグラスを持ち。


ライ「じゃあ、乾杯」


クロム「……乾杯」


ライ「君の美しさに」


クロム「……ライ」


ライ「うん?」


クロム「ライは兄弟、今、何人でしたっけ」


ライ「この間また一人産まれたから。二十二人かな? 遺伝子の研究、結局はずっと続けて行くんだろうなあ……」


クロム「長男だから。王様……だから。色々と多くのものを背負っているのはわかります。でも、やっぱり。私は……ライには自分の好きな人と幸せになって欲しい」


★ライ、クロムの手を取り。手の甲にキスをする。


ライ「ちゅっ……」


クロム「っ……!?」


ライ「ふふ。姫の手、甘い香りがしたから。ついキスしちゃった」


クロム「……さっきお砂糖をつまんだから……」


ライ「はじめて会った時も。星が降ってた。……僕を変えてくれた。君に出会って。運命が変わったんだ」


クロム「あ、あの。……私、ごめんなさい。昔のこと、あんまり覚えてなくて……。出来れば教えていただけると助かるのですが」


ライ「うん……。僕が十歳で君が九歳。前線で戦っていた君たちを……戦争を止めない君たちを……僕は見下してた。軽蔑していたし。好き好んで戦っているように見えたんだよ」


クロム「幼いライには、ということですか……」


ライ「うん。あの頃は君の目も鋭くて。とても怖くて。汚いな、触りたくないな、って。凄く思ってた。泥だらけになって、傷だらけで。真っ黒で……」


クロム「……」


ライ「僕はプライドが高過ぎた。自分たちの誇れる医療技術を、こんな汚れた奴らの為に提供するのは嫌だなと思ってしまってた。だから、手を抜いた治療をしていたんだ」


クロム「ライ、が……? ライが!? 手を抜いてた……!?」


ライ「あははっ。……うん。僕が」


クロム「信じられない……。どんな命にだって、どんな悪人だって、凄く丁寧に治療するライが……?」


ライ「そう。でも、九歳の君が、僕の愚行に気付いたんだよ。君の剣のかしらで僕の背中と頭を強烈に殴ってきた」


クロム「ええええっ!?」


ライ「ついでに腰を回し蹴りされた! ふふ。相当頭にきたんだろうね」


クロム「ええーっ!? ッ……そっ……そっ……それは……っ」


ライ「えー? 本当に覚えてないの? まあそうかもね。戦場から城に戻って来た君はいつも、仲間のことだけで手いっぱいだったもん。仲間を励まして。生かすことに精一杯だった」


