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今位義隆

スペイン帝国は、一八九八年の米西戦争において、戦略指揮上の大失態を犯してしまった。それによって、王室の権威は失墜し、九八の世代と呼ばれる知識人が誕生した。彼等は決して愚かではなかったが、一つのことを訴え続ける事しか知らなかった。

スペイン軍は、無能ではない。事実、部隊ごとに見ていけば、幾つかの部隊はアメリカ軍相手に善戦した。

弱くない厭戦国、スペイン帝国は、今岐路に立っていた。



俺は唾を飛ばして熱弁を奮うジジイの顔をぼんやり眺めていた。他にも、同じ年頃の老人が険しい顔で座っている。彼等は、米西戦争で指揮をとった上級司令経験者で、今回の戦争に関して、偉そうにしゃべっている。だが、彼等は自らの実力を知らない。そして、米西戦争での失態を失態だと思っていない。彼等に今回の戦争をとやかく言われる筋合いはない。

「--とにかく、戦争なんてやったらいかん!なぜ過去から学ぼうとしんのだ⁉︎」

いい加減俺がキレるところで、隣の男が立ち上がった。

「エルリオ殿、落ち着いて下さい。我々は、あの『El Desaatre』から何も学んでいないわけではありません」

わざわざ、大惨事という言葉を使って話す男。その言葉にジジイどもはさらに顔を赤くする。

「貴様ァ……」

民衆にとっては、米西戦争の結果は彼等の評価をどん底に叩き落とす以外の効果を持っていなかった。そして、王室は彼等を処分することで、潰れる事を避けたのである。

「エルリオ殿もおっしゃった通り、過去には失敗がありました。しかし、それは今の軍では起こり得ない失敗なのです。我らは必ずこの戦争に勝利します」

あくまで落ち着いた声音で話す男に、ジジイどもは歯ぎしりしかできなかった。



「さて、どう見る?」

議会院のエントランスを歩きながら、男--スペイン軍総司令レントは、俺に話しかけた。

「イタリアがどちらにつくか、だな。大した軍を持った国ではないが、それなりに大きい国だからな」

二日にドイツから、三日にフランスから届いた参戦を要請する文書は、鬱憤を溜め込んだ王室と軍にとっては、絶好の機会となった。既に王室の許可はおりており、鉄道ダイヤの調整に入っている。だが、連合側なのか同盟側につくのかで、輸送先が大きく変わるので捗りはしない。

「……でも、まあ決まってんだろ?あんたの中で」

俺はそこまで考えをそこまで巡らせて、やめた。結局はこの男が考えているのだ。

「……聞いて悪かったな。そうだよ、決まってるよ」

ふふ、と微笑んだ男は、エントランスの(ひさし)の外から差す日差しに目を細めた。男はその太陽に向かったまま、

「頼むよ、ヨシタカ」

俺--今位義隆は、同じ太陽を仰ぎ見た。

これでようやく六人揃い踏みです。遅くなって申し訳ありません。

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