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『誓った夏』  作者: コトネ
1/4

~再会~

どうも!コトネです(*´∀`)

お待たせ致しました。えるしーさんの名言を、ただそのまま言うのは面白くないと思って、盛り込んでみた作品です♪

どうぞ!

【登場人物】

《えるしー》

危ないところを助けてくれたお兄さん(=しろがね)に、とても強い憧れをもつ。空手を習っている。整った顔をした綺麗な女の子。


《エビやん》

えるしーの危ないところに立ち会った、とても仲の良い友達。頭が良く、顔も可愛く、お弁当作りや治療に長けているなど、非の打ち所がない女の子。


《しろがね》

えるしーが小学2年生の時に、命を救ってくれた男性、お兄さん。えるしーの師匠。実は…


《こがね》

過去にしろがねを庇って病気となってしまった。しろがねが、いちばん強く守りたいと思っている人。



「早く!早くこの手を掴むんだ!!」

幼い少女は、今にも崩れそうな崖の岩に片手でつかまっている。それを救おうと、男性が手をできる限り長く差し伸べている。少女の体力も限界を迎えようとしている。半ば、少女の眼が諦めの色となった瞬間、男性は叫んだ。

「生きるんだ!!」

少女ははっとして、最後の力を振り絞って男性の手へと手を伸ばした。が、虚しく男性への手には届かなかった。


(落ち、ちゃうっ…!)


ガシッ


(えっ…?)

少女は、崖下を見下ろしたままでいる。男性に抱えられながら。そして、その男性は上半身をほとんど崖に沿わせていて、足の部分を誰かが引き留めていた。崖の上から友達が泣き顔でこちらを見ていた。

「もう大丈夫だ。」

男性がニカッと笑った。

(「どれどれ、いちごのパンツか?」ひらっとスカートをめくる男性にパンチを御見舞した。)



「えるしー、起きなさい!朝よ!」

マミーの声で寝覚めるえるしー。空手を習っているのと、夢のせいもあって、綺麗に拳を上に突き上げていた。眩しいほど明るい光が、えるしーの整った顔に差していた。時計を見ると、8時15分。

(さすがに遅いか。)

学校だったら、朝のホームルームが始まっている時間だ。だが、今は夏休み。宿題もそこそこに、小学6年生となったえるしー少女は、1週間前から始まった夏休みを過ごしていた。

「あっつ…。」

夏というのもあったが、今朝は若干夢のせいもあって、冷や汗もかいていた。

「扇風機だけじゃなぁ…。」

まとわりつく暑さと、夢での恐怖を、シャワーを浴びて流すことにした。おかげでさっぱりとしたえるしーは、朝ごはんをさっと済ませて家を出た。

「えるしー、帰り遅くならないようにしなさいね!」

「わかったよ、マミー。」


そして、行った先は近くの石と水の広場。ここは、石と水を基調にした涼しげな広場で、夏はそこそこ人気になる場所だ。

「えるしー!」

こっちこっちと、手招いている少女はエビやん。えるしーの同級生だ。まだ小学生なのに、木陰で白い日傘をしっかり差して、袖なしのワンピースにオシャレなサンダルを履いていて、ただの少女よりは女性を思わせるような雰囲気をまとっている。一方えるしーは、襟付きのノースリーブシャツにデニムスカート、スニーカーにキャップとアクティブな格好をしていた。

「遅いよー、寝坊したの?」

「ごめん、ごめん。」

「まあ、夏休みだしね〜。」


えるしーとエビやんは、木陰で石の椅子に腰を下ろし、両足を水に浸けてぴちゃぴちゃさせながら話した。

「あのさ、わたしが死にかけた時あったじゃん。」

「いきなりなに?そういうこともあったけど。あれはちょっと怖かったね。」

「ちょっとって何。かなりでしょ。」

「そうだね、今ここにえるしーいなかったら、私すぐ泣けるわ。」

「でしょ?それでさ、あの時助けてくれた男の人、お兄さん、を捜したいなーと思って。あれ以来、ありがとうも言えないまま、会ってないんだ。」

「そんなすぐに居なくなっちゃったの?」

「うん、マミーが救助隊に連絡したんだけど、そんな人はいませんよって言われたんだって。」

「本当に?」

「うん、本当。わたしが今まで嘘ついたことある?」

「ほぼ嘘八百でしょ。」

「あちゃー、言われちゃった。って、そんな嘘八百も、少なからずエビやんを救うためについたものもあるんだよ?」

「それ本当?」

「本当だよ。そんな私の優しさに気づけないのかっ!」

「それはごめん。ありがとう、えるしー。大好き。」

「わたしも大好きだよ、エビやん。」



「んで、そのお兄さんのことなんだけど、もうあとは自分で捜すしかないじゃん?」

「そうだね、だけどさ、えるしー。」

「うん?」

「どうやって捜すの?しかも小学生2人で。」

「…。まあ、何とかなるんじゃないかなー!」


そうして、しばらく足で水遊びをして涼んだ後、えるしーとエビやんは動き出した。

「よーしっ捜すぞー!」

「あっ、えるしー前…っ!」

ドンッ

えるしーは、前にいた人にぶつかって尻もちをついてしまった。前方不注意である。その衝動で被っていたキャップも脱げた。その人はえるしーに気づいてキャップを拾い、申し訳なさそうにもう片方の手を差し伸べた。

