1-01 ネコになりました(済)
※ご注意
書籍版は連載時より相当な時間が経過しており、現在の私の文章力と違っておりますので、ストーリーは変わりませんが全部書き直しております。
書籍版は最新の設定を盛り込んで加筆もしており、多少設定が異なる部分があります。
至らない部分があるかと思いますが、宜しくお願いします。
光の中に景色が見える。
まるで……子供の頃、プールに潜ったまま空を見上げたような……そんな曖昧で懐かしい光景が見える。
景色が流れて“画”が変わる。
古いフィルム映画のように掠れて、次々と“画”が切り替わっていく。
小さな【私】の手を引く男の人……。【私】を抱き上げる女の人……。【私】よりも背の大きな男の子と女の子。
バスの窓から見えるのは、流れていく大きなビルと小さなお店。
電車から見えたのは、流れていく線路と果てしなく続く街並み。
“画”はダイジェスト映画のように次々と切り替わり、大きくなった【私】は、同じ制服を着た子たちと学校に通っていた。
友達と語らい、夜遅くまでメールをして……。兄姉たちと一緒のソファーで借りてきた映画を観て、帰ってきた両親とみんなでご飯を食べる。
そんな幸せな光景は、唐突に【白】へ変わる。
白い壁、白い床、真っ白なシーツのベッドに横たわる【私】の目に映るのは、真っ白な天井だけ……。
震えるように持ち上げた自分の手が、枯れ木のように細かった。
“画”が何度切り替わっても白い世界は変わらず……、誰かが泣いているような、壊れて掠れた音の中で……
【私】の世界は、ゆっくりと【黒】に染まっていった。
***
夢を……見ていた?
どこか懐かしい……遠い“光の世界”の夢。
ここは……どこだろう? 薄暗い……靄が掛かったように何も見えない。まるで光の中で目を閉じたような……、あ、目を開けばいいのか。
そう思って瞼を開けようとすると、それよりも先に周りの光景が視界に飛び込んできた。
見えたのはのどかな草原でも、どこかの部屋の中でもなく、見渡す限り続く歪んだ大地と、ただ暗いだけの何もない空が広がっていた。
簡単に言うと、荒れた灰色の土しか見えない、雑草すら存在しない、何も無い世界。
「……………」
ここで、ぴゅ~…って木枯らし吹いて、枯れた葉っぱが転がってくれば良い感じなんだけど、とりあえずそれで私の心情が少しは伝わるでしょうか。
それよりも……私は今、どうやってこの景色を“見て”いるの……?
瞼を開いた記憶がない。意識を凝らせば、記憶にある景色を思い出すように、前後左右が同時に見ることができた。もちろん、自分の姿でさえも……。
「………………!?」
思わず悲鳴を上げた。……つもりだったけど、声は出なかった。
だってさぁ……口が無いんだよ……。
それどころか、私はまともな“身体”すら無かったんだから。
よ、よし……ちょっと落ち着いた。
ちなみに身体が無いって言うのは、少々正確ではない。その証拠に今の私の身体は、感情の起伏に伴って拡散したり、うねったりしていたんだよ。
なんかガスっぽい、靄っぽい、茶色っぽい集合体。……そんなモノが今の“私”だ。
あはは……笑っちゃう。笑えないけど。
そんな乾いた冗談はともかく、これは夢なのかしら……?
さっきまで観ていた“光の世界”が現実で、これは質の悪い夢なのかな?
でも現実は非情だ。この靄のような身体に流れてくる感覚が、こちらが【現実】だと教えてくれる。
そして恐ろしいことに、私の“認識”はこの身体を【自分】だと認めて、違和感もなく、あっさり受け入れて落ち着いてしまった。
これは……あれかな?
あの“光の世界”で得た知識で考えると、精神が肉体に影響を及ぼすと同時に、身体の状態が精神に影響を与える……みたいな?
