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処刑された最強呪術師、魔法世界でただ1人の禁忌となる  作者: 鬼喜怪快
3章 生まれ変わり編

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52話 呪術師の祖 卑弥呼




 カルタは、落ち着いた口調で語り続けた。

 蘇生術に至るまでの過程を――隠さず、誤魔化さず。



 それは呪術師として到底容認できない禁術でありながら、

 同時に、同じ呪術師でなければ理解できない執念の結晶でもあった。


 怒りと嫌悪を覚えながらも、

 小角は最後まで耳を傾けずにはいられなかった。



 「……シルドの身体は、もう使える状態じゃなかった」


 カルタは淡々と告げる。


 「だから、夫の身体を使った。息子を生かすためにね」


 「……それなら」

 

 小角は言葉を選びながら続けた。


 「ご主人を生き返らせることも、可能だったのでは?」


 カルタは首を横に振る。


 「そこが、難しいところでね。

 一度身体を離れた魂は、元の器には戻せなかった。

 ……不思議なことに、別の器なら入ったんだよ」


 「降霊術の持続は、長くて1時間ほどのはずです。

 どうやって……永久定着を?」


 しばし沈黙ののち、カルタは短く答えた。


 「それは言えない。

 こんなこと、誰も真似しちゃいけない。

 罰を受けるのは……わたし1人でいい」


 その声に、迷いはなかった。


 禁術だと理解したうえでの選択。

 母として、呪術師として、すべてを背負う覚悟。


 ――説教など、最初から必要なかった。


 小角の脳裏に、先ほどの会話がよぎる。


 

 「前世での業の仕組みに気づいてさ。

 こっちの世界では、静かに生きようとしてる連中は多いと思うよ」


 「……それが正しいなら、僕はもう手遅れですね」


 「……それを言うなら、わたしもだ」


 

 カルタは、最初から覚悟していたのだ。


 

 「……君が、どこに訴えようと構わないよ」


 カルタは肩をすくめる。


 「でもね……この世界には、蘇生術を禁じる法も、協会の規定もない。

 わたしのやったことは――罪にはならない」


 「……言いませんよ」

 

 小角は即答した。

 

 「たとえ言っても……誰も信じない」


 カルタは、くすりと笑った。


 「誰に言ってもいいさ。

 でも……シルドにだけは、内緒にしておくれ」


 「……」


 「彼の記憶は、少しだけ“都合よく”調整してあるんだ」



 それ以上、踏み込む気にはなれなかった。


 

 ――――――


 

 丑三つ時を過ぎたころ、

 カルタは静かに屋根から降りていった。



 「明日、この村を離れるとき――

 ちょっと面白いものを見せてあげるよ」


 そう言い残して消えた。


 

 「……相当な術師だな」


 

 前鬼が、珍しく感心した声を出す。


 「手合わせしたくなるほどだ」


 前鬼が一目置く人間など記憶にない。


 「前鬼でも、戦ったら負けたりして?」


 「……鬼に負けるという概念はない」


 前鬼は静かに言い切った。

 

 「殺されても勝つ。それが鬼だ……」


 「……そうだったね」


 カイドウ村の夜は、深く静かに更けていった。


 

 ――――――


 

 翌朝。


 一行は早々に出立することになった。

 屋敷の前には馬車が用意され、カルタも見送りに立っている。


 今日を含めて、3日間かけてパジャン村へ戻る予定だ。

 戻り次第、小角はスウェルド邸の調査に入る。



 「カルタ様、本当にありがとうございました」


 ラァナが深く頭を下げる。


 「謝礼は十分もらったからね」

 

 そう言ってカルタは笑って手を振る。

 

 「それより、変な男に引っかからないようにね!」


 カルタはパルメにも別れを告げ、

 次にミラへと視線を向けた。


 「君は……もっと勉強をしなさい」


 「は、はいぃ……」


 「Aランク魔法使いに恥じない社会性ってやつをだよ。

 美人なだけじゃ、世の中渡れないよ」


 注意してすぐに、柔らかく微笑む。


 「でも才能は本物だね――

 縁があったら、また色々教えてあげるよ」


 「ほ、本当ですか!?」


 最後に、カルタは小角の前に立った。


 「息子には……何も言わないこと」


 「言いません」


 「千里眼で、見張ってるからね」


 「……承知しました」


 「同じ境遇の人間に会えて、よかったよ」


 「こちらこそ」


 「生まれ変わりの体験者……

 わたしたち以外にもいると分かったからね。

 何か掴めたら、文を飛ばす」


 「僕も同様に……」


 

 馬車が動き出した。

 小角は、昨夜の言葉を思い出していた。



 ――面白いものを見せる。



 だが――

 特別なことは何も起きなかった。


 少し拍子抜けしつつ、

 それでも聞くのは野暮だと思い、そのまま村を抜けようとした。



 そのときだ。



 「ありがとう! パジャン村の冒険者さん!」

 「また来いよ!」

 「ミラさん、水着で歩くなよー!」

 「ロッキ! 会えてよかった!」



 通りに、村人たちが一列に並んでいた。


 笑顔で、

 声を上げて、

 手を振って――

 村人全員が、見送りに出てきていた。


 昨日とは、まるで別の光景。



 「……そうか!」


 「どうしたの、ロッキくん?」


 「……なるほど」


 小角は、ようやく理解した。


 「面白いものって……これか」



 藁人形を媒体にした降霊術。

 魂は術師の意のままに動くが、呪力消費は甚大だ。


 昨日は最小限。

 だから、ただ立っているだけだった。


 だが今は違う。


 カルタは呪力を解放し、

 村人全員を“生前と同じように”動かしている。


 ――100人近い死霊を、同時にだ。


 小角でも不可能な芸当。



 「……確かに、面白い」


 そして、背筋が冷える。


 「いや……恐ろしいよ。卑弥呼様」



 降霊術。

 蘇生術。

 魂の入れ替え。



 すべてを成し遂げた女。


 ――呪術の開祖と謳われた、伝説の女王。



 小角は畏怖の念を抱いたまま、

 カイドウ村を後にした。






 

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