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処刑された最強呪術師、魔法世界でただ1人の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
3章 生まれ変わり編

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54話 ロッキのいない日


  


 蝶の式神。

 大きな蝶が、羽を揺らしながら宙を舞っている。



 「あれはモンスターなの? 雰囲気が違うような……」


 「式神というものです。

 術者がその辺にいた蝶を、あのような姿に変えて操っているだけです」 


 「……姿を変える?

 感情は……あるの?」


 一瞬だけ、フランの思考が止まった。

 だが――


 「すべては術者の手のひらの中。……式神に感情はありません」


 フランは、わずかに悲しそうな表情を見せた。 



 「ごめんね……」 



 そう呟いた瞬間、後鬼の隣にいたはずのフランの姿が消える。


 次に彼女が見えたときには、蝶の式神の真下に立ち、

 刀を鞘へ戻そうとしているところだった。



 「お見事です。村へ急ぎましょう」


 「えぇ」



 空から、真っ二つに裂けた蝶がひらひらと舞い落ちてくる。


 蝶は地面へ落ちるなり、元の小さな姿へと戻った。



 ―――――― 



 ロッキの家の近くで、ゴーシとニーナがうずくまっているのが見えた。

 他にも村人が倒れている。

 先ほどの蝶の式神にやられたようだ。


 急ぐフランへ、後鬼が声をかける。



 「フランは先へ。皆さんはわたしが見ておきます」


 「紅葉、お願い!」



 フランは1人で村の中心部へと向かった。



 ――――――



 村の中心地へ急ぐフラン――

 周囲を見渡すと、地面は掘り起こされ、建物にも激しい損傷が見られる。

 応戦したのだろう、ギルドメンバーが数名倒れていた。



 「フランちゃん!」



 武器屋の主人が声を掛けてきた。 



 「ギルドのみんなが俺らを守るために戦ってくれたのに、ダメだった……。

 なんなんだよ、あいつら!?」


 「おじさん! そいつら、どこへ行ったかわかる?」


 「“呪術を使う奴はどこだ?”って聞いてきてよ。

 意味わかんねぇから、ギルドハウスを教えたんだよ……そこへ行ったはずだ」


 「わかった、ありがとう!」


 「見た目は人間だったが、モンスターを3匹引き連れていた……気を付けろよ!」



 ギルドハウスへ向かうにつれ、路上に倒れている人数が増えていく。

 村人たちの被害が大きい。




 ――ギルドハウス。


 入口の階段に倒れている冒険者がいる。

 出入口の扉は全開で、依頼掲示板、休憩所、準備場が無残に荒らされていた。

 


 「みんな!」



 フランが叫ぶ。



 「フ……フラン……さん」



 受付の前で、男に襟首を掴まれ、

 身体を宙に浮かされた受付嬢が助けを求めている。

 足元には、ギルドマスター・カフザが頭を踏まれて倒れていた。



 「彼女を離して、足をどけなさい!」


 「なんだお前……」


 ――ドゴッ!


 フランの電光石火の蹴りが男のみぞおちに入り、壁へ吹き飛ばした。


 フランは受付嬢を抱きかかえ、カフザへ呼びかける。



 「カフザおじさん! 大丈夫!?」


 「くっ……情けない……。元Aランクが聞いて呆れる……」



 壁に叩きつけられた男は、

 無言で立ち上がり服の汚れを払った。


 そして、人差し指と中指を揃え、

 口元へ指を添える構えを取った。


 フランは、その姿に息を呑む。


 「あれは……ロキ坊の構え……?」


 『妖型産化のようけいさんかのしき


 室内3か所に、小さな稲光が見えた。

 そこから、見たことのない3体のモンスターが飛び出してくる。


 ネズミ、蜘蛛、カマキリ。


 会話の間もなく、フランへ襲いかかってきた。 


 先ほどの蝶の式神と同じく、見たことのない存在だった。


 ――これも式神?



 「お前呪術師には見えねぇな……」


 「あなた、誰?」


 「知りたきゃ、吐かせてみせろ」


 蜘蛛の式神が網状の糸を吐き出す。


 フランは糸を斬り裂き、そのまま抜刀術で蜘蛛を両断した。

 男は、切り裂かれた式神と、フランの握る刀を見て目を細める。



 「……それは刀か。どうしてこの世界に?」

 

 「……」


 「そうか……お前も、生まれ変わりの体験者だな」



 ネズミとカマキリの式神が左右から襲いかかる。

 フランは小鴉丸で2体を一閃で切り伏せた。



 「お前……やはり術師ではないな」


 「あなたの話を聞くつもりはない。

 何の目的でここへ来たのかだけ答えなさい」


 「ふん……経験値は低いようだ」


 男が印を切る。


 すると足元から、蛇と蝦蟇の妖が現れた。

 先ほどの3体よりも、明らかに格上だ。


 さらに床が隆起し、巨大なムカデの式神が姿を現す。

 男はムカデの頭部へ飛び乗り、フランを見下ろした。



 「さぁ、これらとどう戦う?」



 巨大ムカデに気を取られた一瞬――

 蝦蟇の舌がフランの身体へ巻き付く。


 「しまっ……!」


 蛇が足に絡みつき、腹へ牙を突き立てた。


 「あぁっー!」


 一瞬でフランの身体が紫に変色し始める。

 視界が歪み、呼吸が浅くなる。


 毒――。


 「隙が多い……術師相手の基本がなっていない」


 男が冷たく見下ろす。


 「剣士などに用はない。死ね」



 そのとき――

 男の耳元へ、そっと顔を寄せる影。



 「女性に対して、ずいぶん酷いことをなさる……」


 「!」



 後鬼だった。

 男は慌てて距離を取り、蛇と蝦蟇を差し向ける。


 後鬼は扇子をひと振りで、それらを塵へと変えた。



 「お……鬼か?」


 「あら、お詳しい」


 「この娘……鬼を操って……」


 「!」


 「こいつ、まさか……呪術師で唯一鬼を使役した……あの」


 

 呪術の存在を知り、式神を扱う謎の男は、

 その名を口にしようとして飲み込んだ。

 


 その狼狽える男の姿を見て、

 後鬼はそっと微笑んでいた――。


 




 

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