クロム「そ……っ、う、えっと……~……」


ライ「――そうして君は言った。“お前のような役立たずは必要ない。消えろ!”」


クロム「ッ――!? すっ水星の……っ!? おっ皇子にっ!? そっそんなことを……っ!?」


ライ「“手を抜くなら、もっと、他人にわからないようにやれ!”」


クロム「ひぃっ……!」


ライ「“お前は、わたしの宝物たちを守るために来てくれたんじゃないのか!”」


クロム「っ……」


ライ「“戦を終わらせる為に、わたしの傷を治してくれ。完全に治らなくたっていい。わたしが死んだら、この城まで堕ちるんだぞ!”って」


クロム「……」


ライ「結局、君に守られていただけで。僕は、何もわかってなかった。あの場所がどういう場所だったのか」


★ライ、着ていたシャツを脱ぐ。


ライ「よっ……っ」


クロム「? ライ、汗でもかきましたか……」


ライ「背中。真ん中の所。見て。君にどつかれたところ」


クロム「えええーっ!!?? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」


ライ「姉に煙草で焼きを入れて貰ったんだよ。傷が消えないようにね」


クロム「え……ええっ!?」


ライ「ふふ。驚いた?」


クロム「いっいやっだってっ」


ライ「あれから本気で勉強して。一流の内科医を目指した」


クロム「っ……!」


ライ「君に。また。消えろって言われるのがこわくってね」


クロム「うひぃぃ……!? らっらっライ……! あの、その節は本当に……! ごめんなさい……っ!」


ライ「君に出会ってなかったら。僕は医者になってなかった」


クロム「え……っ」


ライ「つまり、医療大国水星の、王にもなってなかった」


クロム「そんな……」


ライ「あのまま調子こいて育ってたら。兄弟のことも、大切に出来てなかっただろうなぁ」


クロム「ライ! 金目鯛食べてください!」


ライ「食べてるよ?」


クロム「うううううっ」


ライ「……ありがとうね。姫。本当に……感謝してる」


★クロムの頭を撫でる。


クロム「……っ」


ライ「今僕がこんなに紳士的で凄くいい人で誰よりも有能なのは、君のお陰だよ!」


クロム「自分で言っちゃだめです!」


ライ「聖人君主だなーって、思ってくれてたでしょ?」


クロム「そこまでは思ってませんっ! もーっ!」


ライ「このお漬物って、自分で漬けてるの?」


クロム「あっはいっ!」


ライ「すっごい美味しい! きゅうり!」


クロム「ありがとうございます」


ライ「あーあー結婚したくねえなー」★一瞬だけ死んだ目になる。


クロム「ちょっとーっ!? ライ!!」


ライ「なんだい? マイプリンセス」


クロム「だからぁーっ! 一体ッ誰がっ! んっ!?」

ライ「ちゅっ!」★クロムの唇を奪う。


クロム「っ!」


ライ「っ。姫。気付いてよ……」★最上級にっこり。


クロム「っ~!!」


ライ「んっ。お味噌汁、丁度いい味付け! 流石だね。姫。いいお嫁さんになるよ」


クロム「……っどうして今更……っ!」


ライ「君の場合ライバルも多いしね……」


クロム「わ、私……」


ライ「ごめんね……。ずっとずっと好きだったんだ」


クロム「ずっと……?」


ライ「うん」


クロム「昔から……?」


ライ「そう。姫の剣のかしらでどつかれたあの瞬間から――」

クロム「わぁぁっ! もうその話やめてくださいいっ!」


ライ「本当の話なんだよ?」


クロム「わかりましたからっ」


ライ「因みに頭はその部分だけ毛根死んでてね?」


クロム「ッー!!?! それは手術代出します!! 植えて下さいっ!!」


ライ「あはは。いらねー」


クロム「ライっ!」


ライ「姫。悪いと思ってるの?」


クロム「全然覚えていないのも、本当に申し訳無いとっ思ってますよっ……!」


ライ「じゃあ。今夜ここに居たこと。誰にも言わないでくれる?」


クロム「……わかりました」


ライ「ありがとう」


クロム「……ライ……」


ライ「姫さん。チーズもうちょっと切って貰える?」


クロム「あっはいっ!」


ライ「……あー。自由っていいなぁ。……姫の生活、いいね」


クロム「ライは、これからもっと自由のない生活になるんですか」


ライ「だろうね」


クロム「……っ」


ライ「姫は、来週確か機械精神医療資格の試験があるよね?」


クロム「あっ……はい」


ライ「受かりそう?」


クロム「大丈夫っですっ! 多分! キジと瑠璃とシトータにも、勉強教えて貰ったのでっ!」


ライ「あはは。名前書き忘れないようにね」


クロム「……私、……ライ、の」


★クロム、そっと彼の手に触れる。


ライ「うん?」


★姫、俯いて。


クロム「っ……ずっと、お友達で……いてくださいっ」


ライ「……ふ。うん」


クロム「……っ。ごめんなさい。……でも、王である貴方の気持ちに、簡単に応えることは、」


ライ「ごめんね。ありがとう。……そうだね、君が正しい。……僕が好きって言ったこと、忘れていいからね」


クロム「わ……っ」


ライ「姫?」


クロム「私……ライの顔立ちは、とても綺麗だと思います。カザンに凄く似てて……」


ライ「あはは。父さんと比べられるのは、ちょっと複雑かな」


クロム「指も好きです。いつもちょっとささくれあるけど、たこも、あるけど」


ライ「汚い指だよ」


クロム「努力していない人間には、この指の良さは解らない。私は……知ってます。貴方が、天才と呼ばれている弟たちに劣等感があること。その差を埋めるために、血の滲む努力してきたこと」


ライ「……っ」

クロム「っ」


★ライ、そっと彼女を抱き止める。苦しそうなその顔は、彼女には見えない。


ライ「君に――」


クロム「……」


ライ「消えろって言われたくなくて……」


クロム「っ……ライ、ごめんなさ……っ」

ライ「国の為に努力したことなんかない!」


クロム「えっ……」


ライ「父も、祖父も、兄弟も、ずっとどうでもよかった! 今まで国のことを想ったことは一度だってないんだ……っ!」


クロム「ら……っ」


ライ「君に凄いって言われたかっただけなんだ……!」


クロム「……じゃあどうして……」


ライ「僕が凡才なのは自分が一番よくわかってる……君に相応しくなんかない。だからずっと言えなかった。……でもそれでも、君に認めて欲しくて。……っあんな、あんなに……。君に、幻滅されたくなくて……っ!」


クロム「……九歳の私に怒られた時の自分と、ずっと戦ってきたんですね。だからライは……」


★ゆっくりと二人の身体が離れる。視線は擦れ、合わない。


ライ「ごめん……。最低なこと言っちゃった……」


クロム「っ……」


ライ「はぁ……」


クロム「誰だって、口が滑っちゃうことありますよ。いいじゃないですか。結婚前夜くらい、不満や本音を言ったって。貴方は十分、自分の仕事を全うして生きてきたんですから。だから、ほとんどの星の人間が、水星の高い医療に助けを求めるし、援助だってする。過程もいいけど……本当に大切なのは、今ですよ。今、貴方は、たくさんの人のこと、愛を持って治療して。笑顔で接してるじゃないですか。……とても偉いと思いますよ。……って、いつも言ってるんだけどな……?」


