稼働開始
「なあ、ここって本当にイバノフランコフスクってとこなのか?」
ハーツは酒瓶を片手に、エルエンドルフに聞いた。
「さあ?誰も答えてくれないしね」
横からトカレーが口を挟む。
「そりゃそうでしょ。言葉違うんだし」
「ドイツ軍が進行を開始しました!」
「イギリス艦隊が出港しました!」
よしよし。
「すぐに海軍を出せ」
「は!」
スペインが動くよー。
スペイン艦隊が動いた。
シチリアに居残りの俺には情報が来るのが少し遅かった。今報せを聞いたが、
「明日に来るのか?」
「はい、計算上は」
「艦船の準備は?」
少し間を置いた報告官は
「半分程度です」
半分じゃ仕方ない。戦っても犠牲が増えるだけだ。
「三軍と四軍で防衛戦を敷け。第一機械科軍は師団ごとに指示する」
「は」
「本国に電信だ。『目標近し、全滅損ず場合無きも、双方共なり』」
目標はある程度敵を削ることだ。無論、敵が上陸してくれば話は別だが、それはないだろう。
「わかりました」
「ベルギーはなんて?」
ジョフルはうーん、と唸っていたが
「自分の国は自分で守るってさ」
「はは」
ジョフルがこちらを睨む。
「笑ってる場合じゃないよ」
済まんな、笑えるんだ。
「兵員輸送は終わったんだろう?」
グラスを傾けて聞く。中身はお茶だけど。
「うん、終わってるよ。砲弾も足りてるはずだ」
じゃあ、良いじゃないか。
「でもわかんないよね。ドイツ軍が一体どれほどの物か」
「待つしかないな」
そうだね。安っぽいガス灯がフッと消えた。