語尾だけでこんなに違う。
初乙女ゲーム物。ちなみに作者やったことはありません。何番煎じかわかりませんがお楽しみ頂けたらと思います。
「だいじょぉぶぅ〜?あ、新入生の子ぉっ?迷っちゃったのぉ〜?ユメ案内してあげるよぉ!」
「大きなお世話だ近づくな尻軽脳味噌花畑女」
桜もほころびはじめた、穏やかな春の日。
私立東雲学園高等部入学式開始5分前に、裏庭で交わされた会話である。
まったくもって穏やかではない。
「大丈夫?ああ新入生の子かな?迷ったの?私、案内してあげようか?」
「先輩、ですか?すいませんお願いできますか?」
場所はかわらず私立東雲学園以下略の裏庭。
先ほどの全く穏やかではない会話からちょうど5分後、入学式が開始したその時に交わされた会話である。
これこそ春の日に相応しい、穏やかな先輩後輩の一幕であった。
******
「なによなによぉっ! せぇっかくユメが優しぃ〜く案内してあげるって言ってるのにぃ!だいたいちゃんとイベント通りのセリフ言ったじゃない!それにユウくんはあのイベントやらないとルートにすら入れないのに……」
ちなみにこちら生徒が行き交う廊下での独り言である。繰り返す、会話ではなく独り言である。
「…ってことはぁ、もぉユウくんのルートに入れなくてぇ、逆ハーも出来ないってことぉっ?!ありえなぁ〜いっ!!ユメはお姫様だから男の子たちに囲まれて愛されてなきゃいけないのにぃ!」
再度場所を確認しよう。
生徒の行き交う廊下、さらに言えば1番人の集まる玄関前エントランスホールである。
そして会話ではなく独り言であ以下略。
さてそろそろ痛い独り言を繰り返し、大分注目の的となっていることに気付いていただきたい所だが…
「あっカイ先生ぇ〜!ユメさっきひどいこと言われて胸が痛いのぉ〜。先生ぇ治療してぇ?」
どこの三流AV女優だ…げふんげf…
一瞬音声に乱れがあった模様です。大変失礼致しました。
さて先程尻軽脳味噌花畑女と罵られ…新しいアダ名を付けられた電波系女子は、新たなターゲットを発見したようである。
「…でねぇ、ユメがせぇっかく案内してあげるって言ってあげたのにひどいこと言うんだょぉ?ユメ悲しくってぇ〜先生ぇはユメのこと可愛いって言ってくれるもんねぇ!あ、ユメもそれ持ってあげるぅ!あとでちゃんといーこいーこしてねぇ?」
…なんで常に上から目線なんだやらいーこいーこってなんだ幼稚園児かやら言いたいことは皆様多分にあるでしょうがここは深呼吸で落ち着きましょう。
Q.なぜ?
A.これをノンブレスで言い切られ、遮る間もなく聞いてしまった哀れな被害者が居るからです。
「あーあのな夢路、一応俺は先生だからな、名前じゃなくてちゃんと山田先生って言うんだぞ?あとこれは軽いし保健室まですぐだから持たなくても大丈夫だ」
哀れな被害者Yくんはどうやら保健の先生だった模様。
山田…イケてるメンズだけど山田先生…
「もぉカイくんったら照れなくていいんだよぉ?そ、れ、にぃ〜夢路じゃなくてユメ!って呼んでって言ってるのにぃ〜!」
電波系女子には引き攣り笑いも照れ笑いに見えるようである。
そして彼女の名前がユメでは無く、夢路という苗字ということが判明した。
「いやだからな、頼むから山田先生って呼んで…あ!ほらあそこに生徒会長の空閑がいるぞ?そういえばさっき生徒会手伝ってくれるやつ探してたな〜」
売った。
こいつ生徒を電波系女子に売り渡した。
まぁ肉食獣を彷彿させる爛々とした目や、若干荒い鼻息など、26歳DT★山田海斗(小中高大と鑑賞物扱いで主に肉食系女子しか近づいて来ず若干女性恐怖症)には荷が重かったらしい。
「あっほんとだぁリュウくんだぁ〜!じゃあカイくんちゃんと今度はユメって呼んでいーこいーこしてねぇ?」
どうやら電波系女以下略には山田先生(DT★)の言った言葉は一切聞こえていなかったらしい。
そしてなぜか自ら名乗り出た手伝いを放棄した上、報酬として強請っていたはずの"いーこいーこ"とやらを次回ちゃっかりしてもらおうとしている。
お疲れ様、Dt…山田先生。
「あ、カイ…山田先生。ちょっとさっきから胸痛くて…先生の所に私の薬置いてありましたよね?あぁ、それ保健室まで持って行くんですか?手伝いますよ?」
「美月!またお前薬持って歩いてないのか?!ああいい持つな!俺1人で持って行けるから!だいたいどうしてお前は…」
「あーごめんなさい山田先生!私が悪かったです!それより名前で呼ぶなって言ったのカイなんだから、そっちこそ私のことちゃんと田中さんって言いなさいよね…」
おやおや電波以下略が無事去ったと思ったら、なにやら青い春っぽいものがDTの所に訪れてます。
場所は電波の時と打って変わって人気のない保健室前。どうやら抜け目無く周りをチェックしながら移動していたご様子。
さすが妄想で脳内シミュレートを繰り返していたDTは違います。
ちなみにDT山田先生のことをカイと呼んだ病弱お転婆系女子は、彼の幼馴染であり、目下囲い込み中外堀埋めたて中の相手である。
会話の通り心臓が弱く、しかしながら本人は「何かあったらカイに助けてもらおう/もらえる」と考えているお気楽女子の為、DTの心配は尽きない。
だが裏を返せばしっかりDTに洗脳/依存済みの為、あとは本人がDTに対する恋心?を自覚すればあっさりとくっつくであろう。
苦節16年…(美月が生まれた時に一目惚れ→外堀埋めたて開始、筋金入り)お疲れロリコ…Dt…山田先生!
