~再会~
どうも!コトネです(*´∀`)
お待たせ致しました。えるしーさんの名言を、ただそのまま言うのは面白くないと思って、盛り込んでみた作品です♪
どうぞ!
【登場人物】
《えるしー》
危ないところを助けてくれたお兄さん(=しろがね)に、とても強い憧れをもつ。空手を習っている。整った顔をした綺麗な女の子。
《エビやん》
えるしーの危ないところに立ち会った、とても仲の良い友達。頭が良く、顔も可愛く、お弁当作りや治療に長けているなど、非の打ち所がない女の子。
《しろがね》
えるしーが小学2年生の時に、命を救ってくれた男性、お兄さん。えるしーの師匠。実は…
《こがね》
過去にしろがねを庇って病気となってしまった。しろがねが、いちばん強く守りたいと思っている人。
*
「早く!早くこの手を掴むんだ!!」
幼い少女は、今にも崩れそうな崖の岩に片手でつかまっている。それを救おうと、男性が手をできる限り長く差し伸べている。少女の体力も限界を迎えようとしている。半ば、少女の眼が諦めの色となった瞬間、男性は叫んだ。
「生きるんだ!!」
少女ははっとして、最後の力を振り絞って男性の手へと手を伸ばした。が、虚しく男性への手には届かなかった。
(落ち、ちゃうっ…!)
ガシッ
(えっ…?)
少女は、崖下を見下ろしたままでいる。男性に抱えられながら。そして、その男性は上半身をほとんど崖に沿わせていて、足の部分を誰かが引き留めていた。崖の上から友達が泣き顔でこちらを見ていた。
「もう大丈夫だ。」
男性がニカッと笑った。
(「どれどれ、いちごのパンツか?」ひらっとスカートをめくる男性にパンチを御見舞した。)
「えるしー、起きなさい!朝よ!」
マミーの声で寝覚めるえるしー。空手を習っているのと、夢のせいもあって、綺麗に拳を上に突き上げていた。眩しいほど明るい光が、えるしーの整った顔に差していた。時計を見ると、8時15分。
(さすがに遅いか。)
学校だったら、朝のホームルームが始まっている時間だ。だが、今は夏休み。宿題もそこそこに、小学6年生となったえるしー少女は、1週間前から始まった夏休みを過ごしていた。
「あっつ…。」
夏というのもあったが、今朝は若干夢のせいもあって、冷や汗もかいていた。
「扇風機だけじゃなぁ…。」
まとわりつく暑さと、夢での恐怖を、シャワーを浴びて流すことにした。おかげでさっぱりとしたえるしーは、朝ごはんをさっと済ませて家を出た。
「えるしー、帰り遅くならないようにしなさいね!」
「わかったよ、マミー。」
そして、行った先は近くの石と水の広場。ここは、石と水を基調にした涼しげな広場で、夏はそこそこ人気になる場所だ。
「えるしー!」
こっちこっちと、手招いている少女はエビやん。えるしーの同級生だ。まだ小学生なのに、木陰で白い日傘をしっかり差して、袖なしのワンピースにオシャレなサンダルを履いていて、ただの少女よりは女性を思わせるような雰囲気をまとっている。一方えるしーは、襟付きのノースリーブシャツにデニムスカート、スニーカーにキャップとアクティブな格好をしていた。
「遅いよー、寝坊したの?」
「ごめん、ごめん。」
「まあ、夏休みだしね〜。」
えるしーとエビやんは、木陰で石の椅子に腰を下ろし、両足を水に浸けてぴちゃぴちゃさせながら話した。
「あのさ、わたしが死にかけた時あったじゃん。」
「いきなりなに?そういうこともあったけど。あれはちょっと怖かったね。」
「ちょっとって何。かなりでしょ。」
「そうだね、今ここにえるしーいなかったら、私すぐ泣けるわ。」
「でしょ?それでさ、あの時助けてくれた男の人、お兄さん、を捜したいなーと思って。あれ以来、ありがとうも言えないまま、会ってないんだ。」
「そんなすぐに居なくなっちゃったの?」
「うん、マミーが救助隊に連絡したんだけど、そんな人はいませんよって言われたんだって。」
「本当に?」
「うん、本当。わたしが今まで嘘ついたことある?」
「ほぼ嘘八百でしょ。」
「あちゃー、言われちゃった。って、そんな嘘八百も、少なからずエビやんを救うためについたものもあるんだよ?」
「それ本当?」
「本当だよ。そんな私の優しさに気づけないのかっ!」
「それはごめん。ありがとう、えるしー。大好き。」
「わたしも大好きだよ、エビやん。」
「んで、そのお兄さんのことなんだけど、もうあとは自分で捜すしかないじゃん?」
「そうだね、だけどさ、えるしー。」
「うん?」
「どうやって捜すの?しかも小学生2人で。」
「…。まあ、何とかなるんじゃないかなー!」
そうして、しばらく足で水遊びをして涼んだ後、えるしーとエビやんは動き出した。
「よーしっ捜すぞー!」
「あっ、えるしー前…っ!」
ドンッ