ライ「足りないよ……」


クロム「えっあっえっ!? えーとー」


ライ「足りないっ! もっと君に褒めて欲しいっ!」


クロム「褒めるのは苦手です……」


ライ「うー」


クロム「ふふっ。……ライ、ありがとう。私に会いに来てくれて」


ライ「……どうしても会いたくて。でも……。君と結ばれなくても。僕は……んっ」


★クロム、ライに口付けをする。


クロム「ちゅっ……」


ライ「っぷはっ……。ひ、ひめ……!?」


クロム「っ。ライ。映画でも見ませんか? ……あ、でも。この申し訳程度の適当な流星群を見ながらチェスとかでもいいですね」


ライ「ほんっと大したことない流星群だねー。こないだのは凄かったのに! 空一面を埋め尽くすように星が飛び交ってさ!」


クロム「ね」


ライ「っ。姫は、花みたいな香りがするね」


クロム「そうですか?」


ライ「姫の身体からかな」


クロム「あっ。ボディシャンプー、いいやつに変えたんですよ!」


ライ「え。でも仕事から帰って来てからお風呂入ってないよね?」


クロム「……このワンピース、新しいからかな?」


ライ「自分の体臭がいい匂いなのは認めたくないのかな?」


クロム「あっ! ポップコーンのやつあるんですよー! あと、わたあめ!」


ライ「えっ!? やるやるっ!」


クロム「ちょっと待ってくださいねー」


ライ「あっ、待ってっ! 姫」


クロム「うっ?」


★ライ、クロムをそっと抱き締めて。


ライ「今夜は、姫の寝顔を見たら帰るから」


クロム「っだめっ!」★ライに頭突きする!


ライ「ふごっ!?」


クロム「映画を見終わったら、帰って下さいっ! 明日、そんな顔で金獅子に会いに行ったら怒りますよっ!? ちゃんと寝て下さいっ!」


ライ「えー!? やだなぁー」


クロム「また来ていいですからっ! 今度は、他の兄弟たちも一緒にっ!」


ライ「僕は姫さんと二人きりがいいなぁ……」


クロム「私愛人にはならないですよっ」


ライ「愛人かあ……。いい響きだよね」


クロム「どこがですかっ」


ライ「だって僕一生姫以外は愛せない自信あるもん」★けろっとして言う。


クロム「ちょっとーっ!? もうっ! ライは結婚しちゃだめですっ! 今すぐ金獅子に電話してあげましょうかっ!?」


ライ「あははーっ。お頼み申すー」


クロム「もうーっもうーっ!」


ライ「姫さぁん……すきぃ……」


クロム「もーっ……」


ライ「君以外は……愛せないよ……」


クロム「ライ……」


★ポップコーンとわたあめを作りながら。ホラー映画とコメディ映画を五時間かけて一緒に観て。はしゃぎ疲れ。朝方、そのまま床で眠ってしまう二人。






●シーン3


★翌昼。午後。


クロム「……う……?」


★むくりと起き上がるクロム。


ライ「すー……すー……」


クロム「ッ!!?! らっライッ!! 起きてくださいっ!! ライ!! もうお昼過ぎですよっ!」


ライ「うー?」


クロム「金獅子と会うのって、何時ですか!?」


ライ「え? 朝だよ? 朝の九時」


クロム「あさくじ!?!?」


ライ「おはようマイプリンセス」


クロム「のん気に挨拶してる場合じゃないです!!」


ライ「うっわー。……もう二時じゃん。あははっ。こりゃぁまいったね」


クロム「狙ってここに来ました!?」


ライ「んー? いや? やだなぁ姫。聖人君子の僕が、君の妹分を悲しませるようなことする訳ないじゃない」


クロム「服を着て下さい服を!」


ライ「姫も服着たら?」


クロム「ッ――!? わっ私……っ!?」


ライ「暑い暑いって言って脱いでたよ。お風呂入りたーいって言って。そのまま寝てた」


クロム「なんですとっ!? なんですかっ!?」


ライ「僕はなんていうか……姫の寝顔を見ながら姫の頭と身体を撫でるのに夢中になってたらいつの間にか寝てた気がする」


クロム「ひぃぃぃぃ!? もーっ! 今から金獅子に電話して下さいっ!」


ライ「通信機器なぁーんにも持ってきてないや」


クロム「王の自覚無し!! じゃっじゃあ私がかけますからあっ! もおおおおおっ!」


ライ「待って待って」


クロム「ラぁイ! せめて下着をはいてください!! どぅくし! どぅくし!」★ライの目を潰そうとする。


ライ「姫さん。ここに居るのバレたら僕、金星の皆さんにどう言えばいいのかわからないんだけど……? 政治的に大丈夫かな」


クロム「ッッ!!!! たっ……確かに……っ!!」


ライ「僕、向こうさんには夜勤だって嘘吐うそついてるし」


クロム「えええええええっ!? なんの為に!? もうその嘘、絶対バレてますよ! 水星に連絡来てるでしょ!」


ライ「だろうなぁ」


★クロムの通信機器が鳴り出す。


クロム「捜索願いが出されてるかも……っ! っあ! ら、ライ! ナギから電話来ました!」★ライの弟。


ライ「出て出て」


クロム「はいっ! もしもしっ! ナギ……っ!? あ、えっと、こんにちは……。っ!? あっ……あっ……あっ……えっと……。い、いま、す……。ハイッ! いますっ! ~っ! はっはいっ! かわっかわりますねっ!」


