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閃光の剣士と鬼使いの呪術師 ~魔力が支配する世界にひとりだけ~  作者: 鬼喜怪快


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9話 呪術師、呼び出される


 本日をもって、条件を満たせなければ――

 パジャン村のギルドは、閉鎖される。


 それは、フランにとって

 「もう一度剣を握れ」と言われているのと同じだった。


 胸元に光る、協会本部所属の徽章。

 その数、8名。

 ギルドハウスの前に並ぶ見慣れない顔に、村の人々は不安を隠せなかった。


 閉鎖準備。

 引き継ぎ。

 解体。


 彼らは各作業の分担を始めている。

 村全体に、重い空気が漂っていた。

  


 ギルドハウスの中では、静かな話し合いが続いている。


 本部の使者たち。

 ギルドマスターのカフザ。

 そして――フラン。


 彼女は、ほとんど喋らなかった。


 「フラン」


 優しく声をかけたのは、協会本部のリーダー、アイナだった。


 「あなたが現場復帰してくれれば、この村のギルドは存続できます」


 「……」


 「本部としても、閉鎖は望んでいません。この村は、ギルドと共に発展してきた」


 「……」


 「あなた1人に、責任を押し付けたいわけではないのです」


 フランは、俯いたまま動かない。


 「フラン……」


 ギルドマスターの声が、わずかに震えた。


 「この村を、救ってくれないか……」


 

 その言葉に、フランの肩が小さく跳ねた。


 誰も、悪気を持って言っているわけではない。

 それが、余計に彼女を追い詰めていた。


 誰も死なせないために剣を置いた。

 その選択が、今は村の存続を脅かしている。



 フランは、何も言わず立ち上がった。

 そして、逃げるようにギルドハウスを出て行った。


 「……」


 彼女の背中を見送りながら、アイナが小さく息を吐く。


 「ギルドマスター。彼女を、どうにか説得できませんか」


 「……ええ。ですが……」


 カフザは、それ以上言葉を続けられなかった。



 ――――――

 

 

 フランは、畑の広がる方へ歩いていた。


 足取りは重く、行き先も決めていない。


 自分が何を期待されているのかは、わかっている。

 それでも、もう戦場には戻れない。



 「閃光のフラン」


 

 その二つ名を呼ばれ、フランは肩を強張らせた。


 振り向くと、そこには2人の使者が立っている。


 鎧の剣士ベルゼ。

 魔法使いフィート。


 「追ってきて悪かった」


 ベルゼは、頭を下げた。


 「この前の件……非礼を詫びに来た」


 「……気にしていません」


 フランの声は、弱々しかった。

 

 ベルゼは、その震えを見逃さなかった。


 「……お前が、最年少でAランクに上がったフランだとは知らなかった」


 フランは答えない。


 「12歳でAランク。天才剣士と呼ばれた」


 「……」


 「だが、あの島の1件で――すべてが変わった」


 

 フランの視線が、地面に落ちる。

 


 「あの島では、剣は意味を持たなかったのです」


 フランは、淡々と語った。


 「名工と呼ばれた父の剣ですら、モンスターの前では意味を持たなかった……」


 「……」


 「母の詠唱は、最後まで終わらなかった……」


 それ以上、言葉は続かなかった。


 「……15歳の少女が背負うには、重すぎる依頼だったと思う」


 ベルゼは、静かに言った。


 「今回は無理に復帰する必要はない。俺は、そう思っている」


 フランは、顔を上げた。


 「……説得では、ないのですか?」


 「ああ」


 そして、ベルゼは続けた。


 「代案だ」


 フランの目が、わずかに揺れた。


 「……ロッキを立てる」


 「彼には、そんな力ありません」


 即答――。


 「ふざけるな」


 ベルゼの声が、低くなる。


 「何かをされた記憶すらない。しかし一瞬で、俺は大けがを負って地面に転がっていた」


 「……」


 「アイツがEランクだと? 冗談じゃない」


 フランは、首を横に振る。


 「事実です。簡易ですが、検査もしました」


 ベルゼは、言葉を失った。


 彼自身、故郷の村がギルド閉鎖で廃れた経験を持つ。

 だからこそ、口を出した。


 「……余計なお世話だったようだ」


 ベルゼは、そう言って背を向けた。


 

 フランは、その場にしゃがみ込む。

 彼女の答えは、見つからないままだった。



 ――――――



 「ロッキー! ローッキ!」


 家の扉が乱暴に開かれ、ゴーシが飛び込んできた。


 「父上、どうされました?」


 「大変だ! 本部の連中がお前を探してやがる!」


 息を切らしながら、ゴーシが叫ぶ。


 「この前のAランクの2人だ! お前を呼び出せって、ギルドハウスでふんぞり返ってやがるんだ!」

 


 小角の胸が、僅かにざわついた。


 「……呼び出し、ですか」


 

 少しの面倒臭さを覚えて、彼は静かに立ち上がった。


 ――仕返しのつもりなら、それでいい。


 小角はギルドハウスへ足を向ける。

 ――そして再び、彼らと合間見えることになる。


 


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