君の未来は明るい!
*****
「リュ〜ウくん!なにしてるのぉ?ふふっわかったぁユメのこと探してたんでしょぉ〜♫もぉ〜リュウくんたら寂しがりやなんだからぁ!そうだ寂しがりやのリュウくんの為にぃ、ユメ生徒会のお仕事手伝ってあげるぅ!早く行こぉ?」
…聞いているだけで後ろから飛び蹴りかまして何度と言わず足蹴にして口をガムテープで塞いでコンクリ詰めにしたいところだが落ち着こう。
こちらにもノンブレスで言い切られた哀れな被害者が…
「斉把?SP共は何をしている?…守田に今日担当の奴らを躾け直せと言っておけ…2日でモノにならなきゃクビだともな」
哀れ…哀れな…
「あぁあと裏屋を呼んでおけ。一匹目障りなのがいるんでな。最初から煩わしかったが、最近はユイにも近づいているようで我慢ならん」
被害者…被害?
「下らんことを吹き込まれた所為で、食事は私の膝の上でと教え込んだにも関わらず勝手に1人で食べ終わっているわ、着替えもトイレに立て籠もって1人でするわ、更には寝るのも私の横でしか認めぬと言っているのに、あろうことか父さんと母さんの部屋に逃げ込んだ!私以外と同衾するなど…たとえ親でも許せん!」
哀れな被害者は別にいる!
ユイちゃん?逃げて!超逃げて!
「リュウ?なにしてるの?ユイのこと探してたの?…ちゃんと反省した?リュウが寂しがりやなのはわかったけど、ユイも1人でちゃんと出来るんだよ!わかった?…わかったなら、しょうがないから生徒会のお仕事手伝ってあげる…」
ここで真の被害者であるユイちゃんが(都合良く)登場。
最後恥じって顔真っ赤にしてもじもじしながら言うユイちゃん超かわええ。
あ、失礼しました滾り過ぎて本音がだだ漏れてしまいました。
変態生徒会長に聞かれたらワタシも無事では無かったでしょうが、1日ぶりのユイちゃんの可愛すぎる姿に耐えきれなかったようで、撃沈しています無問題!
あっと、ここで忘れてはいけなかったのは変態会長だけではなく電波系女子もでしたね。
「ちょっとぉ〜!なによアンタぁ!一昨日言ったこともぉ忘れたのぉ〜?リュウくんはユメのなんだからぁ、アンタごときが近づくんじゃないわよぅ!だいたいねぇ〜そんなちんちくりんな身体でぇ、リュウくんに媚売ろうなんて100万年早いのよぉ〜!」クスクスクスクス
この電波系女子、電波系女子ではあるが、一応主人公枠で描かれている為、実は見た目的には悪くはない。
身体は女子の平均体型にメリハリをつけたようなナイスバディ(笑)であるし、顔は性格が滲み出て若干残念なことになっているが悪くはない。そこらへんの大学程度ならミスキャンパスくらいにはなれるんじゃない?程度の顔をしている。
そして悪役顔であるため台詞の後の、人を馬鹿にしたようなクスクス笑いが似合う似合う。
まぁここで気の弱い子であれば泣いて去っていたかもしれないが、そうはならなかった。
「ユイちんちくりんなんかじゃないもん!まだちっちゃいけど、リュウが大っきくしてくれるって言ってたし、ママさんがリュウはユイのだからねぇって言ってたもん!」
もちろん大っきくする部分は、変態とピュアっ子の間に認識のズレがあるし、ママさん…変態のご母堂の台詞には、ユイちゃんを逃したら、変態息子には嫁が来ない!という母なりの心配からくる、怨念…呪いがこもりにこもっている。
「はぁ〜?なぁに言ってるのぉ?リュウくんはぁユメのだってばぁ!ねぇリュウくぅん?リュウくんも言ってやってよぉ〜」
電波系女子にはユイちゃんの言葉が外国語異世界語にしか聞こえなかったようだ。
電波に電波扱いされるとは…ユイちゃん哀れ。
まぁここまでは可愛いやりとりだったのだと、後ほど気づくのだ。
「ユイ結婚しよう。」
後から…変態からこの更なる電波発言が出てきてから。
*****
…ここで一旦整理しよう。
ピュアっ子のピュアピュアな台詞から、電波の電波語に移り、変態から変態語…ではなく、夜景の見えるレストランで指輪を差し出されながら言われたい夢見る女子的No.1の台詞が出てきた。脈略もなく。
「えぇ〜リュウくんったらこんなところで何言い出すのぉ〜?もちろんユメはオッケぇなんだけどぉ、もぉちょっとロマンチックな場所で言われたかったなぁ〜」
変態を上回る電波がここに居た。
変態はもちろんしっかりユイと言っていたのだが、電波には自分の名前が呼ばれてるとしか思えなかったようだ。
「え…リュウ、その人とけっこんするの…?ユイのこともぉいらないのぉ…?う、うぇ…っ」
ユイちゃーん!!