★ライに通信機を渡す。


ライ「はぁい。もちもち。……あー、うん、今地球。そう。姫の部屋。一緒に居た。……うん。……うん。……わかった。すぐ戻るから。……うん。……はい。じゃあね」


★ライ、通信機を切る。


クロム「怒って……ました? ナギ」


ライ「ん? ううん。怒ってはなかった」


クロム「えっ!?」


ライ「ナギ勘いいから。僕の気持ち知ってるの、あいつくらいだしね」


クロム「そ、そう……」


ライ「とにかく帰って来て金星行けってさ」


★ライ、のろのろと着替える。


クロム「そうですね。そうしたほうがいいと思います……」


ライ「うん」


クロム「あっ、お風呂、使います!?」


ライ「あー、いや、ありがとう。大丈夫」


クロム「……ライ……」


ライ「……姫、顔上げて」


クロム「っ?」


ライ「ちゅっ……」★深く口付ける。


クロム「んっ……!」


★沈黙。二人、指先だけそっと繋ぐ。そっと唇が離れて。


ライ「っ……最後のキスだね」


クロム「……」


ライ「ごめんね。もうしないから。許してね」


クロム「……これ以上遅刻しないで下さい」


ライ「そうだね……」


クロム「……結婚、おめでとうございます」


ライ「姫……」


クロム「……行ってください」


ライ「……ありがとう。晩御飯、とか、ご馳走様。美味しかった……楽しかった」


クロム「はやく、って……」


ライ「……っ、姫、……僕は……君以外は……っ」


クロム「はやく行ってください……っ!」


ライ「……っ……」


★ライ、後ろ髪引かれる思いで、その場を後にする。






●シーン4


★一か月後。朝方。


ライ専属の少女インドランスナース(※クロム役兼ね役OK)「ライ様。おはようございます」★アンドロイドの少女。ライの助手。


ライ「ああ……。おはよ。せぴあ」


せぴあ「先日はとてもご立派でした」


ライ「あははっ。土下座なんて生まれてはじめてしたよ」


せぴあ「ヴィーナスの金獅子姫より正式に、婚約破棄の通達がありました」


ライ「そっか……」


せぴあ「しかし、援助の額は、増額して下さるそうです」


ライ「えっ?」


せぴあ「ケテラスの姫君の面子を潰したく無いからだ。と、金獅子姫ご本人より、伝言を頼まれました」


ライ「ケテラスの……姫?」


せぴあ「デスクに書面をまとめておきました。内科診察が始まるまでの、後34分間の内に、目を通して下さいますか。カルク・ライデイン・オメガ閣下」


ライ「うん……ありがとう。あ、何か飲み物貰える?」


せぴあ「かしこまりました。本日は、ぶどうジュース、緑茶、ウーロン茶、オレンジジュース、コーラ、炭酸水、ジンジャエール、トマトジュースが、ございます」


ライ「あったかいお茶がいいな。茶葉は任せるよ」


せぴあ「かしこまりました。1分半程、お待ちください」


ライ「……今日は予約が六件と……。あ、せぴあ、もう待合室結構埋まって来てる?」


せぴあ「はい。順番待ちの患者様が、本日、既に、二十六名様、お待ちです」


ライ「ありがとう」


せぴあ「因みに、後三分で、わたしの後任のナースが、出勤、予定です」


ライ「えっ。あー、そっか。なんだっけ? 研修の子? 内科医の特別専門医の資格持ってる子なんでしょ? 僕三週間くらい居なかったから、面接とかナギに任せちゃって申し訳なかったなー」


せぴあ「わたしの、仕事は、全て。既に教えてありますので。優秀な方ですので、心配はないかと、思います」


ライ「そっかそっか。君のお墨付きがあるなら大丈夫だね」


せぴあ「はい。……ライ様、お茶をお淹れしたら、倉庫に行き、補充の品を、取って参ります」


ライ「えっ、新しい子と一緒にやれば?」


せぴあ「いえ。……お茶は、お二つ、ご用意致しました。では、失礼、致します」


ライ「あっ……! あの、さ。僕が居なかった三週間の間に、誰か僕を訪ねて来なかった?」


せぴあ「患者様でしたら、月曜日に、七件、火曜日に、」


ライ「あーっ! かっ患者さんじゃなくって! その、ケテラスの……クロム、姫、とか」


せぴあ「データには残っておりません」


ライ「そっそう……。そっか」


せぴあ「ライ様。クロム姫は月とケテラスの救世主。中途半端なお付き合いで姫様を傷付けるのはお止め下さい。わたくし達インドランスにとっても。あの方は母であり、神であり。絶対的に優先して守るようプログラミングされています。それは、設計者である……」