要するに、人間並みに感情の起伏が大きく出る【身体】ではないのだろう。
心臓が無いからドキドキしないし、息もしないからハァハァしたりもしない。この身体だと痛みを感じるかどうかも微妙だし、多分、お腹も減らないかも?
楽しみがないよぉ……。目が無いから涙も出ないよっ!
と、とりあえず……自我だけは保っていこう。今更だけど、私は“誰”でしょ?
名前は……思い出せない。はい、私は“名無し”です。知識の中から適当に自分で名付けてもいいけど、何故かそれだとダメな気がした。
ちなみに家族や友達の名前も思い出せない。それどころか顔すら忘れている。
よし……次に行こう。
制服の記憶まであるから、たぶん学生かな。知識量から考えても中学生から高校生くらいかも。……夢だけど。
性別は……女の子だよね…? 制服はスカート穿いていたし、性格的にそちらのほうがすんなり嵌るような気がした。
よしよし、だんだん『自分』が固まってきたぞぉ。……おや? 何か身体の色が濃くなった? それに靄の密度が厚くなってきた気もする。
とりあえず悪くなった感じはしないし、このまま夢の記憶を思い出して、自己を固めていこう。
そんなこんなでしばらく時が過ぎた。……気がする。
だって、お日様も昇らないし、やっぱりお腹も減らないし、時間の経過を計る物が何もないんですよ。
色々思い出して自己が保てるようになったのはいいけど、新たに問題が発生した。
すんごく暇。
本当だったら不安になったり、イライラしたり、孤独から発狂……何てのもありそうだけど、今の身体ではまったくそんな兆候もない。
夢の記憶の最後を思い出すと、死んで地獄にでも堕ちたのかなぁ……。
地獄の割りには全然苦痛もないけど。
もちろん私がただの夢を観ていただけっていう噂もある。そしてもちろん、そんな希望的な噂しているのは私だ。
「……?」
何か気がついた。正確に言うと、視覚と嗅覚と聴覚が合わさったような感覚に何かが引っかかった。
ピョン…って何かが跳んだ。
うず…うず…と何か惹かれるような感覚に身を任せると、驚くような速さで飛びだした私は、ペチンっと靄を伸ばしてそれを叩いていた。
「……………」
お、おぉ……。虫を見つけた猫みたいな反応に、我ながら驚く。
それよりも……なにこれぇ。叩く寸前まで確かに『虫だぁ』って思ってたんだけど、その“虫”は叩くと霞のように消えて、甘い蜜のような香りを残した。
本気でなんだこれ……。でも何故かその香りは、味覚も空腹も無さそうなこの身体に微かな“満足感”を与えてくれた。
どこか懐かしい香りと味……。あの夢の世界で子供の頃、小さな花から蜜を吸ったような……そんな懐かしい感覚。
うず…うず…うず……。何かに刺激されるようにガス状の身体が震えて、私はその感覚に押し出されるように周囲を徘徊し始めた。
しかし……どうやって移動しているんだろ?
