第8遊 『女子会?』
分かれた2組の内の女子組。色々なお風呂がある中で『皐月の宿』と言う所で洗い流す事に決めて受付を済ます事に
「いやぁ〜……受付のお姉さん凄い顔してたね〜」
「そうですわね……」
「汚物を見る様な目だったよね〜」
「くっ……こんな事屈辱ですわね……」
まぁそんな目で見られて当然だった。南の格好は謎の液体に塗れていて街に入った時点で注目を浴びていた。
「さて、ではさっさと洗い流して仕事に戻ろうね〜一時間って約束だし〜」
「そうですわね、あまり任せては悪い気がしますし落ち着かないですし」
「うんうん……じゃあレッツゴ〜!」
受付を済まし荷物を預け……直ぐに直行……髪を洗い身体を清らかにしてから湯船に浸かった。
「ふぅ〜……やっぱり此処の温泉は最高に気持ちが良いね〜」
「ですわね〜……まぁゲーム内と言うのが少し気になりますが」
「まぁまぁ〜野暮な事は言わさんな〜」
「……そうですわね、今は今ですものね……」
「うん〜そうだよ〜」
1分も続かない様な会話が途切れ途切れ繰り返された。だが、今は誰も居なくこの2人だけ。静かな空間がしばらく続き耐えきれなくなった
「ね〜、春香〜」
「何でしょうか?」
大菊がその空気を破った。それもごく自然に気を遣っている様子も微塵も見られない。何時も静かな空間が生まれたら大菊が破るからそれが宿命と言うのか?
「春香って独り暮らし始めてからもう3年も経つゆだよね〜」
「あぁ、そう言えば3年がそろそろ経ちますわね……」
思い出す。丁度3年前の事を。
「私の家は普通に受け入れてくれたけれど春香の家はかなり厳しかったもんね〜」
「そうでしたわね、結局は無理矢理家を出て最終的には折檻されてしまいましたわっ。まぁ私が悪いのですから仕方無いのですけど」
「あはは〜、春香も思い切った事をしたもんだよね〜」
本当に我ながら大胆な事をしたと思う。丁度3年前に永遊病が流行り始め『GAMEに関しての知識が豊富』であり『自己推薦』によりこの仕事場に就く事が出来た。労働基準法を無視した小学卒業時点から労働時間が超える職業に唯一就けると言うブラックとも考えれる企業で……社長娘の南はまず就く事が無いような所だったが――――
「それは鷹乃さんが誘ってくれましたから私もそうしたのですよ?」
「あはは〜そう言えばそうだったね〜」
そう、南は大菊が就いたからそれを追い掛ける様に地位まで捨てて就職したのだ。
「まぁ〜私も春香を1人残しては正直辛かったから凄く嬉しかったけどね〜……」
「それは私もですわ……ある意味では囚われた籠から春香は出してくれた様なものですし……」
大菊の目には少し悲しそうな南が映っていた。2人は中学から同じ学校に通学してクラスの中で唯一際立って目立った2人だったが……2年に上がってクラスが離れ数ヶ月してからそれは起きてしまった。
陰湿な嫌がらせだ。お金持ちの南は友達が出来るたびに高額な物を強請られそしてそれに全て答えていた。南のお金目当てで寄って来た友達だ。陰ながら普段クラスでも支えていた大菊が隣に居なくなった南にこれでもかと言う程集っていたが、ある日大菊が南に助言しその一種のばら撒き行為は一切しなくなった。――――それからが全ての始まりとなった。
財布で無くなった南は妬みの対象でしか無くそこから陰湿の苛めが繰り返された。最終的にはクラス全員での非常に陰湿な――――
それに対して南の親は転校まで考えていたがそれ
では意味が無いと大菊は考えていた。それでは結果他の学校でも同じ事が繰り返されるからと思ったからだ。
そして、ある日永遊病対策の終娯部隊の募集のお知らせを見て南を誘いそこに2人で就く事を決意した。
「そうだね〜……でも、春香はこれで正解だと感じてる?」
「……それはどう言う事ですの?」
「ん〜……え〜と……だから春香は此処にき――」
「鷹乃さん」
「んっ!?」
指で口を塞がれてしまった。何か少しドキドキするシチュエーションだと大菊は思ってしまった。
「それは――――言わない約束ですわよ?」
「…………」
「確かに、結果から言えば逃げ出して親にも勘当され毎日仕事をすると言う私には似合わない生活かもしれませんわ」
「…………」
別にその指を退かして何か言う事も出来たがあえて南は何も言わなかった。
「でも、私は不満と思った事は一度も無いですわ。この生活にもそして仕事にも」
「――――――」
その時の南の笑顔は大菊は二度と忘れる事が無いかもしれない――――そのぐらい嘘偽り無い言葉、そして笑顔だと理解してそれを心に刻まれたからかもしれない。
「それに南さんだって辛かったのは……一緒ですわよ?」
「……あはは~、まぁそうだけど…」
「それでも貴女はつらい顔一つせずに私を誘ってくれた……これ以外に幸せな理由がありまして?」
「……ははは、やっぱ春香には適わないなぁ~」
2人はようやくそこでクスクスと静かに笑い合う。
2人の心の傷も思わぬ所で少し癒えたのかもしれない。
「さてっ!そろそろお話も終わりにして上がるとしましょうか」
「……うん。そうだね〜もうそろ時間だね〜」
そろそろ1時間が経ったと言う事で2人は上がり着替え聞き込み最中の2人の元に向かう事に。
南の人生最大の最初の起点は恐らく大菊が変えた物だ。それが正しいかどうかは誰にも分からない事だが――――――南は幸せだった。