ライ「わかってるっ! わかってるってっ! ごめん……っ。あの日、クロムと一緒に居たこと。せぴあたちもショックだったんだね」


せぴあ「いえ。……男の二股は見苦しいぞ。と申し上げたいだけでございます」


ライ「手厳しいな……いや詰めが甘かった僕が悪いな……」


せぴあ「では、失礼致します」


ライ「はいはい。よろしく」


せぴあ「ライ様」


ライ「わっ!? なっ何!?」


せぴあ「姫様に守られている今の状況では、王が姫様に釣り合っているとは、わたくしは思えません」


ライ「お、おお……」


せぴあ「死ぬ気で、男、磨いて下さいね。では、いってまいります」


★せぴあ、内科診察室から出て行く。


ライ「ふぅ……。ニュースにもなっちゃったしなあ。……しばらくは外出も自重しよう……」


★クロム、内科診察室をノックする。


ライ「あっ。来た来た。はーいっ。どうぞー」


クロム「失礼します。……本日から此方で働かせて頂きます。クロム・ロワーツと申します」


ライ「……えっ?」


クロム「ふふ。見て下さいっ。特別専門内科医証! いや~。結構頑張って勉強し続けてきた甲斐がありましたよっ。ねっライ」


ライ「……っ…………………………」


クロム「ライ?」


ライ「っ純白のナース服!! 似合ってる!!」


クロム「ひゃっ!」


ライ「って! そんなことじゃないっ! なんだそのスカートはっ! 短いぞっ! お父さんはぁっ! それは許さないぞーっ!」


クロム「ライ-っ戻ってきてーっライ-っ!」


ライ「……はっ」


クロム「おはようございます」


ライ「あ、あの、なんの冗談……? 今日はエイプリルフール……? 仮装大会……? ちっ血のり書くの、手伝おう、か……?」


クロム「冗談じゃないですよっ! 今日から内科で働くんですっ!」


ライ「くっクロムはインドランス専門の心療内科医になりたかったんじゃないの!?」


クロム「そうですよ? でも、ナギに。はじめは病院で、普通の患者さんに慣れてからにしてみたらどうだって言われて」


ライ「っそんなの遠回りじゃないかっ! 君は自分の夢をなんだと思ってるの!? そんなんじゃ一生、機械心療内科医になんかなれないよ……っ!」


★クロム、ライにふわっと抱き付く。


ライ「ひっ……姫、さ……? あ、あの、急に抱き付かれると、こ、こまっ……!」★物凄く動揺して、赤面する。


クロム「ライの傍に居たいんです。だからまず半年。ここで働かせてくれませんか? 病院に居れば。インドランスたちと関わることも、多くなりますし。ナギがね、徐々に機械心療内科にも、携わって行けばいいじゃないって。言ってくれて……」


ライ「……っ僕じゃ君のこと……っ守ってあげられる自信、ないよ……っ! 金星にも、色々根回ししてくれたの……? 結局僕は、君にいつも……っ」


クロム「大丈夫ですよ。私弱くないから。守られる必要ないです」


ライ「困るよそれじゃあ……っ! 僕が嫌なんだよ……っ! 言ったでしょ! 僕は君以外愛せないのに……っ!! こんなにダサくて! これじゃいつまでたってもカッコつかないよ……っ!!」


クロム「うん。……それでいいの。私も貴方がすきだから」


ライ「……っ姫……!! 好きだよ!! すきです!! ……すきだよ……っ!」★病院中に響くほど叫ぶ。


クロム「うん」


ライ「僕の生涯を賭けて……君を大切にする……っ!!」


クロム「ふふ。……うん。ありがとう。……もっと早くに、言えばよかった」


★クロム、ライを椅子に座らせ。涙を拭いてあげる。


ライ「うっ……うっ……うう~っ!」


クロム「ほら、鼻ちーんしてっ。患者さん来ちゃいますよっ!」


ライ「うーっ!」


クロム「ライ。……ずっと一緒にいましょ」


ライ「っ……! うん……っ!!」


★二人、笑いあって。


★ED曲が流れる。


ラジオ物語END!!