ピュアっ子にはちゃんと自分の名前が呼ばれてるように聞こえたはずだが、その後の電波の台詞ですっかり電波に言われた台詞だと勘違いしたようだ。
今にも泣き出しそうである。
さてピュアっ子の涙がこぼれる5秒前☆の状態で変態がどう動くかと考えていると。
「A班目標確保しました!」
「B班帰路確保済みです!」
「C班証拠抹消完了です!」
いきなりSATの訓練が始まりました。
*****
さて皆様は覚えていらっしゃるでしょうか。
何行か前にクビ勧告された守田氏という哀れな方が居ることを。
ちなみにその方、変態のお家、どころか変態が次期総帥の企業で警備防衛部門を統括する、ちょっと上の方にいる中間管理職でございました。
43歳にして大手企業の管理職でございますから、もちろん有能でありますし、胃薬の欠かせない生活をして…ああこれは関係ありませんでしたね。
まぁようは頭がよくて空気の読めるおっさんということです。
そんなおっさんは先程の電話で悟りました。
『坊ちゃん、本気(本気と書いてマジと読む)だ…』と。
まぁそこからは空気の読めるおっさんの本領発揮、真剣モード(真剣と書いて以下略)です。
おっさんは悟りました。
私立東雲学園高等部で自分の平穏な生活と職を脅かす何かが起きている、と…。
即刻部内全職員に通達、訓練(対軍人用訓練)通りに班を編成し、東雲学園まで向かいました。
そして、先程の場面に繋がるのです。
*****
さてさて場所は私立東雲学園高等部の一部分。
電波も去って静かになった所でございます。
「ユイ、私と結婚しよう」
変態は、何事も無かったのように改めてピュアっ子にプロポーズしておりました。
「え…?リュウ、だってさっき…」
ピュアっ子は戸惑っております当然ですさっきまで電波にプロポーズしていたハズの変態が、いきなり自分にプロポーズしてきたのですから。
「さっきも何も、私はユイにしかこんなことは言わないし言ってない。それともユイは私と結婚したくない…?」
「そんなことない!ユイは、ユイはリュウとずっと一緒にいたいの…!だから、あの、ユイをリュウのお嫁さんにして…!!」
ちょろい。
ピュアっ子ちょろいよ…!!
さっきまで電波が居たことも、泣きかけていたことも、SAT擬きのの訓練があったことも全て忘れて、ピュアっ子は顔を真っ赤に目を潤ませながら、変態に抱きつきます。
ちょうど夕陽がうまいこと差し込み、2人の影がゆっくり重なる綺麗なスチルになった所で、めでたしめでたし。
True End!
*****
おっと皆様お疲れ様でございました。
こちらは終了後のオマケページでございます。
ひとまず謝罪をさせていただきますと、最初の方が鑑賞に真剣になるあまり、乱れた言葉使いでございました。大変失礼致しました。
まぁ全体を通して若干の乱れがあるのは、未熟者と言うことでお許しいただきたく…。
さて気を取り直してオマケでございます!
皆様も気になっていると思われます、電波系女子のその後!
簡単に説明致しますと、実はこの世界、あの電波がルートだとか言っていたように、乙女ゲームを元にした世界なのでございます!
ですが、はい。そうです。
肝心なのは、『元にした』ということですね!
確かに乙女ゲームベースのこの世界でございますが、実際に生きている世界、現実世界でもあるのです。
もちろん乙女ゲームベースというくらいですから、攻略者やらルートやらもろもろございます、が!
想像してみてください。
現実であのような、鼻にかかったような声で語尾を伸ばしながら鳥肌の立つ台詞を言われることを!
…イライラしますよね近寄りたくないですよね殴り飛ばしたいですよね!
そんなわけで、電波女子は全てのルートで攻略失敗して、対象者はすべてライバルキャラとのTrueEndを迎えたのでありました。
そして攻略に失敗して1人BadEndを迎えた電波女子は。
ヤンデレ監禁系神様に捕まってたり…していたら面白いと思いませんか?
それでは皆様ごきげんよう。
これにて終幕でございます。
機会がありましたら、また会えることを楽しみにしております…。
The End!
ありがとうございました。