「済まない、お嬢さん。怪我なかったかい?」

えるしーは、その手に見覚えがあった。あの時の、手だ。

「…お兄さん、あの時の…?」

その男性も、えるしーをまじまじと見て目を見開かせた。

「君は、あの時の…?」



男性は、目鼻立ちのよい顔にふっと笑みを浮かべて、えるしーの前にしゃがみ手をとって握手した。

「元気そうで良かった。また会えて嬉しいよ。前よりも大きくなったね。」

えるしーは、あの時言えなかった言葉を言おうと思った。が、目の前の景色が滲み始めた。

「お兄さん、うっ…うう…ぐすん、あのっ、あ、あり…えぐっ…がどう…。」

「おいおい。泣くことはないだろう。どれどれ、もうさすがにいちごのパンツは卒業かい?」

「めくるな!」そして、見事にパンチを御見舞…と今朝の夢のようにはいかず、片手で受け止められてしまった。

「(おや、このスカートはめくりにくい…)元気だな〜。さっきから泣いたり怒ったり。そういえば、君の名前教えてくれるかい?僕はしろがねだ。」

パンチを御見舞できず、少しむくれたえるしーだが、素直に答えた。

「わたしはえるしー。わたしのスカートから手を離してください。」

「私はエビやんよ。よろしく、しろがねさん。」

忘れ去られそうになっていたエビやんも、飛び込みで挨拶した。

「どうも、えるしー。それに、可愛らしいお嬢さんのエビやん。」

しろがねは、やっとえるしーのデニムスカートから手を離した。

「なんで、エビやんには可愛いって言うの?わたしは可愛くないっていうのか!」

「そんなことないよ、えるしーも可愛いよ。こんな、両手に花の状態になれて、僕は幸せ過ぎて死にそうだ。」

「きゃっ、嬉しいです。」

「両手に花?なにそれ。」

「えるしー、ふたつのよいものを同時に手に入れることの例えよ。時には、男性1人が女性2人を連れることを言うのよ。」

「ふーん。頭いいよね、エビやんは。」

エビやんは、頭も良く、顔も可愛く、はっきり言って男子にモテる。一方えるしーは、整った顔をしていて綺麗なのだが、負けん気が強く、頭の良さが普通ということで、日々男子と格闘をしている。そんな2人は仲が良く、いつも一緒に行動しているため、エビやんは姫、えるしーは女騎士と言われている。また、2人の強力さゆえに、「混ぜるな危険、燃やすな危険の2人組」という呼称もあるが、本人達は認めていないどころか全否定している。むしろ、混ぜて欲しいと言わんばかりだ。


「それで、2人はこの暑い中午前から何してたの?」

「しろがねさんにお礼が言いたくて、今まさに捜そうってなったところだったんです。」

「それはそれは。そうしたところに僕がちょうど現れたってことか。凄い偶然だね。いや、奇跡に近いかな?」

しろがねは、ふはははと笑った。えるしーは、何か思いつめた顔をして黙っていた。それを見てしろがねは言った。

「それにしても、ただあの時のお礼が言いたかっただけって顔じゃないな。どうしたんだい?僕の大胸筋の危険な香りでも嗅いでしまったかい?」

「「…。」」

「…と。さすがにふざけ過ぎたか。ふははは。」

先ほどから、痴漢まがいのことをしてきたしろがねも、少しは真剣な眼差しになって、えるしーとエビやんを見た。

そして、えるしーが口を開いた。

「あの、わたしを特訓してください。」


しろがねは一瞬面を喰らったような顔をしたが、すぐに、真剣な元の顔に戻ってえるしーに聞いた。

「どうして?」

「しろがねのように、強くてだれかを守れる人になりたいから。」

えるしーは、エビやんの方へと視線を向ける。エビやんもえるしーを見て頷き、しろがねにお願いする。

「しろがねさん、私からもお願いします。えるしーは、小学2年の時にしろがねさんに助けてもらってから、前から習っていた空手を、更にいっぱい練習して強くなろうとしてきました。それに…。」

えるしーはそれは言うな、という合図を出すが、エビやんは構わず続けた。

「えるしーは、しろがねさんに強く憧れています。」

えるしーは顔を真っ赤にさせ、俯いている。

「えるしー、本気なんだね?」

えるしーは、まだ顔が真っ赤だったが、顔をばっと上げてじっとしろがねの眼を見つめた。その眼は、いつか見たそれと重なって見えた。そして、しろがねは決心した。

「いいよ、えるしー。特訓してあげる。」

えるしーとエビやんは、ぱぁっと顔を明るくして喜んだ。

「ただし、夏休みの間だけだ。」


読んでいただきありがとうございます!(*´∀`)


いやぁ、長くなっちゃいました…(・ω-`;)

感想お待ちしてまーす(*Φ∀Φ)

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