★CMと天気予報が流れる。


ライ or クロムどちらか「こんばんは。気象予報です。明日は、水星は全国的に曇りや雨が予想されます。お昼過ぎから夜にかけて雨が降るでしょう。地球は東京を中心にして曇り、所により雨がパラパラと降るでしょう。明日の最高気温は水星はウンディーネを中心として20度くらいになりそうです。地球も、平年並みの気温となるでしょう。傘を持って、お出かけ下さい」


★星屑のようなウインドチャイムが鳴る。






★★★以下おまけラジオパート! ※アドリブをたくさん入れて下さい! ライ役の声優さんと、クロム役の声優さんは、とっても仲良し設定でお願いします。共演率も高く、古くからの友人。歳はライ役の人がとても高め。


ライ or クロム (タイトルコール)『名無し君の不始末。クロスオーバー作品7(セブン)・番外編・acousticバージョン・雷夢らいゆめ。今回のラジオ作品は、名無し君本編とは全く違う異次元の物語。本編とは、設定や世界観にずれが生じています』


ライ or クロム (タイトルコール)『名無し君の不始末・彼らの愛の理由~episode7(セブン)「僕の愛の理由。王の恋」~】水星の王。ライルートばーじょん』 


★はじめから、インターネット配信している。(※以下、wの表現あり)

★バックミュージックが優しく流れてくる。


★聞き専、スタッフ、主演の二人、盛大に拍手して。


ライ役「いっえーっおつっかれーっ」

クロム役「お疲れ様でしたーっ」


ライ「はい」


クロム「えっ?w 何?」


ライ「自己紹介して」


クロム「あっえっとおー」


ライ「はい3・2・1……」

クロム「ちょっとまって! ちょっとやだーっ何この人ー! この人やだーっ」


ライ「あっはははははははww」


クロム「えっと、クロム・ロワーツ役の、〇〇〇〇でぇす」


ライ(肩書きを! 肩書きも! くださいっ!)ウイスパー!


クロム「えっえっえっえっ、あーえーっとおー。名無し君シリーズのメインヒロイン。でぇす」


ライ「はいっそれで!? それで!? 歳は!」


クロム「えっ29歳!」


ライ「はい髪型は!?」


クロム「髪型!? ひっ姫カットでぇっ! 黒髪でぇっ! ながい! 女だ!」


ライ「wwwww 母性ある!」


クロム「っそう! 心優しき元姫! ケテラス星中央大陸、アイゼル城966番目の王女だった! 今は、ただの、地球人(仮)だぁー」


ライ「はい。よくできました!」


クロム「ちょっとそっちもお願いしますよ!」


ライ「はいっ。任せろ」


クロム「よっ! キング!」(拍手!)


ライ「皆の者ぉ……! 待たせたなァ……!! フッフッフッフ……!!」★立ち上がり、椅子に膝を乗せて。


クロム「誰だぁ!?」


ライ「我こそがカルク・ライデイン・オめぇな(メガ)……」


クロム「はいっ!?」


ライ「噛んじゃった……」


クロム「ちょっもう一回行きましょうっ!」


ライ「かぁるぅくぅ、らいでいん、おめが……。らい。……役のっ! 〇〇〇〇ですっ!」


クロム「すっっっっごいゆっくり言いましたね」


ライ「もう噛むのが怖すぎて」


クロム「はいっ。それで!?」


ライ「医療大国水星、ウンディーネの、王である。吾輩……。そう。我こそが、王だ……!!」★エコー。


クロム「っだから誰なの!? 顔っ! 顔ひっどい!」


ライ「あのね」


クロム「はいっw」


ライ「この世界のしゅいしぇい【水星】って、地球にポコッてくっついてるんですよ」


クロム「えっ!?」


ライ「だからさ。本当はさ、すっごい太陽に近いじゃん? しゅいしぇい【水星】って」


クロム「はい?」


ライ「俺はぁ……サ行が弱いんだぁ……」


クロム「wwwwwwwwwやだwwwww」


ライ「あのね。わざとじゃないんだよ別に」


クロム「もう一回言って下さい」


ライ「ス――――――――……」


クロム「空気!? ス・イ・セ・イ?」


ライ「OH!」


クロム「水星……あー。水星……あー。まあ言いにくさはありますよね」


ライ「水星の水星による水星としての水星のための、王だ! おれが!」


クロム「っw 言えてました!」


ライ「もぉクロムがね、サ行とかじゃなくってほんっとに助かってるんですよ!」


クロム「サロム?」


ライ「しゃろむ……」


クロム「しゃろむ!?」


ライ「しゃろむぅ……」


クロム「くちのwwwwかたちがwwwwきもいwwww」


ライ「おい! 王に向かってきもいとはなんだぁきもいとはあ!」


クロム「もうやめましょ!w 真面目にやろうw」


ライ「はい」


クロム「如何でしたか!?」


ライ「え? あー。俺はね、個人的にはクロム愛人ルートが欲しいんですよ是非にねライくんも言ってましたけど」


クロム「え!? 何!? あっ。ライルートが二本に分かれてってこと!?」


ライ「そうそうそうそうそう」


クロム「えっ!?」


ライ「いや引き過ぎだから。いや待って。俺の弁明を聞いてくれ」


クロム「えっ。愛人ルートってことはまさか……」


ライ「えっだからぁ。普段は金獅子とエッチするけど休日はクロムとエッチするってこと」


クロム「………………………………………………」(首を少しだけ傾けて口を開ける)