さっき虫を叩いた感触から、ある程度の物質的強度はあると理解していたけど、別に這いずる必要もなく、私の身体は進もうとする方向へフワフワと移動する。
性格が軽いから……? いや、そんなことはない。……と思う。
ある程度は最初みたいな速度も出るけれど、地表スレスレを移動できるだけで空を飛ぶことはできなかった。……ちょっと残念。
そうして移動していると、……あ、見つけた。二匹目の“虫”くん発見。
ちょっと寂しいからペットとかにできないものかしら……? でも……
ペチンっ。
「………」
近づいた私は、また飛び出して叩いてしまった。……ホントに猫みたいだ。我ながら自制心が無くて情けない。
でもこの甘い蜜の香りには逆らいがたいものがある。
そもそも、目の前でぴょこぴょこ飛び跳ねて、私のネコ的本能を刺激するからいけないのですよ。
そしてふと気付く。最初の虫は花のような蜜だったけど、二匹目は……なんと言いますか少しだけフルーティーな香りがした。
うず…うず…うず……。もう少し捜してみようかなぁ……。
その時から私の暇つぶし&日課は、この虫ちゃんを捜すことになりました。
べ、別におやつが欲しいとか、そんなんじゃないんだからねっ。
「……!」
ペチン、ペチン。
「……! ……!」
ペチン、ペチンペチン、ペチン。
う~ん、デリシャス。もちろんあの夢の世界で知っている甘味に比べれば、どうってことない質素な味だけど、猫のように狩猟する作業がいいアクセントになっている。
多分、自分で採取した食べ物は美味しく感じるって奴だと思う。
そして気付いたこともあった。
大きめで元気の良い虫の方が美味しいんじゃないかな……。
言わせてもらうけど、私に昆虫を直に食べる趣味はない。今は叩くと言うより触れるだけで消えてしまうし、死骸も残らないから嫌悪感が少ないのですよ。
移動していて気付いたけど、偶にネズミくらいの大きな個体も居た。虫と比べて警戒心が強いのか近づいてこないし、意外と逃げ足も速い。
今度こそペットに~~…と意気込んではみたけど、触れると同時に消えてしまった。
見た目は、夢の世界の映画で幼い姉妹が田舎の一軒家で追い回していた、あの黒い毛玉みたいな奴とほとんど一緒。
欲しかったなぁ……ペット。
それでも味は良かった。感覚としてはサクランボや野イチゴみたいな感じです。
ごちそうさまでした。
そんな風に日々を過ごしていると、靄状の私の身体に変化が現れた。
おやつの食べ過ぎで太った。……というわけでなく、茶色っぽい色が徐々に濃くなり、チョコレートみたいな色になるのかと思っていたら、カレーみたいな色になってきた。
……何故、食べ物で例えようとしたのか。
茶髪っぽい色になってると思ってほしい。
どうせならミルクティーっぽい色になってくれたら可愛いのに、人生ままならないものである。
色が変わると同時に、ガス状だった身体が密度が増してドロドロしてきた。
おっ、スライムに進化するのかな? …っと思ったら違った。粘体ではなく、砂鉄みたいになってきたのですよ。
でも……これって進化なの? 身体が重くなって動きが遅くなったんですけどー。
ああ~~……、またネズミちゃんに逃げられた。
もしかしてホントに太った…? ねぇねぇ、本当に太ったの、私……?
そんなダイエットの願望とおやつの誘惑に揺れていたある時、私はある意味、初めて自分以外の【存在】に出逢ってしまったのです。
「……!?」
自分でも、身体がビクンッてしたのが分かる。
近づかれるまで気付かなかった。気付いた瞬間、圧倒されるような巨大な威圧感に、砂鉄状の身体が崩れて崩壊するかと思った。
それは、巨大な黒い豹だった。
私の大きさが猫並みだとすると、その黒豹の大きさは馬よりも大きく見えた。
そして……綺麗だった。
巨大な猫科猛獣にありがちなずんぐりした感じではなく、とてもスマートでしなやかな身体をしている。
毛皮は深く…暗い、美しい光沢を放つ、鮮やかな漆黒。
鮮やかと黒が何か合わないように感じるけど、そうとしか表現できなかった。
体長よりも長い、二股に分かれた鞭のような尻尾。
銀色の爪と牙。この世界で初めて見る“意思“を感じさせる、白金色の瞳。
「…………」
怖かった。この世界で意思を持って、初めて感じる恐怖――生命の危機。
でも……それ以上に私は見蕩れてしまった。この美しい黒豹から目を離せなかった。
うず…うず……。
な、撫でたい。
きっとサラサラしてて気持ちよさそう。もしかしたらモフモフしてる部分もあるかも知れない。
「……?」
しばらくして、捕食しようとしていた気配が薄れ、私を見つめたまま黒豹が不思議そうに――人間くさい仕草で首を傾げた。
『……何故、恐れない?』
「!?」
それは確かに【声】だった。聞こえてきたのは獣の微かな唸り声。でもそれは私の中で“言葉”となって響いた。
「…! …!? …!」
この世界で初めて聞いた知性ある声に、私は凄く驚いた。
意外と良い声です……。黒豹の声は深みのある男性の声で、おじさま……ではなく、おじさまになりかけの三十代前半の素敵な声だった。
ぶっちゃけ、めっちゃ好みの声だ。思わず興奮して身を震わせながら音を立ててみたけど、……私の想いは言葉になってくれなかった。
そんな慌てふためく私に、黒豹は驚きにも似た表情が浮かぶ。
『言葉が……分かるのか?』
その黒豹の問いかけに、私は頷こうとして……どうやっても頷けなかったから、その場でぴょんぴょん跳びはねる。すると、
『……ほぉ、お前は俺の言葉を理解できるのか」
そう言いながら私に近づき、思わず下がろうとした私を素早く前足で押さえた。
『……やはり消えぬ。よほどの“意思”と“知性”があるのだな』
「…………」
……え? もしかして意思とか知性とか無かったら、触られただけで食べられちゃっていたの?