えるしーは、前にいた人にぶつかって尻もちをついてしまった。前方不注意である。その衝動で被っていたキャップも脱げた。その人はえるしーに気づいてキャップを拾い、申し訳なさそうにもう片方の手を差し伸べた。
「済まない、お嬢さん。怪我なかったかい?」
えるしーは、その手に見覚えがあった。あの時の、手だ。
「…お兄さん、あの時の…?」
その男性も、えるしーをまじまじと見て目を見開かせた。
「君は、あの時の…?」
男性は、目鼻立ちのよい顔にふっと笑みを浮かべて、えるしーの前にしゃがみ手をとって握手した。
「元気そうで良かった。また会えて嬉しいよ。前よりも大きくなったね。」
えるしーは、あの時言えなかった言葉を言おうと思った。が、目の前の景色が滲み始めた。
「お兄さん、うっ…うう…ぐすん、あのっ、あ、あり…えぐっ…がどう…。」
「おいおい。泣くことはないだろう。どれどれ、もうさすがにいちごのパンツは卒業かい?」
「めくるな!」そして、見事にパンチを御見舞…と今朝の夢のようにはいかず、片手で受け止められてしまった。
「(おや、このスカートはめくりにくい…)元気だな〜。さっきから泣いたり怒ったり。そういえば、君の名前教えてくれるかい?僕はしろがねだ。」
パンチを御見舞できず、少しむくれたえるしーだが、素直に答えた。
「わたしはえるしー。わたしのスカートから手を離してください。」
「私はエビやんよ。よろしく、しろがねさん。」
忘れ去られそうになっていたエビやんも、飛び込みで挨拶した。
「どうも、えるしー。それに、可愛らしいお嬢さんのエビやん。」
しろがねは、やっとえるしーのデニムスカートから手を離した。
「なんで、エビやんには可愛いって言うの?わたしは可愛くないっていうのか!」
「そんなことないよ、えるしーも可愛いよ。こんな、両手に花の状態になれて、僕は幸せ過ぎて死にそうだ。」
「きゃっ、嬉しいです。」
「両手に花?なにそれ。」
「えるしー、ふたつのよいものを同時に手に入れることの例えよ。時には、男性1人が女性2人を連れることを言うのよ。」
「ふーん。頭いいよね、エビやんは。」
エビやんは、頭も良く、顔も可愛く、はっきり言って男子にモテる。一方えるしーは、整った顔をしていて綺麗なのだが、負けん気が強く、頭の良さが普通ということで、日々男子と格闘をしている。そんな2人は仲が良く、いつも一緒に行動しているため、エビやんは姫、えるしーは女騎士と言われている。また、2人の強力さゆえに、「混ぜるな危険、燃やすな危険の2人組」という呼称もあるが、本人達は認めていないどころか全否定している。むしろ、混ぜて欲しいと言わんばかりだ。
「それで、2人はこの暑い中午前から何してたの?」
「しろがねさんにお礼が言いたくて、今まさに捜そうってなったところだったんです。」
「それはそれは。そうしたところに僕がちょうど現れたってことか。凄い偶然だね。いや、奇跡に近いかな?」
しろがねは、ふはははと笑った。えるしーは、何か思いつめた顔をして黙っていた。それを見てしろがねは言った。
「それにしても、ただあの時のお礼が言いたかっただけって顔じゃないな。どうしたんだい?僕の大胸筋の危険な香りでも嗅いでしまったかい?」
「「…。」」
「…と。さすがにふざけ過ぎたか。ふははは。」
先ほどから、痴漢まがいのことをしてきたしろがねも、少しは真剣な眼差しになって、えるしーとエビやんを見た。
そして、えるしーが口を開いた。
「あの、わたしを特訓してください。」
しろがねは一瞬面を喰らったような顔をしたが、すぐに、真剣な元の顔に戻ってえるしーに聞いた。
「どうして?」
「しろがねのように、強くてだれかを守れる人になりたいから。」
えるしーは、エビやんの方へと視線を向ける。エビやんもえるしーを見て頷き、しろがねにお願いする。
「しろがねさん、私からもお願いします。えるしーは、小学2年の時にしろがねさんに助けてもらってから、前から習っていた空手を、更にいっぱい練習して強くなろうとしてきました。それに…。」
えるしーはそれは言うな、という合図を出すが、エビやんは構わず続けた。
「えるしーは、しろがねさんに強く憧れています。」
えるしーは顔を真っ赤にさせ、俯いている。
「えるしー、本気なんだね?」
えるしーは、まだ顔が真っ赤だったが、顔をばっと上げてじっとしろがねの眼を見つめた。その眼は、いつか見たそれと重なって見えた。そして、しろがねは決心した。
「いいよ、えるしー。特訓してあげる。」
えるしーとエビやんは、ぱぁっと顔を明るくして喜んだ。
「ただし、夏休みの間だけだ。」
読んでいただきありがとうございます!(*´∀`)
いやぁ、長くなっちゃいました…(・ω-`;)
感想お待ちしてまーす(*Φ∀Φ)