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処刑された最強呪術師・鬼使いの役小角は、魔法世界で唯一の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
3章 生まれ変わり編

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61話 遺言




 ポンズは、広げた布を静かに閉じた。

 そして、視線を上げてアイナを見据える。



 「……スウェルド邸で、何があった?」


 アイナは答えない。


 「辛いだろう。だが、聞かねばならん」


 「……わかりません」


 「どういうことだ?」


 アイナは唇を噛み、ゆっくりと語り始めた。


 人が獣へと変わり、

 死後、人の姿へ戻った使用人のこと。


 長卓に座らされていた、スウェルドの遺体。



 そして――

 屋敷の2階に、何か、がいたこと。



 「……私は伝書鳩の準備で外に出ました。

 先輩は、2階を1人で調査へ……」


 アイナの声が、わずかに震える。


 「叫び声が聞こえて……助けに行こうとしたんです。

 でも、結界を張られて……中に入れなかった」


 「……シルドは……お前を、守ったのだな」


 ポンズの言葉に、アイナは俯いた。


 「先輩は……最期に言いました」


 アイナは、絞り出すように告げる。


 「ロッキくんと……カルタさんを呼べと」


 「……2人を名指し……か」


 ポンズは目を閉じた。

 ロッキ、そしてカルタに関しては、魔力とは異なる術を操る者として認識している。


 「……何か関係があるのだな?」


 「わかりません。ただ……2人を呼べと」


 ポンズは秘書へ指示を出した。


 「至急、ロッキとカルタに招集をかけろ」


 カルタは、シルドの母親だ。

 息子の死を告げるだけでも胸が軋む。


 「……今日中に文は届く」


 ポンズは机に手をついた。


 「シルドの死は、いずれ公になる。

 Sランク冒険者の殉職だ……隠し通せる話ではない」



 街中で起きた怪異。

 未だ正体不明の敵。



 「公表する前に、決着をつけねばならん」


 ポンズは、低く呟いた。


 「……すまんなシルド。悲しむ時間はしばらく後になりそうだ」

 


 ――――――

 


 深夜。

 パジャン村のギルドハウスに、伝書鳩が舞い降りた。


 その夜、ベルゼとフィートの来訪もあり、

 ギルドハウスでは酒盛りが始まっていた。


 フランはベルゼに捕まり、

 普段なら即帰宅するところを、半ば強引に席に着かされている。


 村の冒険者たちは、最初こそ本部の人間を警戒していた。

 だが――

 

 ベルゼが語る、イルジョン島でのフランの戦い。

 それは、彼女自身が決して語らなかった死闘だった。

 みんなが興味津々に聞き耳を立てていた。

 

 盛り上がりが最高潮に達した、その時。


 ――パタパタ。


 伝書鳩が、窓辺に止まった。



 「……こんな時間に文、か」


 

 カフザは嫌な予感を覚えながら、紙を開く。

 次の瞬間、顔色が変わった。


 彼は真っ直ぐ、フランとベルゼのもとへ向かう。


 「……マスタールームに来てくれ」


 

 ――――――

 


 「とんでもない顔してるぜ、カフザさん」


 ベルゼが言う。


 「おじさん、何かあったの?」


 フランも、笑顔を消した。


 カフザは一度深呼吸し、告げる。



 「……本部長ポンズ殿からだ」


 「!」

 

 「至急、ロッキを協会本部へ向かわせろと……」


 「どうしてロキ坊を?」


 その問いに、カフザは目を伏せた。


 「……シルド殿が殺された」


 「――!」


 空気が凍りつく。

 ベルゼは文を奪い取り、震える手で読む。


 「……嘘だろ。

 今日、任務に出て行って、アイナと一緒だったはず……」


 朱印は、本部のものだ。

 間違いではない。


 「ロッキの帰還は明日の午後だ。

 気の毒だがその後、すぐ向かわせねばならん」


 「……今度はわたしも行くわ!」


 フランが名乗りを上げた。

 ベルゼが、ショックで床に座り込んだ。


 「シルドが……嘘だろ……あいつは……」


 カフザが声をかける。

 

 「……ベルゼ君」


 「すまねぇ。俺、今からシーアに戻るわ」


 「夜間だ、危険だぞ」


 「……わかってる。でもアイナも心配なんだ」



 その時、もう一羽の伝書鳩が届いた。

 差出人は――アイナ。


 カフザはその文をベルゼに手渡した。

 ベルゼは文を読み――

 息を呑んだ。


 「……本当なんだな。

 アイナからも……同じことが書いてある」


 「……」


 「シルドが……アイナを守ったって……」


 「いったい、どういう……」


 「……後のことはフィートに任せると伝えてくれ。

 俺はシーアに戻るから、ロッキが返って来たらフランと一緒に来て欲しい」


 そう言い残し、ベルゼは部屋を出て行った。

 カフザとフランは、何も言えず見送った。

 


 ――遺言は、確かに託された。

 


 それが希望か、絶望かも分からぬままに。





 

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