ライ「おいおいおいおい放送事故だぜこれは!! やめてくださいラジオで無言はぁ!!」

クロム「wwwwwwwwwいやっちがっ」


ライ「でも王様ですよ? いいじゃん何人かそういうのが居たって」


クロム「いいじゃんって……」


ライ「いやちょっと引き過ぎじゃない? 〇〇〇〇ちゃん」


クロム「コメントも荒れてますよwwすごいことになってるwwww」


ライ「わっやべえ!! 何!? ごめんねえ!?」


クロム「制作サイド的には却下だと思います」


ライ「えええーっ」


クロム「いやwあんた」


ライ「もういいっすよ話変えますう」


クロム「この人大人としてどうなの」


ライ「何話す? あと数分ですが」


クロム「制作秘話! みたいなのを是非! 是非お願いします!」


ライ「おっ。そぉだなぁ……。これ、台本がねぇ。結構ぶ厚いんですがねぇ」


クロム「そうですね。ジャンプ二個分くらいはあるかなっ!」


ライ「ばかか! お前、ばかか! そんな、ホンを、30分劇で、やるか! そして、台本は、二個ではなく、二冊と、言え! ばか!」


クロム「おまえに、ばかと、言われたく、ない」


ライ「アッ……あのですねえ」


クロム「はい」


ライ「実は、この脚本家さんと僕結構仲良くて。こないだたまったまこのホンの削除部分? カットした部分が全部入ってる奴を読まして貰ったんですよ」


クロム「え!? 何それ! ズッルッ!」


ライ「知らねえだろ! ハッハッハッハ!」


クロム「知らないっ! えっまじです!?」


ライ「はい。んでね。その……まあ30分に収めなきゃいけないからってさ。結構やっぱ削ってくれたみたいなんすけど。結構いい所までガッツリ削っててなぁー」


クロム「ほんとに!?」


ライ「うん」


クロム「えー」


ライ「まあ、カット部分はあれかな? CDに全部……アーッこれは内緒なんだったーっ。いかんーっ。まさかー。こんなことまでー喋ってしまうなんてえー。てへっ」


クロム「あっそうなの!? CDに全部……!? そおかあ!」


ライ「でもなあ~予算の都合もあるからなぁ~」


クロム「ええーっ? そんなぁ~。それってえー。ちゃんとぉ、ファンのこと、考えてますぅ~?」


ライ「姫……。僕たちの神が、僕たちの大切な国民の期待を裏切るなんて……。するはずないじゃないかっ……!」


クロム「っそうですよね! ライ! 私は、信じます! 神を!」


ライ「はいっ。っつーことで、ね。お頼み申す」


クロム「えっ。カットした部分のほうが、好きなシーンとかありました?」


ライ「うんっ。ありましたっ!!」


クロム「まぁじで。読みたいし」(ちょっとキレてる)


ライ「あれだね。初回特典で台本も付けてほしいレベル」


クロム「なんてぇ!?」


ライ「俺が一番、“っええ~っ!? なぁんでここカットしちゃったの~っ!?”って思ったのは。姫の部屋で姫が、真夜中に。

ライのことを想いながら。涙をこらえながら。お揃いの、あの四つ星のほくろを、自分で書くシーンかなぁ……!」


クロム「顔のー!? えええええーっ!? 何それっ。そんなのはっなかった! なかったよ!?」


ライ「あのシーンはねぇー……。是非アニメでやりたいな」


クロム「あー」


ライ「やっぱちょっと音声だけのラジオドラマだとね。描写が難しいかなって思ってカットしたんでしょうけどもさ。でもなあー。あそこ欲しかったなぁー……。

姫が、“友達にも、仲間にも、恋人にも、何にもなれないし戻れない……”って。彼とすれ違った時にね。嘆いてね。無駄だとわかっていても。お揃いのほくろをこう書く訳ですよ」


クロム「油性ペンで……」


ライ「いやっw 油性ペンではないと思うw」


クロム「はぁー。ええー? そんなシーンは、なかったぞぉー? どうなってるんだぁ? 一体、どうなって、るんだぁ?」(やや怒ってる)


ライ「ご乱心ですか? 姫。頭が」


クロム「わたしの、あたまが、悪いのかぁ? 油性ペン持ってこいやぁ!」


ライ「こいやこいやぁ!」


クロム「多分ですけどぉ。……他にも。きっと、いいシーンが削られてしまっていたんでしょうね」


ライ「そうですね数多くね」


クロム「なんかあ、この、腹はぁ……」(自分の腹を叩く)


ライ「立ってる?」(ジェスチャーで、お腹から合掌を飛ばす!)


クロム「立ってる立ってる!」(合掌を上下に振る!)


