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逃げよ少女、逆境に救い現る

お久しぶりの更新です

「ほーん...なんか、面倒そうなのに巻き込まれたな」

「武尊もそう思う?」


放課後の帰り道、僕は武尊と忍と合流し、昨日あったことを話した。

反応を見るに、二人ともいい気持ちではなさそう。


「...望門が美少女と言うくらいだ、それだけ目立つだろうによく捕まえようと思ったな」


これまでずっと黙っていた忍が、鋭い指摘の口舌をこぼす。

確かに多少物語じみているとは言えど、普通美男美女を追いかけている人々は目立つだろう。忍も大概整った顔立ちをしているし、ちらほらと道行く人からの視線を感じる。この状況からも、あれだけ現実離れした外見を持つ社ならばもっと目立つと容易に想像出来た。

…まぁ、本人は気づいてなさそうだったけど。


僕達がそんな話をしていると、ざわざわと周りが騒がしくなったのを感じ取る。気づけば大通りに出ており、人の往来が激しくなっているのが原因だろうと思った。

だがあるものが視界に飛び込んできて、想像を超えた事態になっていることを認識する。

というか、あれってまさか...!


「こ、来ないでください...!」


あの日見た白髪をなびかせながら、幼さは残るがそれでも発育の良い身体を持つ、怯えた表情をした少女が、今朝の少年を含む、研究者風の白衣を纏った3人の男に追われているのだ。


「社...!?」


あれだけ整った容姿を、見間違えるはずもない。紛れもなく社である。




「さて、これからどうしましょうか...」


望門が学校から出てくる少し前、社はおどおどした足取りで、人の多い通りを歩いていた。

今朝望門の家で起きた時、少し逡巡したものの、手紙を残して出ることにした。

社に起きた出来事を疑うこともせず即信じ、一晩と言え家に泊めてくれた望門だが、それだけに巻き込むのは気が引けるというもの。

社が出ていこうとしなければ、おそらく彼は「ほとぼりが冷めるまで、とりあえず家に居ていいよ」と言っただろう。それだけ優しさを感じたが故に、迷惑をかけるのは申し訳なかった。


「...当分はアルバイトですかね」


研究所に飛ぶ直前、社は神社の近くに建てられた自身の家に居た。当然、金銭など持っているはずがない。

島根から東京まで、かなりの距離がある。公共交通手段を使うにしても、それなりのお金が必要なことは分かった。

今やることが決まり、中学生でも雇ってくれそうな店を探すことに。


「...!」


と言ったところで、社は近くにあった路地へと入っていく。

声を殺して振り向けば、明らかに一般人ではない白衣を着た男たちが、()()()()()()()()キョロキョロと視線を振りながら、歩き去っていった。

一瞬の出来事であったが、ほっと胸を撫で下ろす。


────まだ、追われている。

その認識が、緩みきっていた社の警戒心、それを現実へと引き戻した。

路地にいることはバレていないはずだ。今のうちに、反対の通りに出たほうが良いだろう。


「────へぇ、彼女が...」


ふと、小さな女性の声が聞こえた気がした。


「...きゃっ!?」


その瞬間、何も無いところで、社は転んだ。

そして顔を上げれば、今まさに出ようとしていた路地の出口に、先程見た男たちが通りかかった。

今度は、悲鳴を聞かれてしまったようだ。男たちは真っ直ぐ社を見据え、こちらへと走ってくる。


「こ、来ないでください...!」


全速力でもと来た道を抜け、社は恐怖から言葉をこぼした。




社や研究者の男達は僕らに気付かなかったようで、人目があるというのに大通りを駆け抜けていく。


「...望門、もしかしてあの子が...?」

「そうだよ忍、多分あれが社だ」


流石に見過ごすわけにもいかない、武尊が先頭を切り、その後に続いて僕と忍も足を早めた。

宵崎先輩、それに七邸先生の言っていた「研究者達がうろついている」というのは、おそらく社を探すためだ。そう考えれば、別にこの状況も不思議ではない。

武尊は研究所の御曹司だし、忍もその婚約者。おそらく、僕の推測と同じようなことを考えている。だからこそ、この騒動に首を突っ込む気になったのだろう。


「しっかし、どう止める?あいつ等、結構速いぞ」


振り返りながら、武尊がそう問いかけてくる。


「魔法を使って足止めするっていうのは出来ないの?」


僕が質問に疑問を返すと、忍と武尊の両方が「あちゃー」とでも言いたそうな顔をした。というか言った。


「...なんだよ、別に変なこと言ってないだろ」

「いやまぁ、これは仕方がないな...」

「あのな望門、魔法ってのは面倒なもんで、こういう場所で許可もなく使うと法で罰せられるんだぜ」


初耳である。

聞けば許可というより免許が必要らしく、それを取るためには16歳以上になってから試験を受けなければいけないようだ。

僕はそもそも魔法が使えないし、今まででそんなことを聞いた覚えがなかったため、魔力を持つ人間だけがこのことを知っているのだろう。


「...つくづく、この世って理不尽じゃない?」

「「ノーコメントで」」


こんな会話を続けるうちにも、僕達はどんどん人気のない方へ進んでいく。

見れば日も傾いてきており、追いかけ始めてから結構な時間が経っていることが分かる。にも関わらず、研究者達は諦める様子も疲れた様子もない。


「...あ」


社は逃げるのに必死で気づいていないようだが、狭い路地に入ってしまった。それに進んでいる方向、そこには高い壁がある。


「追い詰めたぞ!」

「え?あっ!?」


気付かぬ内に社は取り囲まれ、ようやく自身が袋小路に来ていたことを察した。

ここまで長い距離を走ってきたため、僕を含めた4人は息が上がっている。

だと言うのに、研究者達に疲れた様子はない。これは流石におかしいと思い、武尊へアイコンタクトを送ると、数秒の間ののち頷きが返ってくる。

僕の推測通り、研究者達は魔法を使っているようだ。


(...どうする?)


声を出せば気付かれてしまうため、無言で忍がそう聞いてきた。

相手は魔法を使える大人3人組。反対に、こちらは魔法の使えない学生である。普通ならこんなことを聞く必要はない。

だが...


(...仕方ない、()()()()()()だし、僕と武尊でやろう)


16年間、魔法が使えないなりに色々な努力をした。それ故に、僕は「問題ない」とジェスチャーで伝え、武尊の肩を叩く。


「...ちょっと待ちやがれ!」


すでにそれを想定していた武尊が、お腹に響く大声を出し、研究者達と社が僕達に気づいた。


その瞬間、僕と武尊は拳を繰り出す。命中した男たちは派手な音を立て、吹っ飛んだ。

用事が片付いたので、2日に1回くらいは更新したいですね

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