それに意思はあると思うけど、知性って……。私、学校では見事に平均点だったんですけど、いいんですか?
そんな思いでぷにぷに震えていると、黒豹は、
『そう怯えるな。……いや、怒っているのか? 面白い奴だな』
と言って笑うような気配を見せた。
いえいえ、怒っているんじゃないんだけど、腑に落ちないというか何というか……。
そんな微妙な思いが伝わったのか、黒豹は私から前足を放し、覗き込むように顔を近づけてくる。
『安心しろ。もうお前を喰らおうとは思わん。……それよりもお前。どうしてそんな身体でいる?』
「……?」
どうしてって……。私だって好き好んで、こんな姿してるんじゃないんですけどー。
しばらく砂鉄流体ボディランゲージを試みていると、黒豹から呆れたような気配が漂い始めた。
要するに、こういう身体になった個体は、動きやすいように肉体を固定化して、変化させていくものらしい。
普通は“本能”でそれを知っているし、身体を作り替えなければ、強い個体に出逢った時に、戦うことも逃げることもできずに喰われてしまうそうだ。
やっばぁ……。初めて会った強い個体が知性のある黒豹で助かった……。
そんなわけで、黒豹から肉体の固定化を教えてもらうことになりました。……が。
『……お前、舐めてんの?』
「……!? …!」
黒豹から唐突に凄まれて、私、涙目。涙が出る目もないけど。
固定化するに当たって、どんな姿にするのか。私はもちろん【人間】の姿になろうとした。やっぱり慣れているしね。
それに固定化すると、多少は成長するけど、それ以外の姿になるのは難しいらしく、それもあって人間形態にしたかったんだけど……。
『初めからそんな姿をするのは、愚か者のすることだ』
初めから人間形態の個体は弱い。当たり前だけど同じ大きさで生身の人間と獣が居れば、大抵の場合は獣が勝つでしょう。
だから最初は獣型か昆虫型。一般的にはゴリラみたいな感じ? 黒豹にはないけど、角やギザギザの鱗とか付けているのも多いみたい。
「……?」
黒豹みたいに鱗とか無いほうが確かに綺麗で格好いいけど……。そんな私の思いに気付いたのか、黒豹はニヤリと笑う。
『弱いモノほど飾り立てる。俺には爪と牙があればいい』
おおお~~~~、格好いい。
そして変えられないはずの固定化した身体を【人間】のようにできるのは、よほど力のある個体で、その地域のボスを名乗るに等しい……らしい。
でも……だったらどうして黒豹は人形態にならないのだろう? かなり強そうに見えるけど、まぁ上には上が居るんでしょ。……多分。
そうすると私はどうするか。獣人っぽい感じでもいけそうな気はするけど、人間形態に近づけてしまうと戦力は低下するし、そもそも猫並の大きさしかない私だと、幼児みたいになってしまう。
「………」
やはり獣型かなぁ……。大きさからして、やっぱり【ネコ型】? 何となく、黒豹とお揃いっぽくて良いかもなのです。
『決まったのか? なら始めろ。重要なのはどうなりたいか。どのように戦いたいかという自己の投影だ』
「……!」
了解です教官っ、とばかりにピョンッと跳びはね、私はイメージを固める。
イメージするのは、すらりとした綺麗な猫。ふわふわの毛並みもいいけど、私個人としては毛足の短いほうがいい。抜け毛もあんまり気にならないし。
おっと、イメージイメージ……。綺麗でも可愛さも欲しい。犬も好きだけど、どちらかというと私は猫派だ。
ワンちゃんと遊ぶのは好きだけど、あの一日中遊んで遊んでオーラは毎日だと疲れてしまうタチなのです。
おっと、また逸れた。イメージイメージ……。すばやく駆け抜け、牙と爪でシャキッとやっつけるのが格好いいよね。
敏捷性が高くて……飛ぶように駆け抜け……ん? 飛ぶ……鳥もいいなぁ。鷹とか素敵かも知れない。でも速いのは確か隼だっけ? でも敏捷性はないよねぇ。何か思い当たる気がする。暗い場所でも素早くて敵の攻撃を避ける……。
いやいやいやいや、猫だよネコっ! 何で鳥になった!? ネコネコネコネコ、私はネコネコ、カワイイ子猫……。
『…………』
『………どういうことだ?』
気がつくと、私は一匹の猫になっていた。
ちゃんとイメージ通りに毛足の短い綺麗で可愛らしい猫だ。自分を褒めてあげたい。
『……何と申しましょうか……』
やっと喋れるようになった私の声も精細がない。
今の私の姿は、猫は猫でも、ちんまりとした毛玉のような【子猫】になっていた。
背中から生えた、ちっこいコウモリの翼が、とってもぷりちー。
カレー色だった身体は、固定化したせいか綺麗な金色に変わり、つぶらな瞳はルビーのように真っ赤で、まだ小さな爪や牙も半透明で真っ赤な宝石のようだった。
今までの視界感覚を使えば、自分の状態もよく分かる。
はっきり言ってめちゃくちゃ可愛い。あの夢の世界の【私】だったら躊躇無く拾って一日中抱きしめていたでしょう。
『………あのぉ』
『……それでどうやって戦うつもりだ……?』
やばい。黒豹の声が怒ってる……。どうしてこうなった? いやいや、原因は分かっている。私が馬鹿なせいだ。
そんな馬鹿な私でも分かる。この身体は戦う姿ではない。
『……え、えへ』
『…………』
思わず愛想笑いをする私に、黒豹の視線は冷たい。
愛想を尽かされるのは仕方ないけど、せっかく会話できる相手……しかも、こんな好みの声で話す相手とは、できれば友達でいたい。
さらに言えばモフモフしたい。自分の毛皮とは別物だ。
ちょこちょこと、私は短い脚を使って黒豹に近づき……途中で転ける。
そうだ、コウモリの翼があると思い出して羽ばたいてみると、ふわりと浮かんで……頭からぺちゃりと落ちた。
『『………』』
思わず無言になる二人……いや二匹。……あれ? 大きな獣だと頭数えだったかな。
そんな事を考えて現実逃避をしていると、黒豹は小さく溜息のような――呼吸をしていないのに器用だね――とにかく溜息をついて私に近づき、がぶりと私に牙を立てた。
『ひぃやぁ!?』
く、喰われる~~っ!
『……騒ぐな』
そんなことを言われて私が黙ると、黒豹は私を口に咥えて親猫のように歩き出した。
『……えっと?』
『……喰う気はないと言ったはずだ。元々、久方ぶりに会話をしたかっただけなのだ。面倒だが、会話に飽きるまで俺がお前を飼ってやる』
『………はい』
寂しくてペットが欲しかった私は、こうして黒豹のペットになってしまったのです。
新作、『悪魔のメイドさん。』始めました。
こちらはあまり自重していない、コメディ色の強い作品になりますので宜しかったら気軽にお越し下さい。