ライ「まぁしょうがないっすね」


クロム「大人って汚い」


ライ「いやw 尺の都合はほんとしょうがないからw」


クロム「30分もぉ、1時間も2時間も、そんなに変わんないじゃないすか」


ライ「いやw 30分ラジオと2時間ドラマ、全然違うぞ!?」


クロム「じゃぁー35分とか? 40分とか? そのくらいは別に、よくないですか?」


ライ「いや俺はぁ、出来ればやりたいよ?」


クロム「じゃあやりましょうよ」


ライ「立ってんなーw」


クロム「えっ。立ってるよ……。私はね、〇〇〇〇さん。私は、文才とか無いし。音才も無いし」


ライ「おんさいってなんだ?」


クロム「だからね!?」


ライ「はいっ」


クロム「才能がぁある人から滲み出たものはぁ! 私たち演者がすべて! すくって! すくって!! ……そう、屋台の金魚のように!」


ライ「話が、宇宙になってきたと感じるのは、私だけでしょうか」(目線カメラに)


クロム「才能がぁぁ! お金がぁぁ」


ライ「はい。この辺で。今回のお話の感想を言い合って。このラジオパート、締めたいと思います」


クロム「楽しかったでぇす……(やさぐれてる)」


ライ「ちょっとっ!? メインヒロイン!? やめて!? がっさがさした地声で喋り過ぎるなよお前! はいっ! しっかりしようっ!」


クロム「私はぁ! 前までは、ライくんよりも、ライくんの別の兄弟のほうがね。好きだなあって思ってたんですけどお」


ライ「はいはい」


クロム「でも。今回。ホンのこととか、演出のことで、ちょっと悔しい思いも、しましたし。スランプもちょっとあったりとか。して。

でも、ライくんのことも、水星のことも、設定とか、いっぱい知れて……。私……もっとやりたいなぁーってぇ……」(突然泣き出す)


ライ「泣いてる!?」


クロム「くやしいよぉぉ……」


ライ「大変だったよねぇ……。いや、いつもはこの子、クロムやってても全然。本物のクロムだなーって感じでソツなくこなすんですけどね。ねー。何回撮り直したか。覚えてねぇわ」


クロム「ほんとうにぃごめんなさいいい……」


ライ「よしよしよしよし!! 頑張ってくれましたよ。やっぱね。めげない、とか。何度でも起き上がる! っつうのも、才能だよね」


クロム「ううううううう」


ライ「はいっ。次の、えー名無し君ラジオシリーズ、番外編は!? えーと、ついに! キジュリュクルート解禁! ってことでね! これはまぁ、ファンも多いし。王道だし! クロムも慣れてるし! な! 大丈夫だろ!?」


クロム「ふぁい……」(鼻がじゅるじゅる鳴っている)


ライ「あの。鼻を、噛んできても、いいぞ?」(自分の服に入っていたポケットティッシュを彼女の手の中に入れてあげる) 


クロム「っ!」


ライ「おっさんがもうね、後やっとくから。あなた……。そんなに泣いてるのにマスカラが1ミリも滲んでいないんだが。それはどこの製品だい?」


クロム「まつエクです!!」


ライ「あっ。なるほど! アナルほど」


クロム「もう〇〇〇〇さんは下ネタばっかりでやだ!!」


ライ「はははははははは! お前が、泣いているのが、悪いのさ。そう。俺に、そんな顔を見せた、お前が、罪な奴なんだ! 

俺の、この、開けていないとっておきのリポDをくれてやろう!! どうだ、まいったか! はっはっはっはっは!」


クロム「やさしくしないで!!」


ライ「鼻水をかめよwwとりあえずww」(ハンカチも貸してあげる)


クロム「うっうっうっうっうっ」


ライ「えーとね、今回の、ラジオCDと! クロム姫とライくんのジャジーなデュエットソングが! 来月の末! 28日に発売が決定致しました!」


クロム「……間に合うの?」(少しだけ泣き止んで)


ライ「えっ? あー。ノーカットバージョン? いけるんじゃね? だってまだなんも収録終わってねーし。ま、結構やばめよね」


クロム「間に合うといいな……」


ライ「……そうですね」


クロム「っありがとうございましたっ」


ライ「はいっ。こちらこそ! 貴重な経験をさせて頂きましたっ! みんなっ! ありがとーうっ!! バイバーイッ!」


★ED曲で、二人のデュエットソングのイントロが流れてくる。


クロム「おかねっ!」


ライ「はっ!?」


クロム「りぽDのっおかね……!」


ライ「うわいらねえーっ。えーと! クロム&ライのデュエットで。“秘めたる四つ星の夜、九つ目の鐘の王~リトルウイッシュ~”お聞きくださ~い。長々とっありがとうございましった~」


クロム「ばいばーいっ」


 イントロが盛り上がる。


ライ「大丈夫!? もうタクシーで帰れよ!」


クロム「いやだあ!」


ライ「あーん!?」


クロム「打ち上げいくう!」


ライ「大丈夫かしら……」


クロム「うっうっうっうっ……お疲れ様でしたぁ……」


ライ「お疲れ様でーす! ありがとうございましたぁぁぁっ!